【風南の仕事 乳売り娘】

【風南の仕事 乳売り娘】

「少し、お金を儲けることの大変さを学ぶべきだね、カザナは」
 高価な食材や食器を無駄にしてしまった風南を見下ろして、マサラが冷たく言い放った。
 大切な客に出すために準備していた物だけど、それまでさんざん犯されて足腰に力が入らなかったせいで落としてしまったのだ。
 だが、そんなことを無視してマサラが言い放つ。
「と言っても、おまえが持っている物で売れそうなものと言ったら……その乳と卵くらいか……。だったら、まずはその乳でも売ってこい」
 そう言われた次の日、何も説明がないままに風南が連れていかれたのは、ラカン城下の西の外れにあるグラネーデと呼ばれる地区だった。


 不躾な視線が、頭から覆い被さった布の奥を探ってくる。
 あけすけな好奇の視線に風南の全身が怖気に震え、いますぐにでもこの場を逃げ出したくなった。震える指が強く布の端を掴み、顔をさらに隠す。その拍子に、布の端からほつれた髪が一房流れ落ちた。
 男の視線が僅かに眇められる。
 こんな裏通りでも差し込む陽光を受けて、銀に光る髪。
 視線がさらに強くなって、男の口元に下卑た笑みが浮かんだ。
「はは?ん、あんたか」
 何かに思い立ったように軽く頷き、警戒していた表情が消える。
「さっき、すげぇおもしれぇもん見つけたってダチが言ってたけどよぉ」
 その言葉に、ぎくりと全身が震えた。
 それは、さっきようやく手に入れた金の持ち主のことか。
「この辺って聞いてきたけどよぉ。なあ、あんた。こんなふうに隠れてて商売になんのか?」
 その言葉に、布を掴んでいた指が強張り白くなっていく。
 一人目の客を得てから、ずっと逃げていた。
 見られたくない、こんな自分を。
 最近ではもう慣れたと思っていたけれど、あそこまであからさまな嘲笑を受けたとたんに、心が悲鳴を上げた。
 こんな姿を晒したくない。
 それに、あんな感覚を味わいたくなかった。まだ二人目だが、これ以上続ければ意識が保てなくなる。
 もう、──触られたくない。
 そんな渇望に、身体が勝手に男から離れようとする。
 けれど。
「おい」
 布の狭間から覗いた怯えた視線が、男の好色な視線と絡む。
「金いるんだろ、あんた。それとももう売り切れか?」
 胸を隠す布を突き破りそうなほどに強い視線が、その言葉が、怯えの走る身体を縛り付けた。
「あ……」
 金。
「金がいるから売ってんだろ? それ」
 金を貯めないと……。
 どうして自分がこんなところにいるのか。
 それを思い出して、風南はくしゃりと顔を歪めた。
 ためらってはダメなのだ。
 怯えていては、いつまで経ってもここにいなければならない。
 言われた額が貯まらないと迎えは無い。そのうえ、預け先にも捨てられる。
 捨てられた奴隷の行く末は、夢に見るほどに教え込まれていた。
 その恐怖が、風南の口を動かす。
「……買ってください……」
 小さな掠れた声音に、男が首を傾げた。
「聞こえねぇなあ、何だって?」
 なぜ風南がここにいるのか判っている風だったのに、男は容赦なく風南を責め立てる。
「商売ってのは、大きな声で客寄せしねぇとダメなんだぜ」
 浮かぶ嘲笑に風南は諦めたように唇を噛み締めて、再度口を開いた。
「ち、乳を、買ってくださいっ。一吸い100エニーで、乳を買ってくださいっ」
 貯めなければならない額は1万エニー。
 それだけの額が夕方までに用意できなければ、風南の迎えは来ない。
 預けられた酒場で寝泊まりし続けなければならないのだ。しかも、その酒場では預かり賃としてその日の夕方に1日1万エニーを徴収される約束になっていて、それは風南が稼いだ額から差し引かれる。
 そのため、初日である今日1日で終わらせるためには、最低2万エニーは貯めなければならないのだ。
 それなのに、もう昼だというのに風南の懐には、まだ100エニーしか入っていない。
 いくら、このあたりの人出は夜でないと増えないと言え、選ばなければ客はいる。
 いるけれど。
「へぇ、乳ねぇ。あいにく牛乳は苦手でよお」
 無精ひげが顔中を覆い、衣服もどこか饐えた臭いがする男が、ニヤニヤと嗤っている。
 初めての客は、ひどいアルコール臭がしていた。嫌で嫌で……けれど、意を決して乳を吸わせて。
 嫌でも味わってしまう快感の声が抑えられなかった。自分でも嫌になるほどの嬌声を上げたことを、あんな男にからかわれたことがひどい屈辱だった。
 あの衝撃と屈辱を思い出せば思い出すほど、ためらいが生まれる。今でもまだ吸われた側の乳はじんじんと疼いている。
 薄い布きれで覆われた股間は、快感で溢れ出した淫液で湿ってしまったままだ。
 それなのに、さっきの男より力のありそうなこの男に吸われたら。
 ごくりと喉が鳴る。同時に、全身がぶるりと震えた。
 意志とは裏腹に身体が快感を期待している。その事実に、風南は力無く視線を落とした。
 この地区は、どこに行っても昼間から飲んだくれて道ばたで寝入っている輩や、ばくちに興じている輪があった。
 性奴とはいえ貴族や貴族に仕える人々に扱われていた元王子の風南にとって、過去に接したことの無い連中ばかりなのだ。
 貴族や商売人で、場所もマサラの屋敷だったから、それなりの格好と振る舞いをしていた。
 だが、ここの連中は風南の美的感覚とは相容れない。そのせいで背筋に走る嫌悪をなんとか押さえ込んで、風南は縋るように男を見つめた。
 買って貰わなければ、こんな事が何日も続く。それを思えば、ためらってなどいられない。
「お、お願い……です。乳を、買ってください」
「だから、牛乳は苦手だって」
「わ、私の乳です。美味しいです」
「ほお……あんたの乳?」
「はい……」
 こくりと頷いて、震える指に力を込める。
 ためらってはいられない。
 ためらっては……ダメなのだ。
「どうか、買ってください。一吸い……100エニーです」
 一人一吸いとして200人は必要な金額に、目眩がしそうなほど。もっと高値で言いたいがを一吸い100エニーはマサラが決めた額で、風南には変えられない。
 屈辱に震えるままに呟いて、ぎこちなく腕を左右に引いた。
 頭部と胸を隠していた布が、腰から下にはらりと垂れ下がる。
「ほ、おぉ……」
 奥まった路地の中に浮かび上がった白い膨らみに、男が大きく目を見開いた。
 話は聞いていたけれど、詳しくは知らなかったのだろう。
「でけぇ……」
 感嘆の声が何のこと指すのか。
 先の男にも同じ事を言われて嗤われた風南の顔が歪む。
 豊かな乳房は、確かに並の女性より大きい。だが、それ以上に大きいのは、乳首だ。形の良い乳房から伸びる牛の乳のように長く赤黒い乳首。その先端は滲み出る白い乳で濡れそぼっていた。
 風南の可愛い容姿と形の良い乳房と比べても明らかに異形で目立つ乳首がふるふると震えている。
「牛女か」
 ごくりと唾液を飲み下す音と共にかけられた言葉は、耳にたこができるほど聞かされ続けてきたけれど。
「う、牛より、美味しい……乳を出します」
 言いたくない言葉に、舌がもつれる。
 牛女と言われたら、そう言え、と固く言いつけられていた。
 ここで1万エニー稼げ、と命令し放置した風南の飼い主マサラにだ。
 牛より劣ると思われても嫌だろう、と嗤われながらの言いつけに、風南は逆らえない。
 いっそのこと牛だと言って乳を売る方が良いかもしれないとすら思う。
「どうか……お吸いください」
 たわわな乳房を手のひらで支え、差し出す。
「100エニーで、一吸いできます」
 その言葉の意味に、男の瞳が好色に染まった。
 アルコールに酔ったような瞳に明らかに浮かんだ光に、風南の背に怯えが走った。
 さっきの男とは違う。かなり切れる男だと本能が警戒するけれど。
「じゃ、もらおうか」
 その指からピンと100エニー硬貨が弾けて飛ぶ。それが地面に落ちるか落ちないか。硬貨の行き先に視線を向けた風南が逃げをうつより早く、男の指が乳房にかかった。
「ひ、ひぐっ」
 溜まりに溜まって固くなるほどに張り詰めた乳房に、無骨な指先がきつく食い込む。
 それだけで乳首からぴゅうぴゅうと噴き出す乳を大きく開いた口で受け止めながら、男は一気に左の乳にむしゃぶりついた。
「あ、っ、ひぃぃぃぃ!」
 ものすごい勢いで、乳が乳首から吸い出される。
 目の前が白く爆ぜ、全身が一気に強張った。
 乳腺を勢いよく移動する乳の刺激に、敏感な性感帯にさせられたそれが激しく反応したのだ。激しい快感が、何度も何度も全身に広がる。最初の男より力が強い。その分、刺激が強い。
 息が続く限り、男はごくごくと何度も吸い続けた。
 一吸いとは息が続く限りという意味だが、肺活量が達者なのか、男の吸い付きは弱まるどころかますます強くなる。
「あ、あぁぁ、やぁぁぁっ」
 左の乳に吸い付かれたまま、快感一色に染まった身体を弓なりに仰け反らせた。
 ガクガクと足腰が震えて、その場に崩れ落ちそうになるが、男に掴まれた乳房によって支えられてしまう。その刺激にすら快感を感じ、視界が眩んだ。
 絶叫に近い嬌声が、いつまでも止まらなかった。


「ふう」
 息が続かなくなった男の口が離れ、荒い吐息が赤く熟れた乳首をくすぐった。手が離れたとたんに、がくりと身体が崩れ落ちる。
「うめぇ」
 ぐいっと顎に垂れた乳を拭った男が、にやりと口角を上げた。
 その淫猥な視線を向けた先は、快感を隠せない表情で全身を小刻みに震わせている風南だ。
 薄い布を巻き付けたような服から覗く白い肌は、上気して薄桃色に染まっている。溢れ出た涙が瞳を潤ませ、その空色の瞳の焦点があっていない。口の端からは涎が垂れて、喉を伝っていた。
「にしても……、なんてぇ淫乱な。乳を吸われて達きやがった」
 吸い付かれてさらに熟した乳首は、涎と溢れ出た乳でぬらぬらと照らされていた。
 その乳首に銀糸のような髪が絡みついている。それを辿っていけば、耳朶には金の紋章がぶら下がってた。
 紋章の意味はこの地区では知らない者はいない。
 すでに先の男にそれを聞いていた男は、そのことには驚きはしなかった。それ以上に白い肌に銀の髪、空色の瞳に目を奪われる。
 その3つを兼ね備える者がどういう存在か、男は良く知っていた。
 マサラが風南を置いていったのは、御館(おやかた)と呼ばれる絶対的な権力を持つ男に率いられている地区で、法に触れる仕事を生業としている者が多く住み着いている。
 王家が利用価値が有ると判断し、いくつかの犯罪は手を染めないことを条件に交わされた契約によって、この地区は治外法権扱いだ。
 一般市民は絶対に立ち入らないように言われていたし、周囲には高い塀が張り巡らせられている。その西の壁は、城下の外に通じていて、地区に棲まう者はそこから自由に地区の外と出入りしていた。
 その地区の者であれば、リジンの民の話はいやという程良く知っている。キスカがばらまいている調教ビデオも、必ず手に入れられる場所だ。
 マサラとて、裏取引でしか手に入らない薬を手に入れるために、ここを利用している。
 そんな中に置き去りにされた風南がどんな目に遭うか、マサラは良く知っている。この地区の事を良く知っているからこそ、風南をここに置いていったのだ。
「てめぇのご主人様は、ずいぶん酷なヤツだなぁ。いくら御館様の印をつけてるからってよぉ」
 主人の庇護下に無い奴隷は、手に入れた者がどんなふうに扱っても良い。
 以前、主人から逃げ出してこの地区に辿り着いた奴隷がいた。奴隷にしてみれば、治外法権のこの地区なら助かるとでも思ったのだろうが、奴隷にされる仕組みがはっきりとしているこの国では、ここでも奴隷の扱いは一緒だ。
 たとえ、それが昔の仲間であっても庇うことはなく、今では地区の共有の奴隷として飼われている。
 その奴隷を捕まえた時にさんざんいたぶったことのある男は、ニヤニヤと嗤いながら風南の布の端を掴み、力いっぱいに引き裂いた。
 耳障りな音と共に、布がへその下まで引き裂かれたところで。
「げぇ」
 思わずと言ったふうに男が押し殺した悲鳴を上げた。
 へその上に燦然と輝く大きな紋章。
 腰に巻かれた黒い革帯。そこに止め付けられた金細工が示すのは、この地区で絶対の存在である「御館」の紋章だ。
 しかも紋章の中央に埋め込まれている石の色が黄。
 それは、御館が決めた規則の一つで、紋章の石の色が黄色の場合は、それを身につけている者に必要以上の傷を負わせてはならないことを示している。
「なんでこんなところに。これじゃあ、気がつかねぇじゃねぇか」
 思わず耳に飾られた紋章を見やると、そこにあるのは緑の石だ。御館の庇護下にあることを示すもので、破壊してはならないものにつけられる。付けられているのはたいてい物だ。地区で飼われている奴隷にも付けられている。破壊さえしなければたいていの事は許されている。奴隷であれば、その肉体や精神を破壊しなければ、どう扱っても良いということになる。
 そんな単純な意味の緑よりも、解釈に困る黄色。
 必要以上の傷──という決まり事はたいそう曖昧で、地区の中でも解釈が分かれるところだ。
 その辺りの曖昧さを御館はわざと残しているという噂だ。どんな解釈でもできるように、胸先三寸で決定できるように。
 結局、基本的には──ふれない、苛めない、傷つけない、殺さない──というような保護を意味として取り扱われている。
 けれど。
「……」
 男の耳にやけに大きく喉が鳴る音が響いた。
 へそ下まで破れた布から、淡く銀に光る茂みが覗いている。
 壊さないし、傷つけない、だが……。
「そういやあんた、乳を売るんだよな。だったら、もっと客が近寄るようにしてやるよ」
 だが、乳を売っているのだから、その事を手伝うのはかまわないはず。
「ひ、ひぃっ」
 男の無骨な手が、腰にまとわりついていた布を強引に引き剥がすと、身体がくるりとひっくり返りながら倒れ伏した。
 とっさに手を突いた拍子に腰が高く浮く。
「なっ!」
 その背後で、男が大きく息を飲んだ。
 さっきとは別の意味の驚愕に、まじまじとそれを見つめる。
「お、男? いや……」
 ぬらぬらと濡れた大腿の間からのぞくいきり立った肉棒。黒革に締め付けられて赤黒くなったそれは、男ならば誰でも持っている物だ。それが、豊かな乳房を持つ風南の股間にも備わっていた。しかもぱっくりと開いた女性器もちゃんとある。
 さらに、黒革は肉棒と陰嚢を締め付けているだけではなかった。革は紐となって股間へと渡っていた。
 その革紐が菱形の金具とその中央にある棒の尻を固定している。
 菱形の前後の角は革紐が、左右の角は真っ赤に熟して濡れそぼった肉の花びらにあるリングピアスで固定され、大きく開かされていた。さらに中央にあるべき穴には、風南自身の肉棒より太い棒が突き刺さっていて底の部分にある輪に革紐が通っていて、きつく押さえつけている。そのきつさと言ったら、僅かに抜ける余裕すらないようだ。
 その後の革紐は今度は2本に別れて、左右の大腿へと回されて腰の革帯に繋がっている。その紐が固定された場所に、例の紋章があった。
 その様子をじっくりと観察した男が、ふっと片頬を弛めた。
「……なるほど、この紋章の意味は、そういう意味か」
 したり顔で頷き、愉しそうにほくそ笑む。
 紋章が傷つけてはならないと言っているのは、この革帯と紐のことなのだ。
 外すことのできないように鍵までしてあるこれを外すには、鍵を壊すか革紐を切るか、だが、傷つけてはならない紋章がある限りそんなことはできない。
 本体の紋章は緑だから、壊れないように扱えば良いということだ。
「まあ、尻穴がつかえりゃあ、この辺の奴らは十分だからな」
「あ、ああっ」
 二手に分かれた革紐のせいで、尻の挾間が開いていた。そこに節くれた指が一気に置くまで入り込む。
 慎ましく閉じてはいるけれど、一目で使い込まれた穴だと気が付いた。
 故に遠慮もなく差し込んだ2本の指を、狙い違わず軽々と飲み込んだ穴はたいそう熱い上に、とろとろにとろけていた。しかも、指にまとわりつくほどにたっぷりと濡れているのは、潤滑油か何かだ。
「男か、女か、なんて、ここらの連中は関係ねえんだよ。穴さえあれば、愉しめるからな」
 ぐにぐにと乱暴に折り曲げて探れば、面白いように身体がびくびくと跳ねていた。
「ひ、いあぁぁ、ふぅ」
 明らかに感じている、しかもたいそう敏感な様子に男がますます笑みを深くする。
「なあ、ここはいくらだ?」
「あ、はぅ、な──何ぃ……」
「ここはいくらで使えるんだ?」
 指を増やしても問題ない。4本の指が付け根まで入り込み、ずぼずぼと激しく抽挿する。
 特に、指が届く奥の腹側にあるしこりを刺激すると、面白いように身体が跳ね、淫らな嬌声が迸った。
 白い背中が妖しく身悶え、汗が滲んだ肌は、手のひらが吸い付くようの質感だ。
 快感に狂い髪を振り乱す様は、淫魔のように男を誘う。
 あまりにイヤらしい痴態のせいか、それとも立ちこめる淫猥な匂いに酔ったのか、男の視界がだんだんと赤く染まっていく。昨夜女と愉しんだばかりの肉棒が、服の下で痛いほどに張り詰めていた。
「あ、あ、ん、そこは……そこは、じ、時価で……、お、客さ……がお、決めくださ、ぁぁ」
 その言葉に、男の目が大きく見開かれ、すぐに愉しそうに細められた。
 人並み外れて敏感な前立腺を責め立ていられる風南は、もうすでに頭が思うように働かない。
 乳の値段を決められた時、それ以外の場所は何をされても時価だ──と言われていたのだ。それをそのまま伝えただけ。
「そうか、時価か……。なら、客はいくらでも集まるぜ。俺に任せな」
 その前に、といそいそと取り出した肉棒を、男は堪えきれない衝動のままに風南の中に突き入れた。
「ひぁぁ!」
 指で苛められて腫れかけた場所を、熱い肉棒が一気に擦り上げる。
 がくんがくんと大きく揺れた身体を背後から男が抱きしめた。
 視線の先で風南の鈴口から涎のように粘液が溢れ出している。大腿は女陰から溢れた淫猥な匂いがする液で膝まで濡れそぼっていた。
 肉棒や陰嚢の締め付けにより射精ができない痛みが、風南を襲っていた。なのに、快感は尽きることなく、風南を責め立て、乳首からびゅうっと乳が勢いよく噴き出す。
「おお、もったいねぇ。すぐに客を呼ばねぇと」
 そういいながら、男は風南を背後から抱え上げた。
「この先に、乳を買ってくれそうな客がいっぱいいる店がある。そこで宣伝してやるよ」
「あ、んあぁっ、深ぁっ、ぁぁ──」
 膝裏の両手と男の肉棒の突き上げで支えられた身体から、溢れ出したありとあらゆる体液が、重力に沿って股間に集まり、ポタポタと滴を地面に落ちていく。
 くっきり残った痕は、存在を忘れられた100エニー硬貨を起点として、風南が連れて行かれた店への淫靡な道しるべとなっていた。

【了】