【淫魔 憐(れん) 給餌】(2)

【淫魔 憐(れん) 給餌】(2)

 瞬く間に服を脱がされ、全裸で俯せにされた。
 この部屋はあちらこちらに仕掛けがあって、畳の一角を開ければ手足を拘束する枷があった。それに拘束されたせいで、尻は高く掲げたまま、何もかもを羽角と綱紀に晒している。
 その姿でずっと、綱紀に尻穴を弄られ続けていた。その姿を貴樹を足の間に乗せてあぐらを掻いている羽角が楽しそうに見やっていた。
「ひっ、や、嫌だ……やめ、てくれっ、痛いぁ……ああぅ」
 排泄物以外通ることのない穴が、外から無理矢理拡げられている。それも無機質な捻りまくった棒で、通常の排泄物よりも太い。
 そんな物が乱暴に抜き差しされ、その痛みに悲鳴を上げる。
「痛い? そんなことはないでしょう。美味しそうに銜えている」
「い、ああっ、だって、痛ぃぃっ、痛ぁ──っ」
 捻れた棒は、肉壁や粘膜を絡め引きずり出そうとする。グチャグチャと音を立てているのは使われた粘液だろうけれど、それが酷く熱い。火傷のような痛みも加わって、じっとしていられない。
 逃れようと悶えるけれど、せいぜいが円を描くように揺れるだけだ。
「あ、ぁぁ、痛ぁ……あつ……く、」
「ああ、俺も……欲し……よ……」
 苦しむ憐の姿を食い入るように見ている貴樹が、甘えた声で羽角に強請っていた。太股を抱え上げられ、ペニスもアナルも晒した姿の貴樹は、欲しいとさっきから何度も強請っていた。その様子は鏡を介してすべて憐にも伝わっていた。いや、見せさせられていた。
「何を言っている貴樹。あんな細い物では物足りないだろう、お前は。我慢しろ、我慢できたら、たっぷりと褒美をやる」
 強請る言葉に返す羽角の言葉はひどく甘い。それは、憐にかけられる声音とは真逆なほどの甘さだ。
「ひぃ、いやあぁ。我慢できなぁぁぃぃ。欲し……飲みた……いぃ」
 貴樹は狂ったように欲して悶えている。晒されたアナルは物欲しげにひくつき、その腰を上下させていた。
 どうしてそんなに欲しいのか?
 この痛みを与える存在が、何で?
「だいぶ解れてきましたよ。引っかかりがなくなりました」
「あ、はぁぁっ、ぁあっ」
 焼け付く痛みは徐々に治まってきていたけれど、今度はひりひりとした痒み混じりの痛みが襲ってきていた。悲鳴を上げるほどではないけれど、じっとしていられない。しかも、さっきから奥を押さえられるたびに、快感が爆発する。
 ヒクヒクと腰が震え、腰が勝手に棒にすり寄っていく。
 その動きは、貴樹が羽角に腰をすり寄せる姿と同一だと気づいてしまうけれど、止められない。
「我慢しろと言っているだろう? お前に糧を与える給餌器を作り終えたら、たっぷりと犯してやる」
「あ、ん、固い、のが、当たってるぅ、それ欲しい」
「あ、っあはぁぁっ!!」
 くいっと羽角の腰が動いたとたんに、貴樹が淫らな喘ぎ声を上げた。同時に、憐も棒で突き上げられて、明らかな嬌声を上げた。
「もう感じていますね。さすが淫魔」
 耳朶のすぐ側で囁かれて、触れた吐息に全身が総毛立つ。
「欲しいか? 欲しいだろ?」
「欲し、欲しい……」
「あ、あんっ、こんな……感じ、る……」
 掠れて震える声と、自分が発する声がシンクロする。
 ブルブルと震える体が、背後の羽角ににじり寄るのが見えていた。貴樹の浮いた尻の下、その股間の奥に女の腕ほどもある巨大なペニスがあった。
 それに貴樹が自分の尻の狭間を擦りつけていて、羽角が巧みに避けている。その動きと同じ動きを棒がする。
 肛門の縁にペニスが触れる。
 棒が、内壁の快楽の源を突き上げる。
「あっ、そこぉ、そこイいっ、イぃぃっ」
「ひああっ、ぁぁぁっ!!」
 貴樹と憐の嬌声が重なる。
 繰り返されるシンクロは絶妙で、まるで尻を犯しているのが、羽角のペニスのように感じてくる。
 嫌がる言葉はもう出ていないことにも気がつかない。爆発する快楽は脳を麻痺させる。非現実的な状況も加わって、すべてがとろりと蕩けていって、うまく考えられないのだ。
 あんな巨大な物入らない、と思うのに、もっと抉って欲しいとすら願う自分がいる。そんな自分がおかしいと思うのに、涎が溢れて舌なめずりをするほどに欲してしまう。まるで、甘えて懇願する貴樹のように。
「羽角様、どうやら貴樹様も我慢の限界、そろそろいかがでしょうか?」
 綱紀が、言葉とともにずるりと棒を抜いた。
「あ、あぁぁ」
 肉に埋められたモノがなくなって、ひどく寂しい。悪寒にぶるりと震えて、もう一度呼び込もうと肉壁がひくひくと震えた。
「どうやら憐も欲しいようですし」
 とろりとした粘膜に濡れそぼった捻れのきつい棒は、ほかほかと湯気を立てていた。目の前に差し出されたその棒は、直径が30mmほど。けれど、羽角のペニスは50mmは優に超えていて、70mmくらいはある。
 なのに、太い方がイイのだと思う。
「虚ろな目だ。狂ったか?」
「いいえ、媚薬を少々。快感を感じさせただけでございます。それに……」
 貴樹を脇に置いて立ち上がる羽角と綱紀の会話が遠く聞こえる。
「羽角様のモノを感じるには支障はございません」
 背後に回った羽角の、尻タブに食い込む指の力が強い。
「ただ快楽を与えただけでは淫魔は成長いたしません。痛みすらも快楽になっていく、成長する姿を見学するのも一興かと。憂のその姿は、ずいぶんと好事家どもの金を巻き上げました」
「あれは良い収入源だという報告は受けている。未だファンが多いらしいな?」
「はい、淫魔は生き物の精を受けている限り、年を取りませぬ。新たな遊技を行いますと、ますますファンが増えます。あのような存在を創造された黄勝様の先見の明には感服する限り」
「その恩恵に俺も預かれる。まこと得難き片腕よ」
「その言葉、黄勝様にぜひ伝えとうございます……さあ、どうぞ」
 感情のこもらない会話の中にも、尻に触れる熱い肉の塊に、鼓動が期待に高まっていく。引き寄せられて尻が勝手に切っ先を探す。
 あの棒と同じく、得難き快感をくれるのだと期待して。
 だから。
 潤んだ肉壁に切っ先が触れたとき、自ら強く腰を押しつけて。
「あひ、ぎぃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 躊躇うことなく奥まで貫いたペニスは、憐の限界を超えていた。
 体が裂かれる激痛に、全ての空気が肺から絞り出される。喉は勝手に震えて絶叫を上げ、硬直した四肢は逃れる力すら失って動かない。
 意識は白く弾け、全てが自分から遠のいていく。それなのに痛みは消えない。途切れることのない痛みは、気を失うことさえ許さず、そればかりに囚われてしまう。そんな白い世界の中で、絶対者の声だけが響く。
「裂けたか?」
「羽角様ほどの逸物でございます。裂けて当然かと」
 疑問ではなく事実としての言葉に、当たり前のように綱紀が返す。
「残念ながら、淫魔には貴樹様のような強力な再生機能はございません。しかしながら、あらゆる精を効率よく受け入れるための学習機能は目を見張るモノがございます。よって、羽角様の逸物にもすぐに馴染みましょう。そして羽角様のモノに馴染みましたら、今度は最低でも羽角様のサイズ、もしくはそれ以上のモノでないと満足できなくなります」
「それは、つまりこの先誰に犯させても、こいつは満足しないということだな。たとえ、貴樹が犯したとしても」
「はい、満足しきった淫魔の出す精液は濃厚で、だからこそ貴樹様の極上の糧になります。けれど、失礼ながら貴樹様程度ではそんな満足は与えられませぬ。一度あの濃厚な糧を味わった貴樹様も、薄い精液では満足できませんでしょう。憐もまた満足などしませんから、ただイタズラに飢えさせられるだけでございます。つまり、憐は羽角様に犯されることでしか満足できなくなります」
 くすり、と喉の奥で嗤う声が響いた。
 ここに来て初めての綱紀の笑い声だと、朦朧とした頭が理解する。痛いのに、視界すら真っ白で弾けたままなのに、周りで起きている事柄は全て脳に刻まれていた。
 尻タブに触れる剛毛は、羽角のモノ。治まりかけては酷くなる痛みは、ペニスを前後されるせい。そのたびに太股に熱い液体が零れ落ちていく。それが、周りに漂う血臭の源だということも。
 どうしてこんなモノが良いのだと錯覚してしまったのだろう。
 ぼろぼろと溢れる涙が、叫び声しか出せない憐の心を代弁する。
 悔しくて、辛くて、苦しくて。
 こんな目に遭わせるように自分を産んだ両親を、初めて心の底から憎いと感じた。
 あの契約書を見たときも、ここに連れてこられた時も、思わなかった感情だ。憎くて憎くて、自分たちがこんな目に遭えばよいのだと念じる。
「あ……さむ……けど、おいし……」
 震える声が、けれどどこか嬉しそうに呟かれた。うっとりと味わうように、唾液を啜る音もする。
「ふふっ、久方ぶりの負の感情が洞いっぱいになってきたな。そうか、ここで加工するのはそういう意図もあったか?」
 犯す羽住も憎い。
「鏡を介して集めるより、濃厚でございましょう?」
 全てを企んであろう綱紀も憎い。
「おいし……」
 狂気の果てにある貴樹も憎い。憐は、彼のために存在させられたのだ。
 そんな憎悪の感情は、痛みとともに増幅する。けれど、それを晴らす手段は、憐には無い。
 ただ、憎む。殺してやりたいほどに憎む。
「さあ、犯し尽くしてくださいませ。淫魔は犯されれば犯されるほどに、美味くなります故に」
 その言葉が合図だったのだろう。
「ひっ、いぁぁぁっ、ぎぃぃぃぃっ」
 緩やかな律動が一気に激しくなる。そのたびに、激痛が走り、血臭が強く立ちこめる。意識が白い狭間に落ち込んでいる憐は、為す術もなく揺すられるしかなかった。

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