【してあげたい】 2 ?櫂?
金曜日だと言っても、二人の時間が合うことは少ない。 里山櫂は製造で交代勤務が多いし、高山彰は深夜までの残業や出張などがあるからだ。 それでも、今日は櫂は一勤だったし、高山もあまり遅くはならなかったから、待ち合わせて …
金曜日だと言っても、二人の時間が合うことは少ない。 里山櫂は製造で交代勤務が多いし、高山彰は深夜までの残業や出張などがあるからだ。 それでも、今日は櫂は一勤だったし、高山もあまり遅くはならなかったから、待ち合わせて …
きっかけはたったひと言。 無邪気なまでのひと言が告げられたのは、残業中に取った休憩での出来事だった。 ジャパングローバル社の定時は5時。食堂の時計はすでに8時を回っており、2交代勤務者の夕食が終わった後と言うことも …
「竹井さん……」 その声は情欲がたっぷりと詰まっていて、それだけで竹井拓也は恥ずかしくなって視線を逸らした。すでに全身が朱に染まっている。 いつだって元気で、そのせいですっとぼけた失敗をしてくれる安佐の手が、腰からシ …
竹井拓也は迫ってくる安佐由隆を見上げながら、何でこんな事になったんだと呆然と安佐を見上げていた。 明日、安佐が出張に持っていく筈の書類一式が机の上に残されていたのを見つけたのは、珍しく残業していた竹井だった。電話す …
HATCHING(ハッチング) 断面線を書く作業(CAD コマンド)。 断面図の断面部に描く斜線などの模様で、そこが断面であることを示す。 材質によって、指定された模様がある事もある。
10時よりも30分も早く、来訪を告げるチャイムが鳴った。 こんな時間に来るのは、ただ一人。 悠人は、ドアが見える場所に陣取って玄関が開く様をじっと窺っていた。 壁に背を預け、気怠げに見据えている。 「お迎えはない …
誕生日、クリスマスはまだいい。 いや、良くはないが、まだしようがないかという気になる。 だが……。 土曜の昼に出かけたスーパーで、明石悠人はげんなりと肩を落とした。 2月に入る前から目立ち始めたそのコーナーは、 …
どうしてこの世にはバレンタインなんてものがあるんだ? 明石悠人がちらりと窺う先で、雑誌の特集記事が『VALENTINE DAY特集』といういかにもというようなピンクでポップな文字を躍らせていた。 悠人の部下達が、お …
ふと左手首の時計に視線をやる。 明石悠人の、男にしては幾分細い腕に巻かれた時計が、あと5分で就業時間が終わることを示していた。。 別に時計を見なくても、課の女性達がそわそわと落ち着かなくなるからおおよその時刻の見当 …
不機嫌きわまりない兄の悠人がやって来た時、明石雅人はまだ夢の中だった。 ホストの仕事で明け方にようやく帰ってきて、一番気持ちよく眠っている最中にたたき起こされた。雅人は苦虫を噛み潰したような顔で、リビングにでんと座っ …
増山健一郎、33歳。 千代田不動産株式会社、営業1課 係長。 三ヶ月前に抜群の営業成績を収めて、本社に栄転になった。 そして、始めてその男に逢った。 移動の手続きの書類を持って庶務課の部屋を覗いた時、こちらを …
優司の母へのお年玉である歌舞伎観劇旅行。それに、秀也の母親も一緒にいくことになっていて…… 疲れた体を引きずって家に帰り着いた途端に鳴った携帯電話。 その画面に表示された名に、無表情だった顔に笑みが浮かんだ。 「秀 …
「で、これがそのメールって訳ね」 受け取った資料を、誠は訪ねてきた梅木に渡した。 梅木は、笹木を滝本の家まで送っていった後、誠の家までやってきたのだ。 「そうなんだ。けっこうつっこみどころ満載みたい。統計は専門外だけ …
年に一度企画されるミーティング。参加のために工場に向かおうとした秀也は、冷気を纏う男と会ってしまう。秀也の受難、陵辱、リバ。 外人が多いな。 工場に向かう飛行機に乗り込んだ時、笹木秀也は違和感に気が付いた。 いつ …
電話で依頼された資料。 了承するのは簡単だった。──否、拒絶できなかっただけのことだから、簡単も何もないだろう。 本来なら、時間や手間を考えれば絶対に拒否すべき依頼だったのだが、営業が一度了承してしまったものをこち …
今日の夜空は、雲一つ無い星空だと、天気予報が知らせていた。 だが、もはや深夜と言って良い時間でも、瞬く星を見ることは叶わない。代わりに原色系のネオンが空を明るく照らす。 それでも、と目を凝らした笹木秀也だったが、視 …
お年玉って……。 完全に忘れていたが、そういえば今はお正月なのだ。 甥達にすら渡していないこともついでに思い出して、優司はきつく顔をしかめた。 「お年玉って……新札だよな……っつうか、千円札そんなにないぞ?」 母 …
落花流水:散る花は流水にのって流れ去りたいと思い、流れる水は落花を乗せて流れたいと思う相思相愛の様 正月は寝正月。 新しい年を迎えても、それだけはいつもとは違わない。 人肌の心地よさに、部屋の中が明るくなっても滝本 …
【熱海】 秀也と雅人の過去話 賑やかで明るくて元気な女性だった。 40歳代だろうか? 女性に年を聞くなど野暮ったいことはしないから、それは推測でしかない。 ただ、開店と同時に若い女性を伴って現れては、閉店まで居座 …