「すげぇ、奥で当たってらあっ、次の卵が降りてきてっぞ。先っぽに当たってすっげぇイイっ」
「い、いやっ、やめろぉぉ、そこっ、はっ……ぁぁぁ、やだっ、イイっ、いいよぉっ!!!」
壁に打ち付けられた体で、必死で上に這い上がろうとするけれど、男に犯されやすい高さからは逃れられない。
折り曲げらた足を抱えて、腰を突き上げるにはちょうど良い高さで、最初の男はその黒ずんだ陰茎を深く浅く収めながら、感嘆の声を上げていた。
尻の穴には御館の一言で、安物の酒瓶が突き刺さっている。陶器でできた安物の瓶は、男の手にちょうど良い太さの寸胴型だ。その太くて固い代物が、しっぽのようにぶら下がっている。
その固い塊の存在が、肉越しにも伝わってさらに男の愉悦を高めて楽しませる。
マサラの命により守られていた風南のもっとも恥じ入る場所は、今や最下層に暮らす闇の住民達に嬲られていた。
まだ卵が残っている状態で、順番にだ。
一つ産んだらそれを買った男が、卵が出てきたばかりの産道をその太いペニスで穿ち、熱を持った肉壁の蠢きを堪能する。それが、たっぷりとした射精まで続くのだ。
己の精液と粘液にまみれたペニスがずるりと引き出されれば、それに促されたかのように次の卵が降りてくる。 前の男の精液にまみれた卵は、その滑りのせいか苦もせずら降りてきて、すぐに次の男の手に産み落とされた。。
それの繰り返しだ。
中の卵を突き上げられ、行ったり来たりを繰り返す卵は、狭い場所にある前立腺を押し潰す。触れただけで射精するほどに敏感になっている上に、ごりごりと陶器と卵の殻につぶされる衝撃は、脳髄が爆発するほどの快感と痛みの双方をもたらして、風南はただ吼えて、啼いて、空達きを繰り返した。
射精できないペニスは、最初からずっと萎えていない。
まるでその位置、形状が定位置だというように、いきり立ったペニスが宙を指して揺れていた。
痛くて、苦しくて──けれど、それを上回る快感に、守らなければならなかったマサラの命のことなど一欠片も残っていない。
マサラの巨大で瘤まみれのペニスすら柔らかく喰え込むくせに、ぎゅうぎゅうときつく締め付けて波打つそこは、どんな男のペニスをも満足させた。それは、肉ビラ一枚にすら剥き出しの神経があるのかと思えるほどに敏感な風南を色欲に狂わせる。与えられる刺激によがり狂えば、きゅうきゅうと締め付けられる男達は悦び、さらに激しく穿ち、抉り、自分の快楽だけを追い求めていく。
それは、卵一個分に付き、たった一回しか使えないという制限があるせいだ。
使えるときには使え、徹底的に使え。塵一つでも使えるものは使え。
貧しい街で育った輩に骨身に染みた習性は、こんな時でも限界まで発揮された。たった一回をさっさと終えるのが惜しくて、ぎりぎりまで射精を我慢するのだ。けれど、我慢するけど、止められない。
そんなジレンマに陥ったあげくの射精は、男の身がしばらく恍惚として動けないほどの快感で、次の輩に押しのけられてようやく交替できるほどだった。
そうなると、二度目が欲しくなっていく。
さらに、風南の女陰から溢れる愛液は、男達を誘う淫らな香りを放つ。それに晒された男達は、どんなに疲れ果てていても再び勃起させて、また犯したくて堪らなくなった。
そんな男達がたくさんいた。
なけなしの財をはたいて、自分の番が来るのを待ち続けて、その待つ間にも飢えを蓄積し、ぎらぎらとした欲望だけの存在になって、それでなくても薄い理性を。完璧に飛ばしたただの獣になっていくのだ。
そんな荒々しい猛獣に襲われた風南は、内臓に受ける衝撃に涙しながらも、あえかな嬌声を上げ、次をもっと
と、強請っている。
もう自分がいくら儲けているか判っていない。
その体に、卵が買えない者達が、我先にと乳代の金を払っては牛のような乳房に食いついた。
雌鳥でなくなれば乳牛になれば良い。
御館の言葉はそうだったけれど、見えない卵を買い続ける客がいる限り、風南は雌鳥であって乳牛で。その両方から伝わる快感に、その嬌声はさらに激しく、身悶え痙攣する間隔が短くなった。
息が続く限り吸い上げる力は強くて、乳腺ですら快感の源である風南に、ひどく長く続く快感を与える。取らない痙攣は、体内を伝わり肉の壁を通じて直に男達のペニスに伝えた。その小刻みな痙攣は、締め付ける力と相まって、射精とは別の妙なる快感を与えていく。
快感を得れば得るほど、男達の膨れあがった肉棒の動きが激しくなって、肉を抉る。
溢れた粘液が、尻からも女陰からも、鈴口からも流れて落ちた。使いこまれた薄汚い床に、ぽたりと落ちて糸を引いて、それが踊って他の糸に絡まる。
「あぁぁっ、やぁぁぁ!……っくっ、ぅぅぅっ」
欲に捕らわれた獣の荒い呼吸音にじゅくじゅくと泡立ち溢れる水音が混じる。興奮に上がった体温に汗が蒸発し、酒場の中は異様な熱気に包まれていた。
「いや……ぁぁぁ……あはぁっ! ────ひぎぃぃイイ、いくぅぅぅっ」
数度目からの乾いた絶頂に、風南の見開かれた瞳がすうっと曇り始めた。
悲痛な声がなくなり、甘く強請る声か、快感に浸った喘ぎ声ばかりが響き渡る。
繰り返される絶頂に、射精できない苦しみも加わって、何もかもがめちゃくちゃだ。そのめちゃくちゃの中に落ち込んで、浮上して、また落ち込んで。大渦の中でもみくちゃにされたと思えば、竜巻に巻き上げられる。そんな繰り返しに、理性など保てるはずもなく、体も与えられる刺激だけしか感じられなくなる。
「あ、あはぁぁぁ……イイっ、あんぁぁぁ、もっとぉ……もっと、欲し──っ」
客はまだたくさんいる。
見えない卵をさも産まれたように手に取った客が、風南の体にむしゃぶりついて。
「んあっ」
遠慮仮借無い突き上げに、喉を晒してあえぐばかりだ。
ゴトン……。
弛緩した尻から落ちた張り型の代わりに、男が一人尻の下に潜り込む。
「ひぃぃ、痛ぁ……、あぁぁ」
翼の中から腕が引き出され、体を戒めていた楔が引き抜かれる。
解放された体は、そのまま背後に回った男の上へと落とされた。
「ひぎぃぃぃぃっ!」
俯せで背後から貫かれた体に、卵を買った男のペニスが穿たれる。生身の二本のペニスは、それぞれ持ち主が違うが故にばらばらに動きまくって、次の刺激が読めない。
胸には二人の口が吸い付いて、高く掲げられた足も男達の手が淫靡に撫でさする。一度に五人から六人もの男達に弄ばれ、ただ、ただ、男の欲を受け入れて。
麻痺するほど繰り返されたはずの刺激は、それでも快感を生み続けてしまう。そんな体に受ける陵辱は、はたから見れば残虐としか言いようがない。だが、意識が飛んでしまった風南には、それがどんなに長い行為でも、一瞬一瞬しか自覚ができない。
「あぁぁぁ、はあぁぁぁっ! ふぁぁぁぁぁっ」
もう意味のある言葉は何も出てこない。
獣のごとく吠え、喘ぎ、快楽だけを貪り続けて、狂いまくっていた。
「よろしいので?」
欲に狂った風南のその凄まじさに、酒場の主人がちらりと御館を見やる。
「マサラ様の許し無く、あそこまでしてしまって」
「かまわんさ、どうせ妊娠する訳じゃねぇし。こんなとこに二度と来たくないと思わせれば良いのさ。どうもあの奴隷は、マサラしか女陰を使わねぇのは、自分がお気に入りだと思っているところがあるらしくてな。そんな思い上がりも壊してやれっていったのはあいつだし。あっちでそれをやったら、自分も自分もとえこひいきを嫌うお貴族様達が群がってくっけど、ここなら今回限りで住む。まあそんなところがあいつの……マサラのほんとの目的なんだから」
もう随意分長いこと呼び捨てていなかった懐かしい友の名を口にして、御館は喉の奥を鳴らした。
「くっくっ、あいつは昔からお気に入りは徹底的に虐めないと気が済まない奴だ。あの兄弟全員その傾向があるけどな。あいつもご多分に漏れず……しかも、それで靡いてくると腹が立つし、だからと言って他に行かれると、かわいさ余って憎さ100倍で、もっと虐めるんだよ。成長して王子の自覚が出たら落ち着いてたけどよ、やっぱ人の本性ってのはかわらねぇや」
そうでなければ、女しか興味がなかったはずの友が、性奴隷だからと行ってここまで改造して遊びまくるはずがない。
「ま……俺に手間をかけさせたんだ。この程度の結果は織り込み済みだろ。てことで、予想通りに、どろどろの精液まみれの体そのまんまに返してやるよ。その後のことは知ったこっちゃねえや……」
汚せば良いと言った手前、平気な顔をして受け取るだろうけれど。他人がいなくなれば、その顔はあっという間に変化するだろう。
大事な大事なお気に入りの、一番のお気に入りの場所から流れ出る他人の小汚い精液を目にしたマサラの様子を想像して、口角を上げ声を殺して嗤い始めた。
穏やかな医者の顔が一瞬で怒りに満ちて、その瞳が残虐な闇に染まるのまでが容易に想像できて、もう嗤うしかない。
その怒りの矛先は当然自分ではなくて風南なのだ。
「20時がここでの終了時間だ。時間になったら、上の口も下の口も、三カ所──いや、チンポの穴も全部しっかりと塞いで、裸のまんま荷馬車にでも縛り付けて返してやれ」
「一般人の目に晒してよろしいので?」
「今日は闇月夜、忌むべき夜に出ている輩は俺達みてぇな闇夜に住む住民ばかりだ。その辺の乞食どもが興味を示したら突っ込ませてやって良いぜ。移動中に犯しちゃならねぇって話は聞いてねえし。荷馬車を止めなきゃ何をしても良い」
「かしこまりました。それでは、準備いたします」
「朝までに着けば良いさ。急いでいったところで、どうせあいつは寝ているだろうし」
「はい」
「渡したらとっとと帰って来いよ。褒美、とか言われてぐずぐずしてっと、物騒なお仕置きに巻き込まれるぜ」
「重々承知しておりますよ」
マサラと御館の繋ぎを取っていて、二人の性格をよく知っている主人が、口を歪めながら肩を竦めて返した。
「こっちのチンポが擦り切れるほど使われるのは、もうこの年には辛いですからねぇ……」
齢50にもなっていない主人の、けれど、ずいぶんとしみじみとした言葉に、御館が声を上げて嗤う。
「違いねぇ、俺もごめんだ」
もう二度と、そんな目に遭いたくないと、二人は頷き遭った。
【了】