【地獄への穴 (3)】

【地獄への穴 (3)】

スカトロ描写有り


  浣腸による疲労を訴える純一を、啓治は休ませはしなかった。
 それどころか、自らのペニスにのみ潤滑剤を注いだ直後、一気に純一のアナルを貫いたのだ。
「ひっ、いあ──っ、ぁぁっ」
 激しい痛みが脳髄にまで一気に駆け上がる。
 五度にわたる浣腸で腫れ上がったアナルは薄く引き延ばされ、数カ所で裂傷を起こしていた。
 内股をとろりと流れる透明な潤滑剤に、赤い色が筋となって交じる。
「高藤家の入り婿の役目は、我々の性的欲求を解消することだ」
 激痛に戦慄く純一に、冷ややかな言葉が頭上から響く。
「特に、私のな」
 啓治は容赦しなかった。
「ぎあぁっ!」
 さらに押し込められ、肺の空気全てが悲鳴となって飛び出ていく。
 ぴりっと壁が裂け、新たな鮮血が噴き出していた。
「あ、ぎゃあ゛、あ゛──っ」
 多少は緩んでいたとはいえ、己の便程度のものしか通ったことのないアナルだ。そこにに逞しいといって良いペニスが、力任せに入っていったのだから、裂けない筈がない。下手すると括約筋が切れて閉じなくなる恐れすらある行為だ。
 けれど、啓治はためらうことなく二度三度と抜き差ししながら、さらに奥を目指していた。
 きつい締め付けに、啓治が顔をしかめて尻を叩いた。
「ゆるめろ、垂れ流しになりたいのか」
「あひっ」
 最初のスパンキングで赤く腫れたままの尻は過敏に痛みを伝える。
 裂ける痛みに飛びかけていた意識が、つかの間戻り、必死になって身体から力を抜こうとした。
 けれど。
「あひゅっ、ぎううぅぅっ」
 力をゆるめた途端に、また深く入り込むペニスに、再び身体が強張る。
 浣腸時の腹痛もひどいが、今の痛みに比べればたいしたことなど無かったのだと判る。
 服を着たまま、純一の目の前で出して見せたペニスのサイズは、純一のそれより大きかった。
 入るわけがないのだ。
「や、やめっ、ぎあぁっ」
 痛い、痛い、痛い。
 逃げようとする身体を啓治の力強い指が捕まえる。
「ったく、性具が主人を苦しませてどうする」
 舌打ちしながら落とされた言葉すら耳に入らない。
 だからといって、啓治の動きにためらいなど無く、奥まで入ると今度は休むことなくぎりぎりまで引き出した。
「あ゛ぁっ、ふぁぎゃあっ!!」
 内臓が引きずり出される痛みが新たに加わり、意味のない悲鳴が迸る。
 蒼白となった身体が痙攣し、上半身ががくりと台の上に倒れ伏した。
 意識はあるのだが、何もかもが遠く感じる。
「ひっ、ひぐぅっ、ううっ」
 肉に楔が打ち込まれる。その拍子に、肺の中の空気が全て出て行く。
 楔が、絡みついた肉ごと引き抜かれる。血液がボタボタと溢れ出て、熱がすうっと引いていった。
 腕も足も、もうどこもかしこも力が入らない。
 抽挿のたびに身体が前後した。
 啓治が肩を竦めて潤滑剤を足して、それがグチャグチャと音をたてる。
 そのせいか、それとも激しい痛みのせいで神経が麻痺してきたのか、純一の喉が悲鳴を出すことが少なくなってきた。
「あ、あっ、はあっ」
 抽挿のリズムにあわせて、吐息に音が重なる。
 もう、自分が一体何をされているのか、何がどうなっているのか、考えることができなくなっていた。


「少し痛めすぎたか……これでは面白くないな」
 そう言いながらも抽挿を止めない啓治に、見ていた啓一郎達が顔を見あわせた。
 みな嗜虐性が強いが、それでもさすがに苦笑いを浮かべている。
 下手をすれば使い物にならなくなる行為をためらいなくやってのけた啓治の性質は、家族の誰よりも強いのだと改めて認識したのだ。
「記念すべき破瓜の痛みを存分に味あわせたいと言ったのはおまえだ。気を失わないだけでも良しとせねばな」
 宥めるような啓一郎の言葉に、隆正が吹き出した。
「処女穴に無理矢理突っ込めば、女でも泣き叫ぶ。孝典の時は解してはやったが、それでもきつかったからな」
 その視線が落ちた先は、自らの股間でペニスをしゃぶり続けている孝典だ。
 高藤家の面々は皆スーツを着込んだままだが、孝典もまた何も身につけていない。
 その身体には、拘束されたような痕が全身に走っており、さらに背中には鞭の痕すらある。
「孝典、純一のペニスをしゃぶって宥めてやれ。これではいつまで経っても終わらぬ」
 その言葉に、孝典の瞳が大きく見開かれた。
 口に含んでいた隆正のペニスが、ぽろりと抜け落ちる。
「あ、……わ、私が……?」 
 おどおどと隆正の顔と泣き叫ぶ純一とを視線が往復する。
「あぁ、たまには違うペニスを味わうのも愉しかろう。早くしろ」
 けれど、啓一郎の声が聞こえた途端、その表情から感情が消えた。
 四つん這いのままに踵を返し、犯される純一の元に向かう。
「ん、じゃ亮太は、乳首をしゃぶりな」
 若々しい声音の命令に、春樹の膝の上に前向きに座っていた亮太が、びくりと身体を震わせた。
「あ、んあっ、は、春樹っ……でも……」
 振り返り、縋るように春樹を見つめる。
「ちっちぇ乳首だから、ペニスよりは美味しくないかもしれないけど。まあ、そっちはペニス大好き親父に今日は譲ってやんなよ。乳首も腫れ上がったら少しは愉しめるかも。な、亮太」
 亮太の瞳が、台の上で貫かれている純一と、その股間で萎えて垂れ下がっているペニスを口に含もうとしている父親の姿を映した。
 とろりと潤んでいた瞳に、諦めの色が浮かぶ。
「ひ、あっあんっ」
 じゅるっ、と濡れた音が、亮太が動いた途端に響いた。
 勢いよく跳ね返った春樹のペニスがぬらぬらと粘液に光り輝いている。それと亮太のアナルの間で糸が伸び、すぐに切れた。
「ふふ、物欲しそうにひくついている」
 さっきまで春樹のペニスを銜えていた亮太のアナルの縁に指を這わせると、まるで呑み込もうとするかのようにそれがひくひくと蠢いた。
「あ、春樹……はるきぃ」
 物欲しげに腰まで動かして、亮太が潤んだ瞳で春樹を見上げてきた。
 宴の間中、媚薬を塗り込めたバイブで犯され続けて、射精も許されぬままに快感をやり過ごし続けてきたのだ。もし純一におかしいことがばれたら、牢に閉じこめて一人で過ごさせる、と言われては、孤独をひどく怯える亮太には逆らう術はない。もとより、春樹の命令は絶対なのだから。
 それは浣腸の間も続けられて、ようやく終わったと思った途端、さらなるお預けを言い渡されたのだ。
 ペニスを受け入れて悦んだ身体の落胆は大きい。
 兄の悲惨な状況から必死で視線は逸らしていたけれど、それでも身体の熱は若い亮太には堪えがたいものだったのだ。
「どうした、行っておいで」
 あくまで優しい春樹の物言いに、亮太が肩を落として兄の元に向かう。
 全てが亮太のためだと言う春樹の言葉に逆らう事はできない。それがどんなに望んでいないことであったとしても、些細な反抗で春樹から見捨てられることを、亮太は恐れていた。
「上手にできたら、ご褒美をあげよう」
 その判断がいつになるのか判らない。けれど今は従うしかなくて、餓えた身体を宥めながら亮太は兄の乳首に吸い付いた。
 台の上に顔を乗せ、力無く伏した胸を手で持ち上げながら乳首を舌先で転がす。
 小さな、誰にも弄られたことの無い僅かな突起を吸い出して、軽く歯を立てた。
「ひ、んっ」
 それはとても小さな声だった。
 けれど、呼吸音でない確かな喘ぎ声を、誰もが聞き逃さなかった。
「おや」
 隆正が面白そうに口角を上げる。
 亮太の横で、孝典が仰向けになって純一のペニスを喉の奥まで銜え込んでいた。
 喉が震え、頬がきゅっと引き絞られる。
「あふっ、んっ」
 亮太と孝典が与える刺激は、神経が麻痺していた純一にも新たな刺激となったようだった。
 二人の口が動くたびに、純一の身体が小刻みに震え、喉から喘ぎ声が零れる。
 ごく僅かな変化だったけれど、明らかな快感の兆しに、高藤家の面々の視線が純一に集中する。
「なるほど、淫乱な血は確かに受け継いでいるいう訳か」
 萎えていたペニスが固く大きくなり、孝典の口から見え隠れしていた。
 熟した実のように立ち上がった乳首に、亮太の舌が絡みつく。そのたびに、身体がびくびくと震えているのは間違いようがない。
 蒼白だった肌に、薄く朱が交じる。悲鳴が途切れ熱のこもった吐息が、ひっきりなしに零れていた。
「純一もまた孝典と同じ性質だということだな」
 啓一郎が愉しそうに目細め、親子を見つめていた。
 ──痛みを快感に変えることができる性質。
 それでなくては、高藤家のペットには成り得ない。
「孝典の血筋であれば間違いないとは思っていたが」
「ですねぇ。どうやら期待以上のようですよ」
 激しい肛虐にぼろぼろのアナルを押し広げられているというのに。
 父にペニスを口淫されて勃起し、弟に乳首を嬲られて喘ぎ声を出して。
「あ、ゎぁっ──、ああっ」
「おや、前立腺もどうやら敏感なようだ」
 ぐり、ぐりっと探るように動いていた啓治が、一点ばかりを突き上げ始める。
 そのたびに、甲高い嬌声が室内に響き始めた。
「鳴き声も良い。これは酒の肴になるな」
「ああ、啓治にやると言ったが──、たまには私も遊ばせて貰うとしよう」
 啓一郎と隆正が酒を飲み交わしながら、悶え始めた純一をねっとりと淫猥な瞳で見つめていた。
 春樹はどこか退屈そうに、純一に奉仕している亮太を見つめていたけれど。
 いきなりすくりと立ち上がると、足早に亮太の背後へと近づいた。
「ほら、腰あげな」
 ヒザ立ちでいた亮太の尻を掴み上げ、有無を言わせずに腰を突き出した。
「ひ、あぁぁ──っ」
 いきなりの挿入ではあったけれど、先ほどまで銜えていた代物だ。
 亮太のアナルは春樹のペニスを柔らかく受け入れて、包み込む。
「あ、あん──」
 餓えていた肉が待ち望んでいた楔に歓喜し、ひくひくと痙攣する。
「口が遊んでいる」
 ぺちっと尻タブを叩かれて、慌てて純一の乳首に吸い付くけれど、その横顔は歓喜にうっとりととろけていた。
「欲しいなら、自分で動けって」
 言われて、腰が勝手に前後に動く。そのたびに、純一の胸に顔を押しつけるようになって、乳首を舌先や前歯で擦ってしまう。
「あ、はっ、痛っ……あゎぁ」
 けれど、それが純一には甘い刺激になるようで、さらなる嬌声が零れ始めた。
「こ、れは……、締め付け方が良くなった」
 啓治が感心したように呟き、その締め付けを堪能するかのように腰を揺らめかす。
「おやおや、春樹も我慢が効かないことだ。だが、確かに見ているだけというのは退屈ではあるな」
 そう呟いた啓一郎もまた立ち上がり、素早く孝典の背後に回る。
「孝典、腰を上げなさい」
「はむっ、ふぁっ」
 銜えたそれを離さないままに、孝典もまた啓一郎が犯しやすい高さまで腰を上げて、主のペニスを迎え入れた。


「あ、はぁぁぁ──っ」
「あああ──っ、んふぁ、あぐぅ、ふっ、」
「んああ、は、はるひぃ……いいっ」
 よく似た声音の三つの喘ぎ声が、高藤家の広間に響き渡っていた。
 孝典と純一、それに亮太の勃起しきった三本のペニスは、どれもが根元から先まで細紐で結わえられていて、さらに互いに紐で繋がれている。
 三人のアナルには、非合法に作成された強力な媚薬がたっぷりと注がれていた。どんなに貞淑な処女でも快楽の虜になるほどに強烈なしろものだ。
 それでなくても淫乱な身体に躾けられた身体にその効果は絶大で、孝典は啓一郎の、亮太は春樹のペニスで貫かれただけで、完全に理性を飛ばして狂いまくっていた。
 その中で、純一だけが四肢を拘束されて放置されていた。
 未だ前立腺の刺激だけでは射精までは至っていないが、それでもその妙なる快感を覚えた身体は、そこへの刺激を欲して堪らなかった。
 裂けて真っ赤に腫れ上がったアナルは痛ましい程なのに、媚薬の効果か、それとも痛みと快感が直結してしまったのか、ひりひりとした疼きすら快感へとすり替わる。
 理性など感じられない瞳が、とろりと惚けていた。
 はあはあと喘ぎ、動かない手の代わりに腰を床に擦りつけて、淫らな自慰に耽っている。
「皆、うまそうだなあ。そう思わないか」
 戒めに歪に形を変えながら、それでもいきり立っているペニスを揺らす純一を見下ろして、啓治が嗤った。
 その言葉に促されるがままに視線が孝典と亮太の姿を追う。
 待ち望んでいたペニスを受け入れた二人の惚けた表情に、視線が吸い寄せられる。
「あ、うっう……わ、わた…し…も……」
 欲しかった。
 この疼くアナルを、掻き混ぜて欲しかった。
 餓えて血走った瞳が、二人から啓治へと向かう。
 啓治の手が、衣服の下から完全に勃起したペニスを取り出した。途端に、純一の目が妖しく輝く。
「お……に、さま……、おにい……さま……、欲しい……」
 目の前のペニスが欲しくて堪らない、と苦しい姿勢をものともせずに顔を高く上げていく。
「欲しいのか? だが、これはおまえの肛門を傷つけた代物だが?」
 その言葉に、挿入の痛みを思い出したけれど。
「痛い……の……イヤ、だ、ど。ほ……しい……です」
 激痛と快感の記憶が混ざり合い、純一の記憶を混乱させていた。
 身体が跳ねるほどの快感は、確かにアナルを突き上げられることで発生したのだと、記憶がつなぎ合わされる。
 媚薬に惚けた頭では、それ以上の事はもう考えられなかった。
「欲しいなら、自ら銜えて見せろ」
 足を投げ出して座り込んだ啓治が、手で己のペニスを立ち上げる。
 それに視線が吸い寄せられる。喉がごくりと音をたてた。
 ふらりと身体が動く。
 繰り返された陵辱に、ギシギシと悲鳴を上げる身体を無理に動かして。
 赤く腫れ上がったアナルを、ペニスの上に持って行く。
「おまえは、私の何だ?」
 けれど、啓治の手が邪魔をする。
 アナルに入り込む寸前でペニスを逃してしまい、純一に答えを迫る。
「教えたろう?」
「あ……」
 ひくりとまぶたが震えた。
 じわりと溢れ出た涙の原因が何かは判らなかった。
 けれど、僅かなためらいは、身体の芯から激しく込み上げる絶頂への欲求に、瞬く間に消え失せた。
「わた、し……は、お……にいさま……の義弟で──ペット。高藤の……ペット」
 犯されながら教え込まれた言葉が、ためらいもなく出てくる。
「そうだ、高藤の家において、義弟とはペットでしかない。しかも、今いるペットたちの中でも最下位のペットだ。何もかもがおまえより上。おまえはすべてに従うしかないのだ。そうでなければ、痛みと絶望しかない罰を受けることになる」
 孝典よりも亮太よりも。
 さらには、屋敷で飼っている番犬たちよりもはるかに劣る存在だと。
 その言葉の意味を、そしてそれがどんな未来をもたらすかなど、今の純一の頭は考えもしなかった。
 ただ今は、激しく疼くアナルに貰えるであろうペニスを求めて。従わない時に与えられる罰に恐怖して。
「ああ……。私は、ペット……です。最、下位のペットです……」
 期待と恐怖に襲われながら、純一はただ感情の赴くままに何度も頷いていた。

【了】