【水砂 虜囚】(4)

【水砂 虜囚】(4)

 最初は駆け足気味だった馬の速度も、しばらくすると普通の速度まで落ちた。そのまま数日間はずっと夜間の行軍だったせいもあるが、地理に詳しくないミズサにはどこに向かっているのかまったく判らない。
 馬の速度はたびたび代わり、時に駆け足の時がひどく辛い。──さらに、精が吐き出せないせいか、欲がたまり続けている今の方がはるかに辛い。こんなにずっと刺激を受け続ければ、それに馴染んでしまうか、麻痺してしまうかだろうが、ミズサの体はあいも変わらず、快感を拾い、欲情して射精感に苛まれる。
 毎日飲まされる薬のせいもあるのだろう。
「また漏らしてんのか、ったく締まりがねぇ」
「ひっ、あうっ」
 じとりと塗れた鞍の表面を拭くのに服を引っ張られて、押さえつけられた会陰がぎちりと音を立てて軋んだ。
 芋はもう外されていて、今は直接硬い鞍を感じる。けれど最初にたっぷりと擦られたそこは、今や赤く腫れ上がっていて、体重をかけるのも辛かった。
 けれど足を膝で曲げたまま固定された状態は、一度も外されていなくて、鐙で体を支えることもできない。
「うう……」
 奥歯を噛みしめ、痛みから意識を逸らして、できたるだけ体重をかけないように太股に力を入れて体を固定した。
 今の速度での歩みならよいが、また駆けられたら、今度こそ擦り剥けて出血してしまう。
 その間にも鈴口から陰液が垂れ落ちて、ペニスを欲しがってひくつくアナルから欲情した証の粘液が流れ出てくる。
 そのたびに、服に新たな染みが生まれ、淫らな姿に煽られたルクザンが自慰をして精液の染みを追加した。
 服といっても、がっと同じ麻袋の服だ。着替えなど無いから着た切り雀のそれは、洗うこともない。
 行軍中も据えた臭いが立ち上がるほどになっていても、ルクザンは苦にも思わないようで、楽しむようにいろいろな体液を擦り付けた。
 日が昇り始めると、人目に付かない森の中や洞窟で野営に入る。そんなときはミズサの口に射精をし、飲み込めないほどの大量の精液は唾液と共に溢れて、服を汚した。最初は茶褐色だったその服は、今や薄茶や黒ずんだ跡でまだら模様だ。
 食事もその臭いの中、寝るのもその臭いに包まれてだ。しかも、手も足も解放されないから、不自由な姿勢で転がるしかない。
 移動が始まってから一週間が過ぎてもそれは変わらなくて、そのせいで、もうずっと睡眠不足だし、体力もひどく落ちている。けれど、ミズサの精力だけは衰えることはなかった。
 食事は最小限だったし、当たられ続ける快感と苦痛に精神もボロボロのはずだ。だが、定期的に与えられるグイナ印の強壮薬と二種類の薬。それを飲むと、体だけは体力を回復して、責め苦に耐えられるだけの体力を保ってしまうのだった。



「これから塩の大地だ」
 湖で野営をすると言って、ミズサを降ろした後、しばらく出かけていたルクザンが帰ってきたときには大量の水と食料を積んだ馬をもう一頭連れてきていた。
 時折ルクザンはこうやって一人で出かけるが、その間もミズサの手足は解放されないから逃れようがない。それどころか、一昨日の時にはかゆみを伴う媚薬を尻穴にたっぷりと注がれてまま放置されたのだ。
 どんなにかゆくても手が届かないため、地面を転がりまくって見悶えて痒みの嵐が過ぎるのを待つことしかできなかった。そのせいで、服はさらに汚れて、素肌は擦り傷に切り傷だらけだ。
 そんなミズサを、今度は大きな岩の上にうつ伏せで寝かせて体が岩から離れられないように括りつけて出かけてしまった。
 それが何の意味があるのか、考える間は無かった。
「ひぎっ、ぎぃぃぁぁぁっ!!!!」
 両方の乳首から激しい痛みが走ったのだ。一つ一つは小さいけれど、耐えられない痛み。
 慌てて少しだけ浮く胸と岩の透き間を見やれば、いつもは赤く熟した乳首がいまや真っ黒になっていた。しかも、その黒い塊が蠢いている。
「ひっ……あ、蟻っ」
 小さな3mmほどの蟻が、乳首と、そして、ちょうど乳首があった辺りの穴で、わらわらと群れていた。 
 小さな穴が実は蟻の巣だったと気がついたときには遅かった。怒った蟻はたいそう攻撃的で乳首を噛むのを止めようとしない。
「い、イヤだっ、離せっ、痛──っ、ひぐうっ」
 蟻に命令しても無駄なのだと判っている。判っているけれど、止められない。
 そのたくさんの鋭い顎がそれでなくても敏感な乳首にいっせいに食い込んで、ミズサの悲鳴は周辺の山々に何度も響きわたった。しかも蟻酸のせいで、焼けるような痛みがいつまでも続き、治まらない。
 そのうち、脳が痛みを甘い疼きに似たものと認識してしまう始末で、蟻から逃れるために胸を持ち上げていても、走る快感に力が抜けてま胸を押しつけて。
 無数ともいえる蟻は、そのうちに乳首だけでなく全身いたるところを攻めだした。
「あっ、痛──っ、うっ……くあっ」
 陰液を溢れさすペニスも、ひくつくアナルも例外ではなく。
 岩そのものが蟻塚だという知識がないミズサは、蟻が逃げてくれることを祈るだけだ。もっとも、巣そのものにまたがっているのだから、蟻の攻撃が止むはずもなくて。
「ひっ、あぅ……イイ……ぁぁぅ……ぅ、っ……」
 繰り返された蟻の攻撃に、ミズサはいつしか完全に理性を飛ばし、与えられる痛みすら甘受して身悶えて、達けない苦しみを味わっていた。
 地面に垂れた足は、アナルとペニスから零れた粘液でぬらぬらと光り、地をひっかく足は泥まみれだ。
 乳首もペニスも腫れている。それだけでなく身体の前面はぽつぽつとした赤い斑点が何カ所もあった。
 それから全てが痒くて、痛くて、疼く。
 もうそれが何故かなんて判らなくなっていて。
 ルクザンが帰ってきたのは、ちょうどその頃で。
「蟻ですら楽しめるってか? たいしたもんだな」
 ルクザンが戻ってきたのも気がつかず、ミズサはうっとりとした表情で岩に接した肌を擦りつけるように蠢き、快感を貪り続けていたほどだった。


 蟻酸に腫れた体を晒したまま起きあがることもできないままに、もうろうとした視線を、新たな旅支度をしているルクザンを見やる。
 男が自分に何をしてきたか覚えている。なのに、縋りつきたくて堪らない。
 この男しか、今はいないからだ。
 自分のこの熱を持った身体をどうにかしてくれる、今は唯一の存在。
 ただ、それだけしか考えられない。
「この塩の大地は通常の旅人は通らねぇ。水源が少なすぎるからな。しかも水源は干からびやすい。そんな危険を冒してまで旅をするヤツはいねぇし。追っ手も迂回するだろう。そうなれば一ヶ月は余裕ができる。まっ、いくら俺を捕まえようと思っても、干からびて死のうとはおもわねぇだろうし。ここは、単なる砂漠より質が悪いのはここだ。だが、水さえあれば、こんな近道はねぇ」
 自信満々に言い張ったルクザンが、ミズサに視線を向けてニヤリと嗤う。
「そこを抜ければ、すぐに目的地だ」
 隠れ過ごした一週間。
 ここにくるまでに数日。
 そしてさらに5日。
 ようやく辿り着く、どこか知らない場所。
 ここまで要した日にちを意識した途端にとたんに、服から立ち上った臭いにむせそうになる。
「そこでたっぷりと地獄を味あわせてやるよ」
 言葉とともにピンと乳首をはじかれて、熱くとろけた音が喉で鳴った。乳首の元からあったピアスは外されて、今は無骨な杭ような棒が差し込まれていた。それがひどく歪に乳首を膨らませ、歪ませている。さらに今回蟻に刺されたことで、さらに膨れあがっていて、女のそれよりはるかに大きくなっている。
 さらに媚薬と延々と続く刺激に熱が冷めていられる時間はたいそう少なくて、体はいつも飢えていた。
 まして、今回の蟻に噛まれたために、今の身体はギ酸のせいで外からも絶え間ない刺激に襲われている。もう体力など尽きてしまっているはずなのに、ほんの少しの刺激で男の剛直が欲しくなって堪らないのだ。
 そんな欲望を感じ取ったのか、ルクザンがおもむろに自分のペニスを取り出した。
 数度扱けば、すぐに人並み以上の立派なペニスとなった。
 それから目が離せない。
 あれがミズサのアナルを犯した時のことが、脳裏にまざまざと蘇る。
 太い陰茎がずずっと入っていく感触、高いエラが肉を抉り、前立腺を抉る激しい快感。きっと今なら入れられるだけで、絶頂を迎えられる。
 その記憶に捕らわれるミズサの前で、ルクザンがほくそ笑みながら、ゆっくりとペニスを扱くのだ。
「欲しいか?」
 問われて、即座に頷いた。欲しい、欲しくてたまらない。
 その太いペニスで、この疼く身体をなんとかして欲しい。ずっと快楽に素直に対応してきたミズサだからこそ、今までずっと我慢させられ続けてきた状態がつらい。
「飢えろ、極限まで飢えろ」
 なのに、ルクザンはその素晴らしい旨そうなペニスを見せつけるだけだ。
「口だけじゃなくてチンポからも涎も垂らしてるぜ。いやらしい音もしている」
 ミズサが身を捩るたびに尻の辺りでヌチャ、ネチャと音が響いていた。欲情すると、慎ましく閉じているはずのアナルは緩んでしまうようで、粘液が滲み出る。
「クソ臭ぇ」
 笑われて、頭を降る。
 量が多い粘液は、最初は体内の汚れを外に出す機能もあるようで、どうしても臭う。さすがにその汚れは嫌うのか、ルクザンは時々ミズサの体内を洗浄していたけれど。
「これから直腸洗浄もできねぇ。溢れねぇようにしっかり締めとけよ」
 その言葉に、とっさに首を横に振った。
「む、無理……」
 自分の意志ではどうにもならないのだ。
 欲情してしまえば、それは溢れてしまう。
「見ただけで欲情するもんな」
「っ……く……」
 腰が勝手に揺れる。溢れた粘液は、中身がなかったせいでもう透明度を増している。
 汚れた肌を地面に擦りつけて、じりじりとルクザンににじりよった。
「挿れて……、おねが……、欲しい……」
「おいおい、もう狂ったか」
 あははっと大声で嗤われても、目の前で揺れるペニスしか目に入らなかった。

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