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カルキスの訪れは最近になって不定期になっていた。
前は一週間に一回は必ずだったが、今は二週間空くこともざらだ。
それが、辛い。
前回からすれば、すでに三週間もカルキスの訪れはなかった。
達きたい……、と、射精を許されない調教が繰り返された身体が、狂おしく願う。
最初は、気分を変えることで鎮めることができた。
だがそれも一週間が過ぎたとたんに、鎮めるどころか、何を見ても性的快感に結びつくものになってしまう。
瘤を作った木の枝が、張り型に見えるのは判る。
今も浅い位置までしか入らない丈の短い張り型が、海音のアナルに埋められている。
敏感なアナルの入り口を絶えず刺激するくせに、決して奥にある快感の泉には届かない。
自分では抜くことができないように固定されたそれが、最近では堪らなく焦れったく感じることがある。
忘れようと努力しても、それを締め付けている海音自身がいた。
何でもないものに欲情して、きゅっと尻タブに力が入る。
そのとたん、まざまざとその形を認識して、もっと奥深くを抉って欲しいと願う。
ぼおっとしている時でも、ふと気が付けば椅子に座っている腰が揺れて、手が股間に伸びていることも一度や二度ではない。
毎日のように自分の乳首を弄ることを強要されていた指が、勝手に胸を弄くるのもよくあること。
先ほども気が付けばそんな事をしていて、ドアを叩く音にはっと我に返った。
そんな海音の前に供された昼食は、パンとスープ、そして果物。
添えられた太くて長いパンに目が吸い寄せられる。
その太さに、食欲の餓えではなく、ごくりと喉が鳴った。
涎が口からではなく、股間でいきり立っているのペニスからたらりと流れ落ち、会陰を伝って、戦慄いてる奥の穴を濡らす。
そんな己に気が付いて、慌てて身体を鎮めようと冷たいコップを手に取ったけれど。
慌てたせいで水が、口の端から零れて肌を伝っていく。
「あ、んあぁぁん」
たらたらと糸のように細くゆっくりと流れていく水が、乳首を嬲る。触れてもいない熟した果実が、さらに大きく育っていく。
「はぁああ……」
気が付けばこぼれ落ちるため息は、いつも熱く喉を焼くようになっていた。
細い皮紐でできた衣装は、海音の白い肌を隠さない。
風が肌を嬲って、家具や寝具、肌に触れる何もかもが海音の身体を欲情させる。
けれど。
ペニスに絡んだ指先に触れる異質なもの。
下腹部と陰嚢の間。
陰茎には三カ所。
おのおのをしっかりと締め付けた小さな革ベルトは、海音の力では決して外れない。
最近では、排尿すら時間をかけなければ出ないほどに締め付けられていた。
まして、陰嚢の根元のベルトは射精の時の生理的な動きを制限するために付けられていた。そのせいで、精液の排出は全くできない状態なのだ。
その排出できない精液が、毎日毎日与えられる性的快感によってたっぶりと精製されている。
なのに、出せない。
気が付けば、ペニスを何度も何度も擦り上げていた。
朦朧とした視界の中、テーブルから転がったパンが、素敵なサイズのペニスに変化する。
その姿にごくりと喉が鳴った。
「あ、あぁぁぁ」
喉が欲情した雌の鳴き声を上げる。
先走りすらじわじわとしか出せないはずの戒められたペニスが、手の中でぐしょぐしょに濡れていた。
卑猥な水音を立てて10本の指がペニスに絡み、達けないと判っているのに、射精させようとしていた。
「やぁぁぁ、あぁぁぁ、達かせて……達かせて……」
譫言のように天を仰ぎながら呻いて、床に転がったパンの上に腰を下ろす。
太いとはいえ、しょせんパンだ。
乾いたパンは呆気なくつぶされ、溢れ出た体液に濡れて、さらにつぶされていく。
ごしごしと、前後に腰を揺らしてペニスを絨毯に擦りつけた。
纏い付く白いパンのなれの果てですら、ざわざわと肌をざわめかす。けれど、それは弱い疼きでしかなくて、海音の餓えを満たすことはなかった。
パンで自慰を繰り返す海音の前に、カルキスはいきなり現れた。
「愉しいか? そんな柔らかなもので欲情して」
嘲笑とともにかけられた言葉に、海音が激しい羞恥と後悔に襲われて、全身を真っ赤に染めて逃げる。
だが、カルキスの素早い動きによって、呆気なくベッドに放り出され、すぐに腕を固定された。
ベッドに乗り上げたカルキスが、海音の両足を大きく割り開いた。
「これまた、見事にできあがっていることよ」
下半身がぐじゅぐじゅに濡れている。
充血して淫らな肉棒と化したペニスがぱくぱくと鈴口を戦慄かせ、それと同じリズムで、ひくひくとアナルが生き物のようにその口を蠢かしていた。
苦笑にも似た嘲笑が、カルキスの口元に浮かぶ。
「これはこれは。ずいぶんと好き者になったものよ……」
海音の瞳は憎々しげにカルキスを睨んでいる。だが、身体は──特に欲に露わにするあちらこちらが、浅ましくカルキスを求めていた。
下腹の上でペニスが踊る。
それは、海音の腰が物欲しげにゆらゆらと揺れているからだ。
足首を掴んだ手に力を加えるだけで、ひくりと足か股間の奥深くまでが震えている。その拍子に海音の喉がごくりと動き、鈴口からたらりと淫液が溢れ落ちた。
これも、カルキスがひたすら快楽を与え続けた結果だ。
最近ではカルキスの姿を見ただけで、萎えていたとしても海音のペニスは浅ましく立ち上がるほどだった。
本人は、かたくなにそれを否定しているけれど。
身体は快楽に流されているのは、今の光景を見れば誰でも判ることだ。
「よく熟れている。淫売になりきっているな……」
嘲笑に、海音が悔しそうに顔を歪めた。だが、カルキスにしてみれば、海音のこんな姿などまだまだ第一段階なのだ。
この世の全ての快楽を海音には与えるつもりだった。
そのためにはどんな労力も惜しむつもりはなかった。
「パンではもの足りなかろう。我が直々に愉しませてやる」
「い、嫌だ、離せっ」
こんな姿など誰にも見せたくない。特に、このカルキスには。
だが、無駄なあがきでしかない海音の動きを難なく封じたカルキスの視界には、大きく広げられた股間の未だパンくずがたくさん付いているアナルが丸見えだ
「尻で食べるパンは、たいそう美味しかったようだな」
そんな己の姿を指摘され、海音は羞恥と屈辱に赤面し、逃れようと足をばたつかせる。
けれど、カルキスの力には敵わない。カルキスは笑みを深めて、未だに萎えることのない海音のペニスを指先で弾き、身体を沈めた。
「遠慮するな。パンよりは良いぞ」
「ひ、ひぃぃ」
敏感な亀頭がいきなり生暖かな粘膜に包まれた。
脳髄まで痺れる快感に、海音の全身がぴんと突っ張る。
「今宵はずっとお前の相手をしてやろう」
「い、いやぁぁぁ」
口の中に含まれたまま喋られて、その振動に視界が真っ白に弾ける。
「まずは我を満足させよ。さすれば、これを外してやろう」
ひときわ膨れあがったが故に革ベルトに戒められて歪んだペニスが、とぷりとぷりと粘液を吐き出す。それを舌先で扱くように舐めとりながら革ベルトをつついた。
「あ、はぁぁ、外、外せぇ──あぁ」
「良い声だ、もっと喘げ、良い声で鳴け。我が満足するまで、たっぷりとな」
「あ、やぁぁっ、く、狂うっ、ダメだぁぁぁ」
どんな海音が暴れても、カルキスは彼の腰をしっかりと捕らえて、徹底的にペニスをしゃぶり続けた。
僅かな刺激で勃起し、涎を垂らすペニスが、びくびくと震えるのを口内で愉しむ。
白目を剥いて、ひっきりなしに嬌声を上げる海音の姿に、ますますやる気がでで来る。
指先は、海音の性感帯の一つでもある腰のくぼみを刺激し、足を伸ばして足の指で乳首を摘んでやった。
その刺激だけで、海音は短い間隔で何度も何度も乾いた絶頂を味あっていた。
それからしばらくして、ようやく飽きたとばかりに解放されたペニスはしとどに濡れて、ふやけて、充血しきっていた。
それでも力を失わずに、ぴんと力強く海音が悶えるたびに腹を打ち付けている。
ひくひくと痙攣する海音は、すでに意識が朦朧としているようだ。
「達か……せて……、達きた……、だしたぁ……いっ、い、かせてぇぇぇ」
何度も何度も切なく喘ぎながら懇願している。
だが、そんな海音に、カルキスは「まだ余が満足しておらん」と、覆い被さった。
偉大なラカンの王は、すでに海音の前に現れてから一時間あまり経っていたが、まだその衣服を僅かにも緩めていなかった。
そのカルキスの手が、ゆっくりと自らの衣服を取り去り始めた。
「ああ……」
朦朧とした意識の中でも、その意味がわかったのだろう。
海音の口から絶望的な声音が零れる。
まだ満足していないカルキスは、これから本気を出そうとしているのだ。
今までの口での愛撫など、遊びでしかない。
カルキスは、海音に快感を味合わせるために、労力を惜しまなかった。
媚薬の類はあまり使わない。道具は使うけれど、それはあくまで補助的なものにしか過ぎない。
繊細なまでの愛撫は全身に及び、手で、口で、舌で──たくましい筋肉もまた海音を狂わせた。
徹底的に時間をかけて海音の身体を愛撫し続ける。
何度も何度も絶頂を繰り返し、意識すら朦朧とするまで、カルキスは肌と性器への愛撫を繰り返す。
その後にようやく、カルキスの身体に似合った質量のペニスが、敏感な海音のアナルを奥深くまで犯すのだ。
力強い抽挿で狭い肉壁を広げられ、ごりごりと擦られれば、快感は骨の髄まで響いた。
すでに力のなくなった身体は、海音の腕によって容易く支えられ、思う様に扱われる。
それを可能にするだけの体力と力がカルキスにはあって、海音はそれに逆らえない。逆らう力はもとより持たず、逆らう気力は、快感によって脳の奥底に沈められてしまっていた。
ただ欲しい、と願う。
尻の狭間を熱い肉棒で擦られる。
それだけで、ひくひくと全身が痙攣した。
あと少し、あと少しずらして……。
海音の上気した肌の表層に、ゆらりと陽炎が立ち上る。
熱くて堪らない。
欲しくて、欲しくて。
狂いそうになるほど、欲しくて仕方がない。
あの熱くて──熱くて、太い塊が……欲しい……。
「も、もう……ぅ、あ……はぁ……、や、だぁ……」
カルキスの膝の上に背を向けて座らされて、乳首を摘まれ引っ張られる。
「あ──っ、あっ、はぁっ」
たったそれだけなのに。
ざわざわと筋肉が小刻みに痙攣し、喉を晒して喘ぐ。赤い舌が唇から飛び出し、力無く落ちて唇を舐めた。
口の端から溢れ出た唾液がたらりと流れ、喉を伝う。
熟した木の実のように真っ赤に熟れた乳首が、ゴムのように引き延ばされた。
武人であるカルキスの、固い皮膚を持つ指に強い力でつぶされれば、激しい痛みが海音を襲う。なのに、引きちぎれるような痛みが全身に伝わる頃には、それが視界が弾けるような快感に変わっている。
「い、いあぁぁ、やあぁ、あぁぁ──、……あっあんっ」
情けない喘ぎ声だと判っている。
だが、止められない。
一度開いた口は、閉じることさえできない。
喘いで、体内にわだかまる熱を放出したくて、肺の奥底から息を吐き出す。
だが、それも僅かな救いにもならない。
吐き出した分だけ入ってきた空気は、喉を通り過ぎる頃にはもう熱く茹だっている。
早く欲しい。
激しい餓えに襲われていた。
尻の肉に触れている熱い肉棒。
それを早く入れて欲しい──なのに。
「ひ、ぃっ──やめっ、そこ、ああぁぁ」
うなじにねとりとした熱い軟体が触れていた。
肩の線から頭に向かって、ナメクジが這うようにゆっくりと痕を残すそれ。
むず痒い刺激に、じっとしていられない。
ふるふると力無い四肢がのたうつが、カルキスの強い力は決して外れはしなかった。
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