【CROSSLY vol.2】
ひどく忙しかった。 基本的に年度初めが一番忙しいのがこの会社の特徴だが、今年はそれからこの夏までずっと忙しい。もう、てんてこ舞い、と言って良い程だ。 生産技術部に所属する竹井拓也もここ数日が特に酷かった。特に今日は …
ひどく忙しかった。 基本的に年度初めが一番忙しいのがこの会社の特徴だが、今年はそれからこの夏までずっと忙しい。もう、てんてこ舞い、と言って良い程だ。 生産技術部に所属する竹井拓也もここ数日が特に酷かった。特に今日は …
雨が降っているせいか、春だというのに身震いするほどの冷たさがあった。 竹井は安佐のアパートのドアの前で、数度手を上げてはまた下ろす、という動作を繰り返していた。 勢いでここまで来たものの、どうしても消えない想像が竹 …
たとえば、啓輔が口でするのと純哉が口でするのとどっちが巧いかと言うと……。 「う?ん……純哉も巧いしなあ……でも、俺だって前よりはずっと良くなっていると思うし」 今更口で云々に新鮮みは無いと思うし。 最初っから別に …
「おや、ただいま」 屈託のない笑みがどんなにくせ者か知っている。 リビングに座り込んで、帰ってきた穂波幸人を迎えた敬吾は、「おかえり」と小さく返した。 「久しぶりだな」 「そうだね」
金曜日だと言っても、二人の時間が合うことは少ない。 里山櫂は製造で交代勤務が多いし、高山彰は深夜までの残業や出張などがあるからだ。 それでも、今日は櫂は一勤だったし、高山もあまり遅くはならなかったから、待ち合わせて …
きっかけはたったひと言。 無邪気なまでのひと言が告げられたのは、残業中に取った休憩での出来事だった。 ジャパングローバル社の定時は5時。食堂の時計はすでに8時を回っており、2交代勤務者の夕食が終わった後と言うことも …
「竹井さん……」 その声は情欲がたっぷりと詰まっていて、それだけで竹井拓也は恥ずかしくなって視線を逸らした。すでに全身が朱に染まっている。 いつだって元気で、そのせいですっとぼけた失敗をしてくれる安佐の手が、腰からシ …
竹井拓也は迫ってくる安佐由隆を見上げながら、何でこんな事になったんだと呆然と安佐を見上げていた。 明日、安佐が出張に持っていく筈の書類一式が机の上に残されていたのを見つけたのは、珍しく残業していた竹井だった。電話す …
HATCHING(ハッチング) 断面線を書く作業(CAD コマンド)。 断面図の断面部に描く斜線などの模様で、そこが断面であることを示す。 材質によって、指定された模様がある事もある。