【四つの王国と魔王の話】第一章〝北の国〟-5

【四つの王国と魔王の話】第一章〝北の国〟-5


「いやらしい身体だな。そのような異物を入れられて嬉しそうにだらだらと涎を溢れさせて。どうせ今までも神殿とは名ばかりの場で、ほかの者どもと乳繰り合っていたのではないか?」
「あうっ、いあうっ!」
「ならばなぜこんな卑猥な責め苦で勃起しようとしている? 枷で抑えていなかったら、今ごろはイキまくっているだろうよ、ほれ」
 ほんの少し、魔羅の先にユーリアの指が触れた。鈴口から入っていた棒はそのままだが、細いからか隙間からブクブクと粟立った粘液が溢れている。
 勃起できないとはいいつつ少しは遊びがあるようで、勃ち上がりかけてはいる。だが身体から垂直になるよりは下で止められているのだ。
「い、ああっ、やあっ!」
 ユーリアが先端を撫でるたびに、シュリオの動きが激しくなる。まなじりから流れる涙は多く、顎を伝い嶺炎の腕へと落ちていた。
「この程度で泣くな」
 思わず嶺炎は声をかけていた。耳たぶに唇で触れて、震える身体を抱き締める。
 どうにも優しい言葉をかけてしまうのは、やはり〝北の国〟の女より弱くしか見えないからか。
「痛いからとそればかりを考えていたら、身体が固まりよけいに痛みは増す。ほら、痛いばかりではないだろう?」
 涙を拭うように頬を撫で、流れた痕に沿って舌を這わせた。拘束されて動けない腕を掴み、苦しげに悶える身体を抱き締める。
 薄い胸のに指を食い込ませ、人差し指と親指でより強く乳輪から先を抉り出した。そこにユーリアが再び食いつき、飛び出た乳首に歯を立てる。
「がっ、あっ!」
 かなりきつく噛まれたのか、止まっていた涙を溢れさせながらシュリオは暴れた。だがその身体は嶺炎にすっぽりと包まれている。寝台にいるより強くなった拘束に暴れる全ての力は吸収できた。
 ユーリアはさらにその手をシュリオの身体の前と後ろに回して、寝台についた尻の狭間と押さえつけられている魔羅へと刺激を与えていた。長い指が後ろのくぼみを探り、片方が粘液が溢れる鈴口へと食い込む。
 入るには太い指にシュリオは枷の奥で泣き叫んだ。
 だがそこにカストがボトルの中身を零していった。
 花弁一枚の潤滑剤のボトルはすでに半分が流れ、シュリオの下半身はその粘液でぬるぬると滑る。
 もとより足を伝って垂れていたものは、今ユーリアの指先で暴かれつつある後孔にじわりと入り込んでいた。
 人の世界でも流通している弱い媚薬は、弱いと言っても確かな効果がある。
「これ、結構匂いが強いですね。処女の身体にはきついかもしれません」
 カストが首を傾げて言うが、ユーリアはただ笑い言い放つ。
「魔王が準備するものが、人の世界の基準で推し量れるものと思わないほうが良いでしょう」
 強いに決まっていると、自身の手に付いた粘液を眺めている。
「私たちにも影響がある可能性は否定できない」
「それは困りますね」
 まったく困った気配のない会話に嶺炎も頷く。そんなことは些細なことだと思う程度には頭の中がどこかふわふわとしているようだ。
 ねっとりと漂う花の蜜の匂いを嗅いでからすでにしばらく経つ。否定できない影響は、確かに感じられた。
「もう今さらだ」
 まだ正気ではある。身体も別に我慢が利かないわけではない。飢餓感は多少はあるが、理性が続くのであれば問題はない。
 短絡的な思考はやはり媚薬に犯されているのだと、それすらもわかってはいる三人だが、それでももう止まらない。止められるわけもない。
 入り込んでいたむユーリアの指が、さらに奥へと潜り込む。
 カシスの扱う棒がするりするりと細い管の中を上下した。
 嶺炎の腕がシュリオをなだめるように包み込み、その抵抗を塞いでいる。だがさっきまで痛みに顔をしかめていたシュリオの顔が、今はもう緩んでいた。
「やあ、ああっ、があぁぁなが……いああ」
 細い棒が抵抗なくなったころを見計らって、カストの持つ棒が太くなる。その棒が吹き刺しされるたびに白みを帯びた粘液が溢れていた。
 細い革帯は魔羅に食い込み、剥き出しになった先端は触れられる度に小刻みに震えて、新たな液を噴き出している。
 乳首は男の物にしては大きい。腫れて充血しているそこは赤みが強く、少し大きくなっているようだ。そこを囲むように乳暈にも歯の痕が点々と残り、うっ血痕が赤黒く残っている。
 枷のせいで開きっぱなしの口は、さっきからもう喘ぎが止まらなかった。
 びくんびくんと身体が震えるたびに力は入るが、ぬかるんだ後孔は指の追加を妨げない。
「ずいぶんと美味そうに銜えるものだ。どうやら天性の淫乱というわけか」
 ユーリアが嗤う。喉の奥から堪えきれないとばかりに嗤い、蔑む視線をシュリオに送る。
 与えられる刺激に朦朧としているシュリオは、それでもその視線を浴びたとたんに怯えるように身を竦ませ、屈辱に顔を赤らめた。
 そんなシュリオに、悪い笑みを浮かべたユーリアが覗き込む。
「選ばせてやろう。三人の中で誰がいいか」
 指がシュリオの顔のすぐ近くで一本立てられる。
「おまえを今宵犯す相手だ。誰がいいか?」
 指が指し示すのは大きく広げた股間の奥。
 快感にとろけた表情をしていても、シュリオの首が否定に動く。だがそんなシュリオにことさらに煽るように笑みを深くして、ユーリアは尻の間を嬲っていた指を一気にめり込ませた。
「んあっ、がっぁぁっ、あっ!」
 三本の指が内部を強く抉ったのかシュリオの身体が痙攣し、白目を剥いた。
 硬直した身体は脈動するかのように震え、背が強くのけ反ったまま。嶺炎の力でなんとか抑えられたほどにそれは激しい。
「おやおや、こんなことでイッたようですねえ。男のくせに、射精もしないでイクとは、ふむ、これこそ淫乱の証」
「イッた、というのか? 確かに射精はしておらぬが……」
「確かに射精してはおりませんね」
 ユーリアの言葉に誘われるように、三人の視線がシュリオの股間へと向かう。そこは確かに粘液は滲み出ているが、精液はどこにも見当たらなかった。
「空イキさせるのはなかなか難しいと思っていたが」
 嶺炎の規格外の魔羅で抉られると反射的にイクことも多いのだが、通常はなかなか空イキできないと嘆く輩がいたことを思い出す。
「まあ多少の慣れは必要かと思いますが、これはそういう身体なのでしょう」
「……まあそうだろうな」
「男ばかりの騎士団などは多種多様な性癖がおりまして、〝北の国〟ではありませんでしたか、そういう色狂いのような輩が」
 言われてみれば確かにと、どうも雰囲気の違う、男にこびる者たちがいたのも確かだ。
「〝北の国〟の訓練は厳しい故に、どちらかというと単なる性欲発散に相手を見繕うことが多くてな、あまり技巧をこらすということはなかったな」
 激しい訓練や戦闘などを経験した者は、荒ぶる感情がそのまま性衝動にかわり、身近な者で発散する者も確かにいる。だが疲れているから、やったらそれで終わりが多い。
 嶺炎のように満足できなくて、何度もというのは少ないのだ。
 そう説明すれば、なるほどとユーリアは納得したようだった。
「嶺炎殿下が変わったご経験が少ないことも不思議に思いましたが、西と北ではその辺りも少々違うようですね」
 騎士という立場から娼館などに行くことは禁じられているために、どうしても仲間内で相手を探すことが多いのだと。しかも交代制で休憩時間が多いせいか、マンネリ防止にいろいろと試す傾向が強いということ。
「そなたは、ではいろいろとしたことがあるのか」
 手慣れた所作からそうではないかと思ったが。
「私も複数人で同時はないですが、きつめに刺激するのが好きな輩もおりましたからね。特にここが好きな者も」
 魔羅への刺激が一番だと思っている嶺炎は、受ける側の事情など詳しく考えたことぱない。まあ感覚的にここがイイのだろうなとは思うことはあったが。
 だが確かにシュリオは、ユーリアが指を動かすたびにくぐもった嬌声を上げ、全身を赤く染めて激しく身悶えている。そんなことを繰り返していれば、嬌声の間でも拒絶らしき声を上げていたシュリオの反応が次第に弱くなっていった。嬌声の間は呼吸音ばかりが響き、痙攣の後弛緩した身体は今や寝台の上で力なく横たわっている。
「おい、誰が休んでいいと言った」
「がっ!」
 渇いた音が室内に響き、うつろなの瞳が一気に戻った。騎士の強い力で叩かれた頬が見る間に赤く染まっていく。
「私から視線を逸らすな。それでおまえは一番に誰に犯されたいのか」
 冷たく言い放たれた命令にシュリオが、反射的に嶺炎の腕に縋るように蠢いた。
「いい子にしろ。いい子にしていたら、何もされない」
 嶺炎の手が髪を梳き赤くなった頬に触れた。しゃべらなければ、すっぽりと腕の中に収まるシュリオはかわいいものだ。ましてや助けを乞うように縋られたら、少しは情けというものが湧いてこようというもの。
「ユーリアに従え、問いに答えろ」
 耳たぶのすぐ近くで囁いた言葉に、シュリオは瞬いた。
「答えろ、おまえはここにいる三人の誰を選ぶ? 誰に処女を奪われたいか」
 処女……と言葉にならない呟きが、見えないところから聞こえたような気がした。
 嶺炎は視線を落として、選べと睨まれているシュリオを窺う。
 逃れられぬ中で誰を選ぶのか。
 だが怯えながらも、それでもシュリオはユーリオを睨み付けた。
「いあだっ!」
 逆らう気を失ったと思ったがまだ気力はあるようで、強い言葉と共に弱まっていた反抗的な態度が強くなる。
「嫌だ、だと……なるほど。まだ自分の立場がわかっていないようだな」
 再び張られた頬は、今度は反対側だ。口枷が唇を傷つけるほどの衝撃に、シュリオの頭が揺れる。
「言え」
「いあっ!」
 シュリオが拒絶するたびにユーリアの情け容赦のない平手が落ちる。右に左に、抑えていなければシュリオの細い身体は吹っ飛んでいただろうが、そこは嶺炎ががっしりと押さえつけていた。
 何度も叩かれて頬はますます腫れ、傷は広がり、口の端から血が流れ出している。噛み締められないのと枷のせいで頬の内側も傷付いていた。
 その攻防を嶺炎はじっと見ていた。
 優しく抱き込んでいるのは変わらずだ。叩かれて涙が流れば拭いてやり、暴れる身体を抱き締めて、あやしてやった。
 だからと言って、叩かれるのを止めることはしない。
 ユーリアはユーリアの役目があり、カストはカストでこんなときでも魔羅をしごき、鈴口を暴き、新しい粘液を追加している。
 だから嶺炎もまたシュリオを抱き締めいい子にしろと耳もとで言い含め続けた。
「シュリオ、ユーリアの言うことを聞け。でなければこれはいつまでも終わらないぞ」
 囁く言葉に、ユーリアがいやいやと小刻みに首を横に振った。それはさっきまでの拒絶では無い。
 涙を流し赤く染めた目で嶺炎に縋るような視線を送る。
「こっちを見ろっ!」
「がっ、あぁっ!」
 だがそれすらも許さないと、ユーリアの手が赤い乳首をひねり上げた。跳ねた頭が嶺炎の胸を叩くが腕は離さない。逃れることもできずに、与えられる痛みに感受するしかないシュリオが、泣きながら喚いた。
「えあう、えあうあらっ! (言う、言うからっ!)」
 かろうじて判別のついた言葉にユーリアの手はようやく止まり、かわってシュリオの顔を覗き込んだ。
「おまえにあるのは誰かを選ぶことだけだ。誰がいいか指で示せ、それぐらいはできるだろう」
 拘束はされていてもつながれているのは手首だ。そこから先は、変なふうに力が入っているのか歪に歪んではいるが、三人の誰かを指すのはできる。
「誰だ?」
 問いかけにシュリオは痺れる腕を動かして、指先を一方向に向けた。
 震える指が差す先を皆の視線が追う。といっても、向けられた一人は確認のために自分自身を指差しただけだ。
「俺か?」
「嶺炎殿下に違いないようで」
「そうとしか見えませんね」
 シュリオが指差したのは己の後ろにいた嶺炎だった。