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逞しい男根を口にも後孔にも頬張り、甘く鳴く芋虫は虚ろな瞳からぼろぼろと透明の滴を流していた。
いきなり挿入しても柔らかく受け容れる尻の穴。まるで口の中で愛撫されているように、歯茎だけで噛むように柔らかく刺激してくるのだ。と思えば陰茎全体を絞るように締め付けて、吸い上げて。
「こりゃ、すげえ……」
狗乱が引きつった歓喜の声を上げるのを、口で味わっている晴栄が陶然と頷く。
「……いっつも相手にしてる盗賊やろうなんか目じゃねぇ。これが……リジンの性奴隷の威力……っすか」
「そんな、すげぇんで?」
「ああ、すげぇ……」
実のところ、生粋の純血を相手にしたのは初めてだった。
混血であれば使う気になどならず、山賊や盗賊などの無骨と言って良いモノばかりを相手にし、彼らが飼っていた奴隷はそのまま解放していたからだ。
けれど、前後から貫かれ、ぐうっと息苦しさに唸るこれは、純血も純血、リジンの王族なのた。
「……悔しいが……最高級の性奴隷だと言われるのが判っちまう」
家族が、知り合いが、友人が。
そう言って売られた自分たちだが、信じてはいなかった。ただ、自分たちがやたら性欲が強いことだけは認めていたけれど。
体格の良い二人に貫かれ、半ば宙に浮いたように揺すられる身体。
軟体動物のようにうねる背に、薄く汗が浮いた肌が、しっとりと狗乱達の肌に絡みつく。
生きている人形のように美しい身体が、容赦ない突き上げにも全身を朱に染め、淫らな嬌声を上げて悶えているのだ。
淫魔の子。
神の子。
良いとこ取りをした末裔は、こんなにも男を誘い、狂わせる。
「……こいつの祖先が、俺たちをこんなふうに作ったんだ。そいつがさっさと血を薄めときゃ、今更そんな情けねぇ評価なんて付かなかったのによぉ。自分たちは安全圏にいて、俺たちみたいな混血を大量に付くって。売り飛ばされたのは、こいつらのせいだ……」
快楽に流されないように悪態をつく。
快感に流されないように、わずかに目を離した隙に失った妹を思い出し、あの時の喪失感と孤独感を思い出す。
思い出した憎しみに、ドクドクと体内を熱い血が駆け巡る。憎悪と欲望が入り混じったそれは、ひどく濃く、嗜虐に満ちた身体を膨張させた。
「うっ、ひっ!」
海音が大きく目を見開き、含みきれないほどに膨張した陰茎に息を詰まらる。尻穴はシワが無くなるまで押し広げられ、めくり上がる真っ赤な内壁を晒した。
膨張したそれから逃れようとするのか、白い尻が小刻みに揺れるが、海音の陰茎を戒めた縄がそれを押さえつける。
「どうした、踊れよ。気持ち良いんだろうが、淫売よぉ」
朱理が胸から伸びた紐を引けば、ギィッ! と声なき悲鳴を上げて、全身が仰け反る。
「イイねぇ、そんなに締め付けて、美味そうにしちゃって。ほら、ほら、ご褒美をたっぷりやるよ」
種付けは身体を思いっきり押し込んで、体内奥深くに植え付けるように注いでやる。太股を掴み、限界まで股間を押し広げ、その間に腰を押しつけて。
ひくひくと震える肉壺が勝手に搾り取ってくれるから、こっちは楽だ。
ほんとうに、何から何まで……。
犯す者のためにある身体だ、これは。
激しい欲情故に空色の瞳に朱が混じり、獲物を捕らえている。
これは、モノ。
この凝り固まった熱い欲望を、柔らかく溶かし受け容れる代物で、我らの支配下にあるモノ。
犯せ、壊せ、支配せよ。
脳裏に囁くそれは、陵辱の度に自分たちを支配する意識。
ぎらぎらと欲望に満ちた瞳にさらに朱が混じり、赤紫のような色になる。
紫がかった空色の瞳だけが、リジンの血を受け継いだ四人の共通点だった。容姿は全く違う四人にとっての唯一共通のものである瞳の色は、それが古文書にあった元凶の淫魔の特徴であったと聞いて、道理でと肩を竦めたのは過去のこと。
神の子は空色の瞳であったと言うから、遠い祖先が気に入ったという容姿の好みが子孫にも甦っているのかもかもしれない。
これがラカンの王のモノだと言うことがひどく悔しい。
悔しいけれど、奪うことはできないという理性はある。せっかく地獄から這い上がったこの身を、棒に振る事は絶対にしない。
だからこそ、今この僥倖をたっぷりと味わい尽くすだけだ。
「ぐふっ……うっ」
長い、喉の奥まで犯していた晴栄のペニスがずるりと抜けて。
ようやく息が付けるとばかりに海音が息を吸い込んだ拍子に、次の陰茎が突き刺さった。
「休む暇なんてねえよ、王子様。俺たちゃ、いっつも一昼夜遊んでから引き渡すのに、今回は後5時間ちょいしかねぇんだから」
礼円の陰茎が喉の奥を犯し、息苦しさに痙攣する肉をたっぷりと味わう。
「出たぜぇ、たっぷりと」
「うっ、ううっ……」
ごつごつとした異物で盛り上がる陰茎が、壁をめくりながら出てきて。
手が離れている間に逃れようとした尻に、すぐに別に陰茎がめり込んだ。
「今度は俺だよ、親分みたいにでかくないからモノ足りねぇかもしれねぇけど」
「ひっ、ぎっ、ぃっ」
自分を卑下する割りには明るい宣言は、その分激しい抽挿で海音を翻弄した。
その間に、晴栄が長く柔らかな棒を取り出してきた。ところどころ丸みのある瘤が出た木の枝は、ひどくしなやかでたわんでいる。
「お嬢ちゃんは濡れ濡れでお漏らしばっかするからなぁ、これで塞いどいてやるよ」
くつくつと嗤いながら、その先端が鈴口に押し当てられて、ぶつりと入り込む。
「む──っ、うっ」
痛むのか、暴れ出した身体は狗乱が押さえつけ、礼円は慣れた手つきでそれが奥まで押し込んだ。
「こいつはトウって木の蔓の皮を剥いだものなんだが、おもしれぇ特徴があってな」
その言葉に、彼らの嘲笑が海音を襲う。
「膨らむんだよ、お嬢ちゃんの汁をたっぷり吸ってな。汁ダクお嬢ちゃん向きの栓って訳」
「さらに、皮の中の軸にあんまり触れていると痒くなるんだよ」
「ゴツゴツしたコブも気持ちよいだろう?」
「ああっ、あぁぁ──」
真実は、何よりも体感で襲ってきた。
ずりっずりっと抜き差しされて、コブが狭い尿管を刺激する。そのたびに痒みが増して、擦られるのが溜まらなく気持ちよくて。しかも、違和感があった程度のそれが、中からどんどん張り詰めてくる。
「い、ひっ、あ」
拒絶したくても、口内を占める陰茎に言葉にならない。敏感な口蓋を亀頭で擦られ、息苦しいのに流す涙は快感のそれで。
後孔を満たす陰茎の、激しい抽挿は確実に前立腺を押し上げて、激しい衝動が繰り返される。尿道も犯され込み上げる快感に我慢できずに鳴き、狂おしい痒みに襲われて腰が強請るように動く。
どんどん激しくなる刺激に、目が眩む。
穴という穴を刺激されて、理性など飛んでいってしまいそうなのに。
なのに。
ずるっと口内から陰茎が白濁と共に抜け落ち、虚ろな海音の瞳が数度瞬いて、確かな意識の存在に、覗き込んだ晴栄が嗤った。
それに縋るように海音が請う。
「……おっえ……、あえてえ……」
だが、閉じられない口のまま、紡いだ言葉は意味をなさない。
「なんか言ってるぜ、汁ダク嬢ちゃん王子様が」
「は、喘いでいるだけだろ、淫売がもっと欲しいってな」
だらだらと、流れる陰茎をポンポンと軽く叩かれて、そのたびに身体が跳ねる。
四人とも、海音が何を言いたいのか判ってるのだ。
その腫れ上がったように勃起した陰茎の、きっちりと根元を戒め、動きを抑制する金環と枷の解放を願う海音の懇願を。
「王様が言ってたっけ。あんた我慢できねえから、我慢を覚えさせてくれってな」
もとより、外す術も無いのだけど。
「でもまあ、良い子で俺たちの相手をしてくれたら、外してやっても良いけどよ」
濡れる鈴口のかぶれて赤くなっている粘膜を引っ掻いてやりながら、耳朶をねとりと舐め上げて、囁く甘い言葉に、海音がコクコクと頷く。
「一つ、口枷を外しても、絶対に噛むな」
「ひとぉつ、腕を解いたら、俺たちのチンポを握って、ずっと擦れ。手を離したら、お仕置きだぜ」
「一つ、俺たちの命令は絶対。一つでも逆らったら、その白い肌が真っ赤に染まるまで鞭で打ってやる」
「最後の一つは、それを自分の言葉で宣言しな。リジンの王子様としてな」
言葉とともにするりと離れる陰茎と手。
諾としか言えない状況で、海音はひくひくと痙攣する身体を投げ出された。
「あ……」
口枷が離れ、白濁混じりの涎が垂れまくっていた顎が動く。痛みすら覚えてうまく動かないそれを掴まれて、顔を上げさせられて。
芋虫とかしていた縄も外されて、肌の上の赤い痕だけが残っていた。
その身体を背後から抱き起こされて。
すでに四人分の精液が注がれていた後孔から流れ出す感触に、ぶるりと身震いする身体を寝具の端に座らされた。
「さあ、どうぞ王子様。どうして欲しいですか?」
クツクツと喉の奥で嗤う男達の前で、海音は呆然と見つめ。
「あ……」
男達の視線が集まる先で、ふるりと震える蔓が突き刺さったままの陰茎に気付いて顔を背ける。
言える訳がなかった。
王子たるもの──否、今はもう王だ。その王としての矜持が甦り、屈してはならないと命令する。
「あれ、言わないんだ」
おかしそうに狗乱が言う。
「言わないんだったら、もう一度縛って、徹底的に嬲ってやるよ」
けれど、その言葉に孕む怒気は地を這うようだ。
「何をしても良いと言われているからな。おいっ」
顎をしゃくって朱理を呼んで、その手の中にある張り型を見せつける。
「ひっ!」
海音はそれを知っていた。
大人の男の腕の太さもあるそれは、陰茎の張り型というよりは、その形状が誇張された置物だ。大理石でできたそれは、実のところカルキスが用意した海音の部屋の飾りであって、実用的なモノではない。
遊びたくなったら使えば良い、と言われていたけれど、あまりの異形さにさすがにそれを使おうとは思わなかった代物だ。あの部屋の飾りは、海音自身では使いたくないようなそんな飾りばかりが置かれていて、これは、その中の最たるモノの一つだ。
「まずはこれの上に座らせてやろう。おい、晴栄」
「へい」
「い、イヤだっ、やめろっ」
逃げようとして、何となく絡め取られた身体が足裏に手を入れて持ち上げられ、尻から下に降ろされる。
ぬるりと触れた感触に、全身から音を立てて血の気が失せて。
「あ、壊れるっ、イヤだっ」
「別に、こっちはしたいようにするだけさ。あんたは、俺たちの言うことなんて聞くつもりなんかないんだろ?」
滑る先端が、ぐいっと後孔の壁を押し広げだした。
「ひっ、イヤだっ、言うこと聞くっ、聞くからっ!!」
「へぇ……」
ずるりとそれでも降りていく身体に、必死になって言葉を継ぐ。
「絶対に噛まないっ。手を使って、扱くからっ、言うこと聞くからっ、やめっ」
ほとんど通常サイズの陰茎まで押し広げられたところで、身体が止まった。
置物の、まだ最初の数センチしか入っていなくて、そこからカリの部分は倍以上の太さがあった。
しかも、そこで止まっただけで外されることはなくて、もし晴栄が手を離せば、一気に入っていく状態だ。
「ひっ!!」
晴栄が手を動かした拍子に、ずるっと少し入っていった。
「重いっすね。これはうっかり手が滑りそうだ」
「やめっ……」
「王子様、さあ、宣言してくださいな」
視界の中で口角を上げて促す狗乱が歪む。ぽろりと溢れ落ちた涙が、顎先から落ちた時。
「私、海音は、あなた方の言うことに従うことを宣言する」
「名前を言いな。誰に誰が従うのか、例えば何をするのか。ああ、俺たちは淫魔獣団って呼ばれてんだ。俺たちに襲われた盗賊共は色狂いになって、刑を受ける前から性奴隷にしかなれねぇ身体になるんでな」
その言葉に、それまで朱に染まっていた肌が色を失っていく。
恐怖に満ち、小刻みに震える顔を覗き込み、狗乱が促した。
「さあ、いいな。すぐに言わないと、晴栄の手を離さすぞ」
「ひっ、ま、待ってっ──あっ、……わ、私 海音は、い、淫魔、獣団に、従いますっ、絶対に噛まなくて、手での……愛撫を止めないからっ」
「色狂いでチンポ大好きな露出狂の王子様だろ。それに俺たちに従うのに、様くらいつけろよな」
けれど、狗乱は容赦しない。しかも、そのたびに少しずつ下がり、押し広げられる恐怖に海音は差逆らえなかった。
「色狂いでチンポが大好きで──私、露出狂で……ひっ、か、海音で、王ですっ、淫魔獣団、さ、ま、に従います、従うから、もうっ、無理っ、ひっ」
再び溢れた涙が、頭を振る海音によって、幾つも左右に飛び散っていた。
カルキス相手の時とは違う。
カルキスの時には、戦勝国と戦敗国という大きな立場の違いがあり、悔しくはあっても頭の片隅では仕方がないという気持ちがあった。
また、カルキスは王であって、ラカンの支配者であったから、それも仕方なさに拍車をかけていた。
だが。
「おい、また礼を忘れているぞ」
「ひ、ぎぃぃ──っ」
竹でできた丸棒の鞭が背でしなる。弾ける痛みは瞼の裏に火花を散らすほどで、すでに何度も受けた背は幾重にも真っ赤な打痕が残っていた。深い傷もいくつか有り、血が滲んでいた。
けれど、じんじんと滲む傷に、悲鳴と共に甘い吐息が零れる。
「む、ふぅ……ありが……とござ、ます……っ、狗乱、さま……」
擦り寄り、足の爪先に舌を這わせ、額を擦り寄せる。口を開けた拍子にたらりと零れた白濁を慌てて舐め取る。零せば、また叩かれるのだ。
「美味いか?」
唇から伝う白濁は、もう薄い。
狗乱達は休む間もなく海音を犯した。何度も射精し、全てを海音の体内に残した。
彼らは巨大な陰茎の置物で脅し、言うことを聞かなければ鞭を使い、辱めるように卑猥な言葉を口にさせた。
それは、カルキスに犯されるよりも、カルキスの命を受けた調教師の行為よりも屈辱で、海音の矜持をボロボロに打ち砕いた。
抗っても、敵わない。
逆らう海音に、狗乱達は暴力を厭わなかった。
尻に残る平手打ちの痕は、四人が交替で打ち据えたモノだ。
泣いて海音が謝罪するまで、謝罪しても続けられたそれの後に、海音は許しを請うために自ら男達にまたがり、全員を達かせた。
腹の中がごぼこぼと音がするのは、吐き出された精液を納めたままだからだ。
掻き混ぜられた精液が泡立ち、弾ける刺激を感じる。
そんなものにすら肌が粟立つほどに快感を感じ、解放を許されない男根の鈴口がぱくばくと喘いだ。そこには、最初に差し込まれたトウの蔓が刺さったままで、粘液を吸ったそれは膨張し、きつく尿道を押し広げて塞いでいて。
そのせいで陰嚢は滾った精液が詰まっている。
もう達きたい、達かせて、と恥も外聞もなく擦り寄って、懇願しても許されなかった。
後孔はのべ何本の男根や張り型が入ったか判らない。もう広がりきってしまって抜かれても閉じず、たらりと注がれた液体を零してしまう。そうなれば、お仕置きだと逆さにされて、零れたそれを中に入れられた。
犯され続け、快感と痛みと解放されない苦しみとに苛まれ、朦朧とした意識が何度も薄れかけたけれど、男達はそのたびに海音を叩き起こし、寝た罰だと乳首を細い紐で括り出し、重りをつけて踊らせた。
それは、痛みに泣き喚く海音が全員をフェラチオで達かせるまで続いて。
もう何度も達った男達は容易には達かなくて、開いた口が麻痺して閉じなくなって、男達が海音の頭を掴んで前後させて結局達ったのだ。
そのせいで、海音の身体は、髪から爪先に至るまでいろいろな体液でべたべただ。
その身体からようやく狗乱達が離れたのは、約束の時間が来たときだったが、海音は気付いていなかった。
ただ、カクカクと腰を振り、「狗乱、様、犯して……ください……、セイエイさま、海音を使ってください……」と何度も繰り返し、自ら男達を誘う。
そんな海音の姿に、狗乱達は満足げに頷くと、最後の仕上げにとりかかった。