【淫魔 狂(きょう) 収穫】(2)

【淫魔 狂(きょう) 収穫】(2)



 どのくらい犯されたのだろう。
 時間にすれば、五分程度だったが、京にとっては1時間にも2時間にも感じた地獄の時間だ。
 それが唐突に終わりを告げた。
 痛みに萎えていたぺニスが、むくりと起き上がったのは、尻の中で快感が爆ぜたせい。
 尻の中、引き裂かれた肉の一点を押さえられるたびに、射精衝動に襲われる。
 一度快感を感じ始めると、今度は全身の蔦が嬲る刺激すべてが快感となってきた。
 何故──と思う間もなく、その快感に歓喜する。
 痛みが酷かったからこそ、さらに甘美なそれに、京は涙して悦んだ。
 腹の中がぐねぐねと動くたびに、肌が粟立ち、喉から音の無い嬌声が迸る。
 聞くに耐えない粘着質な音がさらに大きくなるのも、先を期待して、神経がざわめく。
 こりこりと乳首が変形するほどに押しつぶされ、ぺニスの皮一枚下の蔦が、陰茎を揉み上げると、淫靡な疼きに甘く色めいた嬌声を上げた。
 痛みは麻痺し、濁流のような快感は、京の全てを捕らえて離さない。
「……あ、んああっ!」
 目の前が幾度も爆ぜる。
 淫靡な動きを見せる蔦に、五感全てが捕らわれる。
「──ああぁ……んんっ、はぁ……」
 とろけた表情で、泣きながら腰を振る。
 蔦が枝分かれを繰り返し、増えた先がさらに肌を嬲った。
 だらだらと淫液をこぼすぺニスは限界まで充血していて、狭い尿道を押し広げられながら、その刺激に何度も痙攣していた。
 それでも、この世のモノとは思えぬ快感には、まだ先があることを本能で感じていた。
 だって、まだ射精していないのだ。
「ああ、達かせて……」
 何度目かの願いを口にする。
 さっきとどめられたまま達っていないペニスは限界なのだから。
 その拍子に、ペニスを扱く動きが激しくなった。
 アナルの抽挿も、一点を突き上げ始める。
「あ、あぁっ、はぁあっ」
 一気に射精への階段を駆け上がる。
 風のように勢いよく、走り抜けて、まさに頂点に達するその瞬間。


「っ?」
 全ての刺激が、あっという間に消え失せていた。
 きついほどに絡まった蔦などどこにも無い。貫かれた皮膚は何ともなくて、血の一滴も流れていない。
「な、んで……?」
 茫然と己の肌をまさぐっても、そんな痕跡など無くて。
「夢……?」
 茫然と呟く京に、いきなり怒声が降ってきた。
「な、何をしているんだっ、か、鹿島っ!」
 上擦ったそれに、我に返る。ぎくりと顔を上げれば、さっきまで酒宴を繰り広げていた皆が、唖然と京を見つめていた。
「なんで裸にっ! しかも、そ、そんな、ぼ、勃起させて!」
「え、あっ!」
 課長の慌てふためいた言葉に、思わず視線を落とせば、自分のあられもない姿が目に入った。シャツはおろか、ズボンまで前を広げ、乳首からぺニスにいたるまで剥き出しになっていたのだ。さらに、勃起までしていて、てらてらと反射する汁で濡れそぼっている。
「な、な、なんということをっ」
「あ、やっ、これはっ!」
 さっきまでの蔦に嬲られていた。だが、その蔦はカケラも無い。
 何と言い訳しようかと考えるが、パニックを起こした頭では何も思いつかなかった。
「さ、さっさと、き、着たまえっ!」
 唾を飛ばして叱責する部長の剣幕もさることながら、まわりの軽蔑のまなざしが痛い。
 羞恥に逃げ出したいのに、けれど腰を抜かしたように足腰に力が入らない。
「す……ま、せ……」
 為すすべも無く、痛い視線に苛まれながら何とか服を整え、深く俯く。
「どういうことなんだ、一体」
 苛だたしげな声音にますます体を小さくし、けれど、何も言うことができない。
 そんな京の言い訳を聞こうと、場がシンと静まり返ったその時。
『淫魔に間違いない。しかもかなり濃い』
 不意に、声が聞こえた。
 一度聞いた声だと、脳に直に響くそれに、京の視線が上がる。誰の声だと知覚するより先に、まっすぐと向けた視線が絡み合った。
「彼は犯されたいんだ。遠慮することなど、何も無い」
 今度は、全員がその声を聞いた。
「犯せ」
 繰り返された言葉には、何の気負いも無かった。
 なのに。
「ああ、犯してほしかったのか」
 誰が言ったのか判らない。いや、全員の声音が重なっていたようだ。
 だれもが、京を見て下卑た笑みを見せて嗤っていた。
「だったら、犯してやろう」
「ひっ!」
 淫欲に満ちたおぞましい視線が、剥き出しの肌に絡みつく。
「淫魔は犯されるほどに成長する」
 じりじりと近づく男たち。上司や先輩である彼らが今、自分たちの衣服を剥ぎながら迫ってくる。
「か、課長っ、部長っ」
 呼びかけにも答えない。ただ、京だけを見つめている。
「あ、あんたがっ!」
 彼らの向う、上座で笑みを浮かべながら杯を傾けている男が原因なのは明らかだった。
「いったい、なんでこんなことを!」
 信じられないけれど、さっきまでの蔦も、そして今のこの状況も、絶対に何かをしたのだ。
「やめさせろよ、こんな……酷いっ」
 何かしなければ、こんな理不尽なことをする人たちではなかった。
 その手が伸びる。
「い、やっ、やめっ」
 先輩の手が、シャツを引き裂いた。課長の手が、ズボンを引き剥がす。
「やだっ、やめ! やめさせろよっ!」
 京の静止では無理だと、男に懇願する。
 だが男は、笑いながら「何故?」と返してきた。
「これがお前の望みだろう」
 と。
「な、何言って」
 向かってくる手を払いながら、それでも男の言葉に唖然と返した。
「何が望んだって?」
「何をされても良いから達きたい、と。激痛をも快感に変えて、達きたいと願っていたではないか。この世のものとは思えぬ快感を味わいたい、と、あのような幻覚を享受していたではないか」
「違……」
「違わぬさ。確かにきっかけを与えたのは俺だ。だがそれもお前に素質があったからこそ。現に今でもイヤだイヤだと言いながらも感じているのであろう? ペニスも勃起しきっているようだが?」
「違う……う、んんっ」
 何を言われても信じられるものではなかった。
 だが、下腹部の重い感触に目をやると、それは確かに勃起していて。
 しかも、たらりと先走りを垂れ流している。
「ひっ、あ、うそっ……あっ」
 触れてくる手に、肌に、体が熱くなる。
 嫌悪すべきなのに零れる声が甘く、肌が紅潮して、しっとりと汗ばんでいく。
「人の身に淫魔の質、か。妙に気なると思い、突いてみれば……」
「ひあぁ──ああぁん……」
「ん、だが、淫魔といえば……。昔、幾つか実験したことがあったが……。そういえば、男女の赤子に仕込んで放置した覚えが……」
 くすりと笑みをこぼした男の瞳が、ちろちろと揺らいだ。黒の中に血飛沫が混じり、滲み溶ける。白目の少なくなった瞳は、人にはない輝きを持っていた。
 あの瞳だ……。
 会議の最中、京を恐怖に陥れた瞳。
 巧みに隠していた瞳の奥から発せられたその視線を、再び感じてガクガクと震える。
 けれど、それでも身体は紅潮し、走り回る快感に、甘く声が漏れるのを止められない。
「なっ、あんた、一体──ひああ、やあっ! あ、ダメ、だ──やだ、も、やめぇ」
 四人の男に組み伏せられ、大きく股を割り開かれて。
 そんな京の姿を、一人楽しく見下ろす男は、先より一回り大きくなったように見えた。
「俺か? 俺の真の名は黄勝(きしょう)。偉大なる鬼の係累よ」
「お、に?」
 唖然と見開いた瞳に映りこんだ黄勝が笑う。
「係累の中では、我らの役に立つモノを創ることを生業にしている。その関係で、はるか過去に淫魔の質を持つモノを創れるか試したことがあったが、どうやらお前はそれを祖に持つようだ。しかも、面白いことに、ずいぶんと濃縮され、染色体レベルので淫魔化しているようだ」
 広げられようとする足を必死で閉じている京を、黄勝の目が舐めるように観察していた。
「仕込んだ実験体どもが、近親婚を繰り返したか……。まあ、多少なりとも淫魔の質が発現すれば、単なる人では物足りなかろうし」
「お、俺の親は、──くっ、離せ! 人間だっ! い、きぃっ」
 顔のすぐ横で、赤黒いぺニスが揺れていた。
 生臭いそれから顔を背けようとすれば、今度は乳首を捻られる。
 痛みに気が抜けた刹那、ぐいっと膝が広げられた。
「そう、人間だったろう。お前の両親までは」
 黄勝の指が、背けた京の顎を掴む。
 強い力に抗うこともできずに、正面を向けられて。
「だが、幾世代も交配を繰り返した果てに、お前の代でその遺伝子は完成を迎えたのだ。そして収穫の時を迎えて、自ら実験主たる我の前に、完成品としての体を差し出しに来たというわけだ。その遺伝子に刻まれた通りに、な」
「なっ!──んあああぁっ」
 信じられるはずの無い言葉。
 だが、四肢どころかを顎まで固定されて、逃げることもできない体に、獣となった男たちのいきり立った欲望が向けられる。
 だらだらと淫液を溢れさす熱い肉棒が、尻を割り開き奥まった粘膜に触れたその時、間歇泉のごとく快感が噴出した。
「ひやあああぁっ」
 じっとしていられない。
 暴れる京をねじ伏せて、遠慮呵責も無く乾いた肉を押し開き侵入してくる肉に、快感ばかりが爆ぜる。
 京の勃起しきったぺニスが、何度も震え、鈴口からだらだらと射精を繰り返す。
 さっきまで願っても与えられなかった射精を、直腸に感じる欲望で引き起こされる。
「淫魔として覚醒するきっかけは、セックスだ。最初に女とやれば、女を好む淫魔に。男とやれば、男を好む淫魔となる。さらに覚醒直後に多くの快感を得ることで、成長する。すでに、我の力でどこに触れても絶頂を迎えるほど敏感にしてやった。今日一日で成体になるには十分だろう」
 突き上げられ揺すられる京には、もう黄勝の言葉を聞き取る余裕など無いはずだった。
 なのに、言葉が理解できる。
 この、触れられただけで意識がふっ飛びそうな快感に、気は狂う寸前だった。何度も絶頂を繰り返す体は、気持ち良さ以上に、辛い。 
 体がバラバラになりそうなほどに乱暴に引き回される痛みにすら、目の前が白く弾けるほどの快感を味わい、もう自分の意思では何もできなかった。
 与えられる快感が、この先も京を苦しめるだろうことは判っていた。
 だが、逃げられない。
「ああああぁぁっ!!」
 嬌声が止まらない。
 がくがくと痙攣する体をいくつもの手が押さえつけ、次のぺニスが押し込まれる。
 抜き差しされる度に、じゅくじゅくと泡立ちながら粘液があふれた。ぺニスの動きがどんどん激しく、奥の奥まで入りこもうとする。
 もっと、もっと……。
 心は嫌なのに、体は貪欲だ。ぺニスを突っ込まれるのが嬉しい、とすら感じる自分に、理性が涙を滂沱と溢れさせた。
「あ、ああぁ、こ、こんなあっ、あ、ひいっ」
 アナルから溢れた粘液が掬い取られ、全身に塗り広げられた。
 滑るそれがじわりと肌に馴染み──。
「な、ああ、熱いぃ、やあ、なにぃぃ?」
 染み込んだ粘液が発火したごとくに熱い。染みこんだ場所に息を吹きかけられるだけで、ぞわぞわと感じてしまう。誰かの肌が触れたとたんに、ぺニスが痙攣し、精液が噴き出した。
 まだ始まって十分も経っていないのに、もう何度射精しただろう。
 薄いそれは、もう数滴しか出ない。
「なんて体だ、肉がうねって離さないぞ、おおぉ、吸い上げられてっ、またっ!」
 部長が感極まった声で叫ぶ。
「甘い、どこもかしこも甘い。なんて美味い身体だ。いくらでも愉しめそうだ」
 京の手を使って自慰をしながら、ぺロペロと乳首を舐めているのは、先輩の一人で。
「すげっ、乳首までビンビン、固くてこりこりして、たまんねぇ……」
 もう一人は、鈴口に乳首を押し込んで、ぐりぐりと腰をふっていた。
「さあ、私のチンポを味わいなさい」
「あむうぅ」
 今一つ柔らかいぺニスが、一気に喉奥までつっ込まれる。
 驚いて開けた視界いっぱいを垂れた腹がしめていた。課長だと声だけでなく理解したというのに。
「むううっ、うううぅ」
 口の粘膜を擦られた途端、また絶頂を迎えていた。

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