【公爵様の優雅な遊戯】3

【公爵様の優雅な遊戯】3

 夜会が終わり、私はあの侍従を介して皇王から呼び出され、彼の借金の件も含めて賭けの結果と、皇族の場所で不敬なまねをしていることへの謝罪などと、いろいろと話を詰めるのにかなりの時間を要することになった。
 全てが片付いて時計を確認すれば、あれから二時間ばかりがすぎていただろうか。
 ようやく自由になった私は、部屋にあったガウンをつかむと急ぎあの場所へと戻ったのだが。
「ひぐ、うっ……あ、ぁぁ……イキ、イキたぁ……、ああっ」
 甘ったるい甘え声が、虫の鳴き声や風がこずえを鳴らす音ぐらいしかない中に響いていた。時折ギシッと綱が軋む音もしている。
 彼は、私が括り付けた姿勢のままに腰をカクカクと揺らし、陰茎の先からたらたらと粘液を零していた。
 私の気配に、涙も乾いた彼の顔がゆるゆると上がり、唇が歓喜に震えている。覗いた舌が乾いた唇を舐め、前進しようとして引っ張られた綱がぎしりと音を立てた。
「こ、公爵様、あ、は、はや……く、外して……外して、ください、ませ」
 一歩でも近づこうと身体を押し出してくるが、綱はそれ以上伸びず、枝のしなりも限界だ。それでも顔を突き出し、舌を出して、少しでも私に近づこうとしている。
「は、外して、は、はぁっ……、はぁっ……、イキた……、熱くて、吐き出したくてっ……うう、ああっ」
 腰が別の生き物のように揺れていた。揺れた陰茎が乳嘴とつながる糸で支えられ、空中で踊り続けている。痛みはもう麻痺したのか、赤く充血した乳嘴が不自然に伸びても気にしていない。
 どうやら、また理性を飛ばすほどに発情している。
 これは一体どうしたことだろうかと首を傾げた。
 与えた薬も、さすがにこの時間なら抜けているだろうに、と、疑問に思ったのもつかの間、後ろの綱に何かが括り付けてあることに気が付いた。
 触れてみれば折り畳まれた紙のようだと外して中を読めば、なんとあの侍従からの伝言。
『皇王様より、公爵様がお戻りになるまで重罪人が死することのないようにと、先ほどいただいた精が付くお薬入りの水を飲ませております』
 なるほど、精根尽きているであろう彼にも施しをされるとは、さすが温情ある皇王の采配。
 一晩盛って萎えたオスが再び発情するほどの薬により、再び元気を取り戻し、このように元気に踊っているというわけか。
 おかげさまで糸が食い込んだ一対の乳嘴も、同様に糸で戒められた陰茎も、赤く充血するほどに張り詰め、広げたままの足はしっかりと大地を踏みしめている。これならば、自身の足で部屋まで戻れるだろう。
 私は、まず彼を戒めている後ろ手にしていた綱を解いた。
「あ、うう、ぐっ」
 途端に崩れた身体ががくっと膝を突き、そのまま前のめりに倒れていくのを手で支えれば、そのままずるずると肩から地面に落ちていった。
 顔が濡れた地面で汚れるのも気にせずに、ハアハアと荒い吐息を繰り返す。
 そんな彼をそのままに、今度は足の戒めを外そうとしたのだが。
「あ、あぁっ、いひっ、ひ、イイ、ヒッ、でる、出るっ」
 あろうことか地面に擦りつけて自慰を始めてしまった。
 私もさすがに呆気にとられ、しばしその様子を眺めてしまう。
 草があるとはいえ、それでも固い大地に陰茎を擦りつけるなど、普通なら考えられない。
「あうっ、ああっ……ひぃぃ、イイ、きもひ、いっ、あはっ、出そっ、びゅっへ、でうっ」
 目の前で形の良い尻が、へこへこと上下しながら前後する。
 足が固定されたまま、かつ両手が後ろ手のままのせいで、頬とこめかみを地面に押しつけ、淫らな自慰を続ける彼。
 そのうち、ひくんと硬直した直後、「ひゃぁぁぁっ」と間の抜けた声を上げながら、激しく痙攣した。
 見開いた目は焦点が合っておらず、緩んだ口角から舌が零れ落ちている。
「さてさて、これはまた地面相手に自慰をしたあげく射精とは、なかなか躾のしがいがあるようだ」
 おもしろい性癖だと感心はするが、こんなところで遊ぶには、まだまだその前にしたいことが多い。
 私は手早く彼の足の綱を解いて、手首を結わえたままだったものも外す。
「あひっ、ひやったっ、ああ、手が、ちゅかえ……、ああ、イイッ、すごっ、ああっ」
「ったく、自由を与えたら、さっそくこうか」
 今度は仰向けになり、腰を突き上げながら両手で陰茎を握り締め、激しい手つきで擦り上げる。
 仕方なく、放置されていた乗馬鞭を手に取った私は、彼の太腿へと振り下ろした。
 ビシッ!
 鋭い音が響き、遅れて彼の悲鳴が迸る。
 快楽に溺れていても、強い痛みは別物のようで、慌てたように転がって私から離れようとするが、それを許す私ではない。
 反転し、尻が高く上がったところでもう一発。
「ぎぃぁぁっ!」
 赤い線状の痕に交差して一発。
「ひ、ひぃっ、ああっ、やめっ、あっ」
 逃れるように反転し、ぱかっと拡がった内股と陰茎に一発ずつ。
「あ、あぁっ、痛っ、ひっ、こ、公爵、公爵様っ、やめっ、お、お許しをっ、もうっ」
 胸も、腕も、背も。
 ゴロゴロと転がる彼を、何度も打っていると、明らかに理性ある言葉が届き始めた。
 少し息が荒れてきたところで手を止めて、ほおっと鞭を下ろす。
 汗ばんだ額に下りた前髪を掻き上げるの同時に、見上げる彼と目が合った。
 そこにあるのは知性が感じられる瞳で、どうやら薬に溺れた状態からは脱したもようだ。
「本当に手がかかるやつだっ!」
 こんな場所で、しかも思いもかけぬ疲労を与えた彼に、苛立ち混じりに罵倒する。
「私は待て、とは言ったが、浅ましく狂えとは命じておらぬぞ」
「あ、ひっ、こ、これは……申し訳、ございませんっ」
「とにかく、部屋に戻る。はやく起きろ」
 ガウンを投げ捨て、顎で指示すれば、ふらつく身体がのろのろと動き、汚れた裸体を白いガウンが包み込む。
 顔は涙と鼻水、涎に泥が付き、裾からは粘液と泥でまみれた足が覗く。靴下ははいたままだが靴は辺りを見渡しても見えないからそのままだ。
「早く歩け、皆すでに自室で休んでいるとはいえ、誰が庭を見下ろしているか分からぬぞ」
「は、はいっ」
 痛みに顔を顰めるのは、先ほどの打擲の痕のせいか。
 もっとも、あの程度で音を上げてもらっては困る。力を込めたが、全力ではないのだ。
 一歩一歩前進するたびにふらりふらりと揺らぐ彼は、懸命には歩いているのだろう。
 だが、その横顔は赤く染まり、舌を出すように息を零している。時折身悶えるように腰を揺らめかせ、明らかに浅ましく喉を鳴らした。
 その歩みは焦れったいほどにのろく、つい手に持った鞭で手のひらを叩いて音を立てると、少しだけ早くなる。というか、なぜに私はこのようなモノをそのまま持ってきたのか。
 あの場所にあった乗馬鞭は、よく見れば取っ手から先まで美しい飾り模様のついた高級品。
 もしかすると皇王か皇太子の物ではないだろうか。
 勝手に使い持ち出してしまったことに気が付いて、また後で謝罪せねばと気が重い。
「しようがない、また詫びの品を準備して」
 その品選びは彼をさせようか。
 そうすれば今の重い気分も少し軽くなるような気がした。


「そ、そんな……、私が、犯罪奴隷にっ!」
 言葉と共に息を飲む彼は、水を使わせてようやく見えるものになった。冷たさにさすがに欲も落ち着いたのか、戻った直後よりは正気になっている。
 そんな彼に、私は皇王との話し合いで決まったことを伝えた。
 そう、彼は犯罪奴隷になることが決まったのだ。
 その言葉に、絶望の色を浮かべる彼は、全裸のまま、私の前に直立させている。その身体には、先ほどの鞭打ちの痕がくっきりと残り、なかなかおもしろい模様になっていた。
 陰茎はいまだ少し勃起し、時折身体の熱を吐き出すように深い息をする。深く盛り上がった乳嘴は色濃く、淫らさが増している。どう見ても、いまだ発情が残っている彼だったが、私の言葉にさすがに紅潮した顔も色を失おうというもの。
 だがそれよりも、私は皇王の沙汰をしっかりと伝えなければならない。
「そうだ、領地を失うほどの借金があることもそうだが、それを賭けで失ったことも問題ではある。だがそれは、私が持ちかけたということで、許していただのだが……」
 そう、そこまでは大丈夫だった。
 たとえ彼が私の意のままになるという結果になったとしても、それについての根回しは済んでいたのだから、問題視されるものではない。
「だが、皇王の夜会を抜けだし、あの地で欲に狂ったことは私でも庇いきれなかった」
「あ、あれは……」
 ぎりっと奥歯を噛み締める彼は、うすうす原因に気が付いているのではないだろうか。その視線が机の上に置かれたグラスへと向けられていた。
 だが。
「よりによってあの場所は、特別だったのだよ」
 遊ぶために作られた場所。美しく整えられた庭の影で、淫蕩な遊びにふける場所。
 使う理由は同じでも、彼も私も皇家の一員ではない。
 あそこでなければ良かったのに、わざわざあの場所に選ぶとはねえ、と、皇王も呆れられていたが。
 けれど罪には罰が必須。あの地を穢した彼に与えられた罰は犯罪奴隷。
 私がそれだけはと助けてやった刑罰を、彼は自身の間違いで科せられることとなったのだ。
「だが私の貢献により、特赦が与えられた」
 犯罪奴隷になることは変わらないが、主人は私になる。
 犯罪奴隷は、通常その主は皇家として契約が結ばれる。その契約書が失効するのは、奴隷が死したときだけだ。
 だが彼に限り、主の名は私であり、私が認める任意の期限での失効が許された。
 さらに奴隷なら頬に入れられる奴隷印もなじで良いとなったのだ。
「どうする? 気に入らないのならば、特赦を取り消してもらうこともできるが」
 めったに行われぬ特赦を、彼に使うのはもったいなかったか、と、思わずため息を吐けば、彼が慌てて感謝の言葉を言いだした。
「い、いえっ、いいえ、とんでもございません。皇王陛下と公爵様のご配慮に深く感謝いたします」
 犯罪奴隷が何をさせられるか知らぬとも、まだ私のほうがいいと判断したか。
 それに私の奴隷であれば有期であることも大きいだろう。
 私は彼の前に、取り寄せておいた正式な犯罪奴隷命令書を見せた。
「ここが私の名前になる」
 自身の名前を主人名のところに書き記す。
 拒否権のない彼の名前はすでに入っており、これを奴隷監督署に提出したその瞬間、彼は正式に犯罪奴隷として皇国の民としての地位を全て失う。いや、主の名前が入っただけで、これもう正式に執行されている。
 ちなみに期限の日付欄は、そこにペンを滑らせたふりをしただけだ。彼はきっと一年間だと思っているのだろうけれど。
 無印は無期限と、これを受け取った奴隷監督署はそう解釈するだろう、他の奴隷達と同じように。
「ありがとうございます。私は、公爵の奴隷として誠心誠意お仕えいたします」
 騎士が忠誠を誓うように、奴隷の誓いを口にする。
 そこに追い立てられるような必死さを感じることに思わず口角が上がってしまうのを、私は手のひらで覆って隠した。


 寝台の上で四つ足のように這う彼は、剥き出しの尻を小刻みに震わせ、その口元はきつく引き絞られていた。庭で打った鞭の痕はそろそろ変色を始め、滑らかな肌をさらに複雑な模様を作り上げている。
 だがやはりこの肌は鞭の痕が似合うようだ。
 傷を作るのはもったいないので手加減が必要だろうが、何その辺りは得意であるし、よく効く傷薬をたっぷりと用意しておけばいいだろう。
 私は、無意識のうちにはしたなく舌なめずりをしてしまい、慌てて自制する。
 どうやらようやく手に入れた彼を目の前にして、気が急いているらしい。私は気を落ち着かせ、これから私を楽しませるであろう場所へと手を伸ばした。
「ぐっ」
 乾いていた穴は指一本でも拒絶しようとする。人より太いとはいえ、それでも指一本。だが異物など受け入れたことのない尻穴は硬く、強い締め付けに、指も引きちぎられそうだ。だが奥まで入れてみれば、中はたいそう熱く脈動し、柔らかく締め付けてくる。ぐるりと回してみれば、招き入れるように震えていた。
 ふむ、これはすばらしい穴だ。
 私は一度引き抜くと、香油を手に取り、再度指を差し入れた。
 抜けた瞬間弛緩しかけた身体は、再度の侵入を阻まんとばかりに力が入ったが、油の滑りに奥まではたやすく受け入れる。
 はっと息を吐く音が艶めかしく響いた。
 目の前の尻が厭らしく蠢き、弧を描く背が強くのけ反る。固く閉じられたまぶたが震え、食い締められた唇は白い。
 だが何度か指を突き刺しするうちに、香油が馴染み、硬い穴はほころんできた。二本目はたやすく、三本目はすぐ。
 肌は赤く、上気し、あれだけ硬く引き絞られていた口元も緩み、赤い舌が覗いていた。
 さすが侍従推薦の香油だと、指の隙間から中へと注ぎ込めば、甘ったるい匂いが辺りに充満する。
 ハアハアと荒い呼吸音が大きくなり、彼の背は震え、腕は今にも力が抜けそうだ。
 腰の揺らめきが大きくなり、指への締め付けは緩くなっているどころか誘うように蠢く。私が指を抜けばジュポっと音を立て、誘うようにひくついた。
 もうこれでいいか、と濡れた指を拭いて、寝具に上がり彼の前へと進んだ。
「出せ」
 何をと言わないまでも、どうやら理解したらしい。一瞬顔を顰め、けれども諦めたように目を閉じた。
 嘆息のような吐息が零れた後に、彼が動く。
 震える手が私の下衣を緩め、ヒッと息を飲む音がした。彼が瞠目し、見つめていたのは私の股間の、そこから取り出された陰茎。驚愕は怯えに変化して、伸ばした手はそのままの形で止まっていた。
 ふるふると頭が横に振られる。
 いやだと、唇が動くのが分かった。
 私はそんな彼の様子に嘆息し、眉根を寄せて低い声で先を進めさせる。まだ先が長いというのに、こんなところでためらわれてはたまらない。
 それに、一体何を驚いているというのか、衣服から取り出された私の陰茎はまだだらりと垂れていて、勃起しきっていないのだ。
「早くしろ」
「はっ、は、ぃ……」
 彼の指が触れる。陰茎が勝手に震え、同時に心地良い刺激に腰に甘い疼きが走った。
「咥えろ」
 ごくりと彼の喉が震える。ためらいが強いのか、動きが悪い。
 本当にこれでは時間ばかりがかかる。
 私は、再度嘆息を吐くと、彼の頭をつかんだ。
「ぎっがあっ」
 逆らう頭を両手で引き寄せ、開いていた口の中へと私の陰茎をねじ込んだ。
「痛い……だが、いい」
 開ききっていない歯に擦れて痛みが走るが、その先で舌に迎えられて、一気に下腹の奥に熱が集まった。喉の奥を突けば口は勝手に開き、喉奥が激しく震える動くに、私の陰茎は瞬く間に完全に勃起する。
「ふむ、いいだろう。そのまましっかりと扱くように。もう歯を立てることは許さぬ」
「う゛、がぁっ」
 返事なのか、喉が音を立てていた。彼の決して小さくない口を埋め尽くす私のモノ。残念ながら全てを収めるには口は狭く、猛々しく茂る私の下生えすら届いていない。彼の手が、そんな根元に伸びて、滑った指がつかんだ。
「ふむ、手を使っても良いぞ。全体をしっかりと刺激しろ。これがおまえの中に入るのだからな」
 いきなり喉を突かれたせいか、蒼白な面持ちの彼が、顔を顰めて首を横に振ろうとした。だが、私の陰茎に串刺しされた頭が動くはずもなく、ぶざまな呻き声を上げだけだ。
 それを咎めるよりも、彼が何か言おうとするたびに喉奥が震える刺激に酔いしれる。
 本当ならもっとガツガツと貪り尽くしたいところだが、初めてということもあれば一応我慢をしてやるか。
 何しろ私の陰茎は並の――彼の陰茎の倍はある。女の腕程度には太く、長いのが特徴で、過去どんな娼婦も奴隷も受け入れるのはたいそう苦労する代物。その程度は理解しているので、最初ぐらいは控えてやってもいいのだが。
「ああ、もういい」
 彼の口角からだらだらと流れ落ちる涎が指により私のモノに伸ばされ、全体がたっぷりと濡れていた。青ざめた彼の身体では先ほど尻穴をほじくったときに勃起した陰茎も、どうやらすっかり萎えている。
 まあそれはいつものことだと、私はその肩を叩き、自身を口から抜き出した。
 自重によりずしりと垂れ下がったモノを手で支え、彼の向きを反転させる。ためらいを見せたが、その頬を平手で叩けば、諦めて尻が私のほうへと向けられた。
 先ほど見たむっちりとした筋肉質な尻、そこから伸びる大腿、細くくびれた足首の先で、形の良い足の指がシーツに食い込み、強いシワを作っている。そのいずれもが、小刻みに震えて、これから起こる出来事に期待しているよう。
 腰に指をかければ跳ね飛びそうな勢いで動くのを、力で押さえつけ、その背に私の身体を押しつける。上からのしかかり、青ざめたうなじに唇を近づけ、「力を抜け」と親切にも忠告をしてやる。
 一応私も自分の大きさぐらい自覚しているからだが、彼の身体ががくりと崩れ落ちた。とっさに彼の身体の横に手を突いて押しつぶすことはなかったが、シーツに顔を埋めた彼からすすり泣く声が聞こえる。
「いや、やめ、やめてくれ……」
 なんとも情けない懇願だが、それを聞いてやる道理もない。彼は私の奴隷であり、奴隷の懇願など聞く主はいない。
 だが、これは私を初めて相手にする輩の態度と同じであるのも確か。
 こうなったら、簡単には言うことを聞かないのもいつものことで、私は嘆息を零すと、身体を起こした。
 見下ろす先で、彼の身体は怯えて強張り、その背は震え、泣き言は終わらない。
 だがちょうど良いことに、折り曲げた足の上に乗った尻は上がったままで、やや低いが位置的には問題ない。
 こういうときは、問答無用が一番手っ取り早いのだ。

「ひぎぃぃぃぃ――――っ!!!」
 悲鳴は心地良く私の脳髄にまで響いた。背筋に駆け上がる快感がまたすばらしく、私の口から満足した声が零れる。
 残念ながら奥まで貫くにはまだ硬いが、それでも大半を埋めることができた私の陰茎は、処女地を開拓した喜びに震え、その妙なる締め付けに浸った。
 私の陰茎は、遠い地のいるという巨躯を誇る妖鬼のものと遜色ないのでは、と誰が言っただろうか。
 大きさも長さも立派だと褒め称えるものも多いが、問題は規格外過ぎてこれを加減なく使える相手がいないこと。
 指先まで痙攣させた彼は、白目を剥いているようだが、私の奴隷としての初仕事はどうやら成功したようだ。
 接合部は切れることなく薄く伸び、きついほどの締め付けを残して陰茎を咥え込んでおり、内部は激しく脈動して奥へと誘い、突き当たりではさらに奥へと誘うように私の先端を刺激している。
 私は伏した彼の身体を背後から抱え上げ、膝立ちにさせてそのうなじに口付けた。明日には奴隷監督署に赴いて、犯罪奴隷命令書を提出、ここに奴隷印を施す予定。
 奴隷印は各種あり、命令書の提出者が自由に選択できるのが喜ばしいところなのだが、うなじとなると誰かに見せるわけではないので、どちらかというと効果に期待して選んだ方がいいか。
 ならばと良い案が浮かび、腕の中でいまだ震えて、口角からだらだらと涎を流し、声もなく泣き続けている彼へと話しかける。
「おまえが泣いて喜ぶ印にしてやろう。期待して待っているがいい」
 皇家の秘術を味わえるまたとない機会だろうから。
「ぐ、……あっ、ひ、うご……かない……でぇ……あぐっ」
 甘くさえずり啼く彼の腹に手をやれば、彼の陰茎もまた喜びの涙を流しているようで、粘液が指に絡まった。
 腹の奥まで埋め尽くした私の陰茎が、彼の善いところを刺激しているのだろう。
 ならばと、私は再度彼の身体を寝具の上に押し倒し、その背にのしかかる。

「では、奴隷として初めての夜だ。その身が私のモノに馴染むまで、存分に楽しむとするか」
「ぐっ、がぁぁっ――ひぃぃ――っ!!」
 ぎりぎりまで名残惜しげに絡む肉から引きずり出し、誘われるままに一気に押し込んで、また引きずり出す。
 彼の体液にまみれた陰茎が灯りに煌めき、まるで彼の尾のようにすら見えた。
 絡みつく身体は何度も痙攣し、喉を晒してあげる悲鳴は、次第に嬌声となっていく。
 一度、二度、私は久しぶりの快感に、堪えることなく精を放出した。
「いあぁっ、もっ、くるっ、ああっ、ひゃう、おぎゅ、おぎゅがぁぁ、いあっ」
 暴れる身体も私の腕の中では赤子のようなもの。
 捕らえて善いところを抉ってやれば、彼の陰茎もだらだらと白濁した液を零し、何度も小刻みに痙攣しながら、嬌声を上げている。
 私の体力は申し分なく、皇王に差し上げた精力増進の薬も彼のために残している。
 夜はまだ長く、行為はまだ始まったばかり。
 記念すべき初夜を、心ゆくまで堪能しようと考えただけで、私は無意識のうちに舌なめずりしてしまい、そのはしたない所作を自覚して苦笑を浮かべた。