【TELEPHONE注意報】
葉崎は澄んだ青空をぼんやりと見上げていた。 少し早めに来たこの場所は、ひんやりとした秋の空気をさらに冷やす噴水の細かな飛沫が飛んでくる。照りつける陽の光はまだ鋭く肌を焼くというのに、風が吹けば涼しさを通り越して寒いと …
葉崎は澄んだ青空をぼんやりと見上げていた。 少し早めに来たこの場所は、ひんやりとした秋の空気をさらに冷やす噴水の細かな飛沫が飛んでくる。照りつける陽の光はまだ鋭く肌を焼くというのに、風が吹けば涼しさを通り越して寒いと …
「葉崎くん、電話っ!」 同僚の佐野が事務所から叫んでいるのに気付いた葉崎勇一は、動かしていたフォークリフトを止めた。 「はぁっ?」 「電話よっ!」 そろそろ出荷のためにトラックが入ってくる時間。 いつにもまして出荷 …
鳥の声と車の音。 それと規則的なカチカチという音。 どこかで聞いたことのある音だと、葉崎はぼんやりと思った。 朝……なのかな? 寝ぼけ眼の目をこする。 今日は何曜日? どこかはっきりとしない頭から記憶を取り …
あ、あ、あ〜じれったいっ!! 加古川は年甲斐もなく思いっきり叫びたかった。 これが車の中だったら、二人に怒鳴りつけていたかも知れない。 だが、ここは病院の待合室。 規模は小さいとは言え、2階には病室もある個人病 …
躰中から来る痛みとぼそぼそと伝わってくる話し声に葉崎は意識を取り戻した。 不規則な振動が躰に伝わる度に、あちこちが痛む。狭苦しいソファのような所に寝かされている感触に、葉崎は瞼を開いた。 薄暗い狭い室内……。 そ …
欲望を吐き出した宮城の躰から力が抜け、ふと我に返る。 自分は何をしていた? その問いに答えるかのように、眼下に力無く横たわっている葉崎。 その葉崎の腰から下肢、そしてシーツへと広がる赤い染み。頬に伝う涙の痕。 …
なぜこの場所を選んでしまったのか……。 雅の入口で、葉崎はぼうっと佇んでいた。 中を窺うと、まだ宮城は来ていない。 場所を聞かれたとき、葉崎はただこの場所しか思いつかなかった。 あの加古川が、どういうふうに宮城 …
あの時、どうやって帰ったのか……なんて記憶はとっくの昔に消えていた。 忘れようとした事。 記憶から消し去りたいと願ったこと。 そのどれもが一つも消せないことに、何度愕然としたことか。 あれから1ヶ月が経とうとし …
部下の宮城の様子が変だと気づいてからもう2週間になる。 加古川は、目前の机に座っている宮城をずっと観察していた。 宮城が加古川の秘書になってから1年が経っていた。前任が急に辞めることになって、急遽若手の中からピック …
どうしたらいい……。 葉崎は、目覚めた途端、ひどい後悔に襲われていた。 理性が昨夜の行為が異常だと訴えている。 忘れたいほどの昨夜の痴態を、脳は不思議と覚えている。 躰から流れる残滓もひりひりと焼け付くような痛 …
「葉崎さん、大丈夫?」 宮城は目前で突っ伏していた葉崎を揺すった。 だが、ダウンしてしまった葉崎はちょっとやそっとでは目覚めそうになかった。 「3杯で駄目になるとはねえ……」 どうしよう。 ため息をつく。 店に …
再度彼から電話があったのは、金曜日の夕方、出荷のピークの時間だった。 友人から借りれた金と平日であまり金を使用しないからそんなに困っていなかったが、それでも連絡が来たことにほっとする。 「す、すみません。お待たせいた …
ひどく雨が降っていて、視界が悪い朝だった。 「何でこんな日に寝坊するんだ、オレは」 葉崎勇一は、ワイパーを使っても見づらい視界にぶつぶつと文句を言いながら車を運転していた。山間の道を通り抜ければすぐに会社なのだが、そ …