【幸いな贈り物】 後編

【幸いな贈り物】 後編

「ずいぶんと熱心に職人と打ち合わせておいでと思ったら……。まあ、確かにどらちも王子にはたいそうお似合いですし、お二人のセンスには、常々叶わないと思っていましたけれど」
「こういう繊細な飾りを父上はお好きですよね。う〜ん、こういうのは考えつかなかったです」
 肩を竦めて国王達の贈り物を呆れたように賞賛したのは第一皇子と第三皇子達でした。                                                 
「でもね、私たちのも負けていませんよ」
 二人が顔を見合わせて頷くと、それぞれに箱を差し出しました。
 どちらのものも細長い長方形の箱ですが、第三皇子の方が一回りは大きい物です。
「私たちのはこちらを飾る物ですよ」
「えっ? あん、ああぁんん」
 第一皇子の長い指が、つつっと王子の股間を撫で上げて、それだけで熱く滾っていた陰茎が震えました。
 同時に、堪らない疼きが背筋を駆け上がり、目の前が何度も白く瞬きました。
 もうすでに力が入らない身体を第二皇子に支えられたまま、下肢を纏う衣装が外されていきます。
 決して刺激を与えないように、と、ゆったりとした衣装は、その分外しやすいようになっていて、あっという間に王子の身体を隠す物は無くなりました。
 その剥き出しの股間には形の良い陰茎がぷるぷると小刻みに震えながら、先端から幾筋も涎が垂れ落ちています。
 その様子に、国王の指の力が強くなりました。
「乳首に取り付けただけでこんなにも悦んで貰えるとは嬉しい限りだね」
「ひっ、やぁ、ああっ……いやぁ……そんな、キツィ、あ、いやぁ」
 乳頭を潰すようにぐりぐりと強く押されて、王子は堪らずに首を振りたくって身悶えます。
 けれど、イヤイヤと拒絶しながらも、その腰は揺れ、胸はもっととばかりに前へ突き出されました。
「でも、私たちのももっと善いと思うけどね、ほら、こっちを見てご覧」
 第一皇子が王子の泣き濡れた瞳を、下へと誘います。
「私の贈り物はね、ここをいつも可愛がってあげられる物なんだよ」
 にこりと、優しく微笑む第一皇子は、すでに箱からそれを取り出しています。
 それは、金色に輝く極細の棒でした。直線ではなく、僅かに波打ったようになっていますし、容易にたわむほどに柔らかで、その表面は螺旋を描くような模様が刻まれていました。
「あ、……何、ですか?」
 得体の知れぬものですが、彼らが王子に害なすことは無いと、王子はただ無邪気に用途を知りたがりました。
「これはね、こうやって」
 たらりと金色の上に流れる粘度の高い透明な液が、全体に纏わり流れ落ちます。
「ここにね」
 第一皇子の手が、王子の陰茎をそっと支えました。
「きっと気に入って貰えると思うよ」
 手元を見ていた第一皇子が、一瞬王子に視線を向けてにこりと微笑んだのと、第二皇子やその他の人たちが王子の身体を強く押さえたのとが同時でした。
 そして。
「あ、ぁぁぁぁぁ──っ!!」
 ビクビクッと激しく王子の身体が震えましたが、そこは決して第一皇子の手から外れることはありませんでした。
 ただ、その熱い肉の先端から、その金の棒がずぶずぶと潜り込んでいくのを止めることはできません。
 たっぷりとした粘液のせいで、その動きを妨げるものはありません。
 表面に彫られた飾りが肉を割り開き、押し広げていきます。
「ひ、あっ、ふかっ……ああ、そんな……やめっ、やめてぇ、やぁ、怖いっ、怖いっ」
 ヒイヒイとわめき、新たな涙を零す王子に、けれど第一皇子はうっとりとその顔を見ながら囁きかけました。
「大丈夫、傷つける長さでは無いしね。それに怖いことはないよ、気持ち良い、だろう? 肉を拡げていく感覚は? 中を擦られていくのもイイだろう? それにほら、王子だってぜんぜん萎えていないしね」
 そう言って、もうすっかり棒を飲み込んだ手の中の陰茎を撫で上げます。
「やっ、あっ、触らないでっ、あっあん……」
 とぶりと噴き出す粘液が、第一皇子の指先で糸を引いていました。
 言葉の通り、勃起しきった陰茎は、まだまだ快感に震えています。
 そうやって震えていると、ずるりと内圧に押し出されるように鈴口から金の棒が見え隠れてしてきて、さらには先端から顔を出しっ放しになりました。
「出てきてしまうようだが?」
 王弟がからかうように第一皇子を見返しますが、彼は平然と微笑み返しました。
「もちろん、簡単に出てこないようにしますよ、これでね」
 そう言って手のひらの上に転がしたのは、僅かに捻れた金環状の飾りでした。表面に繊細な模様が刻まれたそれは捻れているためにそれぞれの端部はぴったりと合ってはいません。
 それを見た王弟が、なるほどと頷きます。
「ならば、さっさと固定しよう」
 にこりと促す国王の言葉に、第一皇子はその金環を手に取り、王子の陰茎へとその先端を向けました。
 その金環は少し柔らかな素材なのでしょう。第一皇子の指の間がその隙間を拡げていきます。
「あ、いやっ、やめっ!」
 その先端が目指す場所に、さすがに王子も気が付きました。
 信頼すべき第一皇子ではありますが、さすがに恐怖が先に立ち、皇子はがむしゃらに暴れ出しましたけれど、力強い王族方の拘束は外れません。
「大丈夫、痛いのは一瞬だよ。乳首の時もそうだったでしょう?」
 安心させるための微笑みは、けれど、慰めにはなりません。
 ガチガチと歯を鳴らしながら、けれど、その視線は己の陰茎に向けられたその先端から話せません。
「だ、……て……痛い……」
 まだ何らの痛みも感じてはいませんが、そこから鋭い痛みが走ってくる感覚に恐ればかりが沸き立ちます。
「大丈夫だ、忘れさせてやろう」
 不意に、耳元で囁かれた言葉と吐息に、意識が後ろにいる第二皇子へと向きました。
「皇子……」
「兄上、私の贈り物を先に渡しましょう」
 宥めるような口づけが落とされて、その身体が少し離れます。
「あ……」
 間に入った冷気にぶるりと震え、焦がれるように身体が勝手に第二皇子の後を追います。
 けれど、すぐに皇子はその身体を戻して、王子をきつく後ろから抱きかかえて、その顔の前に布包みを差し出しました。
「これが私からの贈り物だ」
 肩口や背中に口づけながら囁かれて、妙なる快感に震えながらも受け取ります。
「あ、ありがと……ごさいます……」
 ずしりと重い、手に余る大きさのそれは、硬く感じます。
「開けてみろ」
「は、い……」
 促されるままに包んでいた布を外してみれば、磨かれ艶やかさを出している固いゴム細工でありました、が。
「あ……」
 思わず落としそうになり、慌てて掻き抱くように支えます。
 それは確かに指に余るほどに大きさで、しかもたいそう長い代物ではありましたが、その先端は一度括れ、おおきくエラを張り出して柔らかく丸みを帯びた記憶にあるものの形をしていました。
 手の平感じる感触は、波打ちボコボコとしていて、王子はまたその感触も良く知っていました。
 もとより、ほんのちょっとそれを見ただけでも、その形が誰のものか判りました。
「お、皇子……」
 ちょうど目の前にある裂け目すら忠実に再現されたそれから目が離せないままに、赤く染めた顔を俯かせます。
「昨夜のように留守をしていても、そなたが寂しくないようにな。いつでもそれで身体を慰めておれば良いぞ。我々が全員相手できない時間も、時にはあろう」
 優しい口づけが幾つも落とされ、王子はその優しさにじわりと涙を浮かべました。
「ありがとうございます」
 ほんとうにいつでも第二皇子は、王子のことを考えて下さります。
 そんなふうに感慨に耽っていると、先ほどの恐怖は薄れていました。
「それにしても、それはいささか大きすぎるのでは無いか?」
「まさか」
 呆れたように呟く第一皇子の言葉を咎め、第二皇子は自慢げに口の端を歪めました。
「細工士に太さは違わず造るように申しつけ、時間をかけて採寸と絵をかかせたゆえ。長さは持ちやすいようにと幾分長めにはしているが」
「王子、まこと、そうなのか?」
 いきなり声をかけれられて、王子はぎゅっとそれを握りしめて、こくこくと頷きました。
 その手のひらに馴染む感触は、確かに第二皇子のものと遜色有りません。
 ただ、皇子の物より硬くはありますが、それはさすがに口には出せませんでした。
「何より、このサイズが一番馴染みがあるはずだ、ここにはな」
「ひぃ!」
 王子の身体が不意に前倒しになりました。顔が敷布に付いた拍子に、腰が高く上がりました。
 その月夜に照らされて褐色の肌がさめざめと輝き、その狭間に潜む肉の洞窟の入り口を露わにします。
「ほれ、すでにこんなにも欲しがっておるぞ」
 確かにそこは、空気に晒されてひくつき、とろりとした粘液に包まれています。
 倒れた拍子に身体の横に落ちた張り型を第二皇子が取り上げて、躊躇うことなくその入り口へと差し込んだのはすぐでした。
「んあぁ! ああっ、ぁぁ──!!」
 ズプズプと濡れた音がします。
 広がりきった入り口はシワが無くなるほどに伸びきっていますが、まだ余裕があるかのように柔らかく硬い張り型を飲み込んでいました。
 びくん、と王子の身体が大きく震え、彼の喉が息を詰めます。
 腰が痙攣するかのように大きく波打ち、背中がたわみ、見開いた瞳から歓喜の涙がこぼれ落ちました。
 地面に敷かれた布に、ぽとりと金の棒が落ち、白濁が幾つも飛び散っています。
「ほれみよ、馴染んだ形故に、この身体はたいそう悦んでいるようだ」
 王子の手首ほどもある張り型の大半を飲み込んで、突き出た部分はまるで生き物のようにゆっくりと蠢いています。
 それを軽く爪弾くと、王子が美しい声で淫らな鳴き声を上げました。
 王子はすでに放心状態です。
 確かに第二皇子のものと形も大きさも同じです。けれど、硬いそれは、王子がもたらすもの以上に、王子の身体を責め苛んでいました。
 動きもしないのに、否──動かないが故に、突き上げられたままに絶頂が止まらないのです。
 その張り型はたいそう巧みな造形をしており、ちょうど良い位置に納まるように、括約筋で絞られるところがくぼんでいるのです。
 そうやって固定された張り型は少々息んだところで動きません。
 浅い位置にある快感の泉の場所も、ちょうどその位置を刺激するように飛び出しているようです。
「ひ、いっ、……あっ……あ……ひぃっ!」
 快感に打ち震え、尻を高く掲げたままに動けない王子の身体を、第二皇子は引き上げて元のようにあぐらの上に座らせました。
 その拍子に、ぐいっと奥を抉られて、王子は涙を流しながら痙攣を繰り返します。
 その身体に、第一皇子が抜け落ちた金の棒と金環を持って近づいても、もう身動ぎ一つできません。その視界はすでに白く濁り、薄く開いた唇の間からはただ喘ぐような熱い吐息が零れるばかりです。
「良い子だよ、王子」
 第一皇子は、そんな王子に優しく微笑みかけて、まず彼の陰茎へ金の棒を刺し込みました。
 そして。
「ひぎっ、ぃぃぃぃぃぃっ!!」
 ずぷりと鈴口の中から下へと突き刺さった金環の端は、亀頭の下へと貫通し、また鈴口へと戻ってきます。そこで反対側と擦れ合わせ、臍の留め具を潰したのと同じような工具で強い力をかけると、その端部はまるでもともと一つのものであったかのように繋がってしまいました。
 さすがに誤魔化しきれなかった痛みに、失神寸前の王子でしたが。
「これで、簡単には取れないよ」
 くすくすと楽しそうに笑う第一皇子は、身体を起こすと王子の眦から溢れた涙を舐め取り、その唇に吸い付きました。
「ん、ん……」
 舌を吸い出され、唾液が顎を伝います。
 そのうちに蒼白だった頬に赤みがさし、力を失っていた陰茎がむくりと跳ね上がりました。
 その頃には、流れた血も止まり、傷口は癒え、まるで最初からそこにあたったかのように鈴口から覗く金環が存在していました。
 それを確認した第一皇子は楽しそうに王子に囁きます。
「もう中の棒も抜けないよ。これからはね、ちょっとここを曲げても、ぶらぶらと揺らしても、中の棒が刺激してくれて、もっと気持ち良いから自慰も楽しめるよ」
「……もっと……楽しい?」
「そう楽しいよ、それに、今度からは排尿するときもぐるぐると中で動くから良い刺激になって……あなたは、排尿でも悶えるほどに感じるからね。これからはあの感覚がもっと強くなって。うん、触らなくても気持ちいいんだ、素晴らしいだろう?」
 そう言われると、ほんとうに素晴らしいことのようです。
 触らなくても気持ち良いなら、手は他のところを刺激できるのです。
 そうすれば、きっと満足できやすくなるでしょう。
 何より、自分で満足できるのであれば、皆様の手を煩わせることも少なくなるかもしれません。
「ああ、ありがとうございます……嬉しいです……」
 ほんとうに、なんとお礼を言えば良いのか。
 第二皇子にあの地獄のような日々から助けられた上に、こうやってこの厄介な身体のために、こんなにも尽力してくださるのです。
 陶然としながらも、感謝の念に堪えなかった王子ですが。
「それから、私のはこれね」
 第一皇子に視線を向けていたせいで、いつの間にか第三皇子が王子の股間に跪いていたのです。
 慌てて視線をむければ、第三皇子がにやりと笑いました。
 第一皇子と同じく、ちょっと悪戯が好きな第三皇子は、驚かせたことが嬉しいようで、楽しげに手を動かしました。
 そのたびに、甘い疼きが陰茎から全身へと広がりますが、ちょうど皇子の身体の影になって何をしているか判りません。
「ほらできた。最初ちょっと萎えてたから、楽だったな」
 そう言って身体が離れると、何をしていたのかようやく王子の目に入りました。
 それは、陰茎を幾重にも覆う小さな蛇を模した飾りだったのです。二つの陰嚢を割り開きながらそれを下へと引き延ばして固定しており、その間に食い込むように上へと上がってきています。さらに、陰茎の根元から亀頭近くまで捻れながらも絡みつき、最終的には第一皇子の金環を蛇の頭が銜えて止まっていました。それは、逆立ったウロコの細工が見事なほどの蛇でした。
 しかも、陰茎を曲げる方向には動くのですが、太さはあまり広がらないようで、付けられる快感に勃起しきった今はキツイ程です。
 けれど、そのきつさがまた心地よいうえに。
「こうやってね」
 第三皇子が皇子の手をとり、その蛇細工ごと陰茎を包ませて上下に揺すったとたん。
「んあっぁ、あぁぁ」
 鱗が陰茎を刺激し、胴体部が締め付け、何とも言えぬ刺激と圧迫感に堪らずに身悶えました。
 しかも、陰茎を動かせば、中にある棒がざわりと蠢き、別の快感を生み出します。
「や、な、に、これ……、あ、やあ……、すご……」
 一度動かし始めると、手が止まりません。
 すでに第三皇子の手は離れていますが、王子は自らの意志で陰茎を扱き続けます。
 それに感じれば感じるほどに身体に力が入り、尻穴の第二皇子の張り型を締め付けて、快感に堪らずに身悶えれば、臍と乳首をひっぱる鎖が互いを引き延ばします。
「やあ、…とまん……なっ、あ、すごっおぉ、ああぁ、やぁぁ」
 ならば、と、手を止めても、勃起しきった陰茎に食い込む刺激は止められなくて、腰は別の生き物のように動いて、快感を貪り、浅ましくまた手を動かしてまうのです。
 ひいひいと悩ましく嬌声を上げながら、淫らな自慰を繰り返す王子に、王族方は満足そうに視線を交わしました。
 彼らは、みな、この淫らな王子が大好きなのです。
「今宵の宴はまだ長い。さあ、飲んで食べて祝おうではないか」
 国王の意味ありげな言葉に、第二皇子が布の上で一人身悶える王子を引っ張り起こしました。
「さあ、また衣装を整えましょう」
 召使いのごとくかいがいしく、王子に元の衣装を着せるのは第三皇子です。
「力が入らないようですね、ではこちらの椅子を」
 そう言って、王弟が引き出してきた座椅子のような椅子に、第二皇子が王子を座らせ。
「ひぐぅっ、ふかぁぁっ!」
「おっと、危ない」
 張り型の出ていた部分に体重が乗って、反射的に跳ね起きようとした身体の肩を押さえつけます。
「ああ、倒れそうですね」
 ひくひくと痙攣している四肢を、第一皇子が細長い布を持ってきてそれぞれに固定しました。
 両手は、それぞれの肘掛けに。両足は、膝で曲げた状態で一つに固定して、その布の端を座椅子の後ろに回してしまいます。
「こうすれば倒れないね」
 強く引っ張られた足は、勃起して盛り上がった股間を晒すようになっていますが、確かに倒れる事はありません。
「さあ、宴の再開だ」
「王子、酒を……ああ、これでは飲めませんね」
 第一皇子はたっぷりと口に含んだ酒を、口移しで王子の口内に注ぎました。
 精力効果の高いその酒には、快楽に狂うための麻薬に近い成分が入っていますが、常習性がないために禁忌ではありません。
 ただ、その薬の出所が出所なだけに、通常知れ渡ることはありません。
 なにしろそれは、あの悪魔が戯れに放ったある一本の木から、特別な製法を持ってして取れる樹液なのです。
 ちなみにそのこの世にたった一本しか無いその木は、この国のもっとも奥深い地下の深層に生えています。
 そして、その製法を知るのは、王族直系のみ。
 つまり王族のみが知りうるこの薬が入った酒は、今回この王子を可愛がるためにだけに造られているという、本当に特別な酒なのです。
「あ、あぁ、熱いぃ……ぁんんっ……あぁぁ」
 酒が回ってきたらしく、熱くむずかる王子に、第三皇子が寄り添い、その首筋に深く口付けて、その反対側からは第二皇子が虚ろに開いた口に吸い付き、その柔らかな舌を味わい尽くしていました。
「可愛いな、そなたは。ほんとうに私のために悪魔にとらわれたと思うほどに。よくぞ、私の手元にきてくれた」
 優しい声音に、王子はうっとりと微笑んで返しました。
「わたしは……皇子に悦んで頂ける、なら……あぁ……本望でござい、ます。んんぁ、……こ、のよぅに、皆で私を慈しんで……くださる場に、ひぃん……連れ出してくれた……あなた様のためなら……」
 もう二度と一人にはなりたくないと願い、差しのばそうとしても動かない手をもどかしく思いながら、王子は第二皇子の肩口に擦り寄り、掠れた声音で囁きました。
 その全身は、燃えるような熱のせいで汗ばみ、衣装の薄布が肌に貼り付いて、その身体の線を余すことなく晒していました。
 特に股間の盛り上がった布は、それだけでない液体で濡れそぼり、淫らな臭いすら立ち上らせていました。
 その身体に向けられている視線を敏感に感じながら、王子は強く願い、それを言葉にします。
 願いを込めた言霊の力は強く、この世界で強い効力を発すると判っていて。否──判っているからこそ、王子は願わずにはいられませんでした。
「どうか……私の身体で……みなさまのお役に立てるなら……ああ、どうか……あぁ……」
 皇子達、際限ない施しを与えてくれる彼らに返すことのできる物はあまりにも無い王子にとって、差し上げられるただ一つのものを使って欲しいと願います。
 自分のために開いて頂いた宴でこんなにも浅ましく欲情して男を欲している自分の淫らさに呆れ果て、申し訳なく思いながらも、それしか返す術が無いのです。
 悪魔に魅入られし相貌と精神を持って生まれた王子は願いました。
「どうか……私で…………愉しんで……」
 それが、余りある恩恵を受けている彼らへの、自分が返すことのできるせるただ一つのことでした。


「んぁ……ぁぁぁっ! ひぎぃぃぃっ!!」
 抜かれた張り型は多量の粘液を絡みつかせて、転がっていました。
 前からは喉の紋様に噛みつきしゃぶられ、後ろからは男の陰茎を尻に銜え込んで、揺すられて。
 簡単には射精ができないのだと気が付いた時にはもう遅く、煮え滾る陰嚢の重苦しさに呻きながら、それでも自ら尻を振りたくり、さらなる快楽を求めて乱れ狂います。
「あぁぁ、ふかっ、あくっ、はげ、あぁぁぁぁっ、あぁぁっっ!!」
 乳首はひねり潰され、鎖を引っ張られて引き延ばされます。
 何度も注ぎ込まれた精液が口の端から溢れ、顔は淫らに歪み、呆けた視線をどこへともなく向けていました。
 そんな王子の両手は高く掲げられ、手首に結わえられた紐で高い枝に括られています。そのせいで崩れ落ちることすら許されず、枝が揺れるに任せて身体を揺すられ続けていました。
 力無く地を踏む足は、幾筋も粘液や白濁が垂れ落ちて、高価な布には数多の染みができていました。
 空の満月は、まだ高い位置にあります。
 夜中に中天にある今宵の月の位置は、まだまだ宴が終わらぬ事を示していました。
「ぁ、ぁぁっ、ぁぁっ、ぁぁぁぁぁ──」
 一人が終われば、また次へ。
 一晩中王子を可愛がることのできる男達にとり、交替になってしまう今宵は、まだまだ満足することはありません。
 それでも、彼らは王子が望んだように愉しんでいました。
 美しい王子の媚態と嬌声を肴に、酒を酌み交わし雑談に興じていると、重責に苛まれていた心身が見事なまでに軽やかに回復していくのです。
 王子は彼らにとって、すでに大切な存在でした。
 美しい相貌はもちろんのこと、いつまでも若々しく艶めかしいうえに、壊れない身体です。さらに並大抵のことでは満足できない淫乱な身体となれば、手放せる筈もありません。
 捨てられて一人になってしまうなどそんなことは決してあり得ず、王子の杞憂でしかありません。けれど、わざわざそのことを教えるつもりはありませんでした。
 どんな些細な事でも、それで王子がここに執着してくれるならもうけものです。
「もうすぐ夏になる。その時は海の孤島にある別荘に連れて行こう」
「それは良いですね。でしたら、ぜひ私もご一緒したいところです」
 壮年の二人が楽しげに会話をする横で、第三皇子が目を煌めかせています。
「あの島にはナマコとかの軟体生物が多いですから、変わった遊びができるかもしれませんね」
「それは楽しい趣向になりそうだ」
 彼らの視線の先には、飾りごと乳首を囓られて痛みに咽び泣きながらも勃起した陰茎から粘液を溢れさせて、射精衝動に腰をくねらせている姿がありました。
 今宵の贈り物は、どうやら素晴らしくあの身体に効果があったようです。
 誰ともなく、ごくりと息を飲み込む音が零れました。
 ぎらつく視線を隠すことなく、大国の直系王族の方々はいろいろな話をしています。
 例えば、こんな話が出ました。
 次回の宴は、あの尖塔の最上階で愉しもうか。あそこは、昔の拷問器具が置いたままだから、何かが使えそうだ。
 あの酒の薬は常習性はないが、薬効が切れた瞬間に副作用がおこる組み合わせがある。射精が止まらなくなるほどに、快感に襲われ続けるんだよ。そうなると、狂う者もいたというから、さじ加減が難しいが。
 夏の島では、裸で過ごさせるのも良いだろう。何しろあそこには、穴とみれば潜り込む習性を持つ蛇がいるしな。
 あの褐色の肌に絵を描くのはどうか。その姿で踊らせるんだ。いろいろな飾りもたっぷりとつけてね。
 それよりも、しばらく相手をせずにいたらどんな痴態を見せてくれるだろうか? ほら、第二皇子が見つけたときのような姿を我々にも見せて欲しい物だ。張り型を全部取り上げておいたら、一体何を突っ込んで慰めるだろうか。
 ………………。
 …………。
 ……。
 それは、彼らにとって、つい時間を忘れるほどに楽しい話題ばかりでした。

【了】