【闇夜の灯火】 6
上からのしかかられては、息苦しいことこの上ない。だが、同時に包み込まれるような熱はひどく心地よくて、もっと包んで欲しいと願っていた。 再び振ってきた唇が合わせられ、導き出された舌が甘噛みされる。 「…ふっ……」 鼻 …
上からのしかかられては、息苦しいことこの上ない。だが、同時に包み込まれるような熱はひどく心地よくて、もっと包んで欲しいと願っていた。 再び振ってきた唇が合わせられ、導き出された舌が甘噛みされる。 「…ふっ……」 鼻 …
水の流れる音がする。 それに気付いた誠二は、ようやく麓に近づいたことを実感した。 沢がそばにある場所からだと、50メートル位で車を止めた所につく。 ちらりと闇に包まれたそちらを眺める。 と、 「蛍……」
矢崎の住んでいるコーポは、誠二と同じ地区にあるにもかかわらず車で5分ほどかかる。その地区が東西に長いせいだ。 ちなみ自転車で近道すれば5分ほどなのだからどっちでいっても同じなのだが、今の足では自転車に乗ることのできな …
すでに用意されていた救急車の横で本職の消防士により応急手当を受ける。 邪魔なズボンが切り裂かれ、露わになった下肢に服の代わりに毛布が掛けられた。矢崎が誠二のヘルメットと法被を脱がせる。 さすがに手慣れた本職の手によ …
最初の内は、いくら水をかけても火勢は衰えることを知らないかに見えた。 それでも乾ききった大地がたっぷりと水を含む頃、さすがにその火勢も弱まってきたようだ。 誠二は、すでに矢崎が全身びしょぬれなのに気がついた。 他 …
なぜか嫌な予感がした。 課内直通電話が鳴った途端、滝本誠二の全身に総毛立つような不快なざわめきが湧き起こったのだ。 このままそっと事務所を抜け出そうか……などという考えは、狙い定めたようになり始めた電話に呆気なく蹴 …
「だから離せって」 「いいえ、離しません」 そう言って矢崎真は滝本誠二を羽交い締めにする。 「嫌だっているじゃないか!」 「そういう訳にいかないって、言っているじゃありませんか」
部屋に戻り、お互いのベッドに座った。 浩二がリモコンで備え付けのテレビのスイッチを入れる。 タイトルが判らない洋画が映し出された。 しばらくは無言でそれを眺めていた。 雅人はちらりと浩二に視線を送る。
裕太が出ていった後、しばらく優司はぼおっと湯面を眺めていた。 ゆらゆらと揺れる先に目を伸ばせば、水滴がついた大きな壁面いっぱいの窓。外に通じるドアがあって、どうやらそこは露天風呂になっているらしい。 優司は火照った …
宴会場を後にした誠二と矢崎真(やざき まこと)はにこやかに談笑しながら部屋へと戻った。 酔っぱらった智史、呆然としている恵、喧嘩&混乱の優司達と比べると、完全に旅行を楽しんでいるのがこの二人であった。 「じゃ、温泉で …
ホテルの部屋に入ると義隆は、思いっきり伸びをした。 恵はそれを横目で見ながら、窓際に歩み寄りカーテンを少し開けて外に視線を移した。 外は、ホテルの庭先の明かりが微かにある程度の暗さで、窓に室内の明かりが反射して自分 …
ふらふらと歩く智史に付き添い、裕太はホテルの部屋に戻った。 リゾートホテルらしく、広めの部屋にセミダブルサイズのベッドが2つ並んでいる。 その1つに智史がどさっと倒れ込んだ。 「智史さん、靴くらい脱いでくださ …
「絆」と「接待してよ」を読んでからの方がわかりやすいと思います。 車の中で、なぜかそんな会話になってしまったのか判らない。 滝本家からの帰り道、篠山義隆の車に乗せて貰って笹木秀也は空港に向かっていた。 確か、昨夜 …
古い年代物の木造建築物が、この町の役場だった。 所狭しと並べられた事務机の間をコード類が走る。 つまずかないようにテープ等で止められているが、数ヶ月に一回は誰かがひっかかって派手な音を立ててこける。こけるついでに最悪 …