【Sweet, bitter and too bitter night】(1)

【Sweet, bitter and too bitter night】(1)

【Sweet Valentine】とは別のお話ですが、少し関連があるために同じシリーズになります。
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 チョコレートやら甘いスイーツの匂いが充満する2月の寒い夜は、チョコレートが好きではあっても貰える縁など欠けらも無い大紀(だいき)をどこか荒んだ感じにさせていた。と言っても、仲間内に言わせれば、普段とたいして変わらないと言うだろうけれど。
 それでもどことなく面白くなくて、どんな奴でも良いから狩って遊ぼうか、という話でもしようと思った時。
 それは唐突に鳴り響いた。



 携帯が鳴ってからわずか一時間も経っていない。けれど、手慣れた仲間達のおかげでこの場のセッティングは全て終わっていた。
 その中央で、まずはじっくりと観察する。
「キレイな色だ。でも、キレイすぎるな」
 瞳に写ったそれは、あまりにもキレイすぎて大紀の好みから少しばかり外れていたけれど、だがそれも総合点からすれば些細な事だった。何せ、他の何もかもは大紀の好み通りなのだから、こんなに喜ばしいことはない。
 健康的な肌を持つ若い、20代の男。漆黒の髪に深い深淵を思わせる瞳は、初恋の頃から外せないものだ。
 さらに知的で切れ者で、前途洋々としたエグセグティブ候補のような……いわゆるエリートと言われる類の者。セレブならばなおのこと良いのだけど。
 そんな、自分などとうてい手の届かない地位の、自分とは正反対の男が大紀は大好きなのだ。好きすぎて、犯して堪らなくなるほどに。
 視界の隅に入れば、思わず立ち止まってじっと視線で追ってしまうし、後を追いかけてその素性を知りたくて堪らなくなる。至近距離にでも立たれたら、美味い飯を味わうごとく涎が溢れてきて、一瞬で勃起してしまうのだ。人目を気にする自制心くらいはあるから、自慢の逸物を擦り付けるのだけは堪えるけれど。頭の中では思いつく限りの卑猥な体勢で犯し尽くしている。それこそ心が読める人間でもいたら、即刻通報されるであろう淫靡で卑猥な妄想に囚われて、仕事どころではなくなってしまう。
 もっとも、今のところその妄想が現実化したことはなかった。
 それも当然だ──と、そのあまりにピンポイントなこだわりを、仲間内ではいつも嗤われていた。何せ、あまりにも理想が高すぎるのだ。
 大紀は高校を出てすぐに工場の作業員で働いてはいたが、小さな町の工場の年収は一人が暮らしていくのもやっとのところ。がっしりとした体躯で単純な力仕事なら得意なのだが、どうも繊細な作業は苦手だ。そのせいで時々干されて、収入が全くない時だってあった。おかげで、飲みにすら行けなくて、知り合いの家に転がり込んでいる。ルームシェアなどと小じゃれた名前など付けられない部屋とは言え、生活はいつだってキュウキュウで相手を見つけることもままならない境遇。当然服装も着たきり雀かというほどに雑で、身だしなみにお金などかけられない。
 そんな大紀の性欲は、意気投合した仲間達と狩りをして捕らえた獲物で遊ぶことでなんとか解消していたけれど。けれど、その狩りの範囲にそんなエリートが現れるわけもなかった。
 それでも、自分だけの理想の相手と遊びたくて、欲しくて欲しくて、悶々とした日々を過ごし続けていたその時。
 ようやく──。
 大紀はうっとりと目の前にある二本のすらりとした足を見つめた。
 股を大きく割り開くように、俯せにのせたテーブルの脚にそれぞれを括り付けた足は、もう長いこと日焼けなどしていないのだろう。もとより日焼けなどすることがないはずの尻タブと同じ色だ。それに手を滑らせると滑らかで、その肌触りの良さに思わず笑みが浮かんでしまう。触れればテーブルに括り付けられた体が跳ねるのも面白い。
「うっ、ぐぅぅ──」
 そのたびに聞こえる呻き声に、下腹部にじわりと重い疼きが湧き起こった。
 今日の獲物がたいそう上物なのは、彼の会社の身分証ですぐに知れた。だからこそ、気分が昂揚していて、まるで初めて性行為をする時のように興奮して止まらない。
 最初は信じられなかったのだ、これほど好みにどんぴしゃりの獲物を捕まえられるなんて。
 仲間から教えて貰った目撃情報だって、最初は笑い飛ばしたほどだ。けれど、半信半疑で目撃場所の場末のバーに行ってみれば、確かにこの男はいて。
 目に入った瞬間、大紀の心臓は飛び跳ねて口から出ていきそうになった。
 一目惚れとはこういうことをいうのか、と、仲間に言ったら嗤われそうだから言えなかったけれど。
 それほどまでに、その男しか視界に入らなくて、止まらない動悸に目の前がくらくらしてきたほど。
 自分とは縁のない高級な生地で仕立てられたスーツは、見事なまでに彼の細身の体にフィットして、醸し出す雰囲気は完全にこの場から浮いていて。しかも、その顔もこれまたドンぴゃりの好みで。
「ありゃ、オーダーメイドだな」
 デザイナー崩れの仲間が、大紀の耳に囁く。
「時計もけっこう良いな。ずいぶんと金持ちのようだが、なんでまた、こんなところにいるのかねぇ」
 くっくっと喉を鳴らして嗤う仲間が大紀を見つめる。
「お前さんが欲しいなら協力してもいいぜ。いっつも協力してもらっているからな」
 仲間達の言葉に頷きながら、その間も、写真を見せて店主や客に聞き回っている男から目が離せない。
 大紀だけでなく、周りの男達の見る目が物欲しそうなのは、すぐに分かった。ここにいるのは金が無い人間ばかりだから、金を持つ相手にはいろいろな意味で反応してしまう。
 そんな連中に襲われてボロボロなる前に──最悪死体になる前に、手に入れなければならない。
 妙な焦燥感に襲われて、今すぐにでも捕まえたい欲求を必死で堪えて拳を握りしめる。
「強盗される前に捕まなきゃな。その方があいつのためだろう」
 笑って返したその言葉に、あっというまに仲間達も賛同してくれた。
 もう何人も狩ってきた仲間達の手際は素晴らしく、何一つ問題など発生するはずもなく。
 溜まり場にしているプレイルームとは名ばかりの廃屋で裸に剥いて縛り付けるまで、ほんの僅かな時間しかかからなかった。
 何より、兄を捜していた高谷啓治(たかや けいじ)を狩ることなど、その兄を知っていると言えば、とても簡単なことだった。



「でも、嘘じゃないんだよね。あんたの兄さんっての、知ってるよ」
 その言葉に、涙に潤んだ瞳が大紀を捕らえる。
 両手もロープで反対側のテーブルの足に結わえられて、頭しか動かせない啓治がその端正な顔を歪ませる。何かを言いたげで、それは大紀の言葉の続きをうながすものなのだろうけれど、今はボールギャグに遮られて獣のような唸り声だけだ。
「知りたい? でもまだ教えない」
 途端に唸り声が大きくなる。
 四肢をきつく引っ張られて拘束されているからほとんど上半身は浮かないのに、けれど、それでも仰け反って大紀に迫ろうとする。そのせいで、手首に絡んだロープがぎりぎりと肌に食い込み、うっすらと血が滲むのが見えた。
「あぁあ、知らないよ、怪我してさ」
 まあ、あのくらい、いくらでも手当してやるけど。
 大紀の思惑など気が付く様子もなく、啓治は兄の行方が知りたいのか必死になっていて。
 自分がされることにも構わないほどに兄の行方を気にする愚かさに、大紀は肩を竦めながら、その一つだけ気に入らない色をしているアナルに触れた。
「ひっ」
 息を飲む音と同時に、啓治の体が硬直する。
 兄のことより自分が直面してることを思い出したのだろう。色を失った肌にもう一方の手を這わせ、それが紅潮した様を想像する。
 この気の強い男がこれから大紀に尻を犯されて、泣いて懇願するのだ。
 助けて、許して、止めて欲しいと、泣き喚いて。
 ああ、でも……。
 そんなのは誰を犯しても手に入れられる。けれど、大紀が見たいのは絶え入る姿だ。エリートだからこそのプライドのせいで、与えられる快感に溺れるのを邪魔されて、抗うその姿だ。
 壊すのは簡単だけど。それよりも先にすることはたくさんある。
「ここを誰よりも淫乱な穴にしてやるよ」
 涎を垂らして男のペニスに食らいつく、そんな穴に。
 まだ誰も開拓したことのないキレイなアナルは、大紀が指先に力を入れれば、さすがに一本だけならつぷっと侵入を許した。
「ひぐっ」
 短い悲鳴とともにきゅっとアナルが締まり、まだ第一関節しか入っていない人差し指に、きゅうきゅうと食らいついてくる。そのきつい締め付けの心地よさを堪能しながらジリジリと押し込んで、絡みつく肉の熱に酔いしれる。グネグネと動くのは腸の蠕動運動だが、指に伝わるその動きだけで達きそうだと、熱い息を吐いた。
 服を剥ぐまでは少し不安はあったが、それも今はない。まだ若いからか、鍛えているからか、余分な脂肪が見られなかったからだ。たるんだ腹など業腹ものだから、これは嬉しかった。
 それに、敏感だ。
 大紀の手が肌に触れるたびにびくびく震えて、くぐもった悲鳴を上げる。特に、産毛に触れるかどうかの距離間がどうやら一番良いらしい。震えて、総毛立って、鳴くような悲鳴もまた心地よい。
 剥き出しのキレイな色のアナルに息を吹きかければ、ヒクヒクと収縮させていてまるで何かに期待しているようで。
 自ら指を飲み込もうとする仕草には煽られる。
「ここ、俺好みの色にするには、使い込むのが一番なんだよねえ」
 愉しげな大紀の言葉に、啓治の体が跳ね回る。
 やっぱり頭が良い奴隷は愉しい。
 何をするなど詳しく言わなくても、先を想像して脅えてくれる。
 だったら、そのイヤらしい期待に応えてやらなければならないだろう。
 大紀は奥まで挿入した指をギリギリまで引き出して、今度は中指を添えて押し込んだ。
「ンムうううっ!!」
 さすがにキツい締め付けに指は半ばで止まっていて、尻がバタバタと暴れている。乾いた指がアナルの壁を捲り込み、シワが伸びていた。
「ほらほら、そんなに力入れてると、入らねえよ」
 ペシリと白い尻タブをひっ叩くと、赤い手形がキレイに浮かぶ。けれど啓治の体はますます力が入り、ギチギチと締め付ける。
「ふぅん、じゃあこのまんま挿れてやるよ」
 せっかくゆっくりと解してやろうと思ったけれど、キツいまんまがよいなら仕方がない。
 ジュポッと音を立てて引き出せば、刺激に先より朱を濃くしたアナル壁が誘うように蠢いて、啓治はペロリと舌なめずりした。
「う──っ! むあ──っ!」
 尻の向こうでは、大紀の言葉を正確に理解した啓治が、不自由な上体を必死で捻って唸っている。
 大紀好みの端正な顔が歪み、涙と涎でグチャグチャだ。そんな啓治に見えるように立ち上がって自慢のペニスを振ってやる。逸物という呼称がぴったりの仲間内でも自慢ができる代物だ。その存在感を視界に入れた啓治の目が大きく見開かれた。
 なにせ、啓治の股間で萎えてぶら下がっているものより、長くて太い。勃起しなくてもたいそうな体積を持つそれは、勃起すれば玄人でも泣いて嫌がる硬度を持つ凶器となる。
「解さねえと裂けて血まみれになっちまうが……まあ、痛いのが好きならしようがねえか」
 その言葉が違わないことは、実物を見れば一目瞭然だ。
 蒼白になった啓治が、逃げよう全身を波打たせていた。その動きに合わせて、ガタガタとテーブルまでもが暴れる。もっともこのために準備した丈夫なテーブルは少々のことでは壊れやしない。
「どうした? 待ちきれないのか、チンポがよお」
 テーブルを周り、言葉を封じられた哀れな男の顔を覗き込めば、近づいた大紀の大きさに啓治が息を呑んだのが判った。
 カチカチとその口の中で小さな音がしているのは、震える歯がボールギャグに当たっているせいだ。それほど激しく脅えている原因が何かなど、大紀には良く判っている。
「ほんとは、縛らなくても良かったんだがな」
 仲間達と獲物を嬲るときは、いつだって大紀が拘束役だ。大紀に押さえつけられて逃げられた獲物はいなくて、それをなし得る身体に獲物はたいてい脅えて萎縮する。
 180近い身長はともかくその筋肉質な体が伊達ではないのが掴まれた指の力からも窺い知れるからだろう。繊細な仕事は向かないが、力仕事なら誰にも負けない自負はある。
 その全てを晒しだしている大紀に、啓治もまた脅えていた。さらに数度扱いただけでムクムクと勃起した巨大なペニスが、今は目の前にあるのだ。
「まあ、せっかくの処女を戴くんだ。最初くらいは希望を聞いてやるよ」
 口を塞いでいたギャグを外してやりながら、問いかける。
「お前の口で先に達かせてくれるなら、裂けない程度には解して突っ込んでやる。それともすぐに突っ込んで欲しいなら、ご希望通りに突っ込んでグチャグチャに解してやるよ、こいつで」
 どうみても、すべてが口に入りそうにないペニスで頬で叩かれて、啓治が小刻みに首を振った。解放された口はもう言葉を出せるというのに、何も言わない。
 まあ言えるわけもないか……。
 二つの選択肢は、そのどちらを選んでも啓治には酷なことだ。だが。
「選ばないなら、三つ目にするよ」
「三つ目?」
 縋るような眼差しに、大紀は笑い返す。
 場末の飲み屋街の中にあって場違いな雰囲気がだだ漏れだった啓治だが、もうそんな姿はどこにもない。
 エリート然とした男がこうやって地に落ちていく様を見るのが、大紀は何よりも大好きで堪らなく興奮するシチュエーションの一つなのだ。もっとも、そんなことは面倒くさいと、犯して泣き叫ぶ様が一番だという仲間達には笑われてしまう好みだったけれど。
 外せないモノは外せない。
「そう、あんたのケツにこのビン突っ込んでビール浣腸して解してやるよ。そうすりゃ少しは解れるし、キレイになるし」
「……」
 期待を多少はしていたのだろうけれど、大紀の言葉を聞くに連れて、その顔が強ばっていく。
「炭酸が体温で急速に膨らんで、普通だったら我慢できなくて、クソ混じりのビールを噴き出すんだ。すっげー面白いぜ。好きな連中には高く売れるしな」
 ビデオ撮影した映像は、マニアな連中には高く売れるお宝だ。
 用意しているビデオカメラにビールを見せれば、ガチガチと歯が鳴る音がはっきりと聞こえた。
「でもそんなに簡単に出したら、キレイになんねーから、こいつで栓しといてやる」
 最後に見せたアナルプラグは大紀のペニスよりは細いけれど、並みのサイズの啓治とは遜色ない太さだ。
「これくらいだったら、裂けねえだろ」
「ち……が、裂け──」
「しかも炭酸ガスのおかげで、腸の奥まで拡張できるぜ」
「ひっ」
 頭の良い奴が好きなのは、無駄な説明がいらないところだ。
 解放されないガスが肉体にどんな影響を与えるか、ただ拡張されるだけでは済まないことに気づいた啓治の口元に、ペニスを擦り寄せる。
「さて、どうする?」
 どれを選んでも犯されるのは変わらない。
 逃れることなどできない状況に啓治の瞳がきつく閉じられて、その口が開いたのはすぐのことだった。


 三つの選択肢のうち、獲物が選ぶのはたいていこれだ。どんな獲物だって、大紀のペニスを見れば大人しく口を開く。もっともそれは脅しで、たいてい大紀が犯すのは最後だった。そうしないとアナルが緩みきって面白くないというのは仲間の弁で、それは大紀も否定しない。どうせ最後でも、それまで以上の圧迫感に獲物も泣き喚く代物だから、大紀は十分遊べるのだ。
 けれど、今日は大紀一人。仲間達がいつも協力して貰うお礼だとばかりに大紀に譲ってくれた獲物は、最初から大紀を受け容れなければならない。
 テーブルにうつ伏せで括られて、顎を上げて必死に大紀のベニスを頬張って。必死になっているのは当然だろう。
 含みきれないほどに大きな逸物を頬張る様は苦しいそうで、その長さに喉の奥を突かれて時折えづく。ただ、その度合いが少ないから、わりと速い段階でイマラチオができるかも、と期待に胸が膨らむところだ。
 クチュクチュと喉が鳴るのは、突き上げない代わりに吸い上げさせているせいだ。
「へへ、旨そうに吸いつくなあ。あんた、実はチンポ好きなんだろ?」
 その言葉に、啓治の瞳に抗議の色が浮かぶ。それに笑いかけ、垂れた前髪をあげてやって。
「良かったじゃねえか、下手だったら焦れてすぐにケツマンに突っ込みたくなるからなあ」
 チラリと尻の方へと視線をやれば、クチュクチュという音が大きくなって、キュウッと締め付けられた。
 その堪らない柔らかさと熱と滑りは最高で、拙い舌技を補って余りあるものだ。
 これは当たりかも。
 さっき指で感じた感触と、口内のこれと。どこもかしこも好みなんて、最高だ。
「はは、やっぱり好きか。良かったなあ、今日はたあっぷり満足するまで味わえるぜ」
 いや、今日だけでない。気に入らなかったら犯るだけやって捨ててしまうか、他の奴らに引き渡すかするけれど、こいつに限ってはとてもそんな気にはなれなくて。じっくりたっぷり味わい尽くして貪り尽くしてしまいたい欲求は、未だかつて無いほどに強い。
 専属の性奴隷を作り上げる楽しみすら加わるその欲求は、大紀の興奮を駆り立てるうえに。
「んく、おおぉ」
 最近射精してなかったペニスは決壊も早い。
「ん、ぐっ」
 啓治の頭をガッシリと掴み、腰を突き上げて、一気に解放する。
 狭い尿道管の中を迸るザーメンの刺激に、一瞬硬直した全身がブルブルと小刻みに震えた。
「飲めよ」
 うっとりとため息混じりの吐息を零して、動けずに目を白黒させている啓治に命令する。
 苦しげに呻いた拍子にジワリと浮かんだ涙が溢れて、頬を流れ落ちた。
 キレイな涙を泣がす奴は好きだ。
 背筋がゾクゾクして、快感が倍増するアイテムとなるそれを、大紀は親指で掬い取る。
 飲みたくないのか抗おうとするけれど、大紀の力には適わない。
 視線が、拒絶の意を伝えてくるけれど、この男を汚したい大紀が聞く筈もなくて。
 催促するように軽く突き上げているうちに、喉の奥が痙攣してくるのが判った。次いでゴクゴクと嚥下する動きも伝わってくる。
 何も聞き入れて貰えない状況に啓治の瞳が虚ろに彷徨い、現実から逃れようとしているのが判ったけれど。
 まだまだ序の口のところで、逃がすつもりなど無くて。
 その真っ青な顔を親指で嬲りながら、その様子をじっと見つめる大紀の顔には、堪えきれない笑みが浮かんでいた。




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