騎士様にお願い 2
「ん、う、く、うぅ——、んんくっ————!!!」
声にならぬくぐもった音が、喉を震わせ、かろうじて部屋の中に響く。悲鳴とも抗議とも嬌声とも懇願ともつかぬ音は、この館の息子であるリィン自身が出しているものだ。けれど、それがどんな意味をもっていたとしても、意味ある言葉にしようがなかった。
もっとも、それが言葉になっていたとしても、それに頓着するような輩はここにはいない。
『変態でケツマンコにチンポ突っ込まれるのが大好きな淫売』
そんなことを自ら認めたリィンに群がる五人の男達は、リィンがどんなに暴れても、泣いても、決してその動きを止めてはくれない。
食堂から客間に移り、豪勢なソファーは押しやられ、部屋は淫行の舞台となり果てて、さっきまでリィンが押し倒されていた机はすでにべっとりと淫液で濡れまくっていた。
その机から引きずり下ろされたら今度は、毛足の長いラグの上で、立ったままリィンの腰を高く抱え上げた隊長が、その逞しい身体をひっきりなしに前後に動かしていた。
その動きにつられてリィンの足先が前後に動いても、べったりと濡れて倒れきった毛足は滑るだけだ。その真上で、きめの細かな白さが目立つ腰は、剣ダコの浮いた太い指が青あざになるほどに食い込み支えられていた。
痛みなどもう感じない。正確には感じないのでは無くて、感じる精神が麻痺してしまっているのだ。
その腰から、もはや自身を支える力のない足が垂れ、膝が中空で揺れていた。身体が前後に激しく揺れる度に尻と隊長の腰が互いを打つ音が響き、そのたびに粘液状のもので濡れた太腿が、駆け抜ける快感を感じて震えている。
最初は悲鳴しか上げなかったリィンであったが、何度も抉られるごとに、身体が快感を拾い始め、最初の痛みに少しは戻った正気も今は霧散してしまっていた。
隊長の、巨躯とも言える身体に見合った特大長の陰茎は、処女申告したリィンの穴には太すぎた。事前の準備がなければ、裂けてしまっていただろうほどのそれを、リィンは泣き喚きながらなんとか受け入れたのだけど。
裂けたら使いづらくてさっさと終わったろうに、と揶揄されて、絶望に見開いた瞳に五人の男の厭らしく舌なめずりする顔が写っていた。
それからずっと。
リィンが望んだことだ、と、嗤う男達の陵辱は止まらない。
「ひ、くぁぁ──、んぁぁ──っ、っんむむぅっ」
尻穴も喉も自身より太いモノに塞がれ続け、流し込まれた精液の味にえづくこともなくなって。
意識を失いそうになると、またあの身体が熱くなる油を注がれて、堪らない疼きに男達に助けを求め、縋りついた。
競うように狭い肉に突き刺さる熱い肉棒はどれも快感を味わえるもので、浅ましく腰が揺れるほどに感じてしまう。
特に隊長の太すぎるそれは、単なる抽挿でも熟れた肉壁のすぐ裏にある快楽の源をすり潰し、強烈な衝動に淫らな奇声を発しながらリィンの意識は何度も白く弾けていた。
そのたびに硬直し反り返る爪先が濡れた絨毯の毛を逆撫でし、拘束を物ともせずに勃起した陰茎から飛び散った僅かに白い粘液が、ラグの毛の奥まで塗り込められた。
繊細な絨毯は、もう廃棄しかないだろうほどに、淫らな染みを多量に作っている。
「おい、淫乱らしくもっと締めろよ」
嘲笑混じりの揶揄に、なけなしの理性が悲鳴を上げ、けれど意識するより早く汗に塗れた背が震え、その狭い肉の洞をきゅうと締め付けてしまう。
「お、巧い巧い! さすがあれだけおチンポ様を欲しがったっだけのことはあらあっ」
熱い肉の締め付けがたいそう気に入ったと、激しく貪る隊長が、その美味さを褒め称える。けれど卑猥な賞賛よりも、締め付けたせいで強い快感を感じてしまう物覚えが良すぎる身体に、精神が闇に引きずられる。
「んひぃぁぁぁっ、あっ、あっ!!」
実地で教え込まれた娼婦の技がより強い快感をリィンに与え、拒絶できないままに流される溺れされる。
自由に射精できない苦しみと繰り返される長い絶頂は、いつまでも萎えない陰茎と同じく途絶えることが無い。
リィンの狂ったようなあのお強請りを、隊長はたいそう気に入ったようで、太く長い陰茎がその身体を何度も何度も切り裂いた。
始まってからずっと、隊長も、他の騎士達も、リィンの身体から離れようとはしなかった。
変態で淫乱だと自己申告したような身体は、隊長一人では物足りないだろう、と、破瓜の苦痛にもがくリィンをその場にいた皆が喜色満面で押さえつけてからずっとだ。
「お口も美味しそうにしゃぶっちゃって。一滴残らず搾り取られそうだね。まじ、ぶっといウインナー食べてるみたいに美味そうに咥えるねぇ」
目一杯開いてなお余りそうなほどの太さに喘ぎ苦しむ様を嗤いながら、副隊長がペロリと舌舐めずりをして腰をつきだした。
「ふぐぅうっ!」
咽の奥まで塞がれて、ビクビクと痙攣する姿を堪能してから、少し抜く。そんな僅かな許しに感謝してしまうほどに呼吸できることが嬉しかった。
最初からずっと、誰かの陰茎が入っていた口はもうリィンの意思では動かないほどに疲れ切っていて閉じることなどできない。その代わりのように皆性器のごときリィンの咽奥まで抉ってその狭さと苦しさに痙攣する刺激を楽しみ、束の間の休憩を与えては感謝を強要する。
呼吸を遮る行為は死の恐怖をリィンに与え、逆らう気力など根こそぎ奪っていく。
その喉に、副隊長がもう何度目かの吐精を心地良く行い、そのまま抜かないままにすべてを飲み干すことを強要されて、リィンは喉を刺激するそれをあらがうことなくごくりごくりと飲み干した。
口角から滲み出た白い汚濁と頬を流れた涙が混じり、その喉を伝い落ちる。
もう何回分の精液を飲み干したか、誰も覚えていない。
開ききった口からずぽりと副隊長の陰茎が抜け落ちて、がくりと崩れ落ちそうな身体がすぐさま次の隊員によって支えられ、隊員の腰の高さの口に陰茎が突き刺さる。
先より短く、けれど太い。
濡れたそれが待ちきれないとでも言うように激しく前後して、再び苦鳴が響き渡った。
口を塞ぐ者はリィンの上体を支える役目を担っていて、剣を振り回す握力を持つ強い指が白く細い二の腕を掴んでいる。すでにいくつも痣を作る手はもはやなすがままだ。きつく掴まれたそれに上体を支えられ、口腔を満たす陰茎に顔を固定されているリィンの床と平行の胸の下には二本の手が伸びていた。
順番制で尻穴も口も使えていない他の隊員が、戯れに遊ぶその最たる矛先であるリィンの乳首は、引き伸ばされ、潰され、爪弾かれ続けて真っ赤に腫れ上がり、痺れるような疼きと疼痛を覚えていた。
特に指の腹で擦り潰される動きに全身の肌がざわめき、くぐもった音が喉で鳴るのを止められない。
「耳もイイんだろ」
暇な男達は、リィンの性感帯を暴いて愉しんでいる。
「首筋も舐めるたんびに、ビクビク反応してるし」
乳首と同様に指が耳朶を引っ張り、喉を這い、生暖かく湿った肉が敏感な肌を舐め回す。
「へへ、気持ち良すぎて小便なみに溢れさせてっぜ、こちらのおチンポ様はよお」
「ン、んんっ、うんっ!」
潜り込んだ男の口に締め付けられ、舌でこねくり回されて。
まともに射精できないペニスをジュルっと激しく吸い込まれる度に、肩が跳ね、強張った身体がガクガクと痙攣する。
五人の行為はバラバラで、けれど狙ったように刺激を与え、狂うほどの快感と様々な痛みが混ざり合いながら、リィンの精神を揉みくちゃにする。
吸い付かれた肌は強い鬱血痕を無数に散らし、五人の精液はリィンの身体から幾筋も垂れ落ちていた。
もともと騎士である彼らと違って文官の人並み程度の体力しか持たないリィンにとって、この長い陵辱劇には身体も精神も持つモノでは無かった。
「あ、あ……あ」
零れる音が小さく途絶え、だらりと垂れた四肢がランダムに揺れて。
「おいおい、もうバテたのかよ」
たっぷりと射精したモノを押し込めるように腰を動かしていた隊長がそれに気付いた時には、明るかったはずの外はすでに真っ暗に暮れていた。
騎士達が滞在中の一週間、彼らはその間リィンをペットとして飼うことに決め、館の裏手、山裾にある古い煉瓦造りの物置に閉じ込めた。
淫乱すぎて人として扱えない、と言い始めたのは誰だったのか、リィンは知らない。言われるがままに、自分はペットだと、飼われるものだからご主人様には絶対に逆らわない、と答えたのは、朦朧とした意識下の出来事で全く覚えていない。
けれど、一度放った言葉は無視されることなく、もとより消息の判らぬ家族を盾にされては抗いようもなかった。
さらに、片側の肩胛骨にはペットの証だと小さいながらもしっかりと刺青までされて、衣服など望むべくもなく首輪と陰茎の枷だけの姿で小屋へと繋がれたのだ。
もう何年も使用していない小屋は、壊れた農器具が無造作に突っ込まれていたけれど、それらが放り出されてしまえば、ペットを飼う一間分のスペースは確保できて、その丈夫な柱に首輪から伸びた鎖が鋼のロープで括り付けられた。
季節は一年を通してもっとも過ごしやすい時期であり、物置の隅に置かれた簡易の灯具が放つ熱で、僅かに冷える夜も問題無い。
何より、夜も昼もなく誰かがここにやってきては、淫乱なペットの世話だとその身体を弄ぶのだから、寒さを感じる暇も無い。
それほどまでに空き時間などなく誰かがやってくるのを、リィンは平身低頭で迎えなければならなかった。
日がいつ変わり、いつ朝が来たのか、今が何時なのか判らない。ただ、肌に感じるほんの少しの温度差に、夜遅くなったと気付く程度だ。
そうやって、休む間もなく身体を使われて、先に音を上げたのは精神の方だった。
「ほらよ、餌の時間だ」
彼らの中で一番若い男は、彼らの隊の食事係を担っているらしく、リィンの食事も用意していると言っていた。
1日二食はパンにウインナーやスープ、それにサラダか果物に乳製品で中身はあまり変わらない。その合間に間食のようにチーズや果物がある。
けれど、それが喜べないのは、いつでも持ってきた相手との性交がついているからだ。
「食え」
床に置かれた食事を促され、力の入らない身体を手と膝で支えた。
「きょうも、わたしのために、こんなにおいしいぃ、おちんぽういんなーを、ごよういいただき、ありがとうございます」
もう何回言っただろう。
言い慣れてつっかえることもなく、甘える声音を出す演技すら情感こめて行って、額を擦り付けるほどに頭を下げる。
衣服など与えられない剥き出しの身体のあちこちに鬱血痕や歯型が皮膚病のごとく浮かび、先刻まで遊ばれていた相手の精液が汚れた尻から溢れていた。
「おお、美味そうにしゃぶれよ」
許可を得て、浅い皿にまとめて入れられた骨付きウインナーに首を伸ばし、咥えた。
彼特製のペニス型極太ウインナーの鬼頭のごとく膨れたそれを咥え、ジュルジュルと音を立てて舐めしゃぶる。
手を使わず、這いつくばって、そういう風に食べろと言われて。
両手は顔の横で拳を作るのが、定位置だ。
そんな風に繰り返される見せ物は、それだけではない。
「ああ……おちんぽぉ、おいし……。あはぁ、ふっとぉいぃー」
感情を込めろと尻を激しく叩かれてから、尻を振って身悶え、顎を皿に擦り付けるようにしてうっとりと舐めるようになっていた。もう演技しようと思わなくても、そんな態度になってしまう。
淫乱に振る舞うことを受け入れた訳では無いけれど、諦めて従った方が楽だという思いの方が強かった。
「ん、んん」
まずは先端を、歯先で引っかけるようにしてかじり、溢れる肉汁を舌でペロペロと舐めとる。
ユックリユックリ、かじっては舐め、啜り、またかじる。
パンも細長く、先端からかじり、真ん中に作った空洞にたっぷり入れられた生クリームをチュウチュウ吸いつくしてから周りを食べる。
「あまぁい、おいしいぃ、おちんぽ汁がいっぱぁい」
口にして、音を立てて舐め啜れば、本当に男の陰茎その物を舐めているような気がして、全身がぞわりと熱くなり、浮かれたように目眩がした。
背後に回った男が強い視線で尻穴を眺めているのにも感じてしまう。
視線で嬲られている、そんなもどかしい感覚が堪らなくて、腰が勝手に揺らぎ始めるのを止めないられない。
「こっちも物欲しそうにおちょぼ口をパクパク言っているぜ」
男の手が残った骨を拾い上げ。
「あっ、や、ぁんっ」
潜り込む指より細い異物に、背筋を悪寒のごとく疼きが這い上がる。
細くとも、慣れた男は巧みに丸い先端を前立腺へと押し当てていた。
「こっちは俺が食べさせてやるから、そっちのお口で食べちまいな」
「ひゃ、ひゃいぃ、ひぐ、あ!あ!」
言われても、突かれる度に腰が跳ね、口からパン屑がボロボロと零れ落ちる。咥えようとしたウインナーは皿から転がり、たまらずに突っ伏した頬の下で肉汁を塗りたくった。
「何だ、こっちの方が先に欲しいってか」
呆れた男の声は明らかに嗤っていた。
パチンと尻を叩かれた拍子に、無意識で腰を高くあげて。
「オマンコで、たべたいです。いっぱいおちんぽさま、くださぁい」
脳に染み着くまで繰り返し教え込まれた卑猥な言葉が勝手に出てくる。
「しゃあねえなあ」
触れた熱い塊に、恍惚とした笑みが浮かんだその瞬間。
「あ! ひゃぁっ」
細い骨の代わりに音を立ててめり込んだ熱い肉棒の感触に、上体を仰け反らして歓喜の声を上げていた。
「あひっ! おっきぃっ、やぁぁ、おいし──ぃっ! すごぉいっ!」
その時の、思わず零れた言葉は誰にも教えられたモノでなかったことにも気付かずに、ぬかるむ肉穴を割り開く感触に溺れ、陰茎はヒクヒクと震えて涎のごとく滴を垂らし続けていた。
「あ、ああっ、ぁぁ、ひぃぁぁっ、あん、もっとぉ……ああ、もっと深くしてぇっ、おチンポぉ、もっとぉっ」
ずぼ、じゅぶっ、じゅぼっ。
狭く薄暗い物置の古い棚に手をついて、中腰の尻に副隊長を担う騎士がその腰を激しく前後させていた。
そのたびに、リィンの白い身体が跳ねて、浅ましい嬌声が響き渡る。
最初の頃の拒絶などもうどこにも無くて、今では感じるままに卑猥な言葉を叫びまくった。
「足を開くんだよ、もっと。ほら、啼くんだっ、啼けっ」
「んあぁ、あんっ、ふかぁぁ、深いぃぃっ!」
喘ぎ逸らした喉には、最初にはめられた首輪がそのままだ。柔らかな革とはいえ、もとは犬用のそれは、リィンの滑らかな喉に幾筋も擦り傷を作っていた。けれど、そんな傷ですら艶めかしく、男達を誘うのだ。
首筋に残る数多の鬱血痕も、すっかり深い色に色づいた乳首も、競うように男達が遊んだせいだ。
「深いほどイイんだろうっ、ほら、奥にたっぷりと餌をあげるよっ、しっかり飲み込んでっ」
「あっ、あっ、イイ、すごぉ……っ、ああぁっ──っ、イクぅぅっ!!」
副隊長の動きが止まり、尻タブがつぶれるほど強く押しつけられたその下で、リィンの尻がきゅうっと引き締まり、太股がブルブル震えていた。
その股間で、垂れ下がったペニスからつうっと細い糸が流れ、床に染みを作っている。
枷が嵌められた陰茎は、多少ならば射精ができるがだらだらと流れるようにしか出てこない。
そのせいで、早々に射精なしの絶頂を極めたリィンは、射精よりもその絶頂ばかりでイキまくっていた。
男として射精への欲求は強いけれど、繰り返す絶頂で射精まで辿り着かずに失神してしまうこともある。
そんな中、久方ぶりの射精で零れた粘度の高い精液は、弱々しく震える足の裏をべたりと濡らし、ゴミと土塊が混じった汚れとして広がっていた。
そんな液だまりのすぐ傍らには、運び込まれた麦わらに白い布を被せたなけなしの寝具もどきがあり、休憩時間にはリィンもそこで横になることを許されていたけれど。その布も、あちらこちらに染みができていて、休むだけでは無い場所なのは明白だ。
「ふぅ……」
「あ、あ……や、ん……も……」
ずぽりと音を立てて抜かれた陰茎から湯気が立ち、その拍子に離された身体はがくりと崩れ落ちていった。閉じきらない穴からは溢れた白濁がたらりと流れ落ちていく。
はあはあと全身で息をするリィンの目は情欲に薄赤く染まり、何かを探すようにうろうろと彷徨っていた。
今日がいつで、もうあれから何日経ったのか、リィンは気付いていない。
最初のうちは壁に日にちを刻んでいたが、それも途中で止まっていた。
与えられる快楽に流されていて、おとなしく騎士達の訪れを待つ日々だ。女もろくに知らぬ初だった身体はすっかり男に慣れ、自ら足を開き、何をされても卑猥な言葉で痴態を晒している。
実際のところすでに7日目がきていて、明日の早朝には彼らはこの地を発つのだが、そんなことすらリィンは気付いていないだろう。
「だいぶ緩くなったんじゃないかな?」
「んぐっ」
未だ溢れる穴にずぽりと入れた剣ダコの浮かぶ指に、まともに動けないくせに反応する。
「まあ、隊長のぶっといのが入ったら、弛んでもしようがなぃなあ……」
「んっんんっ、ああっ、だめぇっ、あんっ、イクぅ、うっ、あっ」
こりっと敏感に反応するところを撫でれば、力無いままに声が零れていた。
もうすっかり、男から犯されることに慣れた身体は、まさしく淫乱な娼婦のように彼らを悦ばせるし、リィン自身も悦んでいる。
最近では、時間が無いからとさっさと終わらせると、ひどく物足りなさそうに熟れた肉穴を引き締めて抜けようとするそれを逃さないとするくらいなのだ。
リィン自身はそんな自分を認めたくはないようだが、誰が見てもその身体はすっかり淫乱化しているのは間違いなかった。実際、彼らがやってくると憂鬱そうに表情を歪めるけれど、始まってしまえば娼婦もかくやというほどにすさまじい色情を垂れ流して、求めてくるのだから。
初めてリィンが男を知ったとき、その身体は目立つ傷などなく、白く艶やかな肌を持っていた。それは女の持つきめ細かさも持っていて、その肌が淫らに紅潮する様はたいそう男達の欲を誘ったものだった。
それに加えて、今は妖艶な色香でもって、彼らを惹きつける。
誘う動きや上がる嬌声が目や耳から飢餓を煽り、我慢など効かぬままに求めてしまう。そのせいで、リィンの肌には多くの痕が残っていた。腕や腰に残るのは、掴んだ指でできた青あざであり、敏感な性感帯にははっきりとした鬱血となったたいそう強く吸われた痕に歯形が残り。
淫らな姿をしたリィンは、もうその姿だけで騎士達の嗜虐心を煽るのだ。
そして。
「ふふ、うまく色が落ち着いてきた」
彼が、嫌がり泣き喚く身体に刺した左肩から肩胛骨を飾る模様がそこに浮かんでいた。単純ながらもくっきりと赤く色づいたそれは、日を追うごとに腫れも収まり、肌に馴染み始めている。
それは、赤の竜騎小隊という名を持つ彼らの、隊記章を模したものだった。
と言ってもぱっと見は違うものに見えるだろう。翼を持つ竜は顔の部分だけだし、その口には小さな小鳥が捕らえられている。片側の翼から風切り羽が飛びちり、バラバラで、もう片方は歪に捻れた哀れな小鳥の姿だ。
「もうちょっと時間があれば……」
口惜しそうに呟く彼は、その出来映えに満足などしていない。もっと詳細に、もっと広範囲に、考えたとおりの図柄で色を刺すには、一日足らずではあまりにも時間がなさすぎた。
けれど、余分な身体の負担を与えれば、リィンを完全に堕とすだけの調教ができない。身も心も、男無しでいられない、あの自ら言い放った言葉道理の淫乱に仕立てる時間を優先させる必要があったのだ。
それこそが彼らの遊技の目的だった。任務の合間にちょうど良さそうな人材を探し、調教し、完全に淫乱化させて放置したり、時には需要を見つけて売り飛ばす。その相手は外国の商人だったり、その地方の有力者だったり様々だ。
このリィンをこの後どうするかまだ聞いていない。だが、行く末がいつもと変わらないだろうことは容易に想像できた。
結局淫乱化の目的が最優先のために、最初の陵辱から回復させるための一日足らずだけが、副隊長の趣味の時間だったというわけで。
それでも、まったく満足していない訳では無い。特にこの哀れな小鳥の造形は、自画自賛できるほどの出来映えだ。
うっとりとそれを撫でていると、虚ろな瞳がゆっくりと閉じられていった。
僅かな休憩時間だと、リィンの身体が認識したのだろう。
この後は、隊長が最後の調教を行う。
それでこの狂乱の日々は終わる。
「これで……終わりだ」
いつものように、この地を離れてそれで終わり。
淫乱になったモノの行く末など、今まで気にしたことなどなかったけれど。
「もっと遊びたかったなあ……」
さんざんリィンの中で精を放ち続けたはずの副隊長は、それでも不満げに鼻を鳴らして、言葉を紡いだ。
楽しめた、面白かった、最高だった。
そんな言葉を惜しみなく出せるほどに、リィンの身体に嵌まってしまったらしい。
実際、誰もがそう思っているのは確かだ。
いつもはせいぜい数回も遊べば良い方の忙しい隊長が、毎日のように獲物を使っていることも珍しいことだ。
仕事としてこの地に来ている以上、その地で成すべき事は成すために隊長のすることは多く、毎日など遊んでいられないはずなのだ。
だが、このリィンに限って言えば、隊長は最初から執着していたように見えた。特にリィンの尻穴をかなり気に入っていたのは事実で、僅かな時間でも見いだして、毎日のようにこの身体で遊んでいた。
刺青を刺せと言ったのも初めてで、その真意は未だに不明だけど。
刻んだこの印にどんな理由があるのか?
彼はそっとその模様に手を這わせ、竜に銜えられた小鳥に指先を当てた。
「これは……何の象徴だろうねぇ」
隊長が望んだその模様に、何か意味があるだろう。
そして、それは、きっと自分たちにとって良いことに違いない。
そう考えるのは、彼らの隊長のすることは、いつだって隊員達にとって良いことだったからだ。