【さくら さく】後編

【さくら さく】後編

 恭一がサインした書類は、養子縁組届けで、太地が恭一の息子になるというものだった。
 正気に戻って慌てても、全てが処理された後だった。何も知らない太地の親は、林の両親が頭を下げて説明されたことを鵜呑みにして、最終的には祝いの言葉までかける始末だ。
 その説明は、林家が銀行を主とするいくつもの大会社を経営する家であって、いずれ跡を継ぐ恭一の右腕になる太地を林家に取り込みたいという希望があるというものだった。
 そして、林家に住むことになった太地は、確かに会社には行かせて貰えたし、外出も許されている。
 けれど、会社に行けたのは最初の一ヶ月のみで、その後は太地自身の意志で在宅勤務となっている。それが許されたのは、就職した会社が林家傘下の会社だったからだ。
 そのため、太地は日中のほぼ全てをこの離れで暮らしていた。
 もっとも、会社に出社しなくても、太地の朝は変わらない。
「あ、ご、ごちそ……さま、でした」
 三つ指をついて深々と頭を下げるその口元には白い粘液がこびり付いていた。
「まだ残っている」
「は、い……」
 顔を上げれば、目の前に恭一のペニスが少し萎えた状態で突きつけられ、その鈴口から滲み出る粘液を、舌を伸ばして舐め上げる。
 注がれた精液を一滴残らず舐め取ってから、口を開けて何も残っていないのを見せないと恭一は許してくれない。
 林家の離れに住まう二人の朝は、先に起きた太地が恭一を起こすところから始まる。同じベッドに寝ている恭一のペニスを銜え、朝ご飯前の奉仕をするのだ。
 まだ寝ている恭一が、刺激に目覚めて射精するまで、太地は口だけで奉仕するよう義務づけられていた。
 しかも、夜は必ず全裸でなければならなくて、服を許されるのは昼間だけだ。
 食事は母屋から運ばれていて、食卓に恭一が着くと、太地はその隣に座る。その食事は普通だが、時々口移しで食べさせられた。
 そんな朝ご飯が済めば、排泄物を全て出して直腸洗浄を行い、そこに手ずから恭一が選んだ玩具を埋め込むのだ。
 小さなパールバイブだったり、アナルプラグだったり。時には男のペニス並に太い張り型だったりもいる。
 それを自分の手で押し込めば、ようやく服が着れるのだ。といっても、会社に行っていた時も玩具は体内に埋め込まれたままで、下着代わりの特注の拘束衣の上にスーツを着て、そのまま会社に出かけるよう強要された。
 そんな格好で仕事などできるはずもない。
 最初のうちは何とか意地で頑張ったけれど、一年犯され続けた体で我慢できるモノでなくて。何度も会社で射精してしまったほどだ。
 それを恭一に訴えても、恭一は勝手に射精した罰を与えるだけ。だったら、玩具を許して貰おうとしても、ならば服を着ることは許さないという。
 結局、それで会社に行くことを諦めたのだ。
 昼間はたいてい恭一は大学か実家の手伝いで留守だ。
 その間は自由にできるけれど、玩具を入れて外出などとうていできなくて、結局ひたすら恭一が帰ってくるのを待つだけだ。
 そのまま夕方までは服を着ていられるけれど、18時を過ぎると、今度は着衣は何も許されない時間だ。
 拘束衣すら外して、その時には必ず体内の玩具の電源を入れるように言われていて。
 その状態でいつ帰ってくるか判らない恭一の帰りを待つのだった。


「っ、お、か……りなさいませ」
 磨き抜かれた離れの玄関先で三つ指を突く太地は、その全身を朱に染めて、水彫りをした桜の花びらがいくつものその体を彩っていた。
 着衣を許されない体は、全身余すことなく紅潮していて、ひどく淫らだ。
「ただいま、太地。今日は我慢できたのかい?」
「はい、ん、今日は、一度も自慰をせ……ずに、は、」
 体を起こした太地の股間には、鈴口から滲み出た先走りで濡れそぼったペニスがふるふると震えていた。
 拘束衣を外せば、太地の射精を阻むものはない。けれど、勝手に達くことは恭一に禁じられていて、太地はどんなに達きたくても我慢するしかないのだ。
「そう、良い子だね」
 にこりと笑う恭一に、太地はほっと息を吐く。機嫌の良い恭一は、太地を大事に扱ってくれる。
 通常ならば、玩具は、夕食後に取り除いて貰える。
 それから二人でお風呂に入って、ベッドに入って。
 恭一の気が済むまで犯されて気絶させられるまで続く行為は、それでも二人だけだから、大学の時よりはマシだ。
 そう思ったのだけど。
「そうそう、後で高橋と海藤が来るってさ。しっかりもてなしておくれよ」
「え……」
「二人とも土産も持ってくると言っていたし、楽しみだな」
 目の前を恭一が通り過ぎていく。けれど、太地は蒼白な面持ちで、ぴくりとも動くことができなかった。
「二人が来る前に軽く食べとくか……明日は休みだから、たっぷり飲めるしな」
 恭一が振り返って、太地を呼ぶ。
「おいで、その前に一発抜きたいな。使ってやるよ」
「は、い……」
 逆らうことのできない太地は、呼ばれるがままに恭一の元に向かうしかなかった。


「タイちゃん、俺のチンポ好きだよなあ、嬉しい」
「ひっ、きつっ、……ひっ、ひゃぁっ」
 歪なペニスは、前立腺をごりごりと抉る。恭一のそれとは違う激しさで、高橋は太地を犯す。乳首のピアスとペニスのピアスに鎖を通し、引っ張りながら抉られて、より激しくその形を味合わされる。
「太地ぃ、その乳首、前よりでかくなってね? やっぱ旦那様にたっぷり可愛がって貰うとでかくなるってのは本当だったんだなぁ」
「あはっ、そんなっ、……ん、た、た、はしっ、そこ、ああっ」
「あれぇ、旦那さんでなくて高橋に強請ってやがるぜ。ったく、浮気は良くねえだろう……おっ、証拠写真、証拠写真、浮気現場発見ってか……がははっ」
 カシャッとシャッター音がして振り向けば、海藤が携帯のカメラで、太地を撮っていた。
「や、撮る、な……、こんなっ」
「いやあ、浮気の証拠写真は、ちゃんと旦那様に送っとおかないと」
 そう良いながら、すぐ隣にいる恭一に写真を送る。
「まったく、旦那の俺より良さそうにしてんじゃねえよ。こりゃ、お仕置きだな」
 二人が太地に襲いかかるのを、目前で笑って許していたはずの恭一が眇めた視線を太地に送る。その冷たい視線に、太地は泣きながら許しを請うた。
「い、いやっ、許してっ、おねが……、ひっ」
「許して? ということは、浮気を認めるってことだな」
「あ、……そんなっ」
 ニヤリと口角を上げて嗤う恭一に、必死になって首を横に振るけれど、恭一が聞いてくれないのは判っていた。
「太地が嫌いな玩具を今日は使ってやるよ」
 その言葉に、太地の顔から一気に血の気が失せる。
「へえ、淫乱な太地が嫌いなものってあるんだぁ、何々?」
「これだよ、これ」
「だ、ダメだ……それはっ」
 恭一が取り出したのは、山芋だった。しかも、瘤が多い自然薯と呼ばれるひどく歪な形のものだ。
「さっき親父が届けてくれた。天然産の極上品だ、これの皮を剥いて、このまんま突っ込んでやるよ」
「おほっ、すげえ太いっ」
「や、やめて……お願い、それは……」
 あの日、山芋でかぶれた体内は、何日も治らなくて排泄にひどく苦労したのだ。
 しかも、今のこの状態を作ったのも、この山芋のせいなのだ。
「海藤、太地を縛れ」
「了解っ」
「い、いやぁぁぁっ」
 悲痛な太地の悲鳴は、けれど、誰も聞いてくれる者など無くて。



「可愛いよ、太地。もう絶対に離さない」
 天井から伸びたロープで上半身を縛られ吊られて。悶え苦しむ太地の尻に自然薯を抽挿しながら、恭一はうっとりと囁いていた。
 あれから嫌がる太地にたっぷりと芋の汁を注ぎ、その体にも塗りたくった。そんな責め苦に太地はすでに虚ろに「もう、許して……掻いて、か、ゆい……掻いて」と繰り返すばかりだ。
 手袋をした恭一の手がねっとりとした芋の汁を掬い上げ、乳首にまぶしながら揉み上げる。すでに赤く腫れたそこは、もうその程度の刺激では何も感じないようだった。
「芋で遊ぶと突っ込めなくなるのが、残念っ」
「もうちょい堪能したら洗って遊べば良いじゃん。どうせ、土曜も日曜も遊べるんだし」
「だね」
「ああ、二人に遊んで貰えると、太地も楽しいみたいだからな。しっかりと遊んでいってくれよ」
 執着心の強い恭一は、太地を愛しているから可愛がるんだ、といって憚らない。太地が気に入ると思えば、高橋と海藤に太地を抱かせるのも苦にならないのだと全てを許す。
「太地、久しぶりに遊びまくろうな」
 繰り返される陵辱の日々は、決して止まる事など無くて。
 ぽろりと流れた涙は、自然薯の汁を流すことなく消えていった。


【了】