【淫欲騎士 責務】

【淫欲騎士 責務】

 舌先を鋭くし、目の前の背筋を下から上へとねっとりと舐め上げると、肌にのった卑猥な裸体画が歪み、うねるのを愉しみながらちろちろと擽るように輪郭を辿れば。
「はっ……ぁ……っ」
 空に向かって吐き出すコレの吐息の掠れた音が耳に心地よく響いた。
 同時に、痙攣する熱くたっぷりと濡れた肉がくゃちゃっと私を締め付け、うねうねと揉み上げて。
 思わず零した感嘆の響きが二つ、肌の上を嬲り流れていく。
 この熱い肉の壺は、あれだけ遊ばれても二本を迎えるには狭いのだが、けれど、押し広げる剛直の侵入を妨げるほどでは無かった。
 だが、絡みつき締め付けられるせいで、肉棒はズルリと擦れ合い、絡み合って、経験のない快感に息を吐く。
 少し視線を上げれば、肉付きの良い太い指がうなじに見える生々しく濡れそぼる丸みの先を揉み上げていて。
「あ、あぁぁぁっんんっ、弄らない、でぇぇ──そこぉ、ぁぁっ」
 啼き叫ぶ可愛い悲鳴に、ビクビクと震えて逃げようとする熱い身体に回した腕に力が入り、熟したブドウ色の乳首を引き伸ばす黄金の飾りを弄ぶ。
「ひぃっ、ひ、たぁぁっ、や、止めっ、んっ!」
 豪華な室内に上がる涙も飛び散る甘い拒絶に嗤い、しゃらりとキレイな音を立てるそれでひとしきり遊ぶ。
 これは、このモリオンと出会ってからちょうど一年目であった一ヶ月ほど前に、記念にと貢いでやり、手ずから取り付けてやったものだ。
 せっかくだからと親衛隊のみんなとともにあの建物で一日遊び、半ば意識を飛ばしている身体を座した隊長の上に座らせて、崩れる身体を支えるようにペニスで貫き、四肢をそれぞれ隊員達の手で固定した。
 まあ、暇だからと四肢の指や両脇、ペニスと臍をねっとりと舌先で弄んでいたら、疲れ果ていたくせに、まだまだ元気に全身を痙攣させるから、なかなかに着けづらかったことを思い出す。
 しかも実際取り付けようとしてみたら、留め棒が前より太かったようで、かなり強く捻りこむ羽目になってしまった。そのせいで相当な痛みがあったはずなのに、コレのペニスは呆気なく勃起し、出せない精液を吐き出そうとばかりにぱくつかせていたから、『やはりコレは心底淫乱の変態穴奴隷だな』と皆で笑い合ったことまで思い出した。
 それをコレの向こう側にいる方にお教えしたら、「その場に余がいないということの、何と悔しき事よ」とひどく残念がられていた。
 そのせいか、前よりさらに歪に膨らんだ乳首を何度も何度も音が出る程に吸い上げて、その鋭い歯先を当てているようだ。
「あっ、──ひあああっ、痛っ、か、噛むの、だめぇぇっ!」
 熱を孕んだ悲鳴は、けれど、かなりの甘い響きが含んでいて、淫猥さを助長するものでしか無かった。
 さらにそちらから伸びた手が腰に触れ、そこにあるぱくつく魚の絵のように、同じく熟した粒を爪先で引っ掻き、押しつぶす。
「おやおや、ちょっと爪弾かれてるだけだというのに、そんなに良いのかい? なんともまあ、きゅうきゅうと締め付けてくれる」
 ならば、心地よい締め付けを与えてくれる礼をせねばと、ドロドロに濡れたペニスを握り、そこに描かれた絵の通りに作られた螺旋の蛇の戒めを弾き、鈴口に小指の先を埋めてみた。
「どうだ? 良かろうが」
「ひぃぃ、いっ、いっ、いっ!!」
 良いと言いたいようだが、息が続かぬままに、痙攣し、震えるペニスから濁って泡立った液をたらたらと零している。
 もう何ヶ月も射精をしていないコレのペニスは、この先一生他の穴を知ることを禁ずる、と私が決めた。まあ挿入したくとも、常時つけている飾りのせいで、口にすら挿れられるものではないのだが。どちらにせよ、コレは女も男も知らないままに、常人より何倍も敏感な性感帯だらけの身体で、ただひたすら絶頂に狂い啼いて我らに快感を与え続ける、たいそう便利な生きている淫具として飼われるだけなのだが。
 だからこそ、コレが女どころか男の穴を知る必要もなく、射精する必要もまたないのだ。きつい戒めは滅多に解かれることは無く、そのせいで溜まった精液を吐き出せない熱に苦しみ、けれどそんな熱にすら絶頂を覚える代物と成り果てている今、淫乱変態穴奴隷として、これ以上の悦びは贅沢と言うものだ。
 あの日、身体の前後に生きづいているような見事な刺青を、なんと皇王自身の身銭を持って施していただいた日。
 コレは、もはや男では無く、けれど、子を産む女でも無く。その存在全てで、我らに奉仕し、満足させるための穴奴隷として生まれ変わったと言っても過言ではないだろう。
 あの日、完成記念にと我ら全員で祝した日、モリオン自身のアナルを私が貫き、親衛隊長が口を犯しながら、二つの乳首とペニスを一人ずつが口で嬲り、背のタコの腕を銜えるアナルとクラゲに遊ばれるペニスと、エビと小魚が食らう乳首に一人ずつが張り付いて、舌先で愛撫し続けた。残る一人は全身くまなく手のひらで撫で上げて。
 連続絶頂に喉が枯れ果て、気絶してもその反応が面白くて楽しんでいたのだが、次に目覚めた時に男の裸を見たコレが、涎を垂らして擦り寄って来て。
 男なしではいられないモノに成り果てていたのには少々驚いた。
 と言っても、決して己の意志を失った訳でも無く、昼間は騎士として、親衛隊としての任を果たすだけの技と力は持ち得ていたことには、安堵した。
 私に好みは賢く強い男を嬲ることだからだ。
 あれから何度か私の名代として皇国を訪れる責すら背負って、毎回無事こなしている。
 だが、毎度皇王より頂く卑猥な玩具の餞別を、全てこの身に取り付けて遊びながら帰ってくるほどに。
 ちょっと放置すれば、全裸で至る所に淫具をつけて、泣いて男を誘うほどにこれは淫乱なのだ。
 騎士として、特に予定が無ければ規則正しい生活を送るコレは、毎日朝に起床して食事をしてから、騎士としての鍛錬を行う。昼食を取った後は、また鍛錬を軽く行った後に一度睡眠を取り、起きたら身体をくまなくキレイにして、少し遅い夕食を取ってから、私の部屋を訪れ、就寝まで護衛としてそこにいる。
 毎日これで遊ぶほど私も、親衛隊員達も暇では無いので、いつもがこんな風で。
 そんな身体を慰めるのは、部屋に溢れる程にある淫具なのだ。その中でも、皇王より頂いた白金でできた尿道栓が大好きなようで、それで中を掻き回して弄くり倒しているらしい。今では私の小指の先を挿れるだけで、痛いと言いつつ絶頂を覚えるほどになっていた。
 そのため、ペニスの中を弄くっていれば、勝手に蠢いて締め付けて愉しませてくれるので、最近では動かなくてもここを弄んでやるだけで良いのでたいそう楽だ。
 今も少し休憩と皇王に話しかけ、勝手に狂うコレを挟んで他愛ない雑談を愉しむことにした。



「……では、コレを捕らえたあれは……皇王殿の差し金だったと?」
 ひくつくアナルを愉しみながら、教えられた事実に驚く。
「ふむ、貴公がコレをたいそう気に入っているようだったのでな。国境調査の任を与え、案内 人には偽の道を行くように伝え、貴公の腹心のもの情報を流しておいたのだ」
 わざと国境を越えるように、と。
「剣はなまくら、食事の栄養価を下げさせ、重い荷物で歩き回させて力を奪って置いたはずだ。だからこそ、容易に捕らえられたのであろう?」
 カラカラと笑いながら言われて、そういえば、と思い出す。
 やはり、この御仁はとんでも無い古狸……と、口に出せないままに苦笑いして、吐きたくなる溜息を隠すように、元凶であるコレを軽く突き上げる。
 その拍子に、中で固くて芯のある肉棒に表面を擦られてしまい、あやうく爆ぜそうになったけれど。
 さすがに悔しくて、必死に堪えた。
 今、コレを前から犯している皇王は、ブヨブヨと脂肪腹を持つ壮年もそろそり過ぎようかという御仁だが、非常に固い芯を持つ、ずんぐりとした陰茎のペニスをお持ちで、これで快感の源を激しく突き上げられた相手は、たいてい白目を剥いて悶絶してしまう。私は何度もその様子を、コレが犯される時に見ていたが、確かにその硬さは一緒に犯す私にも良く伝わり、そのゴリゴリと削るような刺激は、快感となって背筋から脳髄まで痺れるように伝わった。
 だが、皇王はコレを後ろから犯す私のペニスのいびつな大きさと長大さを羨んで、この圧迫感と奥深くまで押し開いたあげくに伝わる蠢きが良いと褒め称える。
 それに恐縮はするものの、やはり自分の持ち物を誉められては悪い気はせず、ついつい張り切って奥の奥まで突き上げれば、皇王も「これは良い」と抉りながら掻き回す。
 二人が交互に突き上ければ、コレの身体がまるで中空で跳ねているようで。
「ヒギイイっ、いぎ、い、い!!」
 そのたびに上がる悲鳴が面白く、さんざん楽しく跳ねさせて、最後に、二人同時に思いっきり突き上げると。
「いひゃぁぁぁぁぁっ!!」
 雄叫びのような嬌声を上げたと思ったら、突き上げられた姿勢のまま、ぐるっと白目を剥いてしまって。
 崩れた身体は、小刻みな痙攣を続けながら、口からアナルから鈴口から、いろいろな体液を溢れさせていた。



 今度は一人ずつ犯そうと、転がしたソレを深々と貫いたは年功序列ということで皇王だ。
 すでに遊び始めてから長時間経っているためか、コレの瞳は虚ろに宙を泳ぎ、その身体は痙攣はしているものの、動きはしない。
 それでも、二人のペニスが入っていたわりには、そのアナルは皇王のペニスを心地よく締め付けてくれるらしい。
 湿った卑猥な音の大きさと皇王の愉悦に満ちた表情から、容易に推測できた。
「まこと、このような名器であるとは、あの時は思わなかったぞ」
 今更ながらに悔しそうに呟く皇王に、私は乾いた笑いを返す。
 今更返せと言われて返せるものではないけれど、名代と称してたまには使わせているのだから、そのくらい我慢して抱きたいものだ。
 皇王が達けば、今度は私。
 汁まみれの崩れた身体を抱き寄せて、腰を上げて貫けば、皇王が背中の刺青のアナルにねっとりと舌を這わせて。
「ひぃ、……ぃぁ……ぁ、」
 刺青に仕込まれた呪術は、たとえ対象者が気を失っても効果を失することはなく。
 意識がないながらも身悶え、私の快感を倍増させてくれる。
「そういえば、今日の議題であった国境の運河の件だが、少し譲歩しても良いぞ」
 ふっと顔を上げた皇王に進言されて。
 首を傾げたのは一瞬だ。
「そうして頂けるならば、こちらとしても申し分ありませぬ。ならば、こちらからは……」
 あれほど喧々諤々やりやった会議の時間が嘘のように、互いに譲歩し、条件を緩めて。
 私のペニスを頬張るぐちょぐちょで柔らかくて、けれど熱くて締め付けるこの素晴らしいアナルのように、両国にとって、最大の効果が出るようなそんな素晴らしい条件が、なぜか次々に生まれてくる。
 淫らな遊びで身の内に巣喰う悪心を放出しきって、雄の虚栄心やら競争心が薄れてしまったのか。
 心身共に満ち足りた我らが導く、互いを敬い、幸福を目指す施策は、きっと何よりも我が国を繁栄させるだろう。
「これからも、このようにいつも良い関係でいたいものよ」
「まことに。これからは、必ずコレをたっぷりと嬲り尽くして、毒気を抜いてから、話をすると良いかもしれませんな」
 その言葉に、皇王が笑いながら頷いて。
「ならば、次の議題に移る前に、また毒気をたっぷりとコレに注ぎましょうぞ」
「もちろん。明日の予定までには、まだまだ時間がございますし」
 眼下に視線を向けた私にならって、皇王もそちらを見やる。
 白い肌に乗った淫らな海獣に犯されるモリオンが、私を誘い。
 投げ出した四肢に蛇を絡ませ、無数の蛇鬼に犯されるモリオン自身が、皇王に淫らな姿を晒して煽り。
 二人の視線が、ねっとりと肌の上を這うのが判るのか、コレがぴくりと震えるが、もう動く力はないようだ。
 なのに。
 誘われる。
「この良き関係が、コレが生きている限り未来永劫続くように、どうかそちの力で呪術をかけてくれぬか」
 皇王の手が、コレの太股にかかり、持ち上げて。
「それは良き考えでございます。ならば国に帰り次第、我が持てる力全てで、決して解けることの無い呪術を。コレが生きている限り、両国がますます仲良く繁栄するように」
 私もコレの背中に手を回し、ゆっくりと持ち上げて。
「ならば、コレにはいつまでも健康に生きて貰わねばならぬな」
「それも、十分配慮いたしましょう。何、我が国の秘薬には、若々しさを長引かせるものもあります。たいそう高価な、滅多にとれぬ薬の上に、特別な秘術を施さねばなりませぬが……。何、国の繁栄のため、惜しいものではございませぬ」
「まこと、国のために、ぜひとも頼みたいものよ。これも騎士として、騎士冥利に尽きるであろうよ」
「ん、く、はぁっ」
 揃って天を衝く二本のペニスを、ズブズブと自重で飲み込む身体が浅ましく喘ぐ。
 白い肌に刺した赤みはたいそういやらしく、互いにまだまだ元気だ、と、この時ばかりは微妙な対抗心に囚われて。
「これから5回ずつ交代で突き上げて、我々それぞれが次に果てるまでに、多く達かせた方が勝ちということに」
「それは面白い、その勝負乗りますぞ」
 私よりは楽しげな皇王と共に、視線を交わし、さて、コレの良いところはどこだったか? と、一回目を突き上げれば。
「う、ぐっ、ひぃっ!」
 まさしくよいところだったようで、たらりとヨダレを零して、恍惚の表情で天を仰ぐ。
「さっそく一回目とは。毎夜の遊戯はだてではなさそうですなあ」
「負けるつもりはありませぬゆえに」
 軽口で返しながら、まだまだ宵の口の遊戯に集中した。
 


 気の合う二人の時代は、後の世に、安寧と幸いの治世と賞賛されることになる。
 記録に寄れば、当時の王達が秘術を使い、両国の繁栄の願いを封じ込めたという道具は、彼らが亡くなった後も、次の世代には確実に残っていたという。それは、確かに彼の国の城の奥深くで大事に奉られていたというのだが。
 けれど、それがどのように形で、どのようにして使われていたのかという記録は、いくら調査をしてもその秘術とともに見つかることはなかった。


【了】


 おまけ