【妃の仕事】

【妃の仕事】

ファンタジー 閉じ込められて売りをしていた毎日、不意に現れた少年に異世界に連れて行かれて。

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 目の前の子が口を開く。
 小学生か中学生か。微妙な年の頃のその子は、俺の前に立っていた。それこそ、まるで宙から沸いて出たように、いつの間にか存在していた。
 というより、ここは倉庫に作り付けられた狭い一室で、ドアには厳重に鍵がかかっているはずで。
 俺は精通を迎える前から、こういうところで何人も立て続けに客を取らされ続けていた。
 俺をここに閉じ込めた奴らは、俺の戸籍はもう無いと言っていた。結構な値で売れたと、いびつな陰茎で俺を犯しながら笑っていた。
 100本目記念とか、10人切りレース完走記念とか初二輪差し記念とか、初フィスト記念、初獣姦記念に、1000人記念とか、部屋にべたべたと張られているのは、そんな文字が書かれていた俺の卑猥な写真ばかり。 
 俺はもうずっと、19になった今日までいつもどこかの部屋に閉じ込められて、ずっと身体を売ってきた。
 そのきっかけが何だったのか知らない。家族のだれかの借金とか、そんなことを言われた気はするけれど。
 それももう忘れた。
 今日も何人もの男になぶられて、起き上がる気力もなく手足を投げ出して。
 ぼんやりと、薄汚れた天井を見つめているばかりだったのだけと。
 不意に。
「こんにちは」
 たぶんそう言っているのだろう。そんな感じで口を開いた彼の犬歯はたいそう鋭く、牙のようだ。
「お迎えに上がりました、我が主の宝」
 いったいなんのことだろうか? というより、なんか今の声は頭の中で響いたような気がする。脳そのものがしびれたように余韻の残る声に、たまらず手を頭に当てた。
「な、んだ……これ?」
 まとわりつくような熱い空気の塊。見えないのに、確かに何かが手足に絡みついてて、うまく動けない。疲れ切って動けないのと違う。手は動く、けれど重い。それとも疲れて重いのではなくて、とにかく自分の身体を動かす力よりはるかに重い何かがまとわりついてて動けない。
 まるで水の中、それもものすごい深海で動いているような、そんな感じがする。
「主がお待ちしておりますよ。長い旅からいつお戻りになられるのかと」
 子どもの細く小さな手が伸びてくる。
「い、嫌だっ」
 何か、得体の知れない何かが近づいてくる。必死になって後ずさるのに、逃げられない。 短い指が俺の手首を掴む。
 冷たくて、熱い。
 俺の手首にも足りない指なのに、ふりほどけない。
 子どもが、欲しがっていたおもちゃを見つけたかのように無邪気に笑っている。
「ああ、なんて芳しい香りを。主がお喜びになられる」
 それこそが幸せなのだと、楽しげに笑いながら、俺を引っ張る。
「う、う、あぁ、あぁ──」
 闇色の、引きずり込まれていくのは穴だ。
 ただ男に身体を売るためだけの部屋に、ぽかりと空いた穴。そこにまず腕が入り込み、まとわりつく濃度が濃くなったような気がした。
 全身に悪寒が走るほどの恐怖にパニクって暴れようとしても、自分の肩が痛くなるばかりか、まるで迎えるかのように穴が迫ってきて。
「や、だぁっ!!!」
 もう長い間あげたことのなかった悲鳴で叫んだつもりだったのに、次の瞬間、すべての音も光も消え失せたどころか、身体を引き裂くかのような激痛に襲われて。
 その後、何が起こったのかまったく覚えていなかった。


「ぐ、あっ、あぁっ、痛っ、ぃぃっ、ひぎっ」
 目覚めたとき、俺はたくましい男に組み伏せられていた。
 メリメリと身体を引き裂くような激痛に、強制的に意識を覚醒させられたのだと気付く間もなくて。
 限界まで広げた股間に俺の倍はありそうな体格の男が腰を押しつけていたのだ。そのとたん、この痛みがなんであるか思い出した。
 初めてフィストを受け入れたときのように、限界以上に広げられたアナルが裂けた痛みだ。
「やっ、な、何っ、なんでっ」
 目の前が赤く染まる。溢れ出る涙で歪む視界の中で、精悍な顔立ちの男がニヤリと笑った。
「何、とはご挨拶だ、わが美しき妃よ」
「や、な、きさき、き、妃?」
「ああ、我が妃よ、10年もの長きに渡り我を置いて旅に出て、本当にいつ戻ってくるのかと一日千秋の思いで待っていたぞ」
「な、んぐっ、ああっ」
 いったいなんのことか問おうとしても、それよりも早く、激しく突き上げられて言葉を失う。信じられぬほど奥に、男の先端があった。腹を突き破られる恐怖すら感じるほどの奥で、男のそれが満たしていた。
「ふふ、うまそうに銜えておる。そんなにも飢えていたのなら、早く戻ってくれば良かったのに」
「い、ひっ、や──ぁ、がっ」
 ずるりとペニスが引きずり出される。抜け落ちるぎりぎりまで引き抜かれて。
「ぎゃぁんんんっ」
 串刺しにされたかのごとく太く熱い肉の棒が満たされる。
 カチカチと目の前で瞬く無数の星に何も見えなくなり、硬直した全身がガクガクと痙攣した。
 悲鳴に開ききった口角から溢れた唾液が流れ落ち、不自然に強ばった指が宙を掻いた。
「うまいだろう、おまえの大好きな我のマラは」
 高らかな笑い声、グジュグジュと信じられないほどに粘液が泡立つ音が、外から中から響いている。
 男が動くたびに俺の悲鳴はひっきりなしに響いていた。
 なのに男の動きは止まらない。
 視界の端で、寝具が真っ赤に染まっているのが見える。
男のたくましい身体から生えているとしか言い様がないほどに、グロテスクで長くて大きな異物。それが俺の中に消えて、また出てきて。
 今まで経験したことのないほどのその大きさでかき回されて、痛みは激しいのに、俺は気を失うこともできない。気が遠くなったらすぐに引き戻されるのだ、それほどまでの痛み。
 快感など一かけらもない行為に、泣きわめき、訳も判らず許しを請う。
「泣くほどうまいか、ほら、もっとやるぞ」
 なのに、男は俺の悲鳴すら甘美な嬌声であると喜んでいる。
 笑って、うれしそうに、俺を犯し続けている。
「も、やぁぁっ、ひぎぁぁっ」
 ドクンと一瞬痙攣した男が、また射精したのだと、腹の奥が熱く燃えたぎるような熱に知った。
 どくどくと注ぎ込まれる多量の精液。
 その尋常ならざる量は、隙間から溢れ出るそれに知らされた。
 こいつ、人間じゃない……。
 朦朧としていても気がついてしまう。
 人間の男ではあり得ない量を注がれて、俺の腹はもういっぱいだ。抽挿のたびに隙間から吹き出す泡だったそれが下腹から胸へと流れてくるほどに。
「ん、あっ……許し……て、も、あうっ」
 グジュグジュと音を立てる抽挿は、ほんの少しの休憩の後、また再開された。
「まだ満足しておらぬくせに」
 カッカッカッと高らかに声を上げて笑う男は、本気でそう思っているのか、一向に止まる気配はない。
 入ったままにぐるりと身体を回されて、俯せになると同時に、背中にのしかかられる。
 汗でしっとりと湿った身体は熱く、包み込まれるとその熱だけでぼおっとのぼせそうになった。
「おお、ようやく身体が我を思い出してきたか」
 不意に男がそんなことを言い出した。
「思い、だす……?」
 一体なんのことかと思うまもなく、不意にも言われぬ快感が全身を駆け巡った。
「あ、あ──っ、んふ、ふっ」
 全身がバラバラなるような衝撃。甘い疼きが幾重にも身体を襲い、重なって、2倍にも3倍にもなっていく。
 いい加減麻痺したアナルは、もう痛みは感じなくなっていた。その代わり、男の太いペニスが、ごりごりと前立腺を抉ってるのに気がついた。
「ひ、あっ、やぁんっ、ん、んあ───っ」
 さらりとした触感の寝具に押さえつけられ、鼻から漏れるのは甘い吐息だった。
 さっきまでの地獄のような痛みが泣くなったとたんに、今度は天に届くほどの快楽から地上に戻れない。
 何で、こんなことになっているのか。
 そんなことが一瞬脳裏に浮かんだけれど、思考も何もかが快感に押し流される。
「それこそが我が妃、この世でもっとも好色で淫猥ではあったが、旅はその淫乱さにさらに磨きをかけたようだな、素晴らしいことよ」
「やあーっ、んふっくぅ……ひあっ──っ」
 何かを話しかけられてはいた。けれどそれらに何一つ反論を返すことも、何かを聞き出すこともできないままに、ただ快楽の海におぼれ続ける。
 それが一体どのくらい続いたのかは判らない。
 不思議なほど俺の身体はいつまでも限界を迎えることはなく、男もまたいつまでも力つきることはなく。


「お妃さま、ご帰還おめでとうございます」
 最前列で頭を下げるものたちの中に、あの子どもがいた。その口の両端から鋭い牙を出し、背中にコウモリの羽がたたまれている。
 他にも大きな広間を埋め尽くすほどのいろんな種族のものたちがいた。
「異世界にて迷われていたお妃さまをこうしてお連れできたこと、王の強い願いのたまものと言えるでしょう」
 したり顔で頷きながら褒め称えるものは、美しい青年ではあったが、その瞳は赤く、黒いしっぽがその足下から覗いていた。
「奔放なお妃さまでございますゆえ、遊びに夢中になり、大事なご帰還のための宝珠を無くされたご様子」
 王に酒の入ったグラスを捧げる付き人は、頭に山羊の角をつけていた。
 そんな彼らを含めて、皆の視線はすべて俺に向かっていた。
 玉座に座った王の膝の上で、王に背を預けて座っている姿をさらした俺を。
 身じろぐことすらできぬほどに、深く王のもので貫かれて、足を両脇の肘掛けにかけさせられた、何も隠すことのできない俺を、無数の強く熱い視線が突き刺さる。
 たぶん昨日という日に男に犯されてから、男は俺を手放そうしなかった。
 時折抜くこともあるが、可能なときはずっと入っていると言ってもいいだろう。
 睡眠すら取る間もなく、延々と貫かれる俺の姿を、王はこの広間へと連れてきた。
 その間も、貫かれたままで、なんど浅ましい嬌声をあげたことだろう。
 できればもう気を失ってしまいたいほどの恥ずかしさなのに、男が射精するたびに、俺の身体は体力を取り戻しているようで、意識までもが鮮明になってくるのだ。
 そのせいで、男が言っている言葉も、皆が言ってる言葉も、そして自分がどんな姿を晒しているのかも、はっきりと理解していて。
「いやらしい姿をこうして晒すのがそんなにうれしいのか、あいかわらず恥知らずなメスよのお」
 明らかに欲を孕んだそんな視線に晒される俺を、王は喜んでいるのだ。
「あ、い、いやぁ……動、かな、……いでぇ」
 ほんの少し、王が酒を飲むために腕を動かしただけで、妙なる快感に襲われる。
 一体何が起きたのか、痛みを忘れた俺の身体は、何をされても快感を感じしまい、こんな衆目の場でもはしたなく喘ぐしかない。
 そんな俺だから、全開の股間の中央で、隆々と勃起しているペニスは、もうだらだらと先走りを零し続け、物欲しそうにパクついていた。
 それもそのはず、俺は王に犯され始めたあの日から、1回も射精ができていないのだ。
 そう、こんなにも射精衝動が強いのに、鈴口がパクつくだけで、一滴も精液は出てこない。陰嚢はぱんぱんに張り詰めて、重苦しさすら感じているというのに。
「ひ、ぐぅ、んんっ、や、止めっ、いやっ、腰、動かしたらっ、ひいっ」
 不意に男が俺の腰を掴んで、ぐりぐりと回転させ始めた。
 とたんに、目の前が白く何度も弾ける。ぐちゅぐちゅと、結合部から溢れた粘液が、音を立てて泡立ち、男の足を流れ落ちていった。
 その汚れを、床から鎌首を持ち上げた2枚舌のヘビが舐め取っていく。
 そのままにゅろりと這い上がってきたそれが、俺の足に絡みつき、股間へと首を伸ばして。
「いひぃ、あひぃぃ、いっ」
 不意に、ペニスに鋭い痛みが走った。
 ぽろりと流れた涙を、顎をとらえた男が舌を伸ばして舐め取っていく。その舌も長く、先端が二つに割れていた。
「わが妃は、涙も甘美な味をしておる」
 満足げに頷く男よりも、俺は自分のペニスに絡まるヘビを恐怖の面持ちで見つめていた。
 鋭い牙が、うまそうに何かを飲んでいる。
 ごくりと何度も動くヘビの喉。
「な、何を……、なんか、なんか飲まれてっ、ひっ」
「ん、ああ」
 怯えた俺が男に縋ると、王は愛おしげに俺の頬を撫で、笑った。
「そなたの勃起したペニスの血は、あれの大好物よ。その代償に、牙からもらえる媚薬がお気に入り故、そなたはあれを飼っていたのだろうが」
「……え……、ひあっ」
 男の言葉を脳が理解するようり先に、身体が一気に燃え上がった。
 息苦しいほどの熱に、狂おしいほどの飢餓感が襲う。
「おうおう、そのように締め付けずとも、この謁見が終わった後に、ゆっくりとまぐおうてやるというのに」
「だ、だ、あ、やだぁ、あひっ、ほしっ、奥に、もっと、あひっぃ、熱い」
 奥がむず痒くて仕方がない。
 激しい貫いてほしくて、むちゃくちゃに掻き回して欲しくて、たまらない。
「ひ、ふうっ、うっ」
 まして、噛まれたペニスは、先より激しい射精衝動に、震えっぱなしだった。そのせいで、よけいに感じてしまうのに、達けない。ぐんぐんと何度も腰を突き出しても、それはいたずらに男のものょ中を擦り立てるだけで、やはり射精には結びつかなくて。
「淫乱にもほどがあるな。少しおとなしくしなさい。でないと、そなたの大好きな我のマラを抜くぞ」
 耳朶で囁かれたそれに、なぜか恐ろしさが沸き起こった。
 そんなことをされたら死んでしまうという恐怖。
 生存本能からの恐怖に俺は逆らえずに、身体の動きを止めてしまった。
「それで良い。そなたのような淫乱なメスは好きだが、あまりにはしたないとお仕置きをせねばならぬからな」
 それがどんな仕置きなのか、自身の記憶にはまったくないのに、なのにものすごい悪寒が背筋を走り抜けて、俺はとっさにコクコクと頷いてた。恐怖は激しく、涙さえ流れ落ち、唇は震えて、言葉も出ない。
 それは先ほどまでの狂おしいほどの熱すらもどこかへ飛んでいってしまったようで。
「ふふふ、さすが我が妃よ。我の言葉に盲目的に従うそなたの賢さも好きだぞ」
 ぐいっと後ろを振り向かされて、唇を奪われる。
 長い舌が喉の奥まで入り込み、嘔吐く俺を無視して、隙間無く蹂躙していく。
 とたんにまた身体の熱が戻ってきた。
 さっきまでの恐怖は消えて、また腰が勝手に動き出す。
 膨れ上がった陰嚢が、タプタプと揺れ、狂おしい射精衝動に、俺は新たな涙を流しながら訴えていた。
「も、達きた……、しゃせえ……した……んあっ、あっん、あぁ」
 ゴリゴリと前立腺を抉られて、何度も頭の中が白く爆ぜるほどの絶頂に呻きながら、後一押しが足りないと願いを紡ぐ。
「どうした、可愛いお強請りして」
「お、お願い……、もう、達きた……出したい、……んあっ、あっ」
「ん、ああ、射精? おや、もう忘れたのかい」
 不意に男が愉快そうに笑った。その口元に浮かぶ蔑みの笑みが深くなる。
「おまえはメスだから、メスのように乳首を刺激されると達くんだよ。ほら、触ってごらん」
 その言葉の意味を深く考えるより先に、俺の手は乳首に触れていて。
「ひぃぃ──っ!!」
 すさまじい快感だった。
 股間と乳首の神経が直通でもしているかのように、触れたとたんに電撃のごとく快感が走り抜けたのだ。
「あ、出るぅ、あひぃぃっ、いっ、いっ、イイっ……あ、あぁぁ」
 栓が吹き飛んだかのごとく勢いよく吹き出る精液の刺激にすら感じてしまう。
 溜まりに溜まった精液は、何度も噴き出し、ぼたぼたと大きなす滴をで床を汚していた。
 まさか、こんなに簡単に達けるなんて……。
 衝動に茫然自失で、ぐたりと王の背に身体を預けた俺に、王は朗らかに笑いながら、俺を抱きしめた。
「旅に出る前は、射精などせぬと我に強請るようなことはしなかったくせに、どういう風の吹き回しなのか」
「え……俺……射精、したくない……って?」
「5万回射精をすると乳首がペニスになる呪いが、おまえにはかかっている。あまりに淫乱すぎて臣下のものと乱交をしていた妃を罰するために、我が課した呪いはまだ生きておるぞ」
 楽しげに笑う王を俺は呆然と見上げた。
「まあ、そういう身体も面白いし、気に入ると思ったのだがな。妃の敏感な乳首がペニスになれば、その快感も3倍以上なるだろう。素晴らしいだろうな、3カ所まとめて口淫されるのは」
 その言葉に、まざまざとそんな恐ろしい姿を想像してしまって。
「ひ、い、いや……だ……、そんな……」
「ふむ、旅の間にずいぶんと射精しまくっていたらしいな。もう残り1000回もない。ふむ、いや、もっと、ああ、残り486回だな」
「え……」
 それは、俺が部屋に閉じ込められて男達相手にしていた場合もカウントされていたということで。
「まあ、我慢すれば良いだけよ。さて妃の帰還の報告は済んだ。また睦まじくまぐわおぞ」
「え、ま、待ってっ」
 不意に動かれて、前立腺がごりっと音を立てるほどに抉られた。
 その衝撃に、天を仰いで硬直する。
「バチル」
「はい」
「帰還祝いに、これの乳首を飾る飾りを贈る。妃は射精をしたいそうだからな、自分で触らなくても射精できる良い品を探せ」
「かしこました」
 あまりの快感に震えたまま惚けている俺の横で、会話が続いているけれど、頭が理解しない。しかもさっきあれだけ達ったのに、まだぞろ激しい射精衝動が迫ってきて。
 さっきみたいに乳首に触れば、あっさりと達けるだろう。
 覚えてしまった極上の快感に俺の指が震えながら乳首へと伸びていく。こんなことを繰り返していたら、この乳首が卑猥なペニスへと変形してしまうと言われていたのに。
 けれど、手が止まらない。
 どうせあの世界も今の世界もやることが一緒なら、どこでも一緒なら、皆に傅かれているこの世界の方が良いかもしれない。
 ふと浮かんだ考えを、俺は一瞬馬鹿な考えだと否定しようとしたけれど。
「あ、ひ、ぃ、ィィ──っ」
 精液をまき散らすその極上の快感に、そんな考えはあっという間に消え失せて。
「ああ、少し我慢せよ。部屋に戻ったら、この卑猥な乳首に針を突き刺して天井から糸で吊してやるゆえに。我が下から突き上げるたびに、極上の快感を味わえるだろうよ」
 王の言葉に、うっとりと微笑んだのだった。


 自室へと戻る王の後に、たらりたらりと白濁した液が流れ続け、二人が通った目印のように残っていた。
 それを、集まった臣下達がこぞって舐めとろうと争う。王の精液は、臣下にとって力を強める極上の薬なのだ。
 その精液を10年間もありつけなかった彼らは、妃の帰還を心より喜んでいた。
 この国では、王が唯一その欲を介抱できる相手はただ一人しかいない。
 この世に産まれてきたときから、王の妃となるべき運命の子。胎内にいるときに見いだされ、長寿の妙薬を与えられながら淫魔の乳で育てられた子は、王に捧げられた100年間を妃として過ごしたのだが、ある日その運命を嫌いこの世界から逃げ出してしまったのだ。
 それでも王の寵愛が消えることはなかった。
 王は妃の戯れを許し、探しにも行かなかった。それは、そのうち戻ってくると判っていたからだろうけれど。
 だが、バチルたち臣下たちは、妃の一刻も早い帰還を望んでいた。
 何しろ、王の精液は臣下にとっての大事な薬。
 あの妃でなければ、王は精液を注がないし、無駄に吐き出したものでは薬になることもない。妃の体内に入ったものだけが、臣下のための薬になるのだから。
 臣下がこぞって妃捜しに走り、ようやく側近の一人のバチルが見つけたときには、国中がお祭り騒ぎになったほどだ。
 バチルは、部屋に戻っていく王へ深々と礼をしていたが、その口元は歪み、いずれもらえる薬の味を思い出して、溢れる涎を何度も飲み込んだ。
 王の精液を蓄えた妃は、翌日この広間に吊されるのが決まり。
 その王に愛された艶やかな肢体を晒し、アナルを天井に向けて固定して、訪れる臣下にその穴から直接薬を啜らせるのだ。
 今は特に皆飢えているから、無数の臣下が訪れるだろう。
 彼らは長い舌を伸ばして、薬の壺となった妃の穴をほじくり、溢れるほどの精液をいただく。それはただの一滴でも、臣下に素晴らしい力を与えるのだ。
 それもまた大切な妃の役目。
 麗しいお妃さまの喘ぎ声を聞きながらいただく臣下への褒美は、王への忠誠心を高めるためにも、決して休むことはなく。
 そして臣下も、大切な薬を抱く妃の身体を大切に扱う。
 長い舌を陰茎に絡めて鈴口の奥深くまでほじり、熟した果実のようになるほどに乳首を吸い続け、敏感な肌を鱗の肌で丁寧に愛撫する。
 王が取り付けたペニスと陰嚢の飾りはきつく締め付けて固定して、なかなか射精はできないようだけど、妃は涙を流して臣下の奉仕に喜びの雄叫びを上げ綴れて。
 国のため、王のため、自ら身体を投げ出してその任を果たす妃に、王は褒美だと、またたいそう可愛がるだろう。
 それこそがこの国が栄えるための仕組み。
 はるか昔、悪魔の国に訪れた勇者を気に入り、ねじ伏せて娶った王が決めた仕組みは、勇者の血に連なるものを妃に迎えること。そうすれば、この国はいつまでも栄えるだろうという言い伝えは、今まで一度も外れたことはなく連綿と受け継がれていた。

【了】