淫魔 憂 デート 後編

淫魔 憂 デート 後編

後編になります。




 俺の希望は、電車の中での輪姦。正確には、あの映像の続編を取ることだった。
 まあ、若干周囲のエキストラの顔ぶれは違う者もいるけれど、そんなのは些細なことで、主演の憂が同じであれば良いだけなのだ。
 今は実のところその続編のための舞台づくりってところだ。
 あの時は、全裸で抱え上げられた憂が、開いた扉からホームに向かって射精したところで終わった訳だけど。
 まだ憂は服を着ているから。
「漏らしてるっていっても、小便じゃあねえなぁ。なあ、そうだろ?」
「だらしなく緩んでアヘアヘ言ってるしな、この青臭い臭いからして、どう考えてもザーメンじゃね」
 その言葉に憂を捕らえている彼が頷いた。
「こんなところでも股間濡らす奴だ。この恥知らず野郎をまずは……おいっ」
 彼の合図はそれだけだった。
 途端、伸びてきた手が憂のシャツにかかり、布が歪に伸びて。
 悲鳴にも似た布を引き裂く音が、響く。
 誰かが「何を!」と驚きの声を上げているが、その声はすぐに遠くなり、配役以外の者達が、憂から遠くに下げられた。
 憂を中心に幾重にもできた人の輪は、それぞれの配役レベルの違いのせいだ。
 一番近い連中は主役と準主役級、主要な共演者達。続いてスタッフや撮影隊、その次にいるのが、この密室を支配するかのごとくにらみをきかせている者達。そんな彼らに圧倒されて一番外の輪にいるのが一般客達だ。
 どうやら人数的には一般客の方が少ない。だが一般客といえども男ばかりのうえ、比較的若いか、体力がありそうな筋肉質のものばかりが揃っている。
 それに、戸惑いつつも、その視線は憂がいる方向に釘付けなのだ。
「だ、だめっ、止めっ!」
 逆らうまもなく、ジーンズもずり下ろされて、白濁の垂れるペニスが露わにされる。
「おぉっ、こっりゃあザーメンが垂れまくっているじゃねぇか」
「こいつ下着がねえ。直にジーンズはいてたんだ」
 そういやそうだ。俺も今まで気づいていなかったが、確かにあん時、すぐにはかされてたっけ。
 というか、憂の好みは、直にスキニーなジーンズを履くことだったけか。確かサイトにそんなことが書いてあったような……。
「あうっ」
 一人が薄汚れたズックでその股間を軽く蹴った。とたんに憂がびくりと硬直して。
 そのまま靴裏を押しつけてゴリゴリと揉みしだくとともに、あえかな嬌声を電車内に響かせて、たらりと新たな白濁を汚れた床に落とす。
「こいつ……靴底でチンポ嬲られて達ったぜ」
「ひぇぇっ、なんだ、ものほんのドMかよ」
 ひゃひゃっと下品な揶揄と嗤い声が響く。
「お、おねが……こんな……許して……」
 隠れることもできず、隠すこともできない憂が、縋るように背後にいる彼に身体を預けてくる。
 あんなに欲に染まっていたはずなのに、いきなりの場面展開にかなり理性を取り戻したらしい。
 可愛く初な、けれど全裸で恥ずかしがる憂の姿をこんな至近距離で拝めて、顔がだらしなく緩んで戻らない。
「こ、んな……イヤ……お願い……」
 そんな憂に視線を落として、「何を?」と彼は嘲笑とともにうそぶいて、俺にちらりと視線を向けた。
「それで、そいつどうするつもりなのかい?」
 合図を逃さず、楽しげに彼に言葉をかければ、俺に気づいた憂が瞠目してる。
 俺は今は脇役に過ぎないって事に、憂が気づいたかどうかは知らないが、少なくとも俺は、憂の期待には応えてやれない。
「ああ、こんな淫乱野郎見たことねぇし……というか、これは一回でこんなに出るもんか?」
 と、彼は周りの皆に問いかけてきた。
 そのわざとらしさは、わざとなのか、素なのか。
「おまえ……さっき達っただけじゃねぇだろ?」
 俺も、憂に迫り、問いかける。
「い、いや……」
 皆の視線が一斉に憂に集まったのが判ったのか、憂が口ごもり、視線をうろうろと彷徨わせた。
 ざわざわとしたさざめきは電車の音に掻き消される程度で、憂の小さな声でもよく響く。
 視線に嬲られた憂の青白かった肌が、うっすらと上気し、朱に染まっていった。それと同時に、ふわりと立ち上り広がったのは、憂が放つ淫気だ。
 世話役によれば、淫魔の身体からは男を欲情させるフェロモンがいつでも発生してるから、電車のような密室空間にいれば、わりとすぐに男はみな色狂いになって憂を襲うものらしい。
 ということを言ってから、世話役の彼は不意に口元を綻ばせて、続けた。
『という設定ですので、スタッフに揮発性の媚薬を巻くようにさせます。お客様と主要なスタッフは解毒薬になる薬をお飲みいただきますので、それに耐性がついてちゃんと対応ができますから』
 きっとそれが効き始めたのだろう。
 ざわめきの種類が少しずつ変わってきていた。
 非難の視線が減り、熱に浮かされたようなものが増え、荒い鼻息や呼吸音がここまで響いてくる。
『欲情した憂が放つ淫靡な空気は、男であれば種の尽きた老人であっても効いてしまうほどに強力ですからね』
 それはとても強力なものですよ、と、世話役は嗤っていた。
 もとより俺もアンダーグラウンド側の人間だから、そんな薬があってもおかしくないことを知っている。
 だから、電車の中に流れ出した淫靡な空気も、現実的には非常に奇妙な現象であっても誰もが奇妙だと思っていないことにも、おかしいとは思わなかった。
 自分は理性を保っている、だから、あの世話役のくれた薬は確かな効き目を持っている、とすら思っていた。
 今はちょうど比較的駅間の長い区間が多いが、さっきから駅に着いているのに、誰も降りないし、誰も乗らないことも、おかしいとは思わなかった。
 皆の視線は吸い寄せられるように憂だけに向かうことは、正しいのだと思っていた。
「おい、晒せ」
「りょーかいっ」
 その言葉に、憂の服を引き裂いた若者が、しゃがんで足首を掴むと一気にねじり上げた。
「ひぃぃっ、痛っ、ああっ」
 円形に広がった空間に、憂の身体が倒れ込む。もう一人が片側を掴み、同様に引き上げて。
 背を床にしてV字に足を拡げられた憂は、瞬く間に残っていた靴も剥ぎ取られ、今やその身に何も纏ってはいない。
「きたねぇ汁でべっとりじゃねぇか」
 白い汚れは、憂の陰毛を濡らし、下腹に貼り付かせていた。
「や……これはっ……ひっ」
 言い訳を一睨みで封じ込め、指先で指示して足をさらに高く割り開かせる。
「こりゃ、一回の量じゃねぇな、一体何回出した?」
 呆れるほどに明らかにその量は多い。
 人ならば、こんな量は一人では出せやしないだろう。でも、これは淫魔だ。
『淫魔だから、恥ずかしげも無く射精しまくって、オスのチンポを欲しがって啼くんですよ。ほら、全身至る所から体液を零して、啼いている映像がたくさんあったでしょう?』
 頭の中に世話役の言葉がリフレインする。脳髄に至るほどに奥深く、低く深く染みこんでいく言葉に、意識が澱む。
 ああ、そうだ。
 これは淫魔だ。オスの精液を餌にして、オスに飼われなければ生きていけない浅ましい生き物。
『そんな淫魔の中でも、特に憂はいつでも腹を空かしてオスを喰い漁るんですよ。まあ、堪え性が無いというか。どんなに餌をやっても切りが無いというか』
 会陰が真上に向くほどに引き上げられ、そこからたらりと精液が垂れて、シワが刻まれた下腹に溜まっていく。
 その上で、萎えることなど知らぬのかと思えるほどに勃起したペニスがぶるりと震えて、新たな淫液を滲ませていた。
『どんな餌をやっても人で無いので腹を壊すことはありませんよ。ですので、遠慮なんていりませんから、ね』
 笑みと共に囁かれた言葉が、俺を突き動かす。
『淫魔はね、過ぎるほどに嬲ってやるのが一番悦ぶ生き物ですからね。だって、ほら……虐められても、人前で晒されても、ちっとも萎えないでしょう?』
 響き渡る脳裏の言葉の通り、股間を晒された憂のペニスは完全に張り詰めていて、ひくひくと別の生き物のように震えながら淫液を溢れさせている。
「あ……も、もうし……わけ、ありません……」
 後頭部を床に押しつけられた憂が、歯の根が合わぬほどに怯え必死になって詫びを繰り返す。その視線がちらちらと俺の方に向くが、俺はにやにやと笑いながら脇役に徹していた。
「何回達った? って聞いてんだよっ」
 射精は誰も許していない。
 その言葉を口にしなくても、憂にはその問いの意味が判りすぎるほどに判っているだろう。
 服を剥ぎ取られる前に、すでに何回も達っていたのは、判っていた。
 決して堪えられる筈が無いのだ。あの部屋でずっと世話係に可愛がって貰っていたそこは、枷を外しれたとたんに達きかけていたほどだ。
 まあ、あそこで堪えられたのは奇跡に近いはずで、そこが我慢の限界でもあったろう。
 衣服や下着に擦れて、オスの身体に押されて。
 枷の無い憂のペニスが達かないはずがない。
「あ、ひっ……さ、三回……三回っですっ」
 諦めたように告白する憂のまなじりから、涙がぽろりと流れ落ちた。
「はあ……? おまえ、電車の中で三回も達きやがったんだ?」
 男の荒い口調に揶揄が混じる。俺も、言葉にはしなくても激しい高揚感に加えて、身体が熱くて堪らなっていた。
「っていうかよお、こりゃ三回じゃねぇぜ、この量は」
「さ、三回、三回だけですっ、ひぎっ、やぁ……!」
 男の固い靴底が、剥き出しとなった会陰部をぐりぐりと食い込んでも、痛みか快楽か、萎えない勃起を震えさせて仰け反りながらヒイヒイと泣き喚く。
「嘘付くんじゃねぇよ。この量が三回な訳ねぇだろ。しかも、立て続けに達きまくって……一体どんだけ早漏なんだよ、あんたは」
「そ、んなぁぁ、ひぃぃ!」
 靴先を傾け、膨れ上がった会陰に体重をかけながら陰嚢をぐりぐりと揉んでやれば、悲鳴を上げながらでもぴゅうっと精液を噴き上げる。
「ほれ、こんなに簡単に出しやがって」
 憂自身の胸まで飛んだ精液は、まだ濃い。
「この嘘つき野郎が……こんな公共の場でザーメン垂れ流す馬鹿には、きっついお仕置きが必要だな」
「はあ、ああっ……ごめん、なさいっ……ああ、許して、許してくださっ……」
 電車の汚い床の上で身を捩る憂が、悲痛な声を上げた。
 細身の身体が暴れ、零れた粘液にまみれて、涙をこぼす。倒れた拍子にパーカーから外れた手を、助けを請うように辺りにさしのべるけれど、今や一般乗客ですらその瞳を欲情に染めている。
 男は不意に俺に視線を向けた。
「あんた、ちょっとその席に足を開いて座んな」
 その言葉に、傍らの席へと視線を向け、再度男へと向けて。相手が頷くのを見て取って、俺は頷き、どかりと座席に腰を下ろした。
「這って、その人の足の間に首を突っ込め」
 言葉と共に顎で指し示した命令で、ようやく足を解放された憂は痛みに顔をしかめたけれど。
「早くしろっ」
 どんと太股を蹴られて、慌ててように床を這って進んだ。
 その顔がちょうど俺の股間近くに接近したところで。
「さあ、これから穴という穴を使って、ここにいるみなさんにお詫びをしていけ。公共の場を汚したのと、嘘をついたってことにな」
「ひっ、そんなっ!! ──ぎゃっ」
 驚いた憂の体勢が崩れかけたが、その尻を男が蹴り飛ばす。
「動くんじゃねぇ。ほら、さっさと銜えろ」
 憂に怒鳴りながら向けられた男の視線に頷き、俺はファスナーを下ろし、すでに痛いほどに勃起しているペニスが、開放感にぷるりと震えたほどだ。
 ああ、早くおいで。
 ようやく、ようやく遊んであげられる。
「歯を立てんなよ」
 響く冷たい言葉に、憂がしゃくり上げながらその口を開けた。


 これで、俺もあのブログのペニスナンバーがもらえる……。
 などど、熱く柔らかな粘膜に包まれて、天国のような幸せな気分に浸って、快楽を貪っていた時。
「おいおい、何ぼさっとしてんだよ。穴は一つじゃ無ぇぞ」
 その言葉に、俺も含めてどこかぼおっとしていた連中がはたっと我に返った。
 なんつうか、ずいぶんと旨そうにむしゃぶりついている憂に、見とれてしまっていたというか。
 でも実際に、彼の言葉通り憂にはもう一つ穴があって。
 ああ、そっちの穴も極上品だけど……。
 ちらりと見やる視線の先に見える白いなだらかな尻の、その奥を想像しただけで、俺自身からの快感とは別の、得も言われぬ疼きにあやうくぶっ放しそうになったのを、なんとか堪えて。
「おい、お前がケツマンコ使ってやれや。俺のはでけぇからな、しっかりほぐしてやれよ、お前の立派なマラでよ」
「お、おおっ、それじゃ、俺がケツマン一番ってことで」
 一番体格の良い若者がそそくさと己の反り返ったペニスを取り出して。
「んぐっ」
 貫く勢いは容赦なく、尻タブが乾いた音を立て、その衝撃に咽喉深くまでペニスの先端が入り込んで。
 苦しさに喘ぐ喉の動きが溜まらない。
「おうっ」
 天にも昇る快感に、危うく呆気なく達きそうになって。こんなの、いくら俺でも保ちやしない……けど。
 ぎゅっと目を瞑り、天を仰いで、はあはあと息を吐いて意識を逸らす。
「きっついなあ……、けど、切れてもねぇや」
「グチャグチャと汁を溢れさせてるわ。それだけ濡れてりゃ、多少激しくしたって、だいじょーぶだろうよ」
 なんの根拠も無い言葉は、この場では全てが真実となる。
 解しなどしていなくても、ずっぽり銜え込んでいるその尻を犯す青年の目が据わり、その体育会系の筋肉質な身体に力がこもって。
 その動きは、機械のように激しく、早い。
「んぐっ、おぇっ、あぅっ」
 激しい抽挿に、憂の全身が揺れ、意思に反して口内の俺のペニスが出入りする。
 俺は何もしなくても、苦しさに呻く内膜の動きはもちろんのこと、唇でも口内でもランダムに刺激を受けられる。
「おお、がんばれ、少しは良くなったぞ。お客さん全員を口で達かせられたら、ケツマンコも終わりにしてやるから、せいぜいがんばんな」
 とたんに、憂の両目が大きく見開かれた。
「言ったろ、全員に奉仕しろって、お口とマンコと両方で。まあ、口で先に全員満足させたらOKってことにしてやらあ。どうせ、チンポ大好きなド淫乱なんだから、そん位平均なんだろ……見ろよ、淫売らしく、奥まですっかり銜え込んで……なあ」
 彼は憂の苦痛に流れる涙を指先で掬いながら嗤い、皆が聞こえる大声で、憂を侮辱する。
「AVでメスマゾ専門ってことで大人気の兄ちゃんだろ。公開陵辱やレイプ、痴漢に調教ものばっかのシリーズで出てる、あんあん嬉しそうによがって、何本でも銜え込むって評判の。しかも最初のが電車の中で初物を喰われてんのに悦んでた奴だっけ? ま、俺の好みは、かってぇ処女穴を引き裂いて犯しまくる奴だから、お前みたいに最初からよがって悦んでやる奴の穴には触手がうごかねえはずなんだよな。そんな俺ですら、変な気分にさせるんだから、たいしたタマだよ、あんたは」
 それは、俺の好みでもあった。
 いや、今の段階で、この準主役級の彼は俺を演じているのだ。俺がしたいことを実践するために、演技に長けた彼が主役になり、俺は脇役の振りしてそれに乗っかる。
「あの時、あんたは電車の中じゃ口までは使っていなかったからなあ。だから今回はその口で、たっぷりとみんなに奉仕しな。旨いザーメンでその口が真っ白になるまで、他の乗客達に犯されながら口を犯され続けるんだ。こんだけの人数、一人何回すればみんな満足するのかねぇ」
 スタッフや警備役を除けても、周りにいるのは30人は軽くいそうな中で。
 一人が一回で満足するとは……思えない。少なくとも俺は一回なんかでは満足しない。
 口の次は尻、そして、口。
 何回でも何回でも、こんなにたくさんの人数の男達のチンポを、上にも下にも銜え続ける宴。
 なんと素晴らしい光景だ。
「満足するまで、ずっと電車の中で遊ぼうぜ。この車両は貸し切ったからなあ、いつまででもOKだ」
 車両を震わすほどのどよめきは、驚愕以上に歓喜の声が強かった。
 すでに非日常の最たる状況だと判っていても、けれど、俺も乗客達も疑問には思わない。思う隙も無い。
 もう憂の口を、ケツを、どうやって犯すか、早く順番が来ないか……それだけが頭を支配していて。
「口からもケツからも喰らい続けて、俺も含めて、みーんな満足して腹一杯になって終わったら……終わりは、ホームでお散歩だ。最終電車の行った最終駅で、夜風に吹かれて楽しくお散歩のシーンで終わるって訳。サイコーだろ」
 うっとりと、夢見心地の表情で宣う彼の瞳は飛んでいた。
 俺も、その夢を語ったとき、こんな顔をしていただろう。
 白濁にまみれた汚い身体でふらふらとホームを這う憂。尻から垂れ流す精液で点々と後が残るコンクリートの上を、淫魔らしく勃起したままの憂が散歩している姿は。
 想像だけで一発達きそうになる。
「すっげえ、さいこーっ! お、俺、いっつもこんなに早くないのに、でもでも、凄い、むっちゃすげぇってっ。こんなの何回でもやりたいっすっ!!」
 背後で選手交代した青年が、前の若者と感想を言い合っている。
 そのとたんに動きが変わったせいで、俺もさすがに我慢できなくなっていて。
「うっ、くっ……、う、出るぅ……」
 噴出するというよりザーメンを搾り取られるような刺激に、天を仰いで全身を震わせる。
 これが……憂の口。
 淫魔の口……。
『淫魔のケツマンコも最高ですが、口もね、侮れないものがありますよ。通には、口の方が良いというものもいますから。けれど、口は疲れやすいようで、だんだん締まりが悪くなるんです。だから人数多いときは最初の方をお勧めしますよ』
 あの言葉の意味が。
 俺が最初に口を使わされた訳が……。
 白く弾ける世界の中で、壮絶な歓喜の渦の中で理解した。
 なんて、なんて快感、こんなの知らない……。
「あ、あぁ……ひょうぞぉ、次ぃ」
 放心したままの俺は、それでもフラフラと隣に座って待機していた男に席を譲った。
 動くのも、離すのももったいないって思ったけど、でも、その方がもっと淫らで可愛い憂が見られるから……。
 憂チャンもいっぱい楽しませてあげないと……そしたら、もっともっと素晴らしい体験ができるんだから。
「あんた、次の尻を使えよ」
 彼が手招くのに、ふらふらと近づいて。
 前と後を犯されながら、背筋がたわみ、滑らかに上下し、揺れる尻に、引き寄せられる。
 汗の浮いた肌の、なんと美味なることか。
 舌先に感じる甘酸っぱい刺激に、触れてもいない俺の勃起が元気を取り戻す。
「お、ぱい……俺に……くれ……」
 遠く聞こえる声と共に、四つん這いの憂の下に潜り込む誰か。
「んぐぁつ、あっ……ぁっ」
 かすかな水音とともに。ひときわ激しく震えた身体から、ますます激しい立ち上る香りの、なんと芳しいことか。
「おお、おおぉっ、イクぞっ、ほれっ、ほれっ、ほれっ!!」
 尻タブの形が変わるほどに腰を押しつけた男が雄叫びを上げていた。
 痙攣する太股が、悶えるそれと合わさって、なんと卑猥なことか。
 ずいぶんと長くかかった射精の間、俺は憂の腰に吸い付いて、強く激しくその肌を味わって。
 紅く残った印をもっと増やしたいと願う前に、ずぽりと音を立てて解放された尻穴へと向かう。
 ああ、今度はケツマンコだ……ザーメンまみれの穴だけど、ああ、でも、こんなに出してしまうほどなのだから、きっと素晴らしい名器に違いない。
 立ち上がり、先端から先走りの粘液をだらだらと零す鈴口を、おちょぼ口へと擦りつけて。
 きゅうと締まろうとするその刺激に、俺は。
「ひあぁぁぁっ、サイコーーーーッ!!」
 まとわりつくそれに、俺は雄叫びを上げながら、ぐいぐいと押し込んだ。
 マジ、さっき一回達っていなかったら、挿れた瞬間に噴出しただろうほどの快感だった。
 先に口を使わせくれたのは、このせいかっ、と一瞬頭の中を過ぎったけれど、すぐに忘れて、これでもかっていうくらいは早く激しく、熱く潤んだ中を抉りまくる。
 中が、口の中のように吸い付いてくる。
 まとわりついた肉が、引き出したペニスにまとわりつき、逃さないとばかりに絡みつく。
 中に何かがあるのかと思うほどに、雁首がひっかかり、そのたびに憂が震え、俺も震えた。
 すけぇよ、すげぇよ……。
 口もすげえけど、ケツもすげえ。
 なんだよ、この全身性器やろうは。
 これが、これが淫魔と言われるゆえんかよ……。
 はあはあと荒い吐息に、酸欠になったかのように頭がぼおっとするけれど、身体はいっこうに止まらなくて。
 ただ、来たるべき絶頂を最高の瞬間で迎え入れたいとだけ、考えていて。
 

 絶頂は、全身がバラバラになるほどの衝撃で。
 ザーメンが、いつまでもいつまでも出続けて。

 次は誰だ?
 早くしろよ、今度は俺だ。
 俺も一緒に挿れさせろ。
 手も使え、脇も、乳首も、へそも、全部だ。
 ほら、早く。
 ……。


 淫気が満ち満ちた車両内で、異常なほどに早くローテーションが回る。
 かつてないほど素早く腰が前後する者もいれば、自ら憂の顎を捕らえて揺すり、早々に放つ者もいる。
 だって、我慢なんかしなくて良いのだと、彼が言うから。出したいだけ出せば良いって言うから。
 異常な興奮のるつぼで、彼が采配を振るう。
「手も開いてるぜ、ああ、あんたとそっちの兄ちゃん、二人同時で顔にもかけてやれよ」
 力無く崩れた憂の身体を持ち上げ、嗤いながら屹立の上に落として。
「まだまだ、誰も満足してないだろう?」
 彼の言葉にも、身体が、精神が、引きずられていく。


 尻、口、尻……ああ、やっぱ口が良い……。
 なんだよ、このバキュームされてる状態は……。すっげえ、全部吸い出されて、あっ、くぅっ、くっ……。
 も、も一回口……。
 ああ、何回達っても、止まらない。お、おれ……もう何回達ったんだ……。
 でも、も一回……もっとぉ……。
 な、んて、サイコー、なん、だぁぁ……。
 
 
 その日、たくさんの乗客を乗せた車両から降りていく者はいなかった。
 けれど、それを見た乗務員も駅員も、そして乗客達もその奇妙な現象を記憶にとどめていた者はいず、会社を欠勤した何人かの乗客達がその間何をしていたか等本人達も覚えていなかった。
 ただ、そんな彼らの大半がその夜、寂れた駅のホームで、一人の青年が首輪から伸びたさびた鎖で引っ張られながら、全裸で四つに這っている姿の夢を見た。
 全身を白濁の粘液で汚し、虚ろな瞳でふらふらと這い進むのは、端正な顔立ちの若い青年のようであったが、その顎はだらしなく落ち、犬のように零れた舌先から涎がだらだらと流れ落ちていく。
 時折崩れ落ちる身体はすぐに鎖で引っ張られ引き起こされるのだが、その震える腕の影から赤黒く熟し切ってひどく大きな乳首が見えていた。
 そして、動く度にゆらりと左右に揺れる尻タブの膨らみの狭間のアナルは赤くぷっくりと膨れ上がり、ひくひくと喘ぎながら内膜を晒していてブチュブチュと泡だった白濁が流れ落ちていた。
 股間を辿り流れたそれが、垂れ下がったペニスの先から出てきた別の白濁と交じり、砂と汚れにまみれたコンクリートの表面にいくつもの痕を残していく。
『夜のお散歩が済んだら、今日は特別におやつをあげよう』
 どこからともなく聞こえる声は良いことでもあったかのように楽しそうだ。
 それは、リードを引っ張る男の声なのか、それとも、この場にいない誰かの声なのか。
 ひどくリアルな夢の中、夢見る者達は皆、あの子が大好きなおやつを喰らう様を見たいと切に願っていた。
 続く言葉の違和感など誰も気づくことなど無くて。
『お前がアレを喰らい尽くしたおかげで、アレが持っていた良い土地の譲渡が簡単に終わったよ。さあ、ご褒美だ。といってもおやつだから2人だけだが。少ないが、太くて生きの良いのを揃えたから、きっと美味しく食べられるよ』
 嗤い声が響く。
 噴き荒れる風のようなそれに重なって、掠れた音が奇妙なリズムを伴って響いていた。
 それは、その四つん這いの青年の、開きっぱなしの口から漏れているようで。
「……あぁ、……ちょー……いぃ、ぁん、も……っとぉ……ぁっ」
 トロリと蕩けた空気が滲み、言葉のようで意味が理解できない音が、BGMのように流れていく。
 その夢は、見た者に激しくも熱い疼きをあたえ、目覚めた瞬間も溜まらないほどに下腹部が熱く滾っていたけれど。
 なぜかあれほどの衝動を感じていても夢精はしておらず、けれど、溜まらずに自慰を行って出した精液は、ほんの僅かなモノで、それで身体はたいそう満足しきったのだという。

【了】