【契約の果てに】

 ずるり、と、ひどく重たい身体を腕の力だけで前進させる。  数メートル先で嗤っている男達の手招きに、応えるためだけに。 「あっ、ひっ……くっ」  立ちあがって歩けば数秒で辿り着ける場所なのに、今の怜治に足は無いのと同じだ …

願い事

 今の願い事を書け、と言われて渡された短冊は普通の4倍ほどもあろうかという大きさだった。  訳が判らなくて、ぼんやりしていたら。 「七夕だからな」  と、付け加えられた。  時間の感覚などとうの昔になかったし、七夕だから …

【宴の夜】後編

「あっ、あ゛っっ……ぁぁ」  下腹の奥底で、灼熱の炎が産まれ、暴れ回っていた。全身の皮膚は総毛立っているけれど、寒いわけではない。それどころか、熱くて熱くて堪らない。  荒い吐息と悲鳴に喉は渇ききり、なのに、涎がだらだら …

【宴の夜】前編

 押し倒された時、ただの悪ふざけだと思った。  力強い指が痛いほどに手首を鷲づかみにして、テーブルに押しつけられてもなお、やりすぎだろう、と思っただけだった。  かちゃ、と、金属がかみ合う音がして、じゃらじゃらと細いけれ …

【さくら さく】後編

 恭一がサインした書類は、養子縁組届けで、太地が恭一の息子になるというものだった。  正気に戻って慌てても、全てが処理された後だった。何も知らない太地の親は、林の両親が頭を下げて説明されたことを鵜呑みにして、最終的には祝 …

【さくら さく】前編

 逃れられると思っていたのは間違いだったのだろうか?  大学を卒業してしまえば、それぞれの道があって。接点など作らねば無いだろう未来への分かれ道のその日に、この日が最後だと信じていたけれど。  彼らはいつものように自分を …

Sweet, sweet and too sweet night 3

「ひぃっ、——ぃぃっ! ああぁ……うぁ」  ベッドにうつぶせに押しつけられ、高く掲げた尻の狭間に、たくましいペニスが、ずぼっと音を立てて沈められる。パンッと音を立てた皮膚は全身汗ばんでいて、流れ落ちるほどだ。  もうずっ …

【Sweet Valentine】

 甘ったるい匂いが充満していた。  常ならば嫌いではない匂いだ。けれど、今、そのチョコレートの香りは、むせ返るほどに強い。  しかも室温で固体になってしまうそれが固まり過ぎないようにと、この部屋は温度を高めに設定してある …

【階段の先】-18.2

18-2.Masaki  あの冬吾さんの躾の後、俺は二週間経ってようやく龍二さまの罰を受けることになった。  骨折まではいっていなくても、かなりの炎症があったらしく、治るのに少し時間がかかったのだ。  ベッドの上で安静に …