The Gift from the Creater 2

The Gift from the Creater 2

「The Gift from the Creater」から先にご覧ください。
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 薄暗い世界で全身を覆うような椅子に拘束された俺を呼ぶ奴がいる。
「ミサト」
 そう呼ばれるのが怖い。
「ミサト」
 それは俺の名ではない。
 けれど。
「ミサト」
「お呼びですか、ご主人様」
 俺はいつの間にか、そいつの傍らに立ち、応えている。もう世界は薄暗くなく、辺りは明るい陽光が燦々と差す賑やかな街の広場だ。
「おいで、あの方がお前で遊びたいと言っている」
 その言葉に総毛立つほどの恐怖を覚えた。耳を塞ぎたい、このまま逃げ出したい。なのに。
「かしこまりました」
 俺の身体は、俺の心を無視して動く。口は了承の意を伝え、手は粗末な衣服を落とし、足は躊躇うことなく指し示された醜い男の元に向かう。
 あれは、この街の富豪の一人。プレーヤーではなく、コンピューターが動かすノンプレーヤーキャラだ。
 設定では、執拗で、嗜虐性が強い。
 そんな詳細情報が、一気に脳内に流れ込んでくるのに、俺はためらいなく全裸の身体を男の前に晒した。
 激しい羞恥が俺を襲う。
 こんな事はしたくない。ミサトの心も身体も全身で訴えているけれど、主人であるリュウジの命令には逆らえない。
「ご自由にお使いください」
 言葉は紡ぐけれど、なんとかその醜男から視線を外した途端に、己の醜くなったペニスが目に入ってしまった。
 役立たずのそれは、太くて歪で長くて敏感で。けれど、男としての機能は鈍い。
「尻を出しなさい。それとも、ペニスを弄くられたいかい?」
 醜男の言葉に、俺は「ご自由に」と言うしかできない。
 選択権は俺には無かった。
 リュウジが従えと命令した時点で、この男の全てに俺は従うしかなかった。
「イヤらしい」
「さすが、淫乱従者で有名なミサトだね」
 揶揄と嘲笑がふりかかり、俺の羞恥心は最高潮だ。けれど、たとえ全身を真っ赤に染めても、俺の身体はこの場から動けないのだ。
「では、両方だね」
 たとえ、酷薄な笑みを落とされても、別の男達が俺の腕を掴んで引き立てても。
「お前は見られるのが好きだから、今日は外の広場で遊んであげるよ」
 イヤだ──と叫ぶことすらできなくて、まるで己が望むように足は動く。
 肌を触られただけで、ぞくぞくとした快感が背筋を走り、皮膚の下を這い回る。下腹部は常に熱く重く、先端からとろとろとした液を涎のように垂れ流して裸足の足にまとわりつかせていた。
 俺の服は粗末で脱がしやすく、すぐに剥ぎ取られてしまう。だから、服を着ている時より裸でいる方が多いほどだった。
 その俺の肌に突き刺さる幾本もの視線の中で、ふと固有の視線を感じて視線を巡らせた。第六感が設定されている俺は、人の視線を感じ取り、その感情までも読み取る。
 だから見分けられるその固有の視線が怖い。
 俺をミサトにした男。否──あの男、リュウジはただ単に自分が遊びたいだけでミサトを設定した。何も知らない。知らないけれど、ミサトの中に俺がいるのを知らない男。俺をこんな身体に設定した酷い男。
「あ、は……っ、あぐ」
 台の上で四つん這いで固定されて、口に、アナルに太いペニスが突き刺さる。
 ブヨブヨの男が持つのは、その指の太さもある頑丈な鞭だ。
 それが振り下ろされる。
「ひぎっ、ああっ!!」
 褐色の肌には、鞭痕はそれほど映えない。けれど、叩かれても快感を得る俺の身体を面白がって、その鞭打ちが止むことはなくて。
「ひぁぁぁ──っ、ああっ」
 アナルを突き上げられ、絶え間ない絶頂を何回も味わい、痛みに神経を嬲られる。
 リュウジの設定は巧妙で、この姿形もさることながら、性格も、技能もこの世界にどっぷりと浸かった男達の好みにマッチしていたのだろう。
 俺を借り出すプレーヤーが途切れることはない。
 結果、俺はいつでもゲーム内に呼び出される。
 ミサトになる前は、もう少し休める時間もあったのに、ミサトを割り振られてから、俺はほとんどゲームの中だった。
「助けて……」
 口からペニスが外れた途端にミサトが呟いた言葉は、俺の本心だ。
 こうやって男達に嬲られるために。嬲られて嬲られて、絶頂を迎える度に、自分がミサトになっていく。
 それが怖い、もう助けて欲しい。
 けれど。
「これが好きなんだろう? ああ、好きすぎて、もっと欲しいって意味か? ならは、もっとやるよ」
「ひ、ぎぃぃ──あ、ぁぁっ、あぁっ、やっ、んっ」
 パンパンと背後で激しくなる皮膚を打つ音は、どこか粘着質な音色を持っていた。俺のアナルは濡れる。溢れた粘液が肢体を濡らし、肌を打たれる度に弾け飛ぶ。
「いっ、──ひぃっ!!」
 乳首のリングピアスに繋がる鎖を二本ともバラバラに引っ張られて、激しい痛みに泣き叫ぶ。けれど、すぐに快感に変わって力が抜けた。鎖を引っ張る男の腕に縋り付くように抱きついて、下半身は激しく揺さぶる男に抱えられて。
 中空に浮いた俺の身体は、ダッチワイフでしかなくて。
 快感に噎び泣くミサトの奥底で、俺はもう止めてくれ、助けてくれ──と泣き喚く。
 プレーヤーは、何も知らない。
 ノンプレーヤーキャラは、設定された性格通りに従者をいたぶることしか考えない。
 だから、俺を助けてくれるモノはいない。
 俺を── 一ヶ月前まではプレーヤーだった俺は、そのことを良く知っていた。
 あいつらと同じように従者を作り、たっぷりと遊んでいて、遊びすぎてゲームに完全に嵌り、仕事に行かなくなって収入が無くなって。けれど、そんな事も忘れて遊び耽っていて。
 気が付いたら、多額の借金ができていた。
 このゲームは毎月自動課金で、カード残高が無ければ登録していたローンが自動的に適用される。月額金額だけならそう高額にならなかったのに、俺は多数のオプションに手を出していた。
 それこそ今のリュウジのように。
 そして、俺は、限度額を超え……。
「あ、はああ──あぁぁ、イク、そこっ、やめ──ひぃ、くる、し──」
 気が付いたときには、このゲームを支配する組織に捕らわれて、借金返済のために、このバーチャルな世界で従者役として働かされていた。
 そう、このゲームの従者の大半はノンプレーヤーキャラではない。獣系は別にして、人型は本物の人間が入っている。俺のように借金苦に陥った者達が使役されているのだ。
 実際に働くのはバーチャルな世界の出来事だから、どんなに犯されても現実の身体には影響は無い。けれど、脳が認識する全ては現実変わりない。
 特に、リュウジの設定は従者に対するモノとしては最悪のモノで。
 俺は、毎日毎日、ありとあらゆるモノに犯されて。
「ひゃっ、やぁ……あぁ、はあっ……ああ、おいし……」
 快感を覚えて絶頂によがり狂い、ザーメンを美味いと感じて強請るのだ。
「あっ、……ぁぁぁ──またぁ、イク、イクゥっ──許してぇぇ、もうっ」
 ミサトの言葉なのか、俺自身の言葉なのか、もう判らない。
 判らないけれど、俺はミサトで、ミサトの全てを感じて、ミサトに設定された性格の通りに動いて。
「まだ欲しいだろう?」
 目の前に差し出された、まだ濡れてもいないリュウジのペニスは、誰よりも一番美味しく見えてしまう。
「……はいぃ……ほしい……す」
 ぬるぬるになった唇を大きく開けて、喉の奥まで銜え込んで。
 リュウジが望む通りに犯される。
 それは、いつかミサトが廃棄されても同じこと。
 別の従者に割り当てられて、この生活は俺の借金が終わるまで変わらない。
 ただ。
 
「ここで借金を返せなかったら、レベル50サーバーに行くことになる。だが、あそこに行った奴らは、ゲーム世界からもう戻ってこない」
 そんな話を一度だけ聞いたことがあった。
 それが真実のように時折、他の者が引きずられるように連れて行かれるのを目にしていた。
 あのレベル50サーバーは、プレーヤーの時は憧れの地だった。実際、俺が嵌ったのもあそこのせいだ。
 けれど、あそこにあるのは──。
 奴隷市が立って、人型従者が売り買いされる場所。
 無尽蔵な人体改造に性道具アイテム。
 こんな人前で犯されることなど、些細な事だと思うほどの世界が広がってしまう。
 あそこは、単純にゲームを遊ぶ場所ではなく、全ての欲を解放する場所なのだ。
 もし今の立場でレベル50サーバーに放り込まれたら、俺は完全な性奴隷になって、今以上に酷い目に遭うだろう。
 けれど。
「ミサト、もっと欲しいか?」
 ザーメンまみれの顔を引き上げられて、嗤いかけるリュウジはきっとレベル50サーバーに入ってしまう。しかもこんなにお気に入りのミサトを捨てることなどせずに。
 そんなことが容易に想像できてしまって。
「ミサト、ほら、自分で座るんだ」
「……はい、ありがと……ございます」
 彼のあぐらを掻いた中心でそそり立つペニスに腰を下ろしながら、新たな涙を流してしまった。
【了】