【水砂 訓練】(3)

【水砂 訓練】(3)

 その夜、ミズサの部屋に訪れたダマスは、固い顔つきで待っていたミズサを寝具に押し倒した。
 弾んだ感触と共に、寝具の足が奇妙な軋み音を立てる。だが、それもすぐに止んで、変わりのようにミズサの喉が堪えきれないようにひくりと震えた。
 もとより躾があると判っている時には服など許していない。
 その腰を抱え上げ、まだ固く閉ざした肉にペニスを突き立てた瞬間、『一週間ぶりだ』と思いいたった。
「いっ、きっつ……うぅ」
 小さく呻いたミズサが、四つん這いの姿勢でがくりと肩を落として、その背を痛みに震わさせている。
 滑らかな白い肌には、うっすらといくつもの傷が浮かんでいた。浅黒い痣は訓練中の物だろうが、いくつも交錯して走る線条痕は鞭の痕だ。
 使いすぎて緩んだときに痛みを与えれば、よく締まるからダマスはよく使う。
 だが、今日はまだしばらくは大丈夫だ。昨夜も誰かに犯されていたはずなのに、十分な締め付けでダマスのペニスを銜え、締め付けている。
 この締め付けの回復力は、リジン産性奴隷が最高級品だといわれる一つでもあった。
 どんなに使っても、翌日には新品を扱っているのと同じなのだ。
 「あっ、くっ、ふぅっ!」
 数度激しく突き上げればすぐに、軋みをあげていた孔が潤んできた。これも、リジン産性奴隷が皆持つ特徴の一つだ。他の民族では、アナル刺激されても、溢れるほどに粘液が出ることはない。だが、リジンの性奴隷だけは、それこそ女の愛液なみに濡れて、抽挿を助けるのだ。
 おかげで、潤滑剤など何もなくても良い。
「うほっ、あいかわずうまい具合にまとわりつきやがる」
 たまらずに零れる感嘆の声音は、いつものことだ。
「あっ、あっ……こんな……ぅあぁ……やっ、そこっ、ダメ……ぇ」
 あっという間に全身を紅潮させ、その肌をしっとりと汗ばませているミズサが、感極まった嬌声を上げた。
 ミズサのアナルは、すでに他の何よりも敏感な性器なのだ。どんな細いものでもつっこまれるだけで感じて、即座に欲情する。
 冷静沈着な強い男が数秒で欲情して見悶える様子は、あまりにも淫媚だ。
 しかも、それは外だけでなくて中もなのだ。
 肉が中で蠢いている。
 ダマスのペニスに絡みつき、その体液すべてを搾り取るように扱き、震えている。
 体温が高いわけではないのに、その中はたいそう熱い。悩ましげに吐き出す息は、火傷しそうなほどに熱くて対するダマスの熱すら上げていく。それから逃れるには、ダマス自身がより以上の熱を吐き出すしかない。
「やっぱ、てめぇは凄ぇ」
 使う回数が減ったからと言って、だからと言って飽きたわけではないのだと、ミズサを貫く度に思う。
 ミズサは、極上品だ。
 与えられる快感はどんな馳走よりも旨く、蠢く肉に包まれれば、極上の美酒で酔うより心地よい。
 込み上げる欲望を耐えることなく解放して、激しく突き上げた。ダマスの手の下で引き締まった尻がぶるぶると痙攣するように震え、その喉が甘く欲情に満ち満ちた嬌声鳴が迸る。たいそう甘い音色のそれは、突き上げる度に高低を変え、グチャグチャという淫猥な水音とともに、ダマスの耳に心地よく響く。
 同時に響くパンパンという乾いた音に気づき、その音を立てているペニスへと手を伸ばす。揺れる度に自身の腹に当たっては跳ね返り、粘ついた陰液を振りまいていた。その根元には、重量感のある袋があって、たぷたぷと重そうに揺れている。
「ずいぶんと溜まってるみてぇだな、昨日はださせてもらえなかったんか?」
「ひっ、いっ、痛うっ!!」
 握りしめてやれば、まなじりに涙を浮かべて辛そうに身を捩った。
 問いに返事は無いが、出してないのは当たりだろう。
 それも、もう何日も射精していないのではないだろうか?
「はっ、痛いっていいながら感じてんだろっ。ほら一人でよがってねえで、自分で動けよっ」
 陰嚢を二つまとめて握り、手の中で転がせば、張りつめたいるのが判る。いくら吐き出させてもすぐに溜まる精液は、溜まりすぎてはミズサを苦しめる。何しろ、ミズサのペニスの先端には極太のピアスが刺さっているから、簡単には射精できないのだ。
 溜まりに溜まったところで吐き出させれば、ひどく長く、そして気を飛ばすほどの快楽に襲われて、ミズサはいつも理性を完全に飛ばし、狂う。
「あ、あ──っ、だ、だってぇ、やっ、感じすぎっ──イイっ」
 ミズサが快楽に身を任せるようになったのは、ここに連れてこられてすぐのことだ。その方が楽だからだろうが、媚態を晒して悶え、喘ぐ姿は、興醒めするどころが、よけいに男の欲を誘う。
 これもまたリジン産性奴隷の特徴なのか。
 貞淑な処女を犯す悦びを味わった次の日に、男慣れした娼婦のように淫らに遊びまくって楽しみ、理性を飛ばした後は、色狂いのメス豚がペニスを求めて狂う姿を嘲笑いながら苛んで嗜虐心を満たして。と思えば、翌日にはまた処女のように恥じらう体を、淫らに開かす楽しみを再度味わって。
 たった一人いれば、どんな楽しみ方もできるのだ。
 ミズサの場合も普段は感情の起伏が少ないから、色に溺れた時の変化には、いつも驚かされる。
 能面のような表情が肌に触れただけで、悩ましげに眉根を寄せ紅潮する様は、色気があるというものではない。
 訓練の時より多くの汗にまみれた肌を仰け反らせ、涙を零しながら、尻のペニスを深く飲み込む頃には、発情期の猫のごとく男を誘いまくるのだ。
「あっ、くう──っ、イイっ、もっ……とぉ」
 寝具についた手が拳を作っている。
 ボタボタと落ちた汗と糸を引く粘液が、寝具に染みを作っていた。
 ミズサの部屋は何もないけれど、寝具だけは丈夫で広いものがおいてある。けれど、どんなに丈夫な寝具でも、数ヶ月すればガタが来て修理が必要だった。それに、敷布は支給品だから数に限りがある。洗濯しても取れない染みで汚れていても、規定期間が過ぎないと次はもらえないのだ。
 そんな淫らな模様の上に四つん這いになったミズサの体内では、熱い粘膜がうねっていた。
 そんな粘膜に包まれた肉壁の後ろにあるはずの前立腺が、ミズサのそれは何度も何度も陵辱されている間に少し張り出したらしく、そのこりっとした感触がダマスのペニスに程良い刺激となる。それを狙って陰茎を擦りつければ、快感に狂う肉がギチギチと締め付けながら絡まり、じっとしていても持っていかれそうなほどに気持ちよい。
 しかも、そんな自らの肉の動きがミズサにも善いらしく、溢れる快感に身をくねらせまくるほどに喘ぎまくる。
 それは日常生活にも影響がでてきているらしく、厠から悩ましい声が聞こえるほどなのだ。しかも、鈴口のピアスのせいで、ミズサは小便でも感じている。
 排泄物を愛でる輩はいないが、あの美しいミズサが糞をしながら悶えている姿を想像するのは、十分なオカズになる。そんなミズサのために、今では皆が集う広間の横の厠が、ミズサ専用だ。
 厠から出てきたミズサは欲情しきっているから、そのまま押し倒され、熱をはらんだ孔に突き入れられれば、すぐに歓喜の声を上げて悦んだ。
 とすれば……。
 結構使っているのかもしれない。
 そう考えれば、少なくともミズサが精液を喰らっていない日はないような気がしてきた。
 皆乗り気ではなさそうな態度は取っているが、使うときには使っている。しょせん薄い壁の各自の部屋は声など遮らないから、艶めかしいミズサの喘ぎ声が毎夜のように聞こえるのも事実。右の乳輪の周りにくっきりと残る歯形は、その犬歯の鋭い痕からしてカームズだろう。ペニスにある青黒く沈着した紐の痕はまだ新しい。ピアスだけでも出にくいのに、根本を陰嚢ごと縛って固定し、生理的にも達けなくするのが好きなのはカランだ。
 となれば、複数で使うことがなくなったかもしれないが、十分使っていると、レイメイに聞かれても答えられるだろう。
 この美しい性奴隷を返せと言われないようにしなければ。
 眼下でミズサの筋肉が、ダマスを淫らに誘っている。筋肉質ではないけれど、透明感のある皮膚の下には確かにちゃんとした筋肉がある。その筋肉が生み出す動きは俊敏でいながら優雅で、そしてどこまでも淫猥だ。
 そして、たいそう美しい。
 男がいないと生きていけない淫売は、メス犬を通り越してメス豚と呼ばれているけれど、ミズサにはそんな呼称は似合わない。
 だが、メス犬、とも違うような気がする。
 獣のように交わる姿は同一だろうが、どこかが違う。そう……ミズサの姿は……。
「メス猫……だな、おまえは」
「えっ……ひあ!! そこはっ、イぃ、あっ」
「魔女の化け猫って知ってっか?」
「あうっ、ふっうぅぅ、うっくうぅぅ!」
 もとより返事を期待したわけではない。
 頭の良いミズサのことだから、きっと知っているだろうけれど。
「南の塩の大地の先にある国の言い伝えらしいがな。時の王を虜にした女が実は魔女で、その使い魔が化け猫だったってえ話だ。実は魔女はたいした面ではなかったらしいが、その化け猫の方が絶世の美女に化けて王をたぶらかしたってぇ話だ。しかも、その女に化けた猫が一声鳴けば、どんな不能な男も一発で勃起し、尻を振るだけで、室内中に男を狂わす媚薬を振りまいたんだ。それこそ、穴と見たら突っ込まねぇと堪らねぇほどに狂う媚薬でよ、王は化け猫を片時も離さずに、魔女の言いなりになってたそうだ……」
 しなやかな筋肉。美しい毛並み。
 視線や口元の笑みで淫らに男を誘い、溢れる陰液を発情した熱で蒸発させて、室内中を淫らな匂いに包み込む。
「結局、化け猫に気が付いた王子様が聖水を使って弱らせた後に捕まえた結果、人は正気に戻り魔女は投獄され、王国は助かったんだが……結局、化け猫は従順な態度になって周りが隙を作った一瞬の間に逃げ去って、今でもどこかにいるって話だ」
 そんな化け猫にミズサは似ている。
 淫らに男を誘う、というだけでない。
 ミズサは従属しているように見えても、すぐにでもここから逃げだそうとしているように見えてならないのも事実。
 油断を見逃さず、逃げた魔女の化け猫ように。
 だが、それでも良い。逃げたら、捕まえるだけのこと。
 二度と逃げられぬように淫らな枷をつけて、裸で拘束して。
 汗も甘く、潤滑剤がいらないほどに溢れる淫液は、男を熱く体をたぎらす極上の媚薬だが、その体を本当の媚薬でさらにたぎらせて、訓練場に縛り付けて放置してやる。
 どんなに鳴いても、外さない。
 お前が生きる場所はここだけなのだと理解するまで。
 お前が満足するのはここだけなのだと、知るまでずっと。
「なあ、鳴いてみろ。ニャアってな」
 背後から覆い被さり、耳朶に食らいつきながらメス猫に囁けば、戸惑ったように濡れた空色の瞳がダマスを写した。
 その目元が、ほんのり染まっていて、口元が躊躇いがちに開く。
「……ニャ……ア?」
 意図が読めないながらも恥ずかしげに従う姿は、脳天に雷が落ちような衝撃を与えた。
 飛びかけた意識をかろうじて保てたのは、墓穴を掘りたくないというダマスの矜持のおかげだ。
「まだ達かせねぇよ、それにもっと締めねぇかっ!」
 焦って目の前の尻タブを力一杯平手で叩けば、良い音がして。途端にぐにゅっっと強く締め付けられて、あやうく達きそうになって、さらに慌てた。
「てめ、締めすぎっ、っと、崩れるんじゃねぇ!」
 傾きかけた体を脇腹の肉を掴んで引き上げ、今度は反対側の尻を叩く。
 甲高い音が繰り返される。殴打を繰り返せば、白いはずの尻タブが両方とも真っ赤に腫れ上がった。
「あっ、ひっ……も、も、訳、ありま……」
 ダマスの力は強い。肉厚の大きな手のひらが与える衝撃は、下手すれば大の男が吹っ飛ぶほど力がある。その力で叩かれ続けて、ミズサはぼろぼろと涙を零した。顎を伝い、ボタボタと涙が寝具に落ちている。
 空色の瞳に映るダマスの顔が、ニタリと笑みを浮かべると、強ばった顔はそのままにさらに涙が溢れ出していた。
 訓練で強くなっても、性奴隷としての立場は変わらない。実際は強いと判っているからこそ、情けない姿を晒すミズサが堪能できることが楽しくて堪らない。
 強くなった筋力を生かして、始まりから一時間ずっと寝具の上で四つん這いの姿勢を崩させていない。
 ダマス自身は、寝具脇に立って腰を突き出すだけだ。高さの調整はミズサが行っていて、その分、腕も足もかなり辛いだろう。脂肪の感じない筋肉質の四肢が、さっきからぶるぶると震えている。
「だったら、俺を善くさせろよ、なあ、ミズサ」
「ひ、ぎぃぃ──っ、きっつぅっ、待っ、ダマス様っ、ぐうっ」
 ずこずこと激しく突き上げて、思うさまにミズサを使う。
 熱くねとりと絡みつく粘膜は、そんじゃそこらの女の女陰よりよほど良い代物だ。欲情すればするほど、溢れるほどに濡れてきて、その蠕動運動がたまらなく気持ちよい。
 だがダマスは、絡みつく肉をふりほどき、ペニスを抜き出した。
 とたんにぶるりとミズサの背が震える。肌が総毛立っているのは、開いたままのアナルから空気が入ったせいか、喪失感を味わったか。
 そのどちらもだろう。
 そんなことにすら感じるミズサが、喉から長い嘆息をこぼす。
 惚けた表情で舌が唇を舐めるように動いて。
 腰が誘うように揺らいでいるのは無意識だろう。
 まだまだダマスは満足していない。
 口の端をあげながら、ダマスは己のペニスに潤滑剤をたっぷりと垂らした。通常は不要な潤滑剤だが、グイナ印のそれは必要なくても使う価値のある代物だった。
「くっ、ううっ」
 垂れるほどに潤滑剤まみれになったペニスが、ぶちゅぶちゅと飲み込まれていく。
 こうしてみれば、ミズサの穴は決して大きくはない。それなのに、しわがなくなり、薄く延びきった皮膚は切れることなく、旨そうに喰らい込んでいく。
 その光景だけで、いつ見ても脊髄に電流が走る。
 さらに、グイナ印の潤滑剤はミズサの感度をさらにあげて、ミズサがたいそう良い声で鳴き出すのだ。
 手を伸ばし、ペニスをまさぐってやれば、ねっとりとした粘液にまみれたペニスの先っぽで、固い輪が指先に触れた。
「こいつもそろそろ付け替えようか」
 我が侭を言う性奴隷の躾のためにつけたピアスは、尿道を通って亀頭の裏に抜ける形状だ。弄りすぎて広がった尿道を塞ぐほどに太い。
 これのせいで、ミズサは小便も普通にはできない。鈴口を広げるように持ち、少しでも尿道を広げるようにピアスを押さえて、ちょろちょろとしか出せないのだ。それでも、小便はまだ良いだろうが。
「いっそのこと、みっちり塞いで汁の一滴も出ないくらいに太くして。小便の時だけ、別の穴付きの棒をさして、そっから出すようにしてやろう」
 その様を想像して、身震いするほどの快感が背筋を駆け上がった。
 なんだ、まだまだ楽しめるじゃないか、このメス猫は。
 そう思った時だった。
「い、いや……お、許しをっ、それだけはっ」
 ミズサが悲鳴を上げて、振り返ったのだ。泣き濡れて苦しげに歪んだ顔から、懇願の言葉が迸っている。
 その姿に魅入られる。
「どうかお許しを、ダマス様っ。どうか、これ以上は……。お願いしますっ」
 これは……ああ……。
 見つめてくる空色の瞳、汗で白い肌に貼り付いた銀の髪。
 気高きメス猫は、今や全てを支配するダマスの言いなりだ。懇願するしか逃れる術が無い儚い生き物は、たいそう美しい。
 その涙も、懇願の言葉も、全てがダマスを欲情させる。全身が歓喜に震え、ぞくぞくと全身が痙攣した。肌が総毛立つほどの欲を堪えるように唇を噛み締めて、ぐいぐいと腰を突き出してペニスに絡まる肉の熱さに気を逸らす。
「イヤか、太いピアスは?」
「は、はいっ、お願いしますっ」
 大きく頷きながら強請るように締め付けてくる肉。筋肉質だからこそ、その締め付けは強い。締め付けられる度に、ぶちゅぶちゅと泡立った粘液がアナルから滲み出る。けれど、こんなものでは達かないほどに、ダマスもミズサの肉壺には慣れている。
「だったら、さっさと俺を達かせてみろ」
 そう言って動くのを止めた。しっかりと奥まで貫いたまま、両手はミズサの腰をしっかりと掴んで、僅かな動きも封じた。
「そのままてめぇの肉だけで、俺を達かせてみろ」
 鼻で嗤いながらの命令に、ミズサの瞳が大きく見開かれた。
「う、ごけない……?」
「はぁ、動けんだろう? 今でもてめぇの肉は、俺のチンポを美味そうにしゃぶってやがるぜ」
 舌と同じように、粘膜が絡みつき、肉棒の表面をなでつけては締め付けている。
「気持ちいいぜぇ、けど、もうちょいだな」
 美しい性奴隷は、最高の淫具だ。慣れない者なら、見ただけで射精してしまうだろう。
「ううっ、……くっ、うっ」
 命令を撤回する気配のないダマスに、ミズサは諦めたように、唯一動く括約筋周辺の筋肉を動かし始めた。
 ぎゅっと締め付けては緩めて、時折排泄するかのように蠕動運動をさせてくる。
「さすが、淫乱な性奴隷らしい動きをしてくれる」
 体は動いていないというのに、快感が増大してくる。焦れったくて、ついつい自分から動きそうになるのを必死で堪える。これでは、どちらの苦行か判らない、と、自嘲めいた笑みを浮かべて、ペニスから伝わる快感を拾い上げる。
「うぅ──、くうっ! ふぁ……達って……あぁぁ」
 ぎゅっぎゅっと締め付けられれば、前立腺の場所がペニスにも感じられる。ミズサも気持ち良いのだろう。獣の姿勢のまま喉を晒し、開いたままの口の端からだらだらと涎が溢れていた。紅潮した上半身は淫らにゆらめき、乳首のピアスがしゃらしゃらと音を立てている。
 簡単には達くつもりはないけれど。
 ゆったりとしている割りには淫猥な雰囲気のある踊りは、目からダマスを激しく欲情させる。
 快楽も痛みも排泄も食事も、そして死すら他人の手に握られている性奴隷。飽きれば捨てて良い存在だが。
「飽きるものか、……捨てる……ものか」
 知らず口を吐いて出た言葉を噛み締めるように、自らの下唇に歯を立てる。
 体内で熱く澱んだ空気を吐き出しながら、ダマスはずっと必死なミズサの様子を堪能し続けた。



「ダマス副隊長」
 肉の動きだけで一度達ってからは、鞭も使いながら思うさまに陵辱し尽くして、最後には意識を失ったミズサを横目に、ダマスは服を着ていた。その最中にクドルスが部屋に入ってきたのだ。
 ちらりとミズサを見やった途端に、好色そうな笑みがその顔に浮かぶ。
 ダマスも視線をやれば、俯せに寝具に倒れ伏したミズサの体は全裸のままで、尻には平手打ちの痕、背には鞭の痕、その上には精液がたっぷりと降り注がれている。床には淫具がいくつも転がり、どれだけ犯されたかが如実に伝わってくるほどだ。そんなミズサの汗ばんだ背は微かに上下していた。その動きすらどこか艶めかしく、男を誘う色気があった。
「使うか?」
 問えば苦笑を浮かべて否定される。
 と言っても、その胯間が膨らんでいるのは確かなのだが、大きく息を吐いたクドルスがダマスに向けた視線は真剣そのものだった。その様子にダマスも表情を改めて、クドルスに向き直る。
 どうやら、単なる様子見ではないらしいと気付いたダマスに、差し出された一通の書簡。そこに記されたサインに、ダマスの表情に緊張の色が走った。
「先ほど早馬で届きました」
 その言葉に頷いて、包まれた指令書を広げる。
 この部隊に命令を下せる人間は、レイメイただ一人だ。その紋章を記された指令書をじっと見つめるダマスの表情がみるみる内に険しくなる。
「クドルス」
「はっ」
 渡された指令書を一読したクドルスも、その厳つい表情を険しく歪めた。
「カランを呼べ、作成会議だ。一時間後に全員を部屋に集めろ」
「はいっ」
「そいつもな」
 親指で寝具の上にミズサを指さして、そのまま部屋を出て行く。
「了解」
 だから背後でクドルスがくすりと笑ったことにも気付かない。
 そんなダマスを見送ってから、クドルスはミズサの体に柔らかな掛け布をかけてやると、途端に、小さく身動いだミズサがため息のような寝息を立てた。
 疲れ切ったのか目元にクマを作ったミズサは、再び深い眠りに入ったようで、クドルスが触れても身動ぎもしない。
 それだけ激しく犯されたのは、見ただけでも判っていたが。
「不思議な奴だよなあ、あんたは……」
 ミズサが聞いていれば、何のことだと、それこそ不思議そうな顔をされるだろう台詞は、けれど、掛け値無しの本心だ。一年前の性奴隷として使いまくっていた頃に比べれば、その声音もまたひどく真面目なものになっているのも事実で、それがおかしいことだとも思わない。
 ミズサはただの性奴隷でしかないというのに、いつの間にかこの部隊の中で自分の場所を作っている。
 陵辱しながら、それでも皆が前ほど激しくミズサを使わない理由はそれぞれだろうけれど、少なくとも、クドルスと同じような感情をダマスも持っているのでは、と思っている。
「リジンの王族だった……っていうには、あんたは、あの貴族どもとは違う感じがあるんだよな……」
 たぶん──確証はないけれど。
 みな口には出さないけれど、気が付いてしまったその事。
 純血以外は人ではない──そう言い切ったあのリジンのろくでなしの貴族どもとは、ミズサはどこかが違うということに。
 それに、強くなったミズサの技量もまた、みなの意識を変えさせたのも事実だ。死と隣り合わせの立場にいる自分たちだからこそ、強い者への尊敬の念は、相手がたとえ誰であっても代わりはしない。敵であっても……性奴であったとしても。
 そんないくつかの事に気が付いてしまったからこそ、前のようには嬲るだけではなくなっていて。それに、王族達が持つリジンへの憎悪は、ここではそれほど激しくもなくて。
「まあ、飽きてきたってことにしておいてよな」
 男に惚れる理由なんて、そう無いとは思うけれど。抱くには、娼婦なんかよりよほど愉しいから、悦んで使ってはいるけれど。仲間意識というのが目覚め始めているのは確かだ。
 それについては、ダマスはまだまだ認めたくはないようだ。
 だが、緊急を要する指令なのにあの短気なダマスが一時間と間を開けたのは、ミズサの体を慮ったからだと、クドルスは気付いていた。

【訓練編 完】 –>>【捕獲編へ続く】