【DO-JYO-JI】(6) 我欲の章
dojyoji6 【DO-JYO-JI】 我欲の章 卓真は不機嫌だった。 そんな単語一つで言い表せば、さらにその機嫌は地を這うであろう。 触れれば切れるむき身の剣の恐ろしさは、弥栄組の者であれば誰でも知っている。
dojyoji6 【DO-JYO-JI】 我欲の章 卓真は不機嫌だった。 そんな単語一つで言い表せば、さらにその機嫌は地を這うであろう。 触れれば切れるむき身の剣の恐ろしさは、弥栄組の者であれば誰でも知っている。
dojyoji5 【DO-JYO-JI】 契約の章 ひどく怠くて、思うように身体が動かない。体内奥深くの違和感と言うにははっきりとした痛みが、意識を無理に覚醒させる。 もっと寝ていたい。 だが、怠さと痛みがそれをさ …
dojyoji4 【DO-JYO-JI】 藪蛇の章 ここのところずっと不在だった園田。今日、ようやく戻って来たと思ったら、今度は卓真の部屋に入り浸っている。 かと思ったら、また出かけて行った。 声をほとんど聞いてい …
dojyoji3 【DO-JYO-JI】 飢餓の章 卓真side すっきりした。 と思ったのも束の間、弥栄卓真は気怠い身体の奥深くで、小さくくすぶる燠火のような熱を感じ取ってしまった。 「ちっ!」 知らず零れた舌打 …
dojyoji2 【DO-JYO-JI】 遊技の章 闇の世界の城、とは思えないほどにしょうしゃな五階建てのビルの中には複数の幹部のための部屋があった。 その一つの主は今出かけていて、その留守を彼に仕える幹部達が守って …
dojyoji1 中井純にとって、園田という男は全てだった。 誰よりも尊敬し、誰よりも慕い、この身の全てを投げ出しても良いとすら思うほどに。 だが、その理由は何だ? と問われても中井自身答えること出来なかった。 …
PDFファイル:familiar sound4 31 ドアが開く音は聞こえなかったから、眠っている間に実はそこにいたのかもしれない。 目を閉じた途端に、見開くハメになった紀通は、そんなことを思いながら、呆然と目の前の …
PDFファイル:familiar sound3 21 最初の内は気になった。 了承した園田が呆然としている紀通を連れて寝室に移動した時も、やっばり拒絶するのだと思った。 なのに。 後から続いてきた中井を無視して、 …
?PDFファイル:familiar sound2 11 「や、止めろっ、そこはっ!!」 「昨夜もさんざんやったんだろう?」 「や、やってないっ、やめろっ」 どんなに否定しても、園田は聞く耳を持っていない。あっという間に …
PDFファイル:familiar sound1 疲労というものは蓄積されるんだなあ、とぼんやりとした頭で思う。 慣れた手つきでハンドルを動かし、ブレーキを踏んで。月も覗かない闇夜だというのに、街灯やら車のライトやらで …
「いつからだ?」 きつい声音にびくりと体が震える。 裕太が差し出す物を智史は見ていたくなくて、顔を背けていた。視界には入るのは、少し汚れた裕太の白い上履き。そして、智史と裕太の鞄。 その中から出した智史の教科書には …
──男には見えないくらいに可愛いね。 子供の頃から言われ続けた言葉は、さすがに最近では言われなくなっていたし、智史自身そんなことはどうでもいい、と……思っていた。 弟の誠二は、そう言われることをはっきりと拒絶してす …
「だから」 爆弾発言をした楠瀬が笑いを苦労して収めて、かがめていた腰を伸ばしながら智史を見遣る。 「俺ももっと親密な友達になりたいってこと」 くすりと笑ったその顔、だが目が真剣で思わず返す言葉を失う。 「滝本君にそれ …
開いたのは高校の卒業記念アルバムだった。 同じクラスの最前列左端に滝本智史、その後方後ろから2列目に深山裕太。 二人の距離は、指一本分の長さよりも短い。 だが、二人は卒業と同時に別れた。 写真を撮った時は、そん …
「寂しくないのか?」 深山裕太は滝本智史と始めて話をした時の事はよく覚えている。 高校一年生。 入学してから2ヶ月ほど経とうとしていた。 教室の窓際、中程の席で彼、滝本智史はいつも座って外を眺めていた。時折室内を …
上からのしかかられては、息苦しいことこの上ない。だが、同時に包み込まれるような熱はひどく心地よくて、もっと包んで欲しいと願っていた。 再び振ってきた唇が合わせられ、導き出された舌が甘噛みされる。 「…ふっ……」 鼻 …
水の流れる音がする。 それに気付いた誠二は、ようやく麓に近づいたことを実感した。 沢がそばにある場所からだと、50メートル位で車を止めた所につく。 ちらりと闇に包まれたそちらを眺める。 と、 「蛍……」
矢崎の住んでいるコーポは、誠二と同じ地区にあるにもかかわらず車で5分ほどかかる。その地区が東西に長いせいだ。 ちなみ自転車で近道すれば5分ほどなのだからどっちでいっても同じなのだが、今の足では自転車に乗ることのできな …
すでに用意されていた救急車の横で本職の消防士により応急手当を受ける。 邪魔なズボンが切り裂かれ、露わになった下肢に服の代わりに毛布が掛けられた。矢崎が誠二のヘルメットと法被を脱がせる。 さすがに手慣れた本職の手によ …
最初の内は、いくら水をかけても火勢は衰えることを知らないかに見えた。 それでも乾ききった大地がたっぷりと水を含む頃、さすがにその火勢も弱まってきたようだ。 誠二は、すでに矢崎が全身びしょぬれなのに気がついた。 他 …