【Vol.01 -昼-】

【Vol.01 -昼-】

  小型のバスが、山頂付近の展望台駐車場に停まっていた。
 平日には誰も訪れなどしない場所だ。まして、山奥とあって人もいない。
 さらにつぶれたまま放置されたレストランを封鎖する立て板が邪魔になって、駐車場の奥にあるバスの姿を道路から完全に隠していた。
 10時前に到着したバスであったが、そこから降りてきた者はいない。
 だからと言って空ではなく、エンジン音が山奥にずっと響いていた。
 しかも、車体が小刻みに揺れ続けている。
 UVカット加工をしているせいか様子が窺いにくい車内には、実は6人の男が存在した。
 見た目が様々なら、年齢も様々。
 ただ共通しているのは、そんな彼らが醸し出す雰囲気だろう。
 どこか闇の世界の危険さを孕む目つきが、今はイヤらしく歪んでいる。
 彼らの視界に映っているのは、衣服どころか何一つ身につけていない男──高藤純一だった。
 その身体が前後に激しく揺すられていた。その動きがバスに伝わっていたようだ。
「うっ、あっ……あぁっ」
 純一の悲鳴とも嬌声ともつかぬ声がひっきりなしに上がっていた。
「おらおらっ、もっと締め付けろって」
 四つん這いになった足元に立っている男が激しく腰を突き上げる。軽くシャツを羽織った男もその下は何も身につけていない。腰を引けば、ぬらぬらと滑った赤黒い肉棒が尻の狭間から覗いたけれど、すぐに、ぱあんと尻に腰を打ち付ける音が鳴った。
「いあぁっ」 
 激しい衝撃に背が仰け反っていた。
 顔が苦痛に歪み涙が飛び散る。それでも止まらない抽挿に、ぬちゃぬちゃと水音がバス内に響いていた。
 同時に荒い息が重なっている。
 純一と、腰を激しく打ち付ける男と──そして。
「さぼんじゃねぇよ」
 髪の毛を乱暴に鷲づかみされて引き寄せられた口元に、ごつごつと歪な瘤を持った肉棒が突きつけられた。
 生臭い臭いが鼻をつく。
 だが、嫌だと思う前に、純一の口は開いていた。
「ふがっ」
 一気に最奥まで突かれて、喉の奥が戦慄いた。
 激しい吐き気に身悶えるが、髪を引っ張られて顔を上げさせられた。
 流れ続けた涙と溢れた唾液、そして何度も吐き出された男達の精液でぐちゃぐちゃの顔が、男達の嗜虐心を誘うのか、いっそう腰の動きが速くなった。
 どちらかと言えば優しい顔立ちで、優等生の雰囲気を残す純一の顔は、今は淫らに歪み、理知的な雰囲気一つ無くなっている。
 朝、乗っていた電車から降りた純一は、すぐにこのバスに乗せられてここまで連れてこられたのだ。
 バスの後方は、最後尾を残して座席を外していて、広くなっていた。純一を挟んで犯している男達二人以外に三人が、前後の座席に座って愉しそうに酒を交わしている。
「純一ぃ、口が遊んでいるぜ、しっかり締め付けろ」
「あふっ」
 苦しげに歪む口に、無理に押し込んでくる太い肉棒は、電車の中でリモコンを操作していたこのグループのリーダー格の男のモノだ。
「怠けてたら、いつまで経っても終わらねぇぜぇ」
「そうそう、俺たちが満足したら解放してやるって言っているだろう?」
 口々に囃し立てるのは、あのとき純一の身体を嬲り続けていた者達だ。
 彼らは、バスが出発してすぐに純一を裸に剥いた。その後、泣き喚く純一の身体に、いったい何本の肉棒が突き刺さったことか。
 移動中とここに辿り着いてからの計四時間、純一は一度も休ませ貰っていない。
 すでに意識はもうろうとしていて、逆らう気力もないようだ。だが5本の肉棒は、休憩時間を挟むから、すぐに元気を取り戻した。
 さわやかな青空にある太陽は、そろそろ高度を下げる時間だ。
「ふがっ、……てっ……ああっ、あぐぅ」
「おらっ、締めろよっ」
 ぱあぁんっと甲高くなった尻たぶは、何度も叩かれて真っ赤に腫れ上がっていた。
 乳首は引っ張り続けられて、熟したサクランボウのように真っ赤になっている。
 髪も肌も、誰のものかもわからない粘液で汚れ、不快な匂いを放っていた。
 ちゅるんと口から飛び出したペニスが、びゅるっと白濁を噴き出した。
 締まらなくなった口の中に精液が入りこむ。
「ゆ、ゆるひて……、もう……も みゅり……っ、いやあ、いねぇにゃいでぇ……」
 粘つく口の中で白い糸が紅い舌に絡んだ。泡立つ唾液を口の端に付けた純一が、涙を流しながら男に懇願する。
 身体は限界だった。
 制限されていないせいで、何度も射精したペニスは痛みすら訴えている。
 だが、前立腺を穿つ動きは止まらない。
「ひっ、いやぁ──っ、あああ──っ」
 目の前が白く弾ける。
 ひくんっと身体が震えた。
 すぐにくたりと沈み込む。
「おい、休むなよ」
 そんな純一の身体を、すぐに次の男が突き上げ始めた。
 腰を掴まれて、頭を掲げられて。
 前後二つの穴が、犯される。
「あ……あっあ……あ……」
 吐息が、突き上げられるたびに零れていた。だが、その嬌声は反動でしかないようで、ぼんやりと開いた瞳の焦点が合っていない。
「こりゃ、壊れたかなあ」
 口を犯していた男が、冷ややかに呟き、尻を突き上げられて動く顔を覗き込んできた。
「あ、ああぁんっ、はあっ」
 ぐいっと身体を持ち上げられ、腰を犯していた逞しい壮年の男に背中を向けて膝の上に落とされる。
 男の太いペニスが、深く腫れ上がって敏感になった穴を激しく突き上げた。
「ひゃああぁっ、ふぁぁぁっ」
 もう快感も痛みも感じない。麻痺した肉壁は、ただ擦られているだけだ。
 意識は半分飛んでいる。それなのに、喉が甘く嬌声を上げる。
 動けなくなると乳首を引っ張られて、身悶えされられ、無理矢理に腰を動かされた。
 ほんの少し浮上した意識は、すぐにまた沈み込む。
 もう……どうでも良い……。
 諦めが純一の心を占め、揺すられていることも波間を漂っているように感じていた。


「なあ、面白くねぇな、こんなになると」
「ああ」
 嬲られことに逆らわなくなった純一に、男達が興冷めしたとばかりに、離れていく。
 だが、そのときリーダー格の男が純一の耳元にぽつりと囁いた。
「社長が怒るぜ、秘書さんが来なきゃ仕事になんねぇってな」
 その言葉に純一の頬がびくりと引きつった。力無く漂ってた視線が、何かを探そうときょろきょろと動き出す。
「ああ、そりゃそうだ。なんせもう昼過ぎたぜ。それなのに連絡も無しに欠勤だもんな」
「秘書ってエリートなのによ」
 口々に囃し立て始めた男達を、純一の虚ろな視線が、それでも一人一人辿っていった。
 少しだけ意志が浮かんできたようだ。
 純一にとって、決して無視できない単語が、彼らの言葉の中に込められていたから。
「ま、その社長さんが依頼してきたんだからな、こいつを痴漢して犯せって」
「へぇ、それって……。なにやらかして怒らせたのさ、純一ちゃん」
「お仕置きかぁ。だったら、もっと苛めなきゃいけないね」
 その言葉に純一が朦朧としながらも、力無く首を振っていた。
 お仕置き、というわけではないのだ。ただ、朝出社前になって、その社長に呼びつけられ、ローターを手渡された。
『それを入れて、痴漢に遭え』
 命令は絶対。
 純一は彼の前で大きなローターを手ずから入れ、ストッパーでアナルを塞いで鎖をかけた。
 服の取り出しやすいポケットにローターのリモコンを入れ、あの時間、あの電車、あの場所に行けという命令に逆らえない。
 嫌で嫌で──拒絶できるものなら、拒絶したかった。
 逃げられるものなら、逃げたかった。
 だが、純一にしてみれば、絶対に逆らえない、逆らってはいけない相手なのだ。
 世界有数の財産を持つ螺館財閥会長の次男でTAKATOインダストリーの社長、高藤啓治という男は。
 その名を聞いただけで疲れ切った身体が、条件反射のようにぴんっと力を取り戻した。
 瞳が、おろおろと何が起きているのかと彷徨うた。その瞳にかいま見えた怯えに、男が笑みを深める。
 その笑みがやたらに恐ろしくて、純一の身体か総毛立った。一気に青ざめた純一に、男は社長からの伝言だ、と、嘲笑とともに言葉を紡いだ。
「昼までには出社するように、ってさ。そういえば」
 その言葉に、純一の身体が大きく揺れた。
「ひ、昼まで……と、お、おに……さま……が?」
「おお、そうよ、そのお義兄様が、だよ」
 けらけらと愉しげに嗤う男とは反対に、純一に身体ががくがくと激しく震え出した。
 その瞳に浮かんでいるのは、明らかな恐怖だ。
「その優しいお義兄様が、会った時に疲れているならば会社まで送っていってやってくれ、って言ったんでな。こうやってバスを用意してやったというのに」
「純一ちゃんたら、ちんぽいっぱい銜えてお汁味わうのが愉しくて、時間忘れちゃってんだもん」
 ちゅぱちゅぱと唇を尖らし揶揄されて。
「だってさ、電車の中であんな大きな声で、いっぱいしゃぶりたいって言うもんだから。俺たちも協力してあげなきゃ」
「うんうん、上のお口も尻の穴もいっぱいしゃぶらせてやるって。なんか、まだ物足りなさそう?」
「今だって、まだまだ遊びたいんだろ? だから、俺たちを満足させたくないんだよね」
「なんだ、そっかっ。なら、もっと遊ぼうぜぇ、どうせさぼるんだからさ」
「優しいお義兄様は、純一君が謝ったら許してくれるさ」
 無責任な言葉に、ぶるぶると首を振る。
 お義兄様と言われるたびに、純一の身体はさらに激しい恐怖に襲われる。
「もっ、もう……許して……、会社……行かないと……」
 高藤啓治社長が待っている。
 秘書として勤める純一にとって直属の上司であり、そして。
「お、お義兄様に……連絡を……しないと……」
 公的な場以外では、啓治のことを「お義兄様」と呼ぶことを義務づけられた純一は、高藤家長女の入り婿でもあった。
 だが、高藤家での純一の立場は、婿どころかただのペットよりも劣るだろう。
 純一の全ては啓治が管理することになっていて、一切自身で決めることはできないのだから。
 それなのに、啓治の「昼までに行く」という言葉を破ってしまった。聞いていないということは、純一にとって言い訳にもならない。
「駄目だよぉ?、俺たちまだ満足していないもんっ」
 慌てて携帯電話を取り出そうとする純一を押し倒す。
「で、電話だけでも……お願いっ、お願いしますっ」
「だぁめ」
「そうそう、今更電話してどうすんの、昼なんてとっくに過ぎちゃってるし」
「遊ぶのが愉しくって時間が経つのを忘れていましたっ、て、ちゃんと謝れば許してくれるって」
 その言葉に、ふるふると涙を飛ばしながら首を振った。
 啓治は、時間にはとてもうるさいのだ。
 そして、約束を守れない時はとても厳しい。
 それこそ、この5人の輪姦がほんとうに遊びに思えるくらいに。
「い、いやぁ、帰るっ、帰る──ぅっ」
 義兄に対する恐怖に暴れ出した純一に、リーダー格の男がにやりと嗤った。
「まだまだ元気そうだなぁ、じゃ、第二ラウンドと行こうか」
 その言葉に、バスの揺れがさらに激しくなっていった。

【了】