【風南の仕事 接待編】

【風南の仕事 接待編】

 カザナが性奴となってから、一年が経った。
 その間カザナを犯したペニスの数は、一年の日数より多い。産み落とした卵や絞り出した乳を味わった人間も、数限りない。
 相変わらず膣だけはマサラのものだが、その他の部分は誰もが利用し、誰もが遊ぶ場所だった。
 それが、性奴になったカザナの仕事だった。


 身体の奥を激しく突き上げられて、視界がぶれ、頬を濡らした滴が飛び散った。
「ひぃ、ぁ──っ、ひやゃぁぁぁぁっ!」
 ふわりと浮いた身体が重力に引っ張られて勢いよく落ちる。そのたびに、広い室内に悲鳴が響き渡った。
 乳房から出る女性ホルモンのせいで性奴に落ちてからよりいっそう丸みを帯びた身体がぶるりと震え、天上に向けられた瞳と口からだらりと滴が垂れ流れる。
「あ……あっ……」
 反動で揺れ続ける豊かな乳房が、水鉄砲のように白い乳を噴き出していた。
 その下の細い腰を掴む無骨な指には剣を扱う者特有のタコができている。力強い指が食い込んだ場所は、カザナの肌を赤く、そして青く鬱血させ、淫らな模様を作り上げていた。
「あ、はぁっぁぁぁっ──!
 喉が枯れ始めていた。
 女とは明らかに違う平坦な、けれどどこか丸みを帯びた尻の柔らかな肉に食い込むたくましい男の大腿。
 それが二つの肉の狭間を押し広げ、男の快楽の源をより深く充血しきった肉壺の中に押し込む役目もしていた。
 ぬらぬらと粘液にまみれて光っているどす黒い肉棒は、どんなに蹂躙されても処女のようなきつさを失わないカザナの肉壺を難なく切り開く硬度を持っていた。
 それこそ持ち上げたカザナの身体を自らの肉棒に叩きつけるようにしても、決して負けることはないほどに。
 ふわりと感じる浮遊感と腰に食い込む指の痛み。
 それを自覚して見開いた目が、刹那ぶれる。
 肉が肉を打つ音が耳に届くより先に、腸壁が破られるような痛みと電撃を浴びたような快感がカザナを襲う。目の前が真っ赤に染まり、ふうっと意識が遠のいた。
 だが、休む間もなくまた浮遊感に襲われる。
「あ、っ、あああ──、やあっ」
 今度は浮かんだまま激しく身体を揺すられて、カザナの二つの肉壺に挟まれた前立腺の塊を、ごりごりと擦り上げた。
「や、やめ、あっひぃぃぃ──っ」
 さらに激しく痛みと紙一重の快楽の渦に、唯一カザナが男で有ることを示すペニスが、だらだらと涎を流しながら喘ぐ。
 そのペニスは根元で陰嚢もろともに絶妙な力加減で括られて鬱血し、赤黒く変色している。
 いつも枷が嵌められているそこは、接客が始まる前に外されたが、すぐにこの客の手によって括られた。それから、一度も緩められていない。たらりと淫らな淫液を僅かに零すことはできても、陰嚢に溜まりに溜まった精液は、決して出て行かないのだ。
「もう……もう、やめ──ひぎゃぁっ」
 どすんと勢いよく身体が落ち、口の端から飲み込めない涎が弾け飛び、床にぼたぼたと跳ね落ちた。
 その周りには、もう何の液か判らない液溜まりがいくつもできあがっている。
「お、ねが……、もう……」
 制止が言葉になる前に身体が浮いていく。
 腰を掴んだ男が疲れれば、今度は傍らに控えていた屈強な二人の男達が、両脇と膝裏に手を添えて持ち上げていく。
 尻を真下にし、限界まで押し広げられたアナル。
 何も邪魔するものもなく、一気に根元まで貫かれる。
 極太の肉の楔はさらに硬度を増して、カザナのアナルをさらに激しく貪った。



 疲れを知らない男達の腕が、またカザナの身体を持ち上げる。
「ゆる……して……、もう……」
 前面の壁には大きな鏡。
 隠すこともできない股間を映し出し、カザナは泣き濡れた瞳でうつろに懇願した。
 ひくひくと喘ぐ赤く充血した花びらから、たらたらと淫欲の香りを持つ液体が流れ出している。
 どんな艶やかな花よりも薫り高い蜜であるそれは、男を欲情させる成分が含まれていた。どんなに清廉潔白な男であろうとどう猛な野獣にしてしまう最高の媚薬だ。それがカザナの会陰を渡り、ねっとりと男の極太のペニスに絡みついて床にまで垂れ落ちていた。
 その蜜に犯された男達は、いつも徹底的にカザナをいたぶり、犯し尽くす。
 精力増強の効果もある──と、客達にも評判の蜜は、いたぶられるほど激しく溢れるのだから。
「お、お願……しま…すっ、もう……もう……おあぁ」
「私はまだ満足しないのでね」
 僅かに欲情を帯びた、けれどまだまだ余裕のある低い声音が、冷酷にカザナの懇願を切り捨てた。
 白髪の交じった、両脇に立つ男達に勝るとも劣らない体格をした壮年の男。
 鍛え上げられた腕は、カザナの細い腰を支えて持ち上げようとする。
 それに合わせて、カザナの身体が再び宙に浮いた。
「あ、っ……いやっ、──もう──っ」
「まだだ」
 くっと男の口元が歪む。──と。
「ぎゃあぁぁっ」
 ひときわ甲高い悲鳴が、室内に響き渡った。
 両脇の男が手を離すと同時に、強くカザナの肩を押しつけたのだ。自重のみならず、押される力が加わった衝撃は、今までの比では無い。
 がくがくと震える身体。
 白目を剥いたカザナの上体がゆらゆらと揺れる。
 ぷくりとペニスの先に白濁が混じった滴が浮かび、茎を流れ落ちた。
「おやおや、ずいぶんと嬉しかったようだね」
 カザナの様子をそう評して、男は太い指で乱暴にカザナの腰を揺らした。同時に根元まで突き刺さった男のペニスが、腰の動きで突き上げられる。
「……あっ……あっ……」
 意識を失っているはずのカザナの喉から悲鳴が漏れた。
 もう何度もこうやって意識を失っては、覚醒させられる。
 今は亡き先王の年の離れた弟であるセレイムーン伯爵は、軍籍に身を置いている。それも、実戦部隊を率いている長としてだ。自ら剣を取り戦う伯爵の体力は並ではない。しかも、丈夫で太い、使い方を良く心得ている逸物を持っていた。
「伯爵、そろそろ出てきそうです」
 傍らの男──この日のために伯爵が連れてきた自慢の部下ゴウガが嗤いながら、持ち上げたカザナの股間を指さした。
 ペニスが突き刺さったアナルの前──たらたらと濡れて光る膣口の中に白いものが見え隠れしている。
「そうかい。だが、まだ私はもの足りないね」
「かしこまりました」
「ひ、ひっぃっ!」
 太い指が三本まとめて膣口に入って、白い塊を──ようやく出てきた卵を、奥深くへと押し戻した。
「や、やめえっ──ひぐぅ」
 カザナを苦しめていたもう一つの原因が、また奥深くに埋められる。
 産卵を強要され、ようやく出始めてすぐに始まった上下運動が邪魔して、卵はいつまで経っても降りていなかった。
 カザナの膣と直腸の間には毎日のように刺激を受け続けて敏感になり、しかもマサラに絶妙な位置に置かれている前立腺がある。少しでも太いものがあれば敏感に反応する前立腺が、卵と伯爵のペニスで何度も、しかも激しく擦られているのだ。
「もう……もう止めて……、もう……ひぃぃぃっ」
 常ならば、もう枯れ果てるほどに達っている。
 ぐたりとしたカザナの胸を、もう一人の男──ゲインがその力強い指で掴み上げた。
 もう一つのカザナの性感帯であるそれは、掴み安い長く大きな乳首を持っている。全体をぬらぬらと光らせている乳房は、今はもうひどく柔らかい。
 揉まれるだけでペニスがそそり立ってしまうほどの乳房と乳を出すだけで達ってしまうほどに敏感な乳腺。
 それを徹底的に嬲られたのは、接客に入ってすぐのこと。
 空に近いほどになるまで、つぶされるほどの力で搾乳され続け、泣き叫んで悲鳴を上げ続けたカザナの尻は、その間ずっと伯爵の極太の逸物に銜えさせられていた。
「お前の乳は、尻に何かを挟んでいないとダメらしいからな」
 そう言いながら、もう何度体内に射精されただろう。
 ぐちゃぐちゃと鳴り響く激しい水音の一つはそれだ。腰を動かされるたびに響き、たらたらと大腿を白く汚すほどに溢れていた。
 僅かな休息すらも許されずに、マサラによって施された性感帯全てを徹底的に嬲られる。
「やあっ──ああっ──っ! んあぁぁっ……やぁめぇ──っ、ぎゃぁぁぁぁっ」
 虚ろに開かれた瞳に、鏡の中のカザナ自身が写っていた。
 悲鳴を上げ、髪を振り乱し、全身を妖しく上気させた淫らな女。
 ムルナに徹底的に躾けられた今、立ち居振る舞いまでもが女性のようになっている。それでも、自分が男であることも、忘れることはできない。
 誰も忘れさせてはくれない。
 そんなカザナの限界まで押し広げられたアナルは、グロテスクなほどに太いペニスを深々と埋められ、肉壁が真っ赤に熟れていた。股間の肉色の膣口は、両脇の男達に指で何度もきつく嬲られて、充血して腫れ上がっており、今も太い指が卵を押し上げるように激しい抽挿を繰り返す。白い肌は何の体液か判らないもので全身濡れそぼり、顔は、激しい口淫で口の中まで汚濁で汚されていた。髪にすら白濁が絡みついていた。
「嬉しそうに涎を垂らしておる」
「ひっひぃぃっ」
 鈴口を指が食い込むほどに嬲られ、悲鳴が迸る。
 痛いだけでないその刺激に、腰が震え、がくがくと身体が揺れた。
 もう限界だった。
 達きたくて達きたくて。
 激しく犯されながら、カザナの身体は射精への欲求ばかりが溜まっていく。
 男に嬲られるだけの性奴。
 男であることすら、嬲られる対象。
 何をされても、全てが快感に結びつくように改造され、娼婦よりも淫らにと躾けられた身体。
 その身体で、男の証であるペニスがひくひくと震える。
 ぶつっんと、理性が飛んだのは、もう何度目か。
「もうっ──もう、達かせてぇ──っ」
 過ぎる快感に、狂おしく悶え、涙ながらに訴える。
 けれど。
「そろそろ休憩しようか」
 カザナの言葉が、休憩の合図とばかりに、ずぼりとペニスが抜けた。
 膣から指が離れ、即座に足首と手首が右と左それぞれに別に括りつけられた。
「やっ──やあっ。達かせてぇ……、厭だっ」
 そのまま両脇に大きく開かれされ、固定されてしまえば、カザナは飢えた身体を晒すことしかできなくなる。
「休憩だよ。お前も休みたかったろ」
 揶揄の言葉に、カザナのまなじりからぽろりと涙がこぼれる。
 刺激が消えても、身体は限界まで疼いたままだ。
 固定された腰が刺激を求めてゆらゆらと蠢く。
「十分休んだら、また犯してやるさ」
「い、今……今……」
 欲しい。
 これ見よがしに目の前で揺らされるペニスが。
 嬲られ続けてきてすっかり快感に貪欲になってしまった身体が、淫らに喘ぐ。
「休憩だ」
 なのに、伯爵も戦士達も、カザナから離れていく。冷たい床が、熱くなった身体を僅かに冷やしてくれるけれど。
「い、い、ま……」
「浅ましい身体だ。これでも、誇りある王子なのかい?」
「あ……っ……」
 とろとろになっていた脳に、揶揄が氷の刃となって突き刺さった。
 誰も王子として扱わないくせに、こんな時だけかけられる呼び名。忘れてしまえと自ら思う過去の栄光は、どう足掻いても忘れることなどできない。
 誰も忘れさせてはくれない。
 それが、マサラにより植え付けられた暗示のせいだとはカザナは気づいていない。
「王子たるもの、そんなに浅ましく強請ってはならないだろう?」
「リジンの王家といやあ、神の申し子とも言われている高貴な血筋だよな」
「天上人の降臨した姿とか」
「清らかさが売りだよな。にしちゃあ、この王子様は、厭らしいよな。こんなにも腰振って」
 王子と呼ばれると、快楽に溺れて全てを失ってしまおうとしていたのに、一気に理性が戻ってくるのだ。
「まあ、性奴だし」
「ああ、性奴だし」
「……ちが……」
「身も心も性奴に落ちたということだろう」
「違う……」
 自分は、リジンの王子。
 いつも讃えられて生きてきた。誇りあるリジンの原初の民の生粋なる血筋。
 それを思い出してしまうと、どんなに身体が疼いても、欲する言葉など出なくなる。
 ずくずくと痛いほどに張り詰めたペニスが、どんなに解放を望んでいたとしても。
 唇を噛み締め、熱を吐き出すように深い息を繰り返す。
 先ほどまで熱に浮かされたように呻いていたカザナのそんな変化に、伯爵が片頬を歪ませて嗤った。
「休憩したら、再開しよう。今宵一晩借り受けることにしているからな。ゴウガもゲインも遠慮などしなくて良いぞ」
「てことは、10時間は遊べるって」
「そりゃ、いいや」
 丸一日戦い続けるだけの体力を持つゴウガとゲインが、歓喜の声を上げる。
「壊さなければ何をしても良い。今日は、特別に膣も使って良いとのことだ」
 まだ制覇していない場所を許されて、歓喜の声はさらに高くなった。が──その言葉に、カザナの瞳が驚愕に見開かれる。
 それは、マサラのもの。
 マサラだけが犯す場所。
 カザナにとって、もっとも屈辱の場所は、今までマサラ以外に犯されたことはなかった。
 この一年、敏感な花びらをさんざん弄り倒され、指や入っている張り型で犯されることはあったけれど。
 基本的に産卵以外の時は、そこには張り型が埋め込まれているのだ。
 なのに、今日は……、使わせるというのか。
 わなわなと震える唇から、微かな嗚咽が零れた。この衝撃がいったいどこから来るのか判らないままに、感情が荒れる。
 それを聞きとった伯爵が、満足げに嗤う。
 膣を使うことにはマサラはずいぶんと不服そうではあったが、そのための便宜はいくつも約束してやった。
 ずいぶんとこの性奴に執着しているマサラだか、直系の中ではその執着は珍しくない。王子達は幼い頃からどんな玩具であっても、壊れるまで遊び尽くすのが常だ。
 ジュカが気に入ったと公言して憚らないキスカと同じく、マサラもたいそうな執着を見せている。
 仕事場であろうが、王族として諸国を歴訪している時だろうが、片時も離したくないと思っているほどに。
 だが、性奴は持ち主の家の外には出せない。外に出して盗まれても文句が言えないからだ。
 それは王族であっても同じ事。
 もっとも王族のモノを盗もうとする不埒な輩はいやしない。それでも心配なマサラに、ならば、と持ちかけた案に、可愛い王子は乗ったのだ。
「もうしばらく遊んでから、一度だけほんの少し射精させよう。そうすれば、餓えはさらに強くなる。その後また縛り付けて……。ああ、今度は浣腸したまま、膣を犯すか」
「乳首も縛り上げますかね。あまりに美味いんで飲み過ぎちまったが、朝にはまたたっぷりと貯まるだろうし」
「卵もいれたまんまにしようぜ。ごりごりとした感じが、尻ん中に伝わってすげぇ良いぜ」
 伯爵の言葉に、二人が口々にいろいろな案を出す。
 カザナの耳にも届くように。
 そんなカザナのまなじりに、透明な滴が浮かんでは流れる。
 王子としての矜持など、今の自分には何の助けにもならないのに。なのに、狂うこともできずに縋り付いてしまう。
 こうやって慰み者になっているのに、何が王子だろう。
 何が原初の純血の民の誇りなのか。
 誰の特別でも無い。今はもう、誰にでも使われるモノでしかない存在。

 その夜、静かな城の閉ざされた空間で、悲鳴と嬌声が途切れることなく響き渡っていた。

【了】