【四つの王国と魔王の話】第一章〝北の国〟ー6(完)

【四つの王国と魔王の話】第一章〝北の国〟ー6(完)

一-六 第一夜 嶺炎

「俺なのか?」
 嶺炎の肩越しの問いに、涙で潤んだ瞳を伏せてシュリオが頷く。

 嶺炎は確かに自分が指名されたのだと確認してから、向かいにいる二人へと窺う視線を向けた。
 普段はどんな場面でも尻込みなどしないし、今も自身でやらないという選択肢は考えていなかった。だが自分が最初では壊してしまいそうだと、ここからは見えない狭そうな穴のことを考える。
 慣らすのが面倒だなと。
「私はかまいませんよ」
「選ばれたのは嶺炎殿下でもちろん問題はございません。もとよりシュリオ殿が選んだことですから、殿下、さあどうかこの者と最初に一夜を」
 特に問題などないとユーリアはあっさりと言い、カストは決めたことは守るべきだと言う。ユーリアはともかく、カストはまじめだ。そこまで言われたら嶺炎も頷くしかない。
 ならばと嶺炎はシュリオの身体から離れると、一度寝台から下りて足下へと移動した。
 そうしてみれば、先ほどまでにユーリアの指を銜えていた穴が真正面に見えて、ぬかるみ、赤みを帯びたそこがイヤらしく脈動しているのまで観察できた。
 だがやはりそこは小さい。
 三本もの指が入っていたとは思えないほどに、今はしっかりと口をつぐんでしまっていた。
「そうそう、せっかくの一夜目だし感想も聞きたいから、口枷は外しましょうか」
「それはいいですね、ああ、これも魔具っぽいかも」
 嶺炎がいた場所に移動したカストが、口元の円環に触れる。
「あうっ」
「ああ、やっぱり。これで話すことはできるでしょう」
 革ベルトはカストが触れただけで外れ、口から滑り落ちた枷は、ぼたりとシュリオの腹に落ちた。
「あ、あっ……」
 大きく開き続けたせいで、うまく閉じられないと喘いでいるが、これで喋れないということはない。
「さあ、破瓜してもらう相手が誰か、しっかりとその目で確認しろ」
 頭が引き起こされて、ユーリアとカスト二人で背が支えられたシュリオが、真正面となった嶺炎を見上げた。今や美しい金の髪は乱れ、打たれた頬は赤黒く変色している。
 濡れた胸元は噛み痕が目立ち、立てた膝から股間にかけてはじっとりと濡れていた。
 人の目になど触れたことのなさそうな他より淡い色合いの、戒められて歪な凹凸を作っているペニスはそれでも勃起はしていた。かろうじて持ち上がりかけているが、課せられた枷は完全な勃起は赦していなかった。
 しかも先端で粘液にまみれてきらりと光る棒はさらに太くなっていて、線であるはずの鈴口を丸く開いてしまっていた。隙間などなさそうなそれでも、じわりと粘液が滲み出ている。
 そんなシュリオの姿に、痛ましいという感情は嶺炎にも確かにあった。
 〝北の国〟の女は厳しい自然の中で生きるために身体が強く、したたかな面もある。娼婦として身体を売っても、その辺りは変わらない。そんな女ばかり見ていた嶺炎からすれば、シュリオは女たちより華奢で弱々しい。
 だが確かに男なのは、盛り上がりの少ない胸に小さな乳首、平たい腹、何より股間のペニスを見れば明らかだ。だが触れた足のムダ毛も少なく、股間を覆う陰毛も薄く、胸毛など存在もしない姿は、男よりは女に近くすら見えた。
 今や何一つ自由にならない身体で、怯えたように嶺炎を見ており、嶺炎もそんなシュリオをまじまじと見つめていた。
 実際問題このような状況下で勃起できるか、という不安はあった。だが目の前の姿を見ているうちに、じわりと下腹部の奥のほうで熱いものが生まれて育っていく。知らず喉が鳴り、自分が溢れそうになった唾液を飲み込んだことに気づいた。
 もとより陰花の媚薬に犯されている身体が、おとなしくしているわけがなかった。
 うまそうだ、と頭の片隅で考えていることに遅れて気づく。
「どうぞ、嶺炎殿下」
 ユーリアが右側、カストが左側からシュリオを支え、それぞれが伸ばした手で膝を開きながら足を身体のほうへと引き寄せた。
 穴の位置が高くなり、よりまざまざと見せつけられる。ひくひくと痙攣するかのように蠢くそれはまるで誘われているようだ、と考えたとたんに肌がざわざわと総毛立った。体内を走る甘酸っぱい疼きに、何度も唾を飲み込んで喉が動いた。
 いまだ崩していなかった儀礼服の下で、股間が痛みを訴える。
「ふふ、良かったな。おまえの破瓜をしてくれる魔羅はたいそう立派なもののようだ」
 三対の視線が嶺炎の股間へと集まっていた。
 シュリオの顔から音がしそうなほどの勢いで血の気が失せていく。
「さすが、〝北の国〟の民。ウマナミという言葉は騎馬と共にいた北の民のモノを見た者が、近くにいた馬のそれと見比べたほどだということから言われているとか」
 その逸話は嶺炎も知っているが、さすがに馬に叶う者はいない――と言われていたが。
「そうらしいな」
 返しつつも、張り詰めた股間のきつさに手早く前を緩めた。人前でさらすことに羞恥はなく、ただ苦しさからの解放を求めただけだ。締め付けていた下着を外し解放された瞬間、中から太いペニスが飛び出した。
「ひいっ!」
「おぉっ!」
「これは立派な……」
 悲鳴と感嘆のため息が重なる。
 嶺炎のそれは本人としては体格に合っていると思っていたが、〝北の国〟でも規格外だとさんざん言われていたものだ。
 その股間のモノを、シュリオどころかユーリアやカストまでもがまじまじと嶺炎の股間を見つめていた。ユーリアに至ってはその口元に苦笑が浮かんでいる。
「それは確かにウマナミですね、嶺炎殿下」
「……まあ、そうだろうな」
 いきり立ったそれは手で触れれば蒸れてしっとりと湿っていた。先端の丸みを掌で覆えば、すでに先走りで濡れている。
 どれだけ発情していたのかと自身でも呆れるが、そういえば媚薬の匂いがこちら側は背中側より強い。甘い花の蜜の香りは呼気からも影響があるというが、そのせいだろうか。
「服の上からでも大きそうだとは思いましたが、殿下の実物はそれ以上です。正直ここまで差があると、わたくしも男としての悔しさより諦めのほうが先に立ちます」
 そういって恥ずかしげにカストが股間の膨らみを見せてくる。そこは確かに平時よりは大きくなっているが確かに嶺炎ほどではない。
「〝北の国〟の民のモノは確かに噂以上、殿下は体格もすばらしいし、当然その魔羅が大きいことも想像はできていましたが」
 苦笑を浮かべていたユーリアが、シュリオに冷たい視線を贈る。
「さてと、おまえが選んだ魔羅で破瓜の儀式を行おうか」
 そんな言葉にシュリオが蒼白のままに逃れようと暴れ出した。
「い、嫌だ、あんな、あんなの聞いてないっ、ぎっ!」
 拘束された鎖は今はもう限界まで短くなっていて逃げることは叶わない。暴れれば暴れるほど首周りのロープが締め付けを強くしているのに、それすらもわかっていないのかシュリオは自ら首を絞めていた。
 だが股間を閉じることなどできず、身体を進めた嶺炎のペニスの先端は容易にシュリオの尻の狭間で口を閉じている穴へと触れた。
 先ほどまで指を受け入れていた穴はぬれそぼっており、すこし赤みが強いようだ。だがそれでも穴は慎ましやかに閉じていて、先端が入るのだろうかと思えるほどに小さい。
「このまま進めばいいのか、もう少しほぐしたほうが……」
 経験上、女のように濡らしたところは入りやすくなるとはいえ、さすがにきついのはこちらも御免こうむりたいと思うところ。
「奥まで媚薬を注いで広げております故に、遠慮無く突き上げていただければ」
 口角が上がり笑みを浮かべたユーリアがそう言うのならと嶺炎の腰が前へと進む。
 切っ先は滑りを借りてすぐにめり込んだ、が。
「ひ、ぎぃっ!」
 シュリオが背を仰け反らせ、硬直した四肢の先がシーツに強いシワを作った。広がる髪が振り乱され、渇いた音を立てる。
「狭いな」
 鬼頭まではなんとか潜り込んだが、それ以上は強い締め付けに顔を歪めた。
 シュリオの後孔はすでにシワがなくなるほどに大きな口を開けて嶺炎の魔羅を頬張っている。周縁部からぶちゅっと濡れた音を立てて泡立つ粘液が溢れてはいるが、ごくわずかだ。だがその滑りの力を借りてもかなりきついが、先に進まないとどうしようもない。
 嶺炎は、シュリオの腰を掴むと、力強く自分の腰を進めた。
「ぎぃぃ――っ、ぎゃっ!」
 嶺炎の魔羅は鬼頭も大きいが、一度細くなったエラの根元から先の魔羅の中間部もまた太い。柔らかな鬼頭と違い硬度もあり、血管が浮かぶ魔羅がごりごりと周縁部を擦りながら中へと割り開いていく。
「あ、がっ、ぐがあっ!」
 ひときわ高い悲鳴を上げたシュリオが、今や痙攣するままに喉から音でしかない悲鳴を上げていた。見開かれた瞳は天蓋を映し、硬直した四肢は押さえつけていなくても身じろぎ一つしない。
「ずいぶんと狭い」
 だがイイ。焼けるような熱さの中でぎゅうぎゅうに締め付けられ、ひどくきついくせに中の壁は激しく蠢き魔羅が扱かれているようだ。その感触は女のそれとはまた違い、全身の肌に疼くような快感が走った。
 額に浮かんだ汗がこめかみを伝って流れ、シュリオの腹に落ちる。無意識のうちに喉を鳴らし、乾いた唇を舌で舐めた。
「なるほど、切れてないな」
 屈強な身体とは違う、柔らかい。だが女のものとも違う。まるで吸い込まれるように中が蠢き、痛みすら覚えるきつさもまたそれがイイのだ。
「い、いあぁぁ、抜いて、おねが……抜ひぃてぇ」
 嶺炎の侵入が止まったことでシュリオがか細に声で訴えた。見上げ瞳は、縋るように嶺炎を見つめている。先ほどまでの口の悪さはかき消えて、幼子のようにおぼつかない言葉で繰り返す。
 だが上から見下ろす嶺炎にしてみれば、切なげなその表情は欲を誘うものだった。
 体内に埋め込んだ魔羅が振るえ、誘われるように残った魔羅がずるりと中へと消えていく。
「がっ、ああっ!」
 出ていた部分が少なくなるにつれ、シュリオの硬直は強くなり、開いた口は閉じることを忘れたように全開だ。
「なるほど、さすが夕月王がご用意された潤滑剤です。殿下の大きな魔羅がするすると入っていきますね」
「元よりがこれの身体が男に犯されるに適している淫乱な質であったということもではないか」
 カストが液体の入った瓶を振り、ユーリアがシュリオの乳首へと手を伸ばした。
「ほら、このように女の乳首ほどに硬くなって、この淫乱が」
「ぎぃぃぃぃっ!!」
 ユーリアの指先が乳首を摘まみ上げ、シュリオの口から悲鳴が迸った。ぎりぎりと引き延ばされ、胸の肉もろとも引き出される。そのせいか、ひどく締め付けられた魔羅からの刺激に嶺炎思わず顔をしかめたが、それでも勢いままに一気に腰を進めてずっぽりと奥まで押し込んだ。
「はがっ、あっ、お、くっ!!」
 先端が肉の壁のようなものを貫いた感触がした。
 無様な悲鳴を上げたシュリオが白目を剥いて仰け反り、硬直している。
「これほど立派な魔羅での破瓜とは願っても得られぬ僥倖だというのに、感謝の言葉も無いとはね」
「常ならば破瓜は痛みを伴うと聞いておりますが、このお方はどちらかと言えばずいぶんと悦んでおいでのようです」
「ああ確かにカスト殿の言われるとおり。これは奥の洞で感じる質ということか」
 カストが指し示すシュリオの魔羅は、枷に押さえつけられているにもかかわらず、白い粘液を先端から滲ませていた。平たい輪はその厚み分まで肉に食い込み、何度も何度も震えている。
 それを見てとってユーリアは侮蔑の表情を浮かべていた。