【闇夜の灯火】  1

 なぜか嫌な予感がした。  課内直通電話が鳴った途端、滝本誠二の全身に総毛立つような不快なざわめきが湧き起こったのだ。  このままそっと事務所を抜け出そうか……などという考えは、狙い定めたようになり始めた電話に呆気なく蹴 …

 古い年代物の木造建築物が、この町の役場だった。 所狭しと並べられた事務机の間をコード類が走る。  つまずかないようにテープ等で止められているが、数ヶ月に一回は誰かがひっかかって派手な音を立ててこける。こけるついでに最悪 …

【覚悟してよ】

 前日に聞いたのは、『運動の出来る服装』ということだけ。 当日も、運転中はおおまかな場所だけ聞いていて細かい指示は助手席から貰っていた篠山義隆は、到着した場所の看板を憮然と見ていた。  アスレッチック広場。  義隆は十秒 …

【仕事してよ 開発部より滝本チーム高山&篠山チーム橋本編】

 開発部 滝本チームの高山は、棚卸しのチェックの手を止め、ふと時計を見た。  すでに7時を回っているのを見て、小さく息を吐くと、かがめていた腰を伸ばした。  同じチームのメンバーは滝本・高山を含め8人。  それを実質的に …

【仕事してよ 滝本恵編】

 川崎理化学営業三課の滝本恵は、携帯のメールを確認して、ほっとしていた。 メールの相手は、篠山義隆。恵の恋人だ。 ここんとこ一週間ほど、毎日のように押し掛けてきた義隆にいささかうんざりしていた恵は、メールの「今日いけない …

【連絡してよ】

 避けられてるんだろーか。  篠山義隆はパソコンに向かいながら考え込んでいた。  会社の事務所で考える内容ではない、とは思っているのだが、ついつい手が止まってしまう。パーテーションに区切られた机だから、後ろから近づかれな …