騎士様にお願い 1

騎士様にお願い 1

騎士様にお願い 1
騎士団一行を受け入れた館の次男が願うことは?
強制懇願、集団凌辱、精神支配、ペット扱い




「お前の願いが何だって?」
 ニヤリと意味ありげにほくそ笑んだ上座に座っている男の問いに、リィンは答えられずに奥歯を噛みしめる。背に足が乗っているせいで地に伏した身体は、その痛みだけでなく強張り、床についた拳は震えていた。
「どうした?」
 問いかける男は、昨夜この館に訪れたばかりの騎士団の隊長だ。彼を含めて五人編成である彼らは、この国の中央騎士団に所属していて、定期的な見回りでこの地を訪れたのだという。
 王国の精鋭ばかりが所属する騎士団の小隊長ともなれば、その姿は威風堂々としていてひどく圧倒された。
 隊長は茶褐色の短髪に厳つい顔をしていて、見上げるほどの上背に肩幅も広く、筋肉の盛り上がる腕はリィンの足の太さほどもある。彼からすればリィンなど子供のように華奢で、片手で扱われそうなほどだ。
 配下の四人とて例外なく立派な体格か、才気溢れる眼光、もしくは俊敏そうな気配を漂わせていて、体格も才覚も今ひとつのリィンにしてみれば羨ましくて、ついまじまじと見つめてしまうほどだった。
 そんなリィンは今年21歳を迎えたこの町の統治を任されている家の次男で、当主である兄を補佐する文官として働いている。
 山間の小さな村に近い大きさの町で、すべきことは多くない。通常ならば村長が治めるような地に領主の名でリィンの家が据えられたのは、数代前の王の命令だった。この近くの王家の祠を管理する事が一番で、その役目の報酬のようにこの地が与えられたのだ。
 なので領主と言ってもする事はあまりなく、時折祠に行って簡単に祭る位だった。当然収入も少なく、故に館も小さく、常駐しているのも執事と料理方兼召使いだけだった。何かあれば町の者に依頼するが、そんな事もそうはない。
 兄とリィン、妹も合わせて五人の暮らしはたいそう慎ましく静かなものだった。
 だからこそ、そんな地を急に訪れた彼らの存在は一大イベントとと言えた。
 兄も王家の正式な任命書を持っていた彼らの一週間の滞在を迎えることに緊張していて、リィンもがんばらなければと張り切っていたのだけど。
 そんな彼らが、今朝になって食堂に集まった五人に、剣を突きつけ脅してきたのは青天の霹靂としか言いようがなかった。
 咄嗟に抗おうとした兄の腕は捻り上げられ、手首を枷で一纏めにされ。妹の泣き声と執事の悲鳴、召使いの怒声が入り混じる中、次々に連れて行かれた皆が今はどこにいるのか判らない。
 逃げようとした身体を羽交い締めにされ、手枷の鎖を引っ張られたリィンが連れて行かれたのは、食堂の隣の配膳室だ。
 そこで転がされて、隊員の一人に馬乗りにされた状態で鋭い短剣を首筋に当てられ、脅された。
 何度も何度も。
 冷たい金属が体温に温もってなお感じる硬質なそれに、ガチガチと歯の根も合わないほどの恐怖が失せない。
 冷たい床が身体を冷やし、強張った四肢もまともに動かなくなった頃。
 もう一人がやってきて、二人ががりでリィンの立場とやるべき事を教えられた。
 家族がどうなったか何も判らないままに、その家族の命を盾にすらされて。言われたことをリィンができなければ、妹がすることになるのだと、嘲笑交じりで言われた言葉は、決して違えられないのだと本能で理解してしまう。
 結局頷くしかなかったリィンの頬に、幾筋も涙が流れ落ちた。
 そのまま、さらに教え込まれたのは言葉とすべき演技とそのための準備だ。
 演技など、できるわけが無いと言っても聞き入れてもらえず、屈辱のままに準備を重ね、再び食堂に戻ってきたときにはもう昼の時間となっていた。
 枷は外されたが、今度は分厚い革の首輪をはめられ、続く鎖で引っ張られる。隊長の前までそれで引きずられ、着いたら今度は俯せに倒されて、隊員の一人の足が背に乗った。
「隊長にお願いがあるってよ。こいつ」
 愉しげな男の促す言葉に、真っ赤な葡萄酒を飲み干していた隊長がちらりと見やる。
「願い?」
 興味をそそられたばかりに問いかける隊長の横には、細身とは言え狡猾さを併せ持つ副隊長。リィンの背に一人に、壁際に二人。
「んぐっ……」
 背筋にのしかかられて息が詰まる。
 もとより、簡単には言い出せない内容に、口も喉も動かない。そんな姿に、背の男が苛立たしげにリィンの髪を引き掴んだ。
「おい、お前が隊長に会いたいって言うから連れてきてやったのになあ」
「ぐっ」
 鎖も引かれ喉が絞まり、堪らずに腕に力を入れ上体を起こそうとしたけれど、背に加えられた重みは変わらない。
 苦しさに呻いていると、ほんの少し鎖が弛む。とたんに入り込む空気に喉が刺激されて咳き込んで、ヒイヒイと喘ぐ首筋に、覚えのある硬質の冷たさが当てられた。
「おい、さっさとしねぇと……判ってるだろう?」
 その言葉の意味することに、リィンはぎくりと身体を強張らせて、肩越しに男を見やった。
 ニヤリと嗤うその瞳に、ぞくりと抑えきれない恐怖がこみ上げる。
 噛みしめようとした奥歯がカチカチと鳴っている。深い恐怖は、思考すら停止させ、ただ逃れる術ばかり頭を支配した。
「お、お願いが、あります……隊長殿に……お願いが……」
 一人だけ家族から引き離されて、死の恐怖と家族をネタに脅されて、受け入れられるものではない言い含められた言葉を必死になって言い募る。
 それがどんな未来を自身にもたらすか判っていても、それ以外の選択肢は今ここになかった。
「どうか……どうか……この私を……お、お、犯して……ください……」
 言葉にしたとたん、目の奥がじわりと熱くなる。昨日まで家族の団らんの場でもあった食堂の床に爪が音を立てる。関節が白くなるほどに力が入り、そうすることしかできない自身を心の中で罵りながらも、できなかった時の恐怖が身体を支配していた。
「ほ、お?」
 隊長が愉しげに笑みを深くし、リィンの言葉を繰り返す。
「犯されたいと? 抱いてくれ、でなく」
「……っ」
 改めて問われて返事に窮するけれど、躊躇いを封じるように加わった背の力にごくりと息を飲んだ。
「……はい、お、犯して、ぐぅ……っ、く、ださい……」
 ほんとうは、もっとたくさんの言葉を言うように言われていた。けれど、とてもではないが、リィンはそれを口にすることができなかった。
 それを咎めるように背に乗った足が食い込んでくる。
「ぐっ……んっ」
 息が苦しくて唸るリィンを、隊長が張った顎を指先で擦りながら観察するようにリィンを眺めてくる。
「お前、をねぇ……。お前、女か?……のはずはねぇなぁ? てとは、男のくせに女みてぇに犯されてぇって?」
 肩を竦めて周りの隊員達に視線をやっていた。
「なぁ、男だろ、あれ?」
「ええ、男です、まあ、女みたいに華奢で弱々しいようですが」
「男っすね けどさぁあの細腰、女より柔そうで」
 からかうようなやり取りに、リィンの首筋に朱が走る。
「男のくせに、なんで犯されてぇんだ?」
 揶揄が多分に含むその声音に激しい羞恥が湧いて唇が震え、続けなければならない言葉が喉から先に出て行かない。
 突き刺さるような視線に、背に食い込む固い靴底。それでも続きを言わないのに焦れたのか、背後の男が足を下ろして代わりに膝を乗せ、腰をかがめてリィンの耳元に囁いた。
「しゃあねぇな。じゃあんたはお役御免ってことで」
「ま、待ってっ!」
 男の言葉と共に背から重みが消えるのに、慌てて離れる男に追いすがる。その足に縋り付き、ズボンの布にしがみつき。
「い、言うっ、言うからっ」
 必死になるリィンに向けられた男の目が細められ、視線が言うべきことを促した。
 その瞬間、躊躇いが消えた。
 喉が大きく鳴って、何度も何度も大きな声で空で言えるまで教え込まされた言葉を、口にした。
「わ、私は、変態で、淫乱で……男を見ると犯されたいと、私の、……穴という穴を、埋めて、ほし……って。欲しいって……ずっと、思ってましたっ。それも……隊長のような、男、らしくて、たくしまい方に」
 どんなに押さえ込もうと思っても喉の震えは止まらず、平静に言い切ろうとしたけれど、言葉は途切れ、つっかえる。
 知らず爪先が床を掻き、緊張と羞恥に額に浮かんだ汗が、床にぽたりぽたりと落ちていく。
「たくましい……男の人の……お、お……」
 続けるべき言葉が口から出てこなくなる。
 緊張に青ざめた顔が強ばり、唇が震えながらもパクパクと喘ぐ。
「お?」
 ニヤニヤと促されて、それでも何度も息を飲み込んで。
「やめるか?」
 背後から耳元で囁かれたその瞬間。
「お、おチンポ様が欲しいっ、隊長のは、きっとすばらしくっ、た、たくましい、だろ、からっ、だから隊長に犯されくてっ。どうか、私の処女を奪ってくださいっ!」
 自分が何を言っているのか判りすぎるほど判っているけれど。
 けれど、頭の中は真っ白で何も考えられない。ただ、言わなければ、という恐怖に縛られた精神が、言葉を紡ぎ出す。
 その身体から不意に力が抜け、がくりと上体が崩れ落ちた。
 床に額を擦りつけて、その固く閉じられたまなじりから幾筋もの滴が流れ落ちていく。
「くっ、うっ……」
 堪えきれない嗚咽が、床に反射して響く。
 だが、その決死の言葉に、返されたのは前後左右からの大爆笑だ。
「すっげぇ、おチンポ様って……、あははっ、確かに淫乱だわ」
「たくましいのが欲しいんだと。まあ、確かになあ隊長のは、俺らも羨むほどにでかいわ」
「でかすぎて、商売女も嫌がる代物だけどよ」
「あんな細腰で、でけぇのがほしいなんてよお」
「し、しかも、処女っ!! ははっ、処女ってよぉっ」
 リィンを揶揄する大声は防ぎようもなく鼓膜に響き、打ちのめされたリィンの矜持をどん底までに追い詰めた。
「ほら、まだだ」
 なのに、背後の男は許してくれない。
 嗚咽に震える肩を右手で引き起こし、隊長を見ろと言い放って。左手で髪を掴んでその顔を上げさせられた。
 抗うことなどもとより許されておらず、けれど、もうイヤだと振ろうとした頭は封じられ、なすがままの身体は今度は膝立ちにされ、「続き」と強要されたのだ。
 この食堂に来るまでに、完全に言えるまで何度も繰り返された言葉を、リィンは呟くように零した。
「み、見て……さい……」
 涙の流れる顔を晒し、リィンの手が上がる。指先が捕らえようとしているのは薄いシャツのボタンだけど、うまく掴めない。イライラと背中をこづかれるせいで、するりと滑るそれを、それでも震える手でなんとか一つずつ外していく。
「へぇ……」
 誰かの感嘆の声が室内に響いたのは、肩からシャツがパサリと滑り落ちて日に焼けていない肌が晒された時だ。
 華奢な背で動く肩胛骨を見た男達も、そして前方から滑らかな胸に目立つ二カ所の朱色を見つけた男達が、瞬間言葉を失った。
 その胸の二カ所に、リィンの両手が触れる。
「あ、ぁぁ……」
 色など無い声だった。明らかに義務的な喘ぎ声を出し、リィンは自らの胸肉を絞るように握り、揉みしだき、その分前方にツンと立った乳首を指先で摘まんだ。
「……イぃ……、おっ、ぱぃ……イィ……おっばい……イィ……」
 蒼白な表情で、泣きながら言葉を繰り返す。
「もっと強く」
「ひっ、くっ……うっ」
 背後の男の指示に、リィンは指の力を強めて動きを激しくする。
 逆らえば、約束は守ってもらえない。妹を、家族を、見殺しにできるほどリィンは強くはなかった。
「見て……リィンの……いやらしい、おっぱい、を……」
 唇を噛みしめたくても、言葉をいわなければならない。羞恥と屈辱と恐怖の入り交じった衝動に力の入ってしまった指先が、痣になるほどに強く胸筋を揉みしだく。
「見て、見て……リィンのおっぱい」
 ただ単調に繰り返す姿に、それでも男達の目は釘付けになっていた。
「すげ……。白いから余計に目立ってよ……」
「あれを見ろよ。感じてプクッと盛り上がっているぜ」
「もっとやれっ、もっときつくだっ」
「淫乱なんだろっ、もっと先っぽ潰して遊ぶんだよっ」
 欲に煽られてきたのか、男達の揶揄が厭らしく響く。
「もっと色っぽくしろよぉ、そんなんじゃ、隊長もその気になんねぇぜっ」
 その言葉に、リィンは冷水を浴びせられたかのように硬直し、恐る恐る視線を隊長に向けた。
 その視線の先で、隊長の口元は多少は嗤っているよう見えたけれど、それ以上では無かった。実際、今も椅子に座ったまま退廃的に酒のグラスを傾けているばかりだ。それに気付いたとたん、思わず。
「あ……ぁ……ねがい……お、犯して……犯して、ください……」
 リィンの口が喘ぐように訴えていた。
 手が、胸から下りる。
 この先も、どうすれば良いのか教えられていたけれど、その時には絶対にできるはずも無いと思っていた。
 けれど、今は手が勝手に動く。
 肌を擦るように下りた先は下衣を止める紐だ。もとより薄い部屋着に着替えさせられていたそれは紐だけでしか止められていない。あらかじめ緩くしか締められていないそれは軽く引っ張るだけでするりと解け、下衣がぱさりと落ちる。
「「お、おお」」
 低いどよめきが室内に響き渡った。
 かあっと耳朶まで赤く染まるのは、落ちた下衣の下に何も身につけていなかったせいだ。
 しかもそれだけでなく、ここに来る前取りつけられた射精防止の枷が陰茎を飾っているからだった。
「おいおい、なんだよ、あれ?」
「ほれ、男娼が勝手にイけねぇようにする奴だろ」
「なんで、あんなもんつけてんだ?」
 言い合う観衆に、隊長も口を開いた。
「なぜ、そんなもんつけてんだ?」
 その問いかけに、リィンは首を振った。つけられた、のだと言いたかった。
 けれど。
「す、すぐに、漏らすから……自分で……つけました……自慰ばっか、んっ、我慢できない……から」
 嗚咽に震える声で真実で無い告白をする。
「暇さえあれば、ち、ちんぽ……ばっか、弄って、いっつも濡れて……だから……」
 手が自分のペニスを掴む。
 枷が食い込む萎えたペニスを輪を作った指の腹で扱き、親指が鈴先に食い込むほどに強く刺激する。
 いつもそれだけで十分なペニスの反応は、さすがに鈍いモノだったけれど、すでにその先端も陰茎もねっとりと濡れていた。
「確かになぁ、もう濡れてやがる」
 含み笑いで指摘されても、あらかじめ塗られた脂だとは否定できず、ただ頷く。
「……す、すぐに……濡れる、んです……」
 手を動かすだけでぬちゃぬちゃと音がする。
 たっぷりと塗りたくられた油は、手の熱で粘度を下げてさらに塗り拡げられ、会陰まで垂れていった。
 けれど、恐怖と緊張に彩られた身体は、たやすくは反応しない。しなりと萎えたペニスはいつまでも手の中で柔らかく、垂れ下がったままだ。
 だけど、ビンビンに勃起させて扱きまくれ、と言われていたから、必死になって激しく手を動かす。
 脳裏に自慰の時に思い浮かべる状況を思い出し、数少ない経験の女性の裸体の感触を思い出して。
 けれど、焦れば焦るほどに熱の湧かない身体は、よけうに緊張するせいか、なかなかな血を集めない。
「どうした?」
 背後の声が焦りを助長する。
「ま、まって……」
 意識を集中し、周囲の音を意識して遮断して必死になって女を味わったことを思い出す。
 恐怖に震える唇を噛みしめて、いつも一番感じる場所を、ぐりぐりと指先で抉るように刺激した。
 ぐちゃ、グチュ
「んぐっ、んっ、くっ……」
 膝立ちを崩せなくてぐらつく身体も意識が散る要因になっていたけれど、それでも必死になって左手は乳首を弄び、右手が陰茎を扱き立てる。
 そんな中、火の粉が不意に焔を噴き出したかのような疼きが生まれ、瞬く間に熱が下腹部の奥にわき上がっていた。
「んっ、はぅっ、ん……くっ……」
 感じ始めた場所に意識を集中し、ペニスを弄くる手の指の腹で亀頭を嬲った。
 だが、無理に意識しなくても一度快感を感じ始めると後は早かった。あっという間に枷の輪が肉に食い込み、勃起したそれが天を示す。
 同時に、強く捻り潰した乳首から、ズキズキとした鋭い痛みと同時に、ぞくりとした疼きが湧き起こった。
 小さかった乳首は、今や赤黒く腫れたように膨らんでいる。
 それは、白い華奢な身体にやけに目立ち、周りの視線を釘付けにしていた。
「あ、はぁっ、んっ、……くっ」
 十分成長した快感が、全身を這いずっていた。特にペニスからのそれは十分すぎるほどに感じていた。
 いつもと違う、と、どこか異常なその感覚に戸惑い、けれど止めるわけにも行かなくて、必死になって追い上げる。
 油が熱く、濡れた皮膚が敏感になってきた。息が荒れ、上半身がガクガクと揺れる。少し開き気味になった太股から膝がわなわなと痙攣していた。
 止められない動きに息が切れ、少し上向きになった顔でハアハアと荒い息を零す。
 知らず半開きになった目の奥で瞳が虚ろに揺れていた。
 そんなリィンに、背後の男が非情に促す
「そろそろ」
 その言葉に、手が止まったのは一瞬だ。
 すでにリィンの理性は、理性を保つことを自ら諦めていた。従わなければ、約束は違えられる。まだすべきことの半分もしていないのだから、指示に従なければならない。
 恐怖と羞恥と屈辱と怒りと服従。そんな複雑な感情をリィンの精神は制御できなかった。そこに混じった快感と色欲を排除できないままに、身につけさせられた所作を続けてしまう。
 何より、腹の奥が熱い。
 背筋が疼くように震え、何かが肌を這いずり回っている。
 ポタリ
 床に落ちた油の滴が、まるで誘っているように見える。食堂に来る直前、たっぷりと塗られた粘度の高い油は今や流れて下半身を覆っていた。ペニスも尻穴も会陰も。手に付いたせいで、胸も濡れていた。
 気持ち良く遊ぶには大切な油だ──と言われたことをちらりと思い出し、この異常な熱さの原因にようやく思い当たったけれど。
 そんなことはすぐに消えて、今はもう、頭の中に浮かぶのは、教え込まれた言葉だけだった。
 周りから響く揶揄に意識を奪われ、色の無かった声音に、明らかな色欲が混じり出していた。
「あ、あぁ……見て……わ、私の、処女のま、まんこ……が……ああ、欲しい……」
「た、たまんねぇ……」
 けたたましく男達の喉が鳴る。隊長の右手のグラスも止まっていた。
「たくましい……のが……ほし……」
 身体を捻り、隊長の方に尻を向ける。
 前屈みになって手をついて。
「い、淫乱ってのはこういう奴のことか?」
「すげぇ。女より細いけど、女よりいろっぺぇ……」
 零れるような言葉がリィンを煽る。
「い、んらん……なリィンは、たくましい、お、おチンポ様が……」
「もっと、もっと激しくっ」
「尻ふれっ、尻振って踊れっ」
「あ、ここにぃ……どうか……」
 上体を下ろして、高く腰を掲げた。
 先よりさらに拡げた太股の間で、自分のペニスが揺れているのを感じる。
 流れた油が会陰から陰茎を伝わり、亀頭からぽたりと滴となって落ちていった。
「穴……マンコ、見て……犯して……」
 ペニスを扱いて油まみれの手で、尻タブを割り、指先を窄まったそこへと近づける。
 ここにくる前に風呂場で自分で指を二本もいれて中まで洗わされたそこは、ふっくらと盛り上がり、滑った指先をつぶりと簡単に飲み、すぐに根元まで銜え込んだ。
 ごくり、と、静かになった周囲のあちらこちらで喉が鳴る。
 聞こえないはずの舌なめずりの音は、複数重なったせいで、リィンの耳まで届いていた。
 さっきまで震えて青ざめていた身体が、今はもう熱く紅潮しており、股間のペニスは今や完全に勃起していた。
「ど、どうか……隊長、殿ぉ……犯、してぇ……犯してぇ……」
 身体が熱い。
 視線が尻に突き刺さるとよけいに熱くなる。
 入った指を中の肉が締め付けると、気持ち悪いのに、気持ち良い。
「ああ、んんっ、んうぁ……」
 喘ぎながら、リィンは泣いていた。ずっと涙が止まらなかった。吐息の中で、小さな嗚咽も止まっていなかった。
 なのに、身体は熱くて、気持ち良くて。恥ずかしいのに、見られていると思うと、腰が揺れてしまう。
 もう早く終わりたい。
 苦しくて、堪らない。気持ち良いけど、とても苦しい。
 ああ、早く。早く犯してくれれば良いのに。
 そしたら、早く、気持ち良くて……けど、早く、終わる……。
 グチャグチャになった思考の中で、刹那、浮かんだ考えに捕らわれる。
 ああ、早く。
 早く、犯して。
 犯して、たっぷり中に出してくれれば。隊長のモノで犯してくれれば、それだけ早く終わる。
 この羞恥と恐怖と快感の時間が終わってくれる。
 だから。
「お、犯して……、隊長どのぉ……おチンポ様でぇっ、わ、たしのっ!」
 もう、逃れられないのであれば。
 脚を大きく開き見せつけて、心の底から希う。
「おマンコ……おか……して、早く……」
 もうそのことだけしか考えられなかった。