戦神の継承 前編

戦神の継承  2001-11-13 ジュネスが初めての惑星外旅行に出かけた船が海賊に襲われて、捕らえられてしまう。 始祖  忘れられた星。  あまりに遠い場所に在った故に。あまりに極悪な環境故に。  忘れられた人々。   …

アキヤからの贈り物

「あのさ……」  アキヤが言いにくそうに海人にすり寄ってきた。 「何?」  ソファに座って組んでいた足にまとわりつくアキヤを胡散臭そうに見据える海人は、ひどく冷たい声音で返す。  この署内でも知らぬ者はいないほどに熱々の …

FIRST VALENTINE DAY

「か、い、とっ」 「え?」  席について溜まっていた事務処理をこなしていた伊月海人は、背後から弾けるような明るい声で呼びかけられ、何事かと振り返った。  途端に目の前に色とりどりのリボンと包装紙に包まれた箱がいくつも差し …

闇の街から(3)

10  殴られた事は判っていた。  意識が朦朧として体を動かすことはできなかったが、自分たちが敵の手に落ちたという自覚はあった。  どうしよう……。  ぴくりとも動かない体。  働かない頭。  額を伝う流れる感触に、出血 …

闇の街から(2)

7  さっきまで熱く抱き合っていた。  アキヤの体は海人を抱きしめたくてしょうがないと叫んでいる。  なのに。  海人の表情に先ほどまでの泣き顔は見られない。  どこか冷たく感情の失った表情は、何を考えているのか感じさせ …

闇の街から(1)

第三司令部【ヘーラ】  白亜の祈り ?闇の街から? 1 「うっ……ああっ……はあっ……あぁっ…っ!」  激しい運動に肺が荒く空気を求める。  体内で蠢く雄の器官に刺激を与えるために、激しく体を動かしているせいだ。  荒い …

月明かりの下で(3)

28 「ザーン……」  のろのろとおぼつかない足取りでヴァルツはベッドへと近づいた。  病的な白さの顔色、力なく閉じられた目蓋。  横たわった姿に、弱っていることは明白だ。 「ザーンっ!」  薄い掛布に浮かぶ腕に縋る。 …

月明かりの下で(2)

?10  ジゼとザンジがどうにかこうにか城の人々に受け入れられて、ほおっと息を吐く頃には、先発隊が出発してからもう一ヶ月が経っていた。  だが、戦局は一進一退を繰り返し、進展がない。  伝書鳩を駆使した連絡は、滞ることは …

月明かりの下で(1)

第一王子(30)の幼なじみの男女三人の話。変わらぬ日々がいつまでも続きそうな、そんな憂鬱な日々が途切れた時。  長い会議の後、ケレイス国の第一王子であるヴァルツは執務室に戻ってぐたりと椅子に座り込んだ。  金にあかせて作 …

外苑の乙女 後編

11  体が酷く怠い。  柔らかな布団の上にいるというのに、触れる何もかもが鬱陶しい。  寝返りをする気にもなれないのに、動きたくて体がうずうずして、落ち着かない。怠いのに、動くしかない状態に、ミシュナは深いため息を吐い …

外苑の乙女 前編

?ケレイス王国騎士ミシュナ(19)と任務中に出会った男の話。玉の輿物語。  17の年に騎士団に入隊してようやく2年。  もうすぐ成人の儀を迎えるミシュナは、見習いの地位から脱却し、剣の腕も上がってきた。  騎士団に入って …

ガムテープ

 幹人(みきと)が風呂に入って出てくると、梱包用のガムテープが、ベッドの上に転がっていた。  そう言えば、昼間にホームセンターに行っていた竜城(たつき)が、寝室に篭もってずっと何かをしているようだった。

クレヨン

 久しぶりに立ち寄ったデパートは、ちょうど子供向けのイベントを最上階でやっているらしく、家族連れでごった返していた。  幹人は、通常ならこんなデパートに用事はない。

コンビニおにぎり

 コンビニの棚にあるいろんな種類のおにぎり。  それを眺めながら、幹人は眉間にシワを寄せて真剣に悩んでいた。 『なんでもいいから買ってこい』  と、竜城から渡された千円札二枚は財布の中にしっかりとある。  金なんていい、 …

従兄弟

 その日、飯島幹人(いいじまみきと)は暇だった。  暇だと言っても一日家にいるわけではない。金曜日だから、ちゃんと仕事をしてきている。ただ退社後のデートがドタキャンされて、何もかもやる気を失ってしまったというだけだ。

携帯電話

『電話して タツ』  そんなメールが幹人の携帯に入ったのは、連日連夜の残業で思考能力が低下している時だった。  労働基準監督署のお達しを遵守しようとしてくれる会社のお陰で、幹人はサービス残業というものは経験したことがない …