【狂 ひめはじめ】

【狂 ひめはじめ】

裏テーマとして「黄勝のラブラブひめはじめ」で作り始めたはずなのですが……。
ということで、黄勝視点と狂の絡みです。
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※鬼×淫魔、長期間放置(性行為・自慰完全禁止)後のプレイ、選択、懇願※


 鬼により創られ、人に交じり、人として子を成して。
 親から子、孫へと人との交じって薄まっていったはずの血だったが、その血が持つ性質のせいか、それとも同族は引かれ合うものなのか、その血は再び幾世代もの間に濃縮されていき、その果てに再びその力を開花させ得るだけの子が生まれたのは、人が人で無いものの存在を忘れ去った時代であった。
 再び鬼の手の中に戻ったそれは、鬼のために生き、鬼のためにその力を使うものに成り果てて。
 今でも鬼の手の中で生き続ける。
 成人するまでは人として生きたそれ──淫魔と同世代の人はとうに死に絶えてもなお、その淫魔の寿命は尽きることはなく。
 今も。
「ひっ、あぁぁっ、いぁぁ……」
 ぎりっ……と身体を押し開く巨大な楔に、淫魔の狂の喉から空気が押し出されたような悲鳴が漏れていた。
 人として決して華奢とは言えぬ身体ではあったけれど、濡れ縁の板間に押しつけられた白い裸体にのしかかる赤黒い鬼の巨体からすれば一回りは小さい。庭先に差し込む満月の明かりを浴びて、眩く白に肉が絡む様は、まるでその深い陰影とも相まってひどく幻想的に見えた。



 片足首を軽く掴む指は一周してなお余り、高く持ち上げられた大腿と同じくらいに太い二の腕は逞しい筋肉が盛り上がる。
 細身とは言え男である狂の足を下半身が浮き上がるほどに楽々と持ち上げ、大きく下肢を割り広げる動きを遮る要因などどこにもなかった。その気になれば、大腿骨などわずかな力で粉砕できる力だ。
「いっ、うっくぅぅっ、ううっ、きっつ……ぅ」
 無理に捻れた身体は息苦しいのか苦しげに呻き、逃れようと伸ばした指先で床板をカリカリと掻く。
 その小さな音ですら聞こえることが愉しいと思うほどに、今の黄勝の精神は高揚していた。
 肉食獣が瀕死の獲物をいたぶっているような、圧倒的な力で逃れようとする身体を支配する。
 空気を震わせるだけの音の無い嘲笑の中で、力強い腕はその身体を難なく引き寄せた。
「ひぎぃぃっ!」
 ずっ、ぐちゅっと心地良い刺激が敏感な牡の表面から肉に伝わる。
 やや丸みを帯びて盛り上がる白い肉の狭間を腰引き寄せ、巨体よりさらに黒ずんだ肉茎を沈み込ませようとするけれど。
 しばらくぶりの肉の入り口は、容易には通すまいとばかりにその口を開けようとしない。
 まだまだ長く残る肉茎は、ようやく先端が潜り込んだばかりだ。そのせいで、しっかりと張ったエラはまだ中に入っていない。
 それでも硬いそれは、圧倒的な力でもってじわじわと入り込む。少し入る度に悲痛な悲鳴を上げる狂を見下ろせば、ひくひくと震え仰け反る背のラインにどくりと陰茎が波打つほどに欲情した。
 圧倒的な力で狂を支配する黄勝が、この屋敷にいた狂の前に現れたのは実に三ヶ月ぶりだ。
 羽角が率いる鬼の一族の高位に位置する黄勝は、一族を盛り上げるために必要な技術や金を蓄えることを生業にしていた。その過程で作り上げた淫魔は、今では淫魔の祖と呼ばれる狂や憂以外にもかなりの数が増え、その管理や采配に仕事が増えている。
 さらに強制的に増やした弊害かその能力レベルが様々なこともあって、未だに狂や憂ほどの能力を持つ淫魔は生まれていない。それを同じレベルで繁殖させることが、目下の黄勝の最大の関心事だった。
 そんな淫魔が稼ぐ場面で羽角一族の大事な資金源となっていて、その貢献のせいで、羽角の高位の部下達の中でも、黄勝の地位は盤石とも言えた。
 だが、高位になればそれだけ黄勝の仕事は増え、狂と遊ぶ時間はなかなか取れない。
 それでも大晦日の今宵だけは、羽角一族の全ての鬼達は自らのねぐらに帰るのが、一族誕生以来の習慣で、それに倣い、黄勝もここに戻ってきたのだった。
「くっくっ……裂けんばかりに伸びきっているというのに、美味そうに銜え込んで柔らかく締め付けている。お前の肉は歓喜しているぞ、久しぶりに受け容れたと、早く全てを銜え込みたいと期待に打ち震えておる」
 低い嘲笑含みの声に、苦痛に顔を歪めた狂が違うとばかりに首を振る。
 淫魔の身体の自己修復能力は、鬼の苗床には劣るとはいえ強力だ。傷ついても人より早い速度で治り、ぱくりと口を開けきって戻らなくなった括約筋もすぐに締め付けを戻していく。
 それでも鬼や異形のモノ達、狂った男達に犯され続ける身体は、どうしてもそれに馴染んで緩んでしまう傾向にあったけれど。
 この三ヶ月の間に何にも犯されなかった狂の体は、処女のごとく締め付けを取り戻していたのだ。
 そんなきつい締め付けを解しもせずに突き入れられ、さすがの狂も悲鳴が堪えきれない。
 実際黄勝の方もその締め付けは痛みを覚えるほどだ。
 だからと言って止めてやる道理は無い。
「見よ、淫臭が立ち昇り、絡まり離れぬ……」
 ひいひい鳴きながら身悶える狂から、霞のように淫らな香りが立ち昇っていた。
 濃厚な淫臭が鼻腔どころか視界でも誘惑するように見えてしまうのは、極上品と言われる特級淫魔の力の一つだ。
 立ち上る霞は、するりと黄勝の肌を撫で上げ、絡みついて離れない。
 この世にあるどんな強力な媚薬よりも効果の高い香りで誘い、牡を選んで絡みつく。
 イヤだ──と言いつつ狂の瞳が欲情した証に赤く見えるのは、淫魔の性質が色濃く出ているせい。
 今、欲しくて堪らないのだ。
 黄勝の逞しい肉棒を。
 それでもイヤだと呻く狂は、容易に理性を失わない。理性だけは人としてのそれである狂は、理性がある限りは淫魔の身体に溺れられないのだ。
 長年にわたる黄勝の躾けの結果、誰よりも人らしく理性を保って快楽に溺れることを否としながらも、牡の性持つモノに肌に触れられるだけで欲情し、激しく犯されないと宥められない極上の淫魔に仕上がっていた。
 理性と本能、恐怖と歓喜、激痛と絶頂。
 相反する感情に支配された狂は、犯される度に絶望に泣き、繰り返される絶頂の果てに歓喜の雄叫びを上げて。
 そんな狂だからこそ、手離せない。
 我慢させて苦しめて。泣いて縋っても与えない。イヤだと喚く時には、たっぷりと与えてやる。
 黄勝は、狂が理性を保っている状態で犯すのが一番気に入っているからだ。
 


 誰も訪れぬ山奥の屋敷は、鬼の結界に包まれていた。
 そんな空間に狂を閉じこめ、鬼や人はおろか動物との接触を封じ、自慰すら禁じて、閑かな空間で三ヶ月過ごさせた。
 植物しかない空間では、淫魔は餓えていく。完全に淫魔化させられた身体に生き物の精は必須だ。
 快楽だけを与えて精を与えぬ時に発生する急激な飢えは、あっという間に淫魔の理性を崩壊させる。だが、快楽を与えずに餓えさせる状況は、乾ききった喉に塩水を与え続けるようなもので、一時的には癒されてもすぐに前より強い乾きに襲われる。その上で、指一本、玩具一つアナルにいれて快楽を貪ることを禁じて、それを深い暗示として擦り込んだ。その結果、ペニスを扱いて快楽を貪ることのできなくなっている狂にとっては、自慰を完全に封じられてしまう。
 さらにゆっくりと蓄積は、狂の飢えの認識を麻痺させた。
 身体が、精神が慣れてしまったのだ。
 それでも餓えているのは間違いないのだろう。
 狂は黄勝のペニスを目にした途端、確かに喉を鳴らした。だが同時に、慣らしもせずにずりっとアナルに入り込む激痛に全身で拒絶していた。
 身体は欲しがり狂喜してペニスを締め付ける。激痛があってもなお入り込む凶器を逃さぬとばかり締め付けて、狂はさらに痛みを感じている。
「飢えておったのであろう? ん?」
 確信に満ちた問いかけに、狂は蒼白な顔を涙で濡らして、嫌々と首を振った。、
「そ、んな……ひっ、こ、こわっ……れるっ、黄勝様ぁ、お、お許し、をぉ」
 黄勝のそれは、太く長い。エラは硬く張り、狂の内壁をごりごりと擦りあげて前立腺を攻撃してくるのだ。
 何度も犯された狂はそれを身をもって知っている。だから、まだまだこれからだと判っていて、今の激痛に怯えて、怖がり嫌がる。
 嫌がれば、黄勝の仕置きが待っていると判っていても、うるうると涙を撒き散らして怯えて見せる。
「何を言う。お前のここは、まだ余裕があるようだ」
「ひぃぁ……」
 つつっと爪先で伸びたアナルを擦ってやれば、ぶるりと震えた身体が体内の肉茎をきつく締め付けて。ぎゅっと瞑った面に走った朱色は、鮮やかな色気を醸し出した。
「だが、要らぬ、というのであれば、抜いてやろう。どうする?」
 くっくっと堪えきれぬ嗤いの振動に、狂が「んっ」と痛みに顔をしかめる。
 抜くという待望の言葉の筈なのに、だが、狂が返したのは先より強張った表情だった。
 人の一生より長い間黄勝の相手をしてきた狂にとって、黄勝の本意が読めてしまうのだろう。それもまた、狂が気に入っている要因であった。
 ただな色狂いのバカなど飼う価値もないのだ。
 黄勝の本意を見抜いて怯える狂は、だからこそ愉しくて、黄勝はその瞳の酷薄な色を隠しもしていない。
「き、きしょ……さま……?」
 もし抜いたら……?
 厭な予感しかしないと、黄勝を窺う狂の表情に愉しげに嗤い返す。
「私は忙しい。今要らぬのであれば、当分はやれぬ、が、ああ……せっかくの新年だ。新しい玩具でも与えてやろうか、ん?」
「ひっ!」
 その言葉に、狂は瞠目した。
 ずるりと熱い肉茎が抜ける感覚にぶるりと震え、先よりガクガクと震える手で上半身を起こしてくる。
 その縋るように狂が向けた瞳に写る黄勝は嗤っている。
「ほら、お前の大好きな玩具を改良したものだ。お前の善いところを徹底的に虐め抜いてくれるぞ。これで次ぎに私が来るまで遊び続けるが良い」
 その手から零れ落ちて重い音を立てたのは、ペニスの拘束具とそれに繋がるグロテスクな瘤をたくさんもった張り型だ。黄勝のそれよりは細いけれど、不規則に激しく振動するこのバイブに犯された淫魔は、一晩でも餓えるだろう。
「私のモノを銜えるか、玩具で遊ぶか」
 その言葉と嘲笑の意味を狂が間違えないことを黄勝は確信していた。
 初めて狂を手に入れてから今まで、その全てを支配し、繰り返しその身体に黄勝が何を考え、何を望むかを教えこんできた。
 だからこそ。
「あ、あ……」
 その恐怖に満ちた言葉にならぬ絶望の声に、黄勝は満足げに頷いて応えた。
 精を与えぬ淫具での快楽責めは、淫魔にとって特に辛い罰の一つだ。だが、黄勝のペニスを受け容れるのもまた辛すぎること。
 そして狂は……。
「き、しょーさま……」
 本来何かを創ることに果て無き欲を感じる黄勝にとって、その成果物である狂が黄勝の望む理想に近づくこと事が一番悦ばしい。
「どちらも要らぬというのであれば、この屋敷に打ち捨てておくことにしよう」
 ずるりと抜け落ちる肉が湯気を立てている。
 離れる身体、離された手により、持ち上げられていた身体が床板に崩れる。
 先ほどまでペニスを喰らっていたアナルが赤く腫れた縁にシワを作っていく。その卑猥な動きを眺め、また狂の表情に視線を戻す。
 その衝撃に呻いても狂の視線は、黄勝より外れていなかった。否──その離れた身体にその力無く伸びた手が縋り付く。
「ま、待って……ください」
 人である理性が、人であることを放棄する瞬間。
「犯して……ください。どうか……狂の、淫乱な肉で……お楽しみ……くださ……」
 自分を完膚なきまでに陵辱すると判っている鬼に縋り付き、己を辱める言葉を自ら発する屈辱に滲む表情は、黄勝を歓喜させる。
「どうか、浅ましい淫魔に……黄勝、さまのお情けを……」
 それこそが黄勝が望む言葉で、黄勝に従うことを狂は必ず選ぶ。
「そうか、私が欲しいか……」
 クツクツと喉の奥で嗤う黄勝に、狂がガチガチと歯の奥を鳴らす。
 怯えた淫魔は、判っていてもその恐怖を打ち消すことなどできないのだろう。
 その小刻みに震える頬に手の平をあてて、ゆっくりと撫でてやる。柔らかい肌は、鬼の爪で簡単に引き裂くことができるのたど思い出し、その衝動のままに引き裂きたくなる。
 けれど、その衝動をかろうじて押さえ込んで。
「尻を開け」
 冷たい命令に狂がのろのろと従う。
 床板に手をつき上体を倒し、立ちあがった黄勝のそれに合うように、腰を高く掲げて。尻たぶを割り開くように大きく開脚して、先ほど貫きかけた肉穴から股間にいたるまで全てを晒す。
 その卑猥な様をじっくりと眺めれば、はくはくとひくつく肉色の内壁が、早く挿れてくれと誘っている。
 その全身が血の気を失っているのは、貫かれる激痛を思って──ではない。
 自分で受け容れて、果て無き快楽に狂わされることに怯えているのだ。
 ならば、期待通りに与えてやろう。
 激痛などあっというまに忘れるほどの際限の無い快楽を。
 果ての無い苦しみとともに。
「あっ、あぁぁぁぁ──っ」
 肉が熱い。
 激しく痙攣しながら痛いくらいに締め付けるくせに、その柔肉の感触がたまらない快感が全身を貫く。
 淫魔の肉は、全ての牡を欲に狂わせる効果を持つ。
 それは、鬼をも逃さない。鬼の嗜虐性を際限なく高めて、誘うのだ。
「ひっ、あっ、ああっ」
 ぐちゅぐちゅと浅い位置で何度か引き抜き、差し込んで。
「ぐぅ、うっ、くっ……ひぐぅぅ」
 少しずつしか入らない締め付けを、それでも歓喜のもとに味わって。
「ひぎぃぃぃぃ──っ」
 ぱしっと鋭い音で肌が打ち合った途端、狂の身体が崩れ落ちた。けれど、結合された場所は崩れようもなく、尻の位置で宙づりのようになっている。そのままずるりと抜けかけた腰を捕らえ、ぎゅっと腰に押しつけて。
「ひ、んっ、くっ……うっ……」
 ぽろぽろと流れ落ちた涙が床板を濡らしていた。
 赤黒い己の肌に連なる白い肌は、三ヶ月の清純な生活故に、傷一つ無い。
 これが、また淫らな模様を浮かべるまで、狂は犯し尽くすつもりだ。
「私の手間を取らせた罰だ」
 淫魔が主人の手を煩わせることは許されぬ。
 淫魔は、主人の望みに逆らってはならぬ。
「あ、あう……」
 前倒しになっていた上体をひき起こし、俯いていた顎を取って背後を向かせその口腔を貪る。薄い舌を吸い上げ、肉厚の舌に絡めてとり、多量の唾液を流し込んで。
 呼吸すら奪う激しい口淫に、息苦しげに呻く狂の腰をきつく抱き寄せて、奥の奥まで貫きながら、片手で鈴口に棒を差し込んだ。
「ぐぅっ! うっ」
 悲鳴すら発せられない口づけの間、ずるりと奥まで入った棒は太い。
「あ、はぁぁ、はあ……」
 口を離し、ようやく取り戻した呼吸を貪る狂の耳朶に歯先を食い込ませながら、囁いた。
「罰として私が許可するまで射精を禁ずる」
 黄勝のその言葉が耳から脳に染みこんでいく。
「や……あ……」
 流れる涙が、汗と混じり合いボタボタと床に落ちる。
 黄勝の狙い違わぬ攻撃に、敏感な身体は容易く絶頂を迎えるというのに。
 達けない辛さは、飢えるのと同じ。
 立ったまま回した両腕で身体を固定し、腰だけを動かして、宙に浮いた足が激しく前後に揺れるほどに狂の快楽の泉を狙って突き上げる。
 激しい衝撃は、あっと言まに低い堤防を決壊させ、快感という名の奔流を繰り返し全身へと行き渡させる。
「ひぃぃ、あぁぁっ、イク、イクぅぅぅっ、いやあぁぁっ」
「達け、達くのは妨げぬぞ。良い子で待っておった褒美にたっぷり達かせてやろう」
 罰も与えるが、褒美も与える。
 罰を-1とし、褒美を+1として、だがそれは狂にとっては差し引き0ではない。
 なぜなら、回数の多い方を先にして、少ない方を後ろにして式をつくるからだ。そして、罰が前の時は、引き算。褒美が前の時は足し算。
 同じ数ならは罰が前。狂は罰の方が多いから、必然的に褒美はそこからマイナスする。
 -1-(+1)となって、-2。しかもその2は2乗の2。
 その昔、罰と褒美を相殺する計算方法を教えてやった時、狂が愕然としたことを思い出して、笑みが零れた。
 そんなバカなと呟いた分だけ罰を加えて。
 どちらにせよ、褒美の数など増え続ける罰からすれば些細な数だった。
「あひぃぃっ、やああっ、あつっ、中がっ、ああっ、溢れるぅぅぅっ、ひあぁ」。
「ははっ、お前の肉が熱く絡みついて、私のモノを扱きたてておる。そんなに美味いか、欲しいのか?」
 動かなくても絞られる。
 根元から奥へと搾りたてられ、小刻みな振動で全体をマッサージする。
 昔、この動きを測定して同じような動きをするオナホールを作ったら、インポも達くと評判になったほどだ。
「あひっ」
 膨れあがって勃起した乳首は並の男よりはるかに大きい。
 太い指先で潰しても程よい感触を残し、戯れに弄るには最高の大きさだ。
「ひぃぃぃっ!」
 その乳首もたいそう敏感で、今も捻り潰しただけで絶頂を迎え、がくがくと腰が揺れていた。
 引きずられる己の腰を激しく打ち付けて、蠢く肉壁に叩きつける。
 引き抜きかけた拍子に、隙間からぐちゅぐちゅと音をたてて粘液が零れ、熱を帯びたそれは、冷気の中に湯気を立たせた。
 静謐な空間を汚す淫猥な臭気と淫らな音色に全てが犯されていく。
 それは鬼ですら逃れられなくて、黄勝は昂ぶる身体を持て余すように、狂の肌に噛みついた。
 その隙間から覗く鋭い牙が、白い肌に食い込んで、ぷくりと赤い血潮を産み落とす。
「甘い……なんて甘さだ……」
 どこもかしこも甘い身体。
 狂の身体はどこもかしこも淫欲を沸き立たせる効果があって、それは血も例外では無い。
「ああぁ、イクゥゥゥっ、やあ、破裂するぅぅぅ、だしたぁぁぁ──っ、ゆ、許してぇ」
 快楽を与えられ続ければ、溜まり続ける精液に、狂の陰嚢はパンパンだ。淫魔の精液の生産能力に限界は無い。快楽を与えられれば生産は続き、出せなければどんどん濃縮されて、重く陰嚢に溜まる。
 苦しくて、そんな悲壮な、けれど欲に満ちた声に、黄勝の方の餓えが増してさらに溺れていく。
「もっと溜めろ……溜めて、その太い栓を噴き出してみろ」
 尿道に食い込む歪な瘤のついた栓だ。簡単に抜き出るくらいなら、とっくの昔に落ちているだろう。それでもびくりともせずに残るそれが判っていて。
「出せぬなら、出せるまでそのままだ」
 手など使わせるはずもなく、ガツガツと腰を打ち付けながら、冷酷に下す。
 黄勝のそれに慣れきったアナルは、突き上げる度に絶頂をもたらす。繰り返されるそれに朦朧とした泣き濡れた瞳に魅入られて。
 もっと泣かせたいと、湧き起こる欲望は先より強い。
 もとより、人よりはるかに精力も体力もある黄勝と狂が、早々にバテるわけもなく。


 月明かりの下、淫気に狂う二つの影は、年の初めの朝日が昇っても、重なり、蠢き、淫らな音をあたりに鳴り響かせていた。

 
【了】