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尻穴の栓がずるりと抜けて、「ああっ」とあえかな声を上げた海音の身体を押さえつける。
中に指を潜らせば、清められたとは言え、性的快感により粘液を滲ませるようになったそこは、再び熱くぬかるんでいた。
「い、あぁ……あつ……っ」
微かな声が早い吐息に混じる。カルキスの指がさらに奥に入り、限界まで入ったとき、その指先に少し柔らかなものが突き当たった。
「ん、うっ……」
それは、狩人達が入れたトウの実だ。それを探れば、滑らかなはずの表面が僅かに凸凹しているのが爪先で感じた。
調教師が足りるほどに入れた湯水のせいで、トウの実は必要な水分を含み、今や限界まで大きくなっていた。
それは、ぎっちりと海音の腸を埋め、完全にフタをしている状態だ。
栓がなかなか抜けなかったのも、海音がとろとろに蕩けた状態になっているのも、これが中で圧迫しているからだった。
このトウの実は、強壮剤ともなるグイナの実と同じように、奴隷を虐めるのに使われている。もっともグイナはその強い痒みでもって苛むが、トウは痒みだけではなかった。
特にその膨張性が特徴で、蔓の方もが未だに海音の尿道をぎちぎちに広げて埋ったままだ。
さっきからモジモジと腰をくねらせているのは、快感だけで無く、溜まった尿が出口を求めているからでもあった。
「んっ、くっ……かる、き、すさま……あ、子種、くださ、い。孕ませて……御子……ください……あっ」
淫らな願いを繰り返す海音の身体を抱きしめるように押さえつけ、その肌をゆっくりとまさぐる。
「んあぁぁ」
敏感な肌は、そんな刺激にすら強く反応し、身悶え、腰をくねらせた。
「孕ませてやりたいのはやまやまだ。だが、お前の腹にはトウの実が入っておる。これが砕けて出てくるまでは、子を孕ますことなど無理よ。いくら注いでも、出てきてしまうのでな」
愉快そうに耳元で囁いて、腹をさする。
「やあ……」
「子を孕んだら、この戒めはずっと外してやろう。そうなればお前は自由だ」
「んぐっ、あぁ、うれしっ、いっ。いっぱい、出せる……ぅ」
陰茎を幾重にも戒める枷を外すという言葉に、快感に濡れた瞳が大きく見開かれる。
どんなに犯されて、尻穴で感じても、カルキスが許さない限り射精できない辛さは、今この瞬間でも味わっている海音にとって、それは、何よりも代えがたいことだ。
しかし、カルキスが反応したのは、 海音のその歓喜の言葉には、自由、が含まれないことだった。
快楽に囚われた証がこんな時にも現れる。
「御子……孕ましてぇ、欲しいぃ」
もはや、あり得ない妄想だという認識すらないのだろう。快感に震える顔に、歓喜の表情が浮かんでいる。
「欲しいか? このトウの実で腹一杯の中に欲しいか?」
撫で上げた尻が震え、言葉よりも雄弁にカルキスを誘う。
「ほし……ああ、挿れて……。カイネの汚い穴を、どうか……お使いください……」
その言葉に、カルキスは海音の足を割り開いた。
慎ましやかに閉じているはずの尻穴は、今日一日の陵辱で小さく口を開いたままだ。そこからだらだらと流れる粘液で、肉壺は充分に潤っているようだ。
「ならば、たっぷりと味合わせてやろう」
「ひっ」
前戯など不要とばかりに、カルキスの逞しい陰茎がずぷりっと突き刺さる。びくんと硬直した身体を抱きかかえ、奥の奥まで犯さんとばかりに、突き入れる。
「あ、あっ、あっ」
亀頭がトウの実に触れた。それすらも押し込むようにぐいっと力強く腰を打ち付ける。
この程度ではトウの実は割れない。トウの実は、限界まで膨らみ、その表層の皮がひび割れて初めて、割れていくのだから。
「……っ、ぐっ、ぎっ」
ぐいぐいと押し込めば、海音が泡を吹いて痙攣していた。
太く丸いトウの実の圧迫は相当なのだろう。それが無くても奥まで埋め尽くすカルキスの陰茎だ。
柔らかいようで固い。跳ね返すような弾力のある実が、亀頭を刺激し、いつも以上に気持ちよい。
「カイネ」
仰け反り、口を大きく開けて喘ぐ顎を捉えて引き寄せて。
滑り込ませた舌で、先ほど指で味わった舌を捕らえ、引き出し、噛みついた。
「ぐっ、あっ、あぁ……」
カイネから溢れる唾液以上に、自身のそれを注ぎ込む。
ごくりと海音の喉が動く様に、芯から悦びがわき上がる。
これを捕らえてからずっと。
一つ汚す度に、一つ壊す度に。
身の内から湧き起こる歓喜は、かつてないほどに激しいものばかりだった。
身体はすでに陥落して、それに引きずられるように精神もひどく弱々しくなっている。
それでも、正気になれば、怒りと蔑みの満ちた目を向けるのが海音で、完全に落とすのは難しい。
今日のカルキス以外に犯されるという体験で、ようやく子が欲しいと言わせることはできたけれど。
「海音よ、お前の精神が壊れるのが先か、三年が過ぎるのが先か……どちらであろうな」
問いかけながら、それでも勝利を疑わぬカルキスが、ぐいっと腰を突き上げる。
「んあっ、ああっ」
喜色に満ちた嬌声を上げる海音は、トウの実の突き上げにすら悦んでいて、自ら腰を振って、カルキスを誘ってくる。
「ほんとうに私の子を孕むことになったら」
あり得ぬ未来だと判っているが、それこそが、もっとも海音にとって堪えることだと判るからこそ、それができないことが口惜しく、熱望する。
だか、だからこそ、孕むまでは逃すつもりはなかった。
「あ、あっ、イイっ、達かせてぇ、あぁぁっ」
激しい抽挿に、髪を乱して海音が吠える。
パシン、パシンと互いの肌が打ち合う音が室内に響き、汗が粘液があちらこちらに飛び散って。
さんざん犯された海音の動きは鈍く、声は掠れてはきているけれど。
カルキスは、さんざんこの時を待っていたのだ。
「外せば、狂うかもな」
嬌声は無意識で、その身体自体はもう限界だ。手足は投げ出されていて、自らの力では動きもしない。ただ、グッタリとした海音の、未だそこだけ元気に勃起している陰茎に手を伸ばした。
そこには、抜かれること無く治まったままの太い蔓が覗いている。そのペニスには幾重も枷が嵌まっていた。
それに手を伸ばし、無造作にパチパチと枷を外していき。続いて、ギッチリと埋まっているトウの蔓を、力任せに抜き取った。
途端。
「あぁぁぁぁぁっ、あぁぁぁ——————っ」
海音が、喉も裂けんばかりの嬌声を上げた。
息が切れても、僅かに吸い込んで、また声を上げて。
「くっ」
埋めたペニスを引き千切ろうとするほどの強い締め付けに誘われ、カルキスもその体内にどくどくと精を迸らせた。
カルキスとて、いままでの海音の痴態にその欲情は際限まで高まっており、まして我慢などする必要も無かった。奥深くを犯し、自らの熱い体液を注ぎ込み、先端に触れるトウの実に浴びせかける。
その間も海音自身の長い吐精が、その身体を跳ねさせながらも何度も続いていた。それもまた心地よい快感をカルキスに与え、満足感を与えた。
そんな海音の白い精液に薄い赤が、さらに濃い黄色が混じり初めても、まだその肉は痙攣していて。
続いた排尿も、噴水のように噴き上げるほどに激しく、その刺激ですら絶頂を迎えているのだ。
トウの蔓で拡張されたせいかやたらに太い水流は、寝具を飛び越えて床を叩き、暴れた拍子に海音の顔まで降り注いだ。
叫び続ける海音が咽せた原因が何かなど、あまりにも明白で。
それでも叫び、悶え、激しい痙攣を繰り返す。
それは、トウの蔓がもたらした後遺症でもあった。
最初の痒み、太くなることによる拡張の効果。けれど、蔓がもたらすのはそれだけではなかった。ふやけきった蔓が抜けるときにその皮が小さな切片となって、中に残るのだ。普通に抜いたときに取り出せるのは、芯の部分だけ。
その切片は鋭く尖っている。内壁を深く傷つける程では無いが、広げきって敏感になったそこを、射精や排尿時に突き刺さり、抜けて、また突き刺さりを繰り返して出てくる。その勢いのままに、だ。
それ故に、その絶頂はいつも以上。
勢いのある排尿がようやく治まっても、まだその腰だけが生き物のようにカクカクと揺れていた。
その動きをペニスに感じ、クツクツと嗤いながら、己のペニスを引き出した。
蹂躙され続けた尻穴は、太い陰茎が抜けたままにぽっかりと空洞を上げている。
そこから滲み出る粘液に泡立った白濁が混じって、海音はぜいぜいと荒い呼吸を繰り返す。
そんな海音を見据えながら、カルキスは寝台の濡れた敷布を剥ぎ取り、それで手早く赤く染まった尿で汚れた海音の身体を 清めた。
放心状態の海音はされるがままだ。
「狂うほどの快感というのは、どのようなものだろうな」
神経が剥き出しになった程に敏感になった尿道を、何度も何度も、敏感過ぎる場所には固体並みの刺激を与えるだろう精液で嬲られて。
達けば達くほどその刺激は強いはずだった。
新しい敷布を敷き直し、横たわった腕の中に海音の痙攣したように震える身体を包み込み、背後から抱き締める。
ぷくりと膨れあがった乳首をつま弾き、腫れ上がった尻穴に猛々しい陰茎を埋めていき。
首筋に噛みついて歯形を残しつつ、その熱く熟れた妙なる身体を繰り返し貪った。
「ひっ、うっ、あっ」
突き上げる度に、海音の喉から零れる甘い嬌声は、ひどく耳に心地よい。
熱く潤んだ肉の締め付けは、あれだけ蹂躙されているにもかかわらず、変わらずカルキスを満足させた。
海音の陰茎は項垂れ、感じているようには見えないけれど。勃起しなくとも先端からびゅっびゅっと粘液を噴き出して、その鈴口が何かを求めように喘いでいる。
そんな海音の身体はどこもかしこも甘く、その体臭ですら男の欲をあおり立て、極上の媚薬のようにカルキスを誘った。
「も……ああっ、あっ!」
ぶるりと震えて締め付けられた感触に、その股間を見やれば、萎えたままのそれからだらりと白濁混じりの粘液が糸を引いていた。
「はあ、ああっ、あっ、ひぐっ、も、ゆるし……てぇ……」
泣きじゃくる力無い懇願ですら、身体の芯が疼く。
「まだだ、まだ私は満足しておらぬ」
最近海音でしか欲を解放していないカルキスにとって、海音を焦らすために放置している間というのは禁欲の日々だ。王たるカルキスにとって、そんなことをする必要は無いのだが、何故か大量に溜めた精液を、海音の穴に注ぎたいと思ってしまうのだ。
だからこそ、たった一度で終わらせようとは思わない。
くたびれはて拒絶しようとする海音を組み伏せ、泣きじゃくる姿をもっと見たい。
飢えに餓えていたカルキスの欲求は、留まること無く海音に向けられていて。
結局満足したカルキスが離れたのは、静かな夜が過ぎ、鳥の鳴く声が爽やかに響く明け方になった頃だった。