【永遠の契約】

【永遠の契約】



 教会の祭壇の前に立つカザナに、マサラからの誓いの言葉がかけられる。
 それに、カザナは答えない、否、答えられないのだ。
 代わりに響いたのは、グチャグチャという粘着質の水音だ、それが淫らに何度も繰り返されている。
「んくぅっ──んんっ……あ、はぁ……」
 透き通るようなシルク・オーガンジーの生地を何枚も重ねた衣装は、光の加減でカザナの線の細い身体を浮かび上がらせる。背後に流れるベールは薄絹の繊細な作りで、長く足を動かすたびにまといつき、ふわりと浮かぶものだった。
 そんな薄い衣装を飾るのは、大粒の真珠の飾り紐だ。
 純白を基調としているけれど、肌に巻かれた黒のサテンのリボンが上の生地の透け具合によって絶妙な模様となっていた。
 深く顔を覆っていたベールも、儀式を迎えた者には必要ないと取り払われている。
 そのせいで、淫らに欲情し、餓えた淫魔のような表情が、全て晒されていた。
 背後にいるマサラが腰を動かすたびに、カザナの喉が震える。声にならない嬌声の代わりに、聖なる誓いの時に鳴らされる鐘が、厳かに鳴り響く。
 その背後には、今日の参列者達がカザナの様子を黙って観察していた。
 普通ならば、厳粛な中で行われる婚儀の儀式。
 けれど今、儀式を司る神官はどこにもいなくて、ただ粘つくような視線ばかりが乱れるカザナを見つめていた。

 全裸で、と言われて許しを請うたけれど、結局はそれ以上の屈辱を強要され、カザナは何度も首を振って逃れようとした。
 だが、マサラの力に敵うはずもなく、押しつけられた祭壇から逃れることもできない。
「いやあ──ぁっ、やっ」
「どうした、誓いの言葉は?」
 問いながらも、腰の動きは止まることはない。
「あ、ひぐぅ──、っぁ」
 マサラのペニスは太く、長い。しかも表面には、凶器のような瘤がいくつも作られている。
 もともと商売女ですら泣かせるほどの凶器を持つマサラではあったが、カザナを手に入れてからというもの、その凶器を磨く術を忘れはしなかった。
 長いペニスが、ジュブジュブと愛液が泡立つ女陰に押し込まれる。男を誘う淫臭を放つ愛液はさっから教会中に立ちこめていた。
 そのせいか、カザナを見つめる参列者達の視線が、ぎらぎらとしている。
「あ──っ、びぐあっ、ぬ、抜い、てぇ」
 アナルの張り型は抜かれている。けれど、さっきまでアナル側から刺激されていた前立腺は、度重なる刺激に腫れ上がっており、ほんの少し押さえられるだけで、痛みにも似た快感を生み出していた。
 さらに、マサラの力強い手がさっきからずっと乳房を揉み、乳首を扱き上げている。
 乳を生産する乳房は、揉まれることにより多量の乳を生成する。それが堪ると乳房は岩のように固くなり、そこを揉まれると激しい痛みをもたらすのだ。
 その痛みにも苦しむカザナだったけれど、不意にマサラの手が乳首を扱く。
「ひっ! あぁぁぁぁ──っ、イクっ、イクウッッ」
 前より小さいとは言え、しっかりと乳腺を貫通させられた乳首の感覚は前と変わらない。
 乳腺を通って吹き出す刺激は、射精と変わらない快感を、カザナに与えるのだ。しかも、精液と違い、乳の生成量はかなり多い。
 いつまでもいつまでも吹き出して、その間ずっと絶頂が与えられる。
 続く快感に、もう意識すら失いたいのに、気が遠くなるとすぐに乳房を掴まれて、その痛みに意識を取り戻い。
 目の前がぼやけて、もう何が見えているのかよく判らない。
 最初は押し殺していた嬌声も、もう止まらない。
「許して、ください……マサラ様……、もう、いやあっ…おねが……ああっ」
 ただ、過ぎる快感に苦痛すら感じて、涙を流しながら懇願することしかできない。
「もう一度言うぞ」
 焦れたように、マサラが繰り返す。
「夫となる私に対し、絶対服従し、常に奉仕し、自ら淫欲を貪らない。それを破るようであれば、どんな罰であろうと受ける、だ」
 言い含められるように繰り返される。
 それは、マサラが国に対して提出する契約書の中に記載されている内容だった。
 犯罪者である性奴を所有するために必要な書類で、そこには性奴をどう扱うかが書いてあるのだ。
 愛しているから結婚するなら、「愛し続ける」と書けば良い。その場所に、マサラは先の文言を記していた。
「あっ、イ、イクっ! 出させ、て……、こ、こんな、の、あぁ──っ」
 乳首をきつく摘み上げられ、迸った乳で衣装を濡らしながら、感極まったように髪を振り乱す。
 乳首を締め付けている大粒のダイヤの飾りは、突き上げられるたびに揺れ、聖火の灯りを浴びてきらきらと輝いた。
 黒のサテンのリボンは、拘束衣のように身体を締め付け、乳房もペニスも陰嚢も、より淫らな形に際だたせていた。
 真珠の飾り紐はきっちりとした長さで巻き付けられ、今はマサラの巨大な逸物に犯されている肉の花びらにクリップで留められて、外側に開かせていた。
「ひぎっ、あぁぁぁ──っ」
 乳首と前立腺を同時に刺激されて、何度も何度も嬌声をあげる。
「ひっ、──あっああ──っ、そこっやだぁっ──イク、またイクぅ──」
 髪を振り乱し、喉を仰け反らせて嬌声を上げるカザナの口の端から涎が流れ落ちた。
 乳房に食い込んだ指が、バラバラに動く。多量に生成されているせいか、吹き出すほどに乳が出て行き、前に置かれたグラスを満たしていく。
 清楚であるはずの婚礼衣装は、今や上から下まで体液でぐしょぐしょになっていた。
「お、お願い──っ、もう……もう……イキタぃっ、ああっ」
「ならば、契約の言葉に言え」
 その非常な宣告に、カザナの頬に涙が流れ落ちた。
 焦点の合っていない瞳が、一瞬だけ祭壇の上に飾られた鏡を映した。ラカンの最高神の象徴であるそれが、淫らなカザナの姿を映し出す。
 ただ、男に嬲られるだけの存在とかしたモノ。
 突き上げられ、揺すられ、神にも見捨てられた堕ちたモノ。
「私は……」
 逃れる術などもうないのだと、もう何度味わったか判らない絶望の淵に追いやられ。
 諦めが、決して口にしたくないはずの言葉を、舌にのせる。
「絶対…ふくじゅ……して、ああ……。ほーしして……、ひぐっ、自ら……」
 嗚咽が零れる。
 理性だけでは抑えきれない欲求に、何もが負けてしまう。
「淫欲を貪らずぅ……ううっ、従わな、時は……っ、どんな罰でも、あぁ、受けますぅ──あぁぁ──っ!!」
「褒美だ」
 言葉が終わるか終わらないうちに、食い込んで痛みすら訴えていた股間が、一気に解放された。
 ふわりと身体が浮いたような感触。次の瞬間、目が眩み、獣のような嬌声が荘厳な教会の中に響き渡る。
「あっ、あっ、あぁぁぁ──────っ!!」
 いつまでも続く声と同じリズムで、黄色みがかった多量の精液がボタボタと祭壇に降り注いだ。


 手を離すと、カザナの身体ががくりと祭壇に倒れ伏した。
 二人を包むのは、参列者からの惜しみない拍手と祝いの言葉だ。
 マサラを讃え、素晴らしき性奴を手に入れた彼への賛辞の言葉。それ手を挙げ、一礼して応える。
 最前列には、兄でもあり、この国の国王であるカルキスが。
 その後には、兄弟達。そして、王族の血筋に連なる者達だ。
 そのどれもが、リジン出身の性奴を保有しているが、さすがに誰も婚儀あるいは養子までして所有権を確固たるものにしようとは思っていなかった。
 否──カルキスは、たとえそんなことをしなくても所有権を主張できるだろう。だが、彼は、未だ兄弟にすら、彼の性奴を晒したことはなかった。
 そんな面々を見回し、感謝の言葉を述べてから、僅かな休憩時間だとばかりに目の前にあるグラスを取り上げた。
 乳白色のこの乳は、マサラのお気に入りだ。
 乳首を小さくすれば出にくくなるのは判っていたけれど、毎日絞っているうちにさらに大きくなって、あまりにグロテスクになってしまった。しかも、口に入らないと客達の不評もあって、小さくしてみた。
 その評判は上々で、カザナも口内に含まれたまま、一気に吸い上げられる快感にやみつきになっている気配すらある。
 乳首からそのまま飲む乳はとても美味しくて、マサラの最近のお気に入りだ。
 本来なら今日もそうやって飲みたかったのだけど。
 空になったグラスを置いた傍らで、荒い息を吐くカザナはかろうじて目を開けている。だが、焦点が合っていない。
「今度はお披露目だ」
 婚儀は誓いの言葉を持って終わり、次は一人一人に挨拶をするお披露目の儀式が続く。
 けれど、庶民のそれとは違い、参列者は50人近い。
「ひっ、ひぃぃぃっ!!」
 意識はなかば無くても痛覚は合ったのか、身体をひっくり返されて、カザナが掠れた声が悲鳴を上げた。
 その両足を高く持ち上げ、祭壇の傍らに備え付けておいた枷に括り付ける。
 大きく割り開かれたことによって、未だ勃起したままのペニスも、泡立った精液を溢れさす女陰も、張り型を銜え込むアナルも、全てが参列者に丸見えだ。
 その中の女陰にぷつりと人差し指を差し入れる。
 絡みつく肉が蠕動していた。突き入れるたびに溢れる愛液が、男を狂わす芳香を立ち上らせる。
 さらに奥まで差し入れ、手の甲が引っかかったが、そのままマサラは手を押し込んでいった。
「あっ、ふぁがっ!」
 カザナが暴れ出す。
 さすがにきつくなったが、その分肉の締め付けが心地よい。
 中程まで入ったところで、手の甲にこりっとした異物が感じられた途端に、カザナが激しい嬌声を上げた。
 少し萎え始めていたペニスが一気に立ち上がり、だらだらと白濁混じりの淫液を垂れ流す。
 その様子にマサラの口の端が上がる。
 毎日のように痛めつけられた前立腺は、今では病的にまで腫れ上がっている。
 その分、僅かな刺激でもたいそう敏感なのだ。
 過ぎた快感は、泣き叫ぶほどに辛い。
 それが判っていて──判っているからこそ、この部分を徹底的に嬲りたくてしょうがなくなるのだ。
 さらに進むと、今度は中に入っている卵が、子宮の中でごろりと動くのを指先に感じた。
 その様を、愉しむように何度も軽く突き上げる。
「あぁ、やめて……出る……産まれるぅっ」
 子宮への刺激は、産卵を促す。カザナが苦しげに身悶えて、涙を流していた。
 昨日からは産卵していないから、一度始まってしまえば、三つの卵が次々に降りてくるだろう。
 ずるりと粘液にまみれた手を引き出した拍子に、産卵痛が始まったのか、身悶え、自由にならない足を、それでもばたつかせて息むように身体を丸めた。
「……ああっ、産まれっ──あひぃ」
「ダメだ、待ちなさい、お披露目が終わるまで出すことを禁ずる」
 非情な命令に、一瞬カザナがマサラを見つめた。けれど、すぐに諦めたようにまぶたを閉じ、身体から力を抜こうとした。
「あふっ、ううっ……」
 だが、一度降り始めた卵を止めるのは難しい。
 子宮口から出てきてしまった卵を押し返すことはできない。だが、何度も使われた産卵防止のストッパーのせいか、一カ所だけたいそう止まりやすい場所があった。
 それが前立腺の寸前なのだ。
 寸前といっても、前立腺に当たることには変わりない。太くなり始めた卵の固い殻が、まるで前立腺を押し上げるように止まる。それは、カザナにとってはペニスで突き上げられる以上の快感で、完全に排出するまで続くその快感を、カザナは我慢などできない。
 僅かだった痙攣が徐々に大きくなる。カザナの泣き濡れた目が大きく見開かれ、絶叫するかのように大きく口が開かれる。
 それは、卵が唯一の休憩場所に辿り着いた証拠だ。
 ひくひくと震える身体をさらに固定して、マサラはようやく、と言ったふうに参列者を振り返った。
「本来ならば、こちらからご挨拶に向かうところではありますが、残念ながらわが性奴を歩かしてはいては時間が足りなくなります。本末転倒ではありますが、どうか皆様方からのご挨拶をお願い致したいと存じます」
 すぐに教会内が異様な熱気に包まれた。
 最初はゆったりとした足取りで近づいたカルキスが一人でカザナを女陰を犯した。
「ぎやっ、あぁぁっ! ひぎぃ」
 卵がペニスに押し戻される。
 子宮口を押し広げ完全に戻る寸前まで押し込まれ、けれど、ペニスが抜かれると、入りきっていない卵は、また膣内に押し戻された。それは、カザナに取って激しい苦痛を与える。けれど、戒められたままのペニスは一向に萎える気配が無く、そこにあるのが苦痛だけでない証拠に、何度も何度も粘液を吹き出していた。
 カルキス王の次は、兄達だった。
 その後は、近い血筋の者から順番に。そのうちに、口も良いと判って、待ちきれない輩が同時に犯し始めた。
 それらを全て飲み干させる間もなく、次のペニスが突き入れられる。
 ラカンの王族の血の中には、実はリジンの血も色濃く交じっている。
 もともとは一つの祖であったのに、混血になったというだけで殺されかけかろうじて逃げ出したのがラカンの祖だ。その後も、そうやって逃げてきたリジンの民と結婚し、跡を継いだ王もいる。
 かなりの数がそうやってリジンの血と交わってきた。
 ラカンの祖は、リジンの純血をたいそう憎み、子々孫々にまでその憎しみを残したけれど。同時に、失ってしまったその血を、何よりも欲していたのだ。
 それもまた子々孫々の、その遺伝子の中に刻まれていたのだろう。
 その中でも生粋中の生粋であるリジンの王族を目の前にして、参列者の目の色が変わっていた。
 自分たちもそれぞれに性奴を持っている筈なのに、新しい玩具はまた別だとばかりに交合している。
 孕まそうとは思わない、と女性奴を持つ者が言っていた。
 けれど、血が激しく沸き立つのだと、とにかく犯したいと思ってしまうのだと、妻にはたいそう優しいと評判の親族が言っていた。
 リジンの血は淫乱の性がある、と一部の者達には有名な話だ。
 その血が、騒ぐのかも知れない。
 血への欲求と憎しみ、そして淫乱な性が身体の中で暴れ回っているのだ。
 この嵐は、外に吐き出さないと終わらない。
 そんな男達が50人近く揃っているのだ。
 全員の精液を注いでもらい、零れないように栓をして、帰りのパレードに参加させるつもりなのだから。卵も中に蓄えたままだ。
 それはどんなにカザナに苦痛と快楽を与えるか判っている。だからこそ、止められない。
「あがっ、がっ、ふああ──っ!」
 口を塞がれているせいでくぐもった嬌声が、いつまでも続く。
 大きく割り開かれた足の間で、逞しい逸物で何度も肉を犯すのは軍人だ。
 その反対側では、無理矢理開かれた口内に、老貴族が萎びたペニスを押し込んでいた。
 引き裂かれたシルクからのぞくふくよかな乳房は、別々の男達に深く銜え込まれ、さっきから何度も激しく吸飲をされている。
 そのたびに全身を硬直させて絶頂を迎えていた。
 いつもは使わせない女陰も、今日だけは特別ということで、そこを使う人も多い。
「どうか皆様、たっぷりと遊んでください」
 疲れで反応が鈍くなってきたカザナの腕を取り、媚薬入りの栄養剤を血管に注射する。
 直接いれるために弱めているが、それでも今のカザナにはたいそう効きが良いはずだ。
「締め付けはいつまでも変わりません。どうぞ、一度とは言わず何度でもご利用ください」
「あ、あっ熱いっ、──熱いぃ、ひぃぃぃっ」
 薬が効き始めたか、カザナが暴れ出した。
 もっとペニスを深く銜えようというのか、相手の腰に自分の尻をぐいぐいと押しつけている。
「いくら注いでも飢餓は止まらない」
 カザナがいくら欲しても、餓えを満たせるのかマサラだけなのだと、染みついている筈なのに。
 浅ましく強請るカザナに、マサラは口の端を上げて酷薄な笑みを浮かべた。
「新居では、誰が主人が教え直さないとな」
 新居として、北の山間にある避暑用の館を貰い受けている。数日の内にその館に転居する予定なのだ。
 そこは一昔前にマサラが薬効を持つ数々の植物を研究し、育てていたところで、今でもその頃の植物がたくさん自生している場所だ。その植物の世話をカザナにさせるつもりだった。
 城の奥の中庭に植えている兄のキスカお気に入りの蔓状の植物もその亜種で、なかなか愉しい効果をもたらせてくれた。
 新居では、今までのように毎日客は来ないけれど。
 マサラも忙しく、毎日遊んでやる訳にはいかないけれど。
 今度は植物たちが、栄養価の高い乳を求めて、カザナを求めるだろう。
「マサラ、たまには連れて来いよ」
「もちろんですよ」
 叔父の言葉に、頷いて。
「今よりさらに淫乱になった姿をお見せいたしますよ」
と、にこやかな笑みを浮かべて、自身満々に答えたのだった。


【了】