【夜桜見物】(2)

【夜桜見物】(2)

 店を早じまいにして、車で二時間。
 楽しみは後に取っておこうと、車の中では遊ぶのは我慢して。可愛い奴隷が擦り寄ってくるのにいい加減我慢も限界の頃にようやく着いた。
 長い道中の間、テルはあきらめ顔で、何も聞いていないだろう陽介はひどく強張った顔をして緊張してたけど、シイコだけはもうガキの遠足みたいに楽しんでいた。
 そして着いた桜の木のある場所を俺は知っていて。
「よりによってここですか?」
 呟く俺の言葉など、シイコの耳には入っていない。
 今はもう、綺麗な満開を見せるその桜の大木に、きらきらと目を輝かせて見入っていた。ここで何が行われるか知っているテルですら、呆然と見上げるほどの見事な桜なのだ。
 はるか昔からこの地に根付いたソメイヨシノより少し濃い色は、綺麗というよりも妖艶という言葉の方が相応しい。
「ここしか思いつかなかったんだよ。何をしても大丈夫なとこってさ」
 そりゃそうだろうけど。
 何しろ、これは、と思うほどに立派な桜があるのは、高い塀に囲まれた大きな屋敷の奥の庭で。屋敷の裏の裏である塀の向こうはうっそうと生い茂った山だ。だから、少々甲高い声を上げたって、こだまでくぐもってしまって、猫の鳴き声か何かにしか聞こえないらしい。
 そんな場所に俺たちが入れたのは、店長の顔の広さってところなんだけど。
 問題は、こちらのそのご主人は、俺たちの得意客の一人で、そして、まあこれが……っていうくらい、サドな御仁だってことだ。
 しかもプロレスラー並の体格に見合う逸物をお持ちのお客様は、俺たちと同様に奴隷遊びに興じており、新製品のオモチャは即全買いで、さらにシイコとテルとさらに陽介の調教DVDは全部初回ロットのしかも特別限定版付きで揃えているという強者なのだ。
 猫の鳴き声云々も、前にご自身の奴隷の調教の話で聞いた事だったのだが、まさしくそれはここの場所のことだったのだと今なら判る。
 そんな彼が、シイコとテルを狙っているのは間違いないので、俺たちでさえもこんな危険なところに二人を連れてきたいとは思わない。
 まあだからこそ、店長も心当たりがあっても最初は躊躇っていたのだろうけれど。
「だからシイコの奴隷を連れてきたんですね」
 苦笑を浮かべる俺に、店長は「当たり前だろ」とのうのうと言う。
 俺も店長も、陽介は全く好みじゃ無いんで、どうなろうって興味が無い。てことで、あれの扱いはシイコの一存で決まるんだが、シイコは奴隷の躾けに関して店長には逆らわない。
 躾けに関しては、店長を神様みてぇに尊敬してんだよな、これが。
「生け贄がなきゃ、連れてこれねぇよ、こんなとこ」
 それがどうしたと平然に嗤う店長も店長だが、家主に有無を言わせず連れて行かれて泣き叫ぶ奴隷を笑って手を振って見送るシイコも相当鬼畜なご主人様だ。
 奴隷に他の男の味を覚えさせて、それでもご主人様が一番だと言える奴隷だけが自分のモノだって言っているようなシイコがご主人様である以上、あれは当分似たような目に遭い続けるだろう。
 もっとも、シイコが味わった最初の肉壺がテルだから、シイコのチンポは相当肥えている。
 生半可な奴隷じゃつとまらねえ。
 ってことは、相当鍛えなきゃお気に入りなんてできねえな。ってぇのが俺たちの意見なんだけど。 けれど、シイコの事なんか言えやしない。
 お綺麗な世界ほど壊したい。
 ぐちゃぐちゃのドロドロの世界で快楽の中に浸ってしまいたい。
 そのためなら、自分好みの奴隷に仕立て上げる手間は苦とも思わない。
 その対象である奴隷が、桜の花びらに囲まれて立ち尽くしているのを見て、じゅるりと溢れた涎を啜り上げた。
 なんだかんだ言っても、俺も店長も、見事すぎる桜がもたらす妖艶な雰囲気に当てられたのだろう。
 何もしていないのに身体の芯が疼いて仕方が無い。
 もともと薄い理性という枷を突き破ったどう猛な獣の本性は、もうぐっと前足を掲げて今にも獲物に飛びかかろうとせんばかりの臨戦態勢だ。
 これは桜の魔性伝説って奴を信じたくなるほどで、しかも今宵は満月で、それも相乗効果で俺たちを煽り、狂わせている。
「シイコ」
 呼べば、シイコが期待に満ちた丸わかりの潤んだ瞳で俺を見つめる。
 この桜の下で。
 舞い散る桜の花びらの中、苔むした土と波打つ根が盛り上がる大地で、無茶苦茶に犯されたいと。
 その目が雄弁に語っている。
 その誘いに俺は拒絶できない、というか、拒絶する理由も無い。持ってきた様々な道具の詰まった鞄を引き寄せ、中からローブを取り出す。
 隣で同様の店長が、テルの腕を掴んでいて。
「ひっ、まっ、てっ!」
 華奢な身体を押し倒され、テルが男をその気にさせる悲鳴を上げている。
「昨日してないだけで、もう疼いているくせに」
 ビリビリと破く音がして、「帰りはどうすんですかぁ?」と聞いてしまうほどに、その切羽詰まった感に俺もシイコも嗤ってしまうけれど、俺だって似たようなものだ。
「服を脱げ、イヤらしく、桜に見せつけるようにな」
 さっさと押し倒したいのを、ご主人様としての貫禄のために我慢して、それでも浮かぶ笑みを隠しもせずに命じたのだった。



 遠いところで聞こえる悲鳴は陽介のモノか。
 それ以外聞こえるのは、テルとシイコが奏でる心地よい嬌声といやらしい音ばかりだ。
「いああ、んんっ、イイのぉ、そこっ、もっと突いてぇぇぇっ」
「ふかっ、あ、ひっ……いぃ……くうっ、やめ……もう、くるし……」
 シイコの強請る歓喜の声に、テルの押し殺した泣き声が混ざる。
 この二人は親子のくせに、快感の受け止め方が真逆ってところも面白い。
 シイコは太い桜の幹に抱きつくようにして両手首を縛られている。それでも尻を必至になって突きだして、俺のチンポを奥へと銜えようと必死だ。
 焦らして焦らして。
 チンポの先っぽをちょこっと入れて揺するだけってのは俺も我慢が必要だが、俺以上に我慢がきかないシイコはこんな責めでも十分に苦しいらしく、ちょっと奥まで突っ込んでやれば、たいそうな悦びようで腰をふりたくる。
 まだまだ夜は長いのに、敏感な乳首を表皮の割れ目に突っ込んで自ら刺激して、もうすでに二回は達っている。
 テルはテルで、店長の逸物をずっぽりがっしり銜え込んで、思うさまに快感を与えられているっていうのに、制止の懇願ばかりだ。だが、地面の上で好き勝手されている身体は、興奮しているのが丸わかりの色を讃え、汗で全身を濡らした身体に桜の花びらをたくさん貼り付けて、勃起の治まらないチンポはだらだらと白が混じった粘液を垂れ流しっぱなしだ。その液にも土が付いて、汚いっていえばそれだけなんだけど。
 これがまた、もっと汚したいって思わせる淫猥さで。
 店長も興奮してんのが丸わかりで、ガツガツ貪っている。
 そして、俺もまた、シイコの花びらを浴びた姿に、そそられている。
「シイコ、ほら」
 先端に桜の花が数輪ついた5cmにもならない小枝を見せて。
 惚けた視線が捕らえたの確認してから耳朶を噛みながら囁く。
「これをチンポの穴に突っ込んでやろうか?」
 途端にきゅっと締まるケツマンコに、危うく持って行かれそうになったけれど。まあ、予期していたことだから我慢ができた。
「あん、すご……」
 想像しているのだろう、そんな自分の姿を。零れる嬌声の甘さが増す。
「お前がいっつも遊ぶ玩具よりは格段に細いけどな。けど、こんなゴツゴツでざらざらなもん入れたら傷ついて……しかも樹液でかぶれるかもしれねぇぞ」
 痒くて痛くて、腫れ上がって。
 かぶれたチンポに苦しむ姿を想像するだけで、たまんねぇ。
「うん、挿れて」
 けれど、そんなものでも欲しがるのが俺のシイコだ。
「しょんべんするのも痛いぞ、痒くて掻きむしってよけいに腫れ上がって、ザーメン出す穴が閉じちまうかもな」
 しょんべんはカテーテルで導尿できたとしても。
「あはぁ……すごぉぉぃっ」
 達きたくても達けない辛さですら興奮して、きゅうきゅう締め付けてケツ振りダンスで悶えるシイコは、本当にこういうのが好きだ。
 初めて会ったときは、真面目な高校生ですって感じだったのに。俺のデカマラ初めて受けて、嫌がって泣いていた純情な男の子はもうどこにもいない。
 でも、俺は嵌まっている。むっちゃ嵌まっている。
 この淫乱奴隷に。
 未だかつて無いほどに。
「ほら挿れるぞ」
 このままでは、勝手に達かされてしまうと、俺は前へと回した手でがしっとシイコのチンポを捕まえて。探の出した鈴口に、つぷりと小枝を突き刺した。
「あぁっ、痛ぅぅっ——っ、あうっ」
 だらだらと零れていた粘液以外潤滑剤なんてなかったけれど、それでもゆっくりと探るように慎重に差し込んだ枝は、なんとなく花弁の根元まで突き刺さった。
「良いだろう? 桜にも犯されてんだ、てめえは」
「ひっぃ ——————っ」
 その言葉に、突然シイコが声なき嬌声を上げて。
 ブルブルガクガクと、全身が小刻みに震えて止まらない。
「くっ……」
 ぐねぐねとうねる肉壺に絞られてしまえば、さすがに俺も我慢などできなくて、ドクドクッと音をたててる思うほどに、激しく射精してしまった。
 ったく、なんてこった。
「……淫乱、桜に犯されたかったのか、そんなに」
 一体何を想像したのやら。
 想像だけでドライで達きまくったシイコの身体が腕の中、がくりと崩れ落ちた。



 まあ、気絶してもまたすぐに復活するのがシイコの良いところで。
 地面に押し倒して、四つん這いで尻から犯せば、すぐに復活して嬉し泣きをしながら身悶えてる。
 乳首にはそれぞれにの分銅がぶら下がっていて、乳首を引き延ばして激しく揺れていた。
「やあ、痛い、いたいぃぃ」
 泣いて嫌がるシイコは久しぶりだと、背後から顎を引き寄せ、涙を啜る。
 こういうところができるから、シイコのサイズはほんとに俺にジャストフィットしているって思う。
 それに、グチャグチャと前立腺を狙って穿ってやれば、痛みなんて吹っ飛んだ嬌声を上げて、喜ぶんだこいつは。
 痛いのも快感へのスパイスだとばかりに、肌には噛み痕を残せば、きゃんきゃんと可愛い悲鳴で、締め付けてくれる。
 たくさんオモチャを持ってきたけど、シイコを相手にするときは、ついついそれらを使うのを忘れてしまうのは、それもこれも、こいつが俺の手で面白いように反応するからだろう。
「いいよおっ、達くっ、あはっぁ、またぁ達きそっ、そこぉ、だめぇっ!」
 ぐねりとうねる肉壁はたいそう熱く、多量の分泌液で女のように濡れて、けれど女の膣よりもきつく締め付けてくる。
 名器って言葉は、こいつのためにあるんじゃないかって、店長に言ったら、テルの方が名器だと思うけどね、返された。
 自分の奴隷の方が名器だって言い張るのも不毛なんで、それはそこでストップしたけれど。
 俺はシイコの方が名器だって信じてる。
「おい、もう達くなよ」
 何しろ名器過ぎて、達くたんびに俺のを締め付けて搾り取ってくれるから、ちょっと我慢しろって思うときも多いんだよな、こいつ。
「やあ、無理ぃっ!」
 言ってる側から達っているもんな、こいつ。

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