【目覚め】(4)

【目覚め】(4)

 明るい部屋で、スーツを半ば脱がされたテルがシイコに押さえつけられていた。紺のシーツは三坂が準備した物で、彼が言っていたとおり、テルの白い肌が良く映えた。
『伸吾っ、いい加減にしろっ!!』
『ダメだよ、テル。俺の言うことは須崎さんの言うことだって、言ったろ。ほら、あのカメラ、動いてんの判るだろう? ちゃんと須崎さんが見てるんだよ』
 指さされたカメラを遠隔操作で動かしてやれば、背後を向いたテルが悲痛に顔を歪める。
『さあ、尻を出せよ。いっつもテルがご主人様に犯してもらっているイヤらしいケツマンコ出して強請れよ』
『うっ……伸吾……許してくれ……』
『ダメだよ、さっさとしないと、たっくさん薬入れて、そこの公園にでも放置しようか? 下の小林さんとか、向かいの森さんとことか、この時間ってお散歩しているところにさ。そんで、これからはみんなにテルって呼んでもらうんだ』
『わ、判ったからっ!』
 シイコの命令は容赦がない。
 父親であるテルを完全に見下して、情け容赦なく命令する。その姿は、初めての行為とは思えぬほど手慣れているように見える。
「あいつぁ、頭が良いから、自分やテルが犯されるDVDを見て研究したみたいですね」
 三坂が唸るように呟くが、須崎は肩を竦めて返した。
「ってえか……あれが、シイコの本性じゃねぇか? 真面目人間ほど切れると怖いけど、シイコもそういう本性を隠してたってところだろ」
 長い間その本性は眠っていたけれど、三坂に犯されたことで、押さえつけていた本性が目を覚まして。
『ひっぃぃぃぃ!!』
 最近ではあまり聞かれなくなったテルの悲鳴に、慌てて画面を凝視する。
 枷も何も使われていないテルは自由だ。けれど、その体も心も、今はシイコの言葉によって縛られている。
 もっとも、その背後に須崎達がいるからこそだろうけれど。
 逆らう術を知らないテルは、尻だけを高く掲げて、シイコのチンポを受け入れていた。
 シイコのように毎日していないから相当きついはずなのに、情け容赦なくめり込ませているシイコの表情は喜悦に満ちている。なんていうか、あの姿を見ると、自分たちの方がまだまだだな、と思ってしまうのは気のせいではないだろう。
『すっげぇ──、中がめっちゃ熱くて、うねって、絡みついてくる、あわっ、なんか持ってかれそうっ!』
 シイコから感嘆の声に、須崎の股間もまた熱を帯びてきた。
 実を言うとこの日のために一週間テルを使っていないから、欲求不満が溜まっているのだ。
 これが済んだらあの部屋に乗り込んで、テルをさんざん嬲ってやるつもりだが、今はじっと我慢するしかない。ある意味拷問のようだが、先の楽しみを考えてひたすら待ちだ。
「奴隷が他人に身を任せたらどうなるかも教えないとな」
 命令は命令、けれど、それで感じまくることは許さない。
 とうてい無理な躾は、けれど、無理だから強要するのが楽しいのだ。
「あれだけシイコを煽っといて良く言いますねぇ」
「ま、当然でしょ」
「で、テルは堕ちますかね?」
「堕ちるでしょ。父親の威厳も何もあったもんじゃないし、あの様子だと」
 画面に視線を送れば、テルの白い尻が揺れていた。
『うわぁ、なんか濡れてきたっ。テルってば女みてぇに濡れるんだ。ぐぢゅ、ぶちゅってイイ音たてんじゃんっ』
『う……あっ、くぅ』
 ベッドヘッド側に仕掛けたカメラに切り替えれば、イヤらしく涎を垂らした顔がドアップになる。虚ろな瞳は涙で濡れていて、壮絶な色気を放っていた。
『あ、はあぁっ、やだっ、やめ、くれっ──伸吾っ、うわっ』
 実際に使うのは初めてでも、シイコはテルの痴態を余すことなく撮ったDVDを全て見ている。それこそ編集のために何回も繰り返し見ただろう。
 そんなシイコの頭の中には、テルの弱いところは全て入っているはずだ。
 いまだって、前立腺を抉るように打ち付けながら、弱い腰から尻の表面を、ゆっくりと撫でている。あの辺りにテルの性感帯があって、撫でるだけでも敏感に感じるのだ。
『テル、ほら、どこが善いんだよ? 俺のチンポ、どうしたらイい?』
 不意に動きを止めて、背に覆い被さるようにして、耳元で囁いている。
 ぐちゅりと音が響いたと思ったら、テルがそのまぶたをぎゅっと閉じて、真っ赤になった顔を嫌々と振っていた。
『言わない? だったら、俺も動かないことにしよっと』
 そんなことを言いながら、代わりのように手を動かしている。須崎よりは細い指が肌をイヤらしく這っている。テルの肌は敏感だ。白い日焼けしていない肌は、神経が過敏で、痛みも快感も人並み以上に反応する。
 ぱーんっ!
 乾いた音がして、ひくりとテルが痙攣した。平手打ちされた背に、赤い手形が浮かんでくる。
『でも、退屈だからなあ、だから聞き分けの悪い子には、お仕置きだよ』
 言葉とともに、また音が響く。
『うっ、くっ』
 今度は尻タブを叩いたのか、尻に五本の指がくっきりと浮かび上がる。そんなふうにゆっくりとゆっくりと、いろいろなところを平手打ちする。
『や、やめろ……やめてくれ……』
 音が5発も響いた頃、小さな声がシーツに中から聞こえてきた。
 痛みを逃そうとぎゅっと握りしめたシーツの海に、顔を埋めていたテルの声だ。
『でもさ、俺、退屈』
『ひぎっ』
 今度はより高くなって音と悲鳴。特に尻を叩かれると、テルには堪えるようだ。痛みもあるだろうが、羞恥と屈辱を与えるには一番の場所だから。テルの真っ赤な横顔の眦から新しい涙がぷくりと膨れて落ちていった。
 そして10発目の音がしたとき。
『う、動いて……良いから……』
 小さな声は、けれどはっきりと聞こえて。
『テル、何?』
 聞こえないふりをして、手を高く掲げる。その手のひらももう真っ赤だけれど、シイコは止める気はなさそうで。
 パーンッ!
『あひぃぃっ!』
 真っ赤な尻に落とされた平手打ちに、テルの四肢がピンと伸びた。退けぞった背筋が、ドクドクンと痙攣している。
「あ……」
 三坂が声を発した。
「あれは……」
 須崎も感嘆の声を上げた。
『うわっ……すっげぇ締まった……ってぇか、テルん中がびくびくしてて。……って、テル、もしかして達った?』
 シイコも絶え入るように顔をしかめて、快感を逃したようだったけれど、すぐにテルの異変に気がついた。
 上がった尻には深々とシイコのペニスが貫いたままだったから、その痙攣はすぐに伝わったのだろう。
『へぇ、テル、叩かれて良くなったんだ。うわっ、べとべと』
『ひ……いっ……』
 腹の下に手を回したシイコの手が、抜き出した時にはべっとりと白濁で汚れていた。シーツにも転々とした染みができている。
『ねぇ、淫乱だよねテル。叩かれるの気持ち良かった? チンポ思いっきり締め付けて、ずいぶんと気持ちよさそうに達ったじゃないか。ああ、だから、何にも言わなかったんだね』
 汚れた手のひらを、上げようとしないテルの顔に擦り付ける。
 唇の端にもたっぷりと塗りつけて、指先でその間にも送り込もうとしていた。
『俺でも叩かれて達ったことないや。テルってば、マゾだったんだね』
 きらりとシイコの瞳が光る。
 その嬉々とした声音は、陵辱される側からすれば恐怖そのものだろう。テルの顔がはっとしたように上がって、背後のシイコを見上げた。その泣き濡れた顔は、擦り付けられた白濁でなんともいえず卑猥だ。
『痛いの好きなら、いっぱい痛めつけてあげるよテル。だって、そうして欲しいんだもんな、テルは』
 背後から見下ろすシイコの狂気に満ちた瞳を、テルは間近で見てしまっていた。須崎達は雰囲気で判る程度だが、間近で見たせいか、テルはガクガクと震えておびえている。その表情は、もはや息子を見る目ではない。
『や、やめて……くださ……。痛いのは、嫌いだ……』
『でもさ、テル、達ったじゃないか、こんなにたっぷりと出してさ』
『い、いや……』
『でも、俺も退屈なんだよね。動けないんなら、鞭とかでも使いたいし』
 その言葉に、ちらりと三坂を見やる。
「鞭もバイブも一通りの道具は運び込んだんで、何でもできますって。もっとも、初心者用SMセットの域は越えてねぇけど」
「あの様子じゃ、SMプレイを学びたいって言いそうだな」
「同感」
 奴隷の見事な変身ぶりに、さすがの三坂も苦笑を浮かべていた。
『い、いや……鞭は……』
『え?、わがままだなあ、テルは自分の立場って判ってる? あんたは穴奴隷なんだよ。ご主人様の言うとおりこのケツマンコにチンポもらってアンアン言うだけの存在なんだ。文句なんて言える立場じゃないんだよ』
 これはこれは……。
 ある意味、須崎よりご主人様らしい堂々とした命令っぷりだ。
『ご、ごめんなさい、でも……痛いのは……』
『だったら、どうして欲しいのさ?』
 その問いかけに、テルの顔がクシャリと歪む。テルは馬鹿ではない。だからこそ、須崎もテルが気に入っている。
『……う、動いて……』
『何、テル? はっきり言わないわかんないなぁ』
 意地悪なシイコの言葉は、テルには拷問と等しい。
『動いて、くださ……、テルのケツマンコ……抉って、好きなように使って、ください……』
 それは、いつもテルに言わせている言葉で、テルには一番屈辱的な言葉だ。けれど、今まではもっと時間がかかったのに。射精をせき止めて我慢させたり、薬を使って悶えさせて欲しがらせた時にようやく出てくる言葉だったのに。
『何で抉れば良いんだ?』
 シイコの言葉には容赦がない。
『それは……伸吾の……物で……』
 躊躇う言葉は、足りなさすぎる。その辺りはシイコも同感のようで、面倒くさそうに頭をポリポリと掻いて、つまらなそうに口を尖らせる。
『なんか良く判んね……』
 ごそごそと何かを漁る音がして、ベッドヘッドの物入れからスパンキング用の板を出してきた。鞭よりは扱いやすく、傷もつきにくい。
『良いもの見っけ。これで淫乱マゾのテルの尻をいっぱい叩いてやるよ。そしたら、何回でもザーメン吹き上げられるよ』
 にこり笑うその姿は、テルにとっては優しい息子のそれなのに。その瞳はひどくぎらついていて、欲望を隠さない。
 振り上げる手の道具に、テルがひくつく。すでに真っ赤に染まった尻は、そんなもので叩かれたらたいそう痛いだろう。
『や、やめっ、お願いっ、伸吾!』
 悲痛な叫びが木霊する。
『し、伸吾のチンポで、テルの尻……ケツマンコ使ってください。いっぱい犯して、抉って、いっぱい子種くださいっ、あ、叩かないで……、おねが……、チンポ入れて、動かして……、伸吾のチンポで達きたいです……』
 叫んで、腰を動かして。
 自ら銜えたシイコのチンポを刺激しようと、前後運動を繰り返す。
 ひゅー。
 須崎の隣で口笛が響いた。
 須崎もニヤリと口角を上げて、こみあげそうな笑い声を必死でこらえる。
「堕ちた、な」
 三坂の言葉に頷く。どうやら尻叩きがテルの弱点だったようで、泣き喚いて、自ら尻を振りたくって快感を貪っていた。
 痛みは次の段階まで待っておこうと思っていたけれど、どうやらさっさと進めた方が良さそうだ。
 そんな痛みを与えられたテルは、もうシイコの言いなりだった。
 深く抉られてあえかな嬌声を上げ、尻を振りたくって自ら快感を貪った。それはまるで、今の現実から逃れようとしている仕草でもあったけれど、けれど確かに快感も感じてるのだと判るほどに目元を朱に染めて、息子のチンポを堪能していた。




「おはよーございますっ」
 土曜は学校が休みだから、シイコは朝からやってくる。
 事務所に入ってきた時のそのつやつやとした健康的な肌には、毎度感心するほどだ。もっとも、朝っぱらから欲求を解放して、さらに今日は昼間から三坂といちゃつけるのだと思うからこその元気だろう。
 テルには鬼畜なご主人様としての態度を隠しもしないが、相変わらず三坂には従順な奴隷だ。
「テンチョ、今朝の見た見た?」
「おー見たぞ」
「テル、可愛かっただろ?」
「まあな、おかげで晩まで待てねぇ……くそっ」
 朝からテルの痴態を見てしまったせいで、股間が疼いて仕方がない。
 最近、シイコは朝出がけに必ずテルを犯す。一度着込んだスーツのスラックスだけを下ろさせて、玄関のドアにテルの体を押しつけて、腰を使うのだ。
 そこにもカメラは仕込んであって、天井側からはむっちりと剥き出しになった尻に出入りするチンポの様子がぱっちりだし、新聞受けや床の隅に置いた靴の箱から撮るカメラには、快感と屈辱に歪むテルの顔と、先走りを垂らして揺れるチンポがばっちり撮れている。
 そうやってさんざん犯してシイコだけが射精した後、ビンビンに張り詰めたテルのチンポはそのままスラックスの中に仕舞わせる。
 朝はゴムを使用しているから、腹の中の掃除は不要だ。けれど、その後に必ずシイコはテルを床に跪かせた。そして、ゴムから絞り出す精液を全て口で受け止めさせて飲ませるのだ。
 そして、そのまま玄関から追い出している。
 もちろん、昼間は自慰禁止、射精禁止を言い渡しているし、コックリングもきつめのものをつけさせているから、どこかで解放しようしても無理だ。
 カメラには、外に出たとたんに会ってしまったご近所さんに、戸惑いながらも返している声だけが入っていた。少し咳き込んだのは、口の中の精液が絡んだからか。 きっと不自然な歩き方しながらの通勤になるだろう。
 尻周りにはべっとりとした潤滑剤が残って下着に張り付いているだろうし、前立腺を抉りまくられて射精できていない体は欲情したままなのだ。
 そんなシーンが容易に想像できて、見えない場面に欲望が膨れあがってしまう。
 本当に、シイコは演出家としての才能もあるのではないかと最近は考えている。
 最近テルは、勃起した膨らみを隠すためにカバンで前を隠して、欲情した顔を晒しながら会社に通っているせいか、電車の中で痴漢に遭うことも多いらしい。
 毎朝恒例となったイベントはずいぶんと楽しめて、すっかり朝の目覚まし代わりとなっていた。時にはもうほとんど達く寸前で堰き止められたテルの悲痛なお強請りまで聞こえてきて、鬼畜なご主人達をたいそう悦ばせる。
「テルももう限界だね、あれは。へへ、今日は自分で尻振って強請るかもよ」
「そりゃあ、楽しみだ」
 あれ以来、かなり快感に素直になったテルは、まだまだ躾がいはあるけれど、なかなかに良い奴隷になってきた。
「あ?、三坂さん、おはよーございますっ。今日は、テルのレイプ動画仕上げますね?。今日中には、サイトにUPできるようにしますっ」
「おーし、よい子だ。よい子には、チンポやるぞ」
「うわっ、嬉しいっ」
 舌なめずりしながら三坂に飛びつくシイコは、もう勃起しているのがよくわかる。
 イヤらしくも淫乱な奴隷にめっぽう参っている三坂の腰にのっかって、すぐに腰を振り始めた。
 それを見ていると、今すぐにでもテルを犯したくなってきて。
「なあ、ちょっと昼頃出かけてきて良いか?」
「ああ、良いっす。けど、どこ行くんすか?」
「ん?、ちょっと可愛い奴隷を慰めにでも行ってこようかと」
 あの会社は、通常は屋上には誰も来ない。昼弁当でも持って行って、疼く体を持て余している奴隷と一緒にお昼を食べるのもおつだろう。
「自分が慰められるだけなんじゃないんですか?」
 妄想したとたんに反応した股間の膨らみは、服の上からもバレバレらしい。三坂の揶揄は、けれど、それは真実だ。
「まあ、俺が溜まりすぎるとテルが可哀相な目に遭うんだから、テルにも良いことだと思うけどな」
 たっぷりと一度中だしして落ち着いていないと、夜会ったときに落ち着くまでにテルがバテてしまうこともある。最近は、拘束して鞭打ちなんて、楽しいメニューも加わったことだし、早々にバテてしまうと面白くない。テルだって、大好きな鞭打ちをして貰えないと、悲しむだろうし。
「テンチョ、あぁぁんっ、鞭、つかう……の、巧いもん……、教えてっ、て言ってんのに……あぁぁっ、三坂さ……っ」
 下から突き上げられているシイコが喘ぎ混じりの懇願をしてくるけれど。
「だ?め、これは、俺の特権」
 それに、シイコのスパンキングにテルは恐怖の方が強いらしいが、須崎の鞭打ちは、どうやらテルはひどく悦んでいる。
 それは、須崎だからこそなんだと思いたくて。
「テルは、俺の奴隷だからな。お前には貸しているだけってこと忘れるな」
「けちっ」
「けちで結構。お前も奴隷が欲しいんなら、自分で捕まえな」
 須崎達がこうやってお気に入りを捕まえたように、千載一遇のチャンスというものは、どうやら転がっているらしいし。
「俺専用の奴隷……ああっ、んあ──、イいよお、ああっ」
 どうやら奴隷を犯しているところを考えたのか、ずいぶんと反応が良くなったシイコと、そんなシイコに悦ぶ三坂、そして、テルに妄想する須崎の店は、今日もまたたくさんの二種類の客を迎えるのだ。
 その中に、シイコが好む羊が紛れることを祈って。
 開店まで数十分、シイコの悩ましい喘ぎ声がずっとずっと続いていた。

【了】