綺麗の真実
綺麗だとは聞いていた。 綺麗なものは何だって好きだから、見てみたいと思った。思ったら止まらない。 井波隆典にとって、『綺麗』なものを手にすることは何を差しおいても良いほどに大切なことなのだ。
綺麗だとは聞いていた。 綺麗なものは何だって好きだから、見てみたいと思った。思ったら止まらない。 井波隆典にとって、『綺麗』なものを手にすることは何を差しおいても良いほどに大切なことなのだ。
八木和宏の肌は、肌理が細かく色味も良いと恋人の井波英典が言う。 その肌が羞恥に染まる瞬間を、英典は好んでいて二人きりの時は油断がならないのだ。 「今日も綺麗だね、吸い付きたくなるよ」 ぼんやりテレビを見ていたらいき …
正月。 一月一日は、寝て過ごすつもりだった。 なのに、一体どうしてこうなっているのだろう。 八木和宏は未だ夢覚めやらぬような顔をして、呆然と窓の外を見つめていた。車の左は崖にも近い山肌で、紅葉が終わった木々が寒々 …
21 店の裏……って? 和宏は表の駐車場に車を止め、灯りの少ない店の横を探るように通っていった。 作業場らしき横に人専用らしい細い道があり、その向こうに窓と玄関の灯りが見える。 店の裏だと電話で言っていたから、あ …
11 体の上の重みが消え去ったことに、はっと意識を取り戻した。 「ひ……でのり?」 喉が痛い。 熱は風邪のせいだったのだろうか? 唾を飲み込むときに感じる痛みにのど元に手を当てる。 話しかけたいのに、思うように …
八木和宏(やぎかずひろ)が両親の足がわりとして訪れた備前焼の店。 所在なげに店の外で佇んでいた時にその店の息子が話しかけてきた。それが井波英典(いなみひでのり)だった。しかし、次の日会社で逢った英典の態度はひどく冷たいも …