【淫魔 狂(きょう) 褒美 その後】

【淫魔 狂(きょう) 褒美 その後】

 淫魔の狂が7匹のペットを黄勝様に頂きました。大切にお世話しなければ黄勝様に顔向けできませんから、狂が一生懸命世話をしなければならないのは当然のことです。
 狂もそれが判っているので、日がな一日、性欲解消に対応している声がペット小屋から聞こえてきます。
 そのペットは人の姿をしていますが、そのDNAには滅亡した獣人族のものが混じっていることが判っています。
 その性は狼に近く、集団を好み、リーダーに従います。また、体を動かすことが大好きですから、散歩はかかせません。けれど、それらを満足させるほどの散歩量を狂はこなせませんので、大きなペット小屋には、フィットネスクラブ並みの施設があります。
 また三大欲求と言われる三つの欲望が満たされないと、ペットはすぐに暴れます。暴れて物を壊されると罰は狂が受けることになっていますので、とにかく欲望を解放させる必要がありました。
 だから最近の狂は一日中、ペット小屋にいます。
 三つのうち睡眠欲は、邪魔しなければ良いのでする事はあまりありません。
 食欲も母屋から十分運び込まれるので、問題ありません。まあ、アルコールは物足りないこともあるようですが、飲みすぎは良くないので、仕方ないです。
 けれど、性欲は相手が要ります。
 やることがないと、ペット達はすぐに性欲解消に走るのです。
 身体は人ですが、獣化したペット達にモラルなどありません。並みの相手であれば、その長大化したペニスで無理に犯されズタズタに引き裂かれてしまうことでしょう。
 しかし、狂は淫魔です。
 淫魔ですから、ペニスが一番大好きです。太くて長くて硬くて、しかも血管が瘤模様に浮いた赤黒いペニスが大好きなのです。そう、そのペット達が持っているようなペニスです。
 また、淫魔の食事はセックスです。特に狂は、オスに犯され、その行為と精液を介して得られる、生き物の精が一番の糧です。
 食事はいつも身体の奥深くまでペニスをくわえ込んで、犯され、タップリと精液を注がれることで成立します。精液を介して、その生き物の精をむさぼり食うのです。そのような淫魔に対抗できるのは、鬼の一族、とりわけ羽角様率いる一族のみなのです。そうなるように、遙か昔に黄勝様がそのDNAに埋め込まれたのです。
 ただ、獣人は鬼に匹敵する体力を有しているため、その精気を削られても生きています。むしろ適宜削り取った方が扱うのにはちょうど良いほどなのです。
 つまり、淫魔が獣人の世話をするのは当然といえるでしょう。
 狂に獣人を世話させることを決断された黄勝様は、本当に素晴らしい方だと思います。
 僕もたくさんの精を吸収して、力を蓄えて、黄勝様のような優れた鬼になり、羽角様のお力になれるよう頑張ります。それが、この一族に生粋の鬼として産まれた僕の役目だと思っています。
 だからこそ、今僕はここにいます。
 黄勝様に狂の観察と見張りを頼まれたのもありますが、ここにいると力が付くのです。
 淫魔が奏でる甲高い苦痛の混じった嬌声は、その素晴らしい音色と込められた感情と精で鬼を楽しませながら増強する効果があるのは周知の通りです。
 僕もこうやってレポートを書きながら、身体の芯が熱くたぎり、力が湧いてくるのを感じます。
 まだ卵の頃に味わった貴樹様の素晴らしい精魂には劣りますが、成長のためにいただいた淫魔の憐の精とはとても良く似ています。血縁だから似ているのでしょうが、本当のことを言うと憐の方が僕には合っているような気がします。でも、憐は貴樹様のモノですから産まれてしまった僕には貰えません。それは仕方ないことだと判っているのですが、先日、本当に偶然、垣間見てしまった憐の姿が脳裏に焼き付いて離れないのです。それまでは、ただの餌だと思っていたのに、欲しくて欲しくてたまらなくなったのです。
 それでも、今の僕の力ではどうしようもありませんから、今は狂でも良いです。まずは力を付ける必要があるからです。
 僕の夢は黄勝様のような研究者になって、一族に貢献する事です。成果を上げれば、きっと羽角様も僕のお願いを聞いてくださるかもしれません。また、貴樹様に別の給餌器を作って差し上げれば、憐を下げ渡してくださるかもしれません。
 だから、僕はいっぱい頑張ります。
 僕の過去は力も知恵も持たない愚かな鬼でしたが、貴樹様に苗床用の精魂を作っていただけたので全く違う存在に生まれ変わることができました。まだまだ伸びしろがあるのが自分でも判ります。
 きっと僕は力のある鬼になります。
 そうして、正当な報酬として、憐を頂きます。
 なぜなら、憐の精魂は僕に一番合っているからです。そして、僕を一番強くしてくれるのです。しかも、本当に美味しくて僕をいつも楽しい気分にさせてくれました。
 実際貴樹様に餌を与える姿も本当にイヤらしく、男達から精液を注がれる浅ましい態度は、打ち据えて犯し突きたい衝動に駆られます。
 憐は最高です。
 欲しいです。
 たくさん可愛がって、大事にしたいです。
 僕の物になったら、絶対に他の誰にも触らせないのに……。
 
 
 
「……しまった」
 深いため息を吐いて、樹輝は後半の用紙を破り捨てた。
 一週間ばかり出かける黄勝に言いつけられたのは、狂とペットの観察日記だったのだが、後半全く違うことを書いてしまっていた。
 勉強中に他のことを考えているようでは、まだまだ憐を手に入れるには遠い。
 生まれたばかりの樹輝にとって、まだ先の長い道のりではあるけれど。
「よし、頑張るぞ」
 意識を狂に切り替えて、狂の嬌声に含まれる精を吸収しながら、樹輝はレポートを再開した。


 ペット小屋のペット達は今日も一日中狂と交わり、犯しています。
 今日は、暴れる狂の身体を皆で押さえつけ、全身をその荒い舌で刺激し、ヨガリ狂わせつつも、射精寸前で一斉に止めると共に、陰茎を締め付けるという遊びを延々と繰り返しています。
 どうや群のボスはアーリーのようで、ボスの合図には皆従います。
 ボスがOKを出さないので、ペニスから先走りの粘液をこぼしていても、誰も狂を犯そうとしません。
 ただアーリーがOKを出すのをじっと待っています。
 この本能すら我慢させる見事な統率力は、獣人の性故の物でしょうが、見事なものです。
 喜び鳴いている狂に共鳴するように、日々の行為は激しくなっていますが、狂が壊れる様子はありません。
 
 
 
「あ、ハァッ、ソコォ、ダ、ダメっ! ひああっ!!」 
 獣人達の涎まみれになった狂が、掠れた悲鳴をあげる。
 獣人達の飼い主は狂ということになっているが、獣人達は狂の言うことは聞かない。
 序列を重んじる性ゆえに、ボスのアーリーが認めた黄勝と彼に従う樹輝の二人の言葉は従うけれど。
 獣人全員が、狂の立ち位置は最下位だと知った以上、狂の言葉は無視すべきものになった。
 それに、狂は獣人達にとって、メスなのだ。
 獣人族が滅びかけている今、メスの仕事は仔を孕み、産み、育てることだ。 
「我らは仔を成さねばならぬ。メスにたくさんの仔を孕ませねばならぬ。ならばこそ、我らは孕むまでまぐわおうぞ」
 アーリーの長い舌が、尖った牙の間で揺れた。
「熟れた臭いがする。オスが欲しくて欲しくて堪らぬのであろう。この臭いは孕む準備ができた証よ」
 ダラダラと涎を零すアーリーの瞳にはハッキリと狂気が浮かんでいて。
 
「ギッ、ヒィッ、いあああっ! 腹が、苦しっ!」
 犬族特有の大量の精液と前立腺液が、狂の腹の中に注がれていた。ポカリと膨らんだ腹にアーリーが唇を歪める。
「孕め、我らが仔を孕め」
 淫魔による覚醒は、だがやはりどこか歪ませたのだろう。
 本能に根差した子孫繁栄の欲求が歪み、すべてが狂に向かう。
「孕め、孕め、孕め!!」
「いああああっ!!」
「仔を、我らに仔をっ!!」
 アーリーが終われば、次位の獣人が。次々と狂に群がり、孕ませようと躍起になって。
 滅んだ一族故か、仔に対する欲求は凄まじいものがあった。
 
 
「なんて心地良い……」
 獣人達の悲痛な願いと狂の苦痛が気となり、周りの鬼達を刺激した。鬼にとり、負の感情はたいそうなご馳走なのだ。
 狂の苦痛が籠もった悲鳴が届く度に、樹樹は震え上がった。唇が歓喜に歪み、激しい快感に陶酔する。同時に己の中に沸き起こる力に、思わず持っていたペンを取り落とし、己の掌を見つめた。
 そこから沸き起こる気が強い。
「すごい……なんてすごい……」
 狂った獣人達とその捌け口となった狂。
 この見事な組み合わせでこれだけの力が得られるなんて。
 これもすべて黄勝様の意図したのだ。
 なんて素晴らしい。
 今、黄勝のいるこの世代に新たな生を得たことに心底感謝する。
 樹輝自身、自分が黄勝の実験ゆえにこの力を得ていることを知っていた。
 でなければ、前のままにろくに鬼の力も使えぬ末端の兵にしかならなかっただろう。
 だからこそ、黄勝とこの一族がさらに繁栄する事は容易に想像できた。相性があり、しかも長い時を生きる鬼の転生時期はなかなか来ない。
 それでも少しずつ、強い次代に切り替わっていくだろう、己のように。
 ならば、己は運が良かった。黄勝様に実験して貰えて、まだ強き力を持つモノが少なくて。
 今のうちに強くなる。強くなり、一族に役立つようになって、憐を貰うのだ。
 今は近づくこともできない憐。
 だがいつか、必ず己だけのモノにしてみせる。
 そう決意を新たにしたのだった。

【了】
  
 憐大好きっ子の樹輝、一歳。外観は少年と青年の間くらい。ある意味マザコンに近い。
 黄勝には適いませんが、いずれそこそこの地位に就いて、憐をもらいます。