【どこまでも広い秋の空】 2 暁の誤算の章
ふらふらと歩く智史に付き添い、裕太はホテルの部屋に戻った。 リゾートホテルらしく、広めの部屋にセミダブルサイズのベッドが2つ並んでいる。 その1つに智史がどさっと倒れ込んだ。 「智史さん、靴くらい脱いでくださ …
ふらふらと歩く智史に付き添い、裕太はホテルの部屋に戻った。 リゾートホテルらしく、広めの部屋にセミダブルサイズのベッドが2つ並んでいる。 その1つに智史がどさっと倒れ込んだ。 「智史さん、靴くらい脱いでくださ …
「絆」と「接待してよ」を読んでからの方がわかりやすいと思います。 車の中で、なぜかそんな会話になってしまったのか判らない。 滝本家からの帰り道、篠山義隆の車に乗せて貰って笹木秀也は空港に向かっていた。 確か、昨夜 …
古い年代物の木造建築物が、この町の役場だった。 所狭しと並べられた事務机の間をコード類が走る。 つまずかないようにテープ等で止められているが、数ヶ月に一回は誰かがひっかかって派手な音を立ててこける。こけるついでに最悪 …
「ありがとう……それで、すまん!」 滝本恵が取り出したプレゼントを受け取りながら、篠山義隆は申し訳なさそうに謝った。 クリスマスイブ、三連休の最後の休み。 二人で過ごそうと恵が義隆のマンションにやってきてすぐに、恵 …
前日に聞いたのは、『運動の出来る服装』ということだけ。 当日も、運転中はおおまかな場所だけ聞いていて細かい指示は助手席から貰っていた篠山義隆は、到着した場所の看板を憮然と見ていた。 アスレッチック広場。 義隆は十秒 …
一体何をやっているの、あの人達は。 開発部サポートチームの三宅美佳は、苛々とその二人を見つめていた。 篠山チームリーダー篠山義隆と滝本チーム滝本優司はさっきから不毛な舌論を続けていた。 どう聞いていてもさっきから …
開発部 滝本チームの高山は、棚卸しのチェックの手を止め、ふと時計を見た。 すでに7時を回っているのを見て、小さく息を吐くと、かがめていた腰を伸ばした。 同じチームのメンバーは滝本・高山を含め8人。 それを実質的に …
滝本の携帯で遊んでいたら、思わぬ収穫があった。 そう思うと自然顔が綻んでくる。 川崎理化学営業三課課長 穂波幸人(ほなみゆきと)は、窓の外を長めながら一人笑いを浮かべていた。 緑山・・・・・・確か、小さめの細身の …
何をやっているんだろう? 緑山敬吾は、さっきからじっと篠山義隆を観察していた。 篠山は緑山にとって、直属の上司であり、憧れの人でもあった。 しかし、つい先だって完璧に振られてしまったのだが。
川崎理化学営業三課の滝本恵は、携帯のメールを確認して、ほっとしていた。 メールの相手は、篠山義隆。恵の恋人だ。 ここんとこ一週間ほど、毎日のように押し掛けてきた義隆にいささかうんざりしていた恵は、メールの「今日いけない …
開発部工業材料第1チーム 俗称 篠山チームのリーダー 篠山義隆は、第三リーダー達の中でも割といい加減な男だった。根は真面目で実力もあるのため、最終的な所で遅れをとったりすることはないのだが、それも周りの人々に助けられて …
9月20日。 この日に向けて、全社一斉に慌ただしい雰囲気になる。 滝本優司はその実行計画書を見ながら、小さくため息をついた。 気分が暗くなる。 毎年のこととはいえ・・・・・・・。 半期に、一度の、棚卸し?
避けられてるんだろーか。 篠山義隆はパソコンに向かいながら考え込んでいた。 会社の事務所で考える内容ではない、とは思っているのだが、ついつい手が止まってしまう。パーテーションに区切られた机だから、後ろから近づかれな …
かったりーなー…… 篠山義隆(しのやま よしたか)は事務所でパソコンに向かって報告書を作成していた。 何が嫌いかといって、この手の文書作成程嫌いな物はなかった。とにかく面倒くさいのだ。 だが、これを作らないと月度 …
両手に厚手のリストバンドを嵌めるのは、痕が付くのを浩二も厭うからだ。 その上から縛られて、雅人の腕はベッドヘッド側の板に括り付けられていた。 お仕置きだからと、課せられたのは拘束。 両手どころか、足までも別々のベ …
「……んで、あのバカはまだ帰っていないんだな」 舌打ち交じりの辛辣な言葉に、雅人は逆らうことなくコクコクと頷いた。 苛立たしげに下ろしていた前髪を掻き上げる悠人のうなじにはくっきりとキスマーク。仄かに匂う香りは、健一 …
明石雅人が恋人増山浩二と住む部屋は、普段あまり客など来ない。 チャイムが鳴れば、たいていそれぞれの兄たち。やはり恋人同士の二人は、いつも喧嘩ばかりで、何事かあるとこの家にトラブルのネタを運び込んでいた。 しかも、そ …
30万HIT記念 明石雅人が用事があって兄の部屋に来たのは、春にしては熱い日だった。 寒い日もあるからとファンヒーターがまだあるというのに、窓越しの日差しはジリジリと肌を焼く。 「暑いっ、エアコン入れよっ」 「窓を開 …
10万HIT記念 2002/7/5 最近 雅人さんの様子がおかしい……。 北川病院の整形外科部長である増山浩二は仮眠室のベッドで天井を眺めつつ、考え込んでいた。 今日は夜勤だったのだが、不思議と静かな夜で緊急車両 …