【淫魔 憂 新作撮影】前編

【淫魔 憂 新作撮影】前編

 生活感のあるリビングだった。
 家族が暮らしている気配がそこかしこに残っていて、今もテレビがアメリカの子供向けコメディ番組を流していて、エキストラの間の抜けた笑い声が流れていた。
 小さなガラステーブルには、ジュースの缶とスナック菓子の袋。どちらも食べさしのようで、少し零れて床にまで散らばっていた。カーテンは風を受けてそよぎ、照明など必要がないほどに明るい日差しが部屋の奥まで注がれている。
 そんな中で、憂が床に押しつけられていた。
 着ていたTシャツとパンツは見るも無惨に一裂きされて転がって、一部は彼の両手首を拘束する紐となっていた。
 ありふれた部屋の中で、そこだけがありふれていない状況は、現実味がない。
 だが、どんなチープな脚本の中であっても、憂にとっては現実以外の何物でもない。蒼白になった憂の恐怖は、それが紛うことなく真実なのだと知らせてくる。
 穏やかな部屋の中にいきなり現れた黒人の男は、驚く憂の抵抗など赤子の手を捻るより簡単に封じ込め、彼をその場に押し倒した。
 巨躯というのは彼のためにあるのか、と思うほどに横幅も縦も憂の倍はある。男の肌は黒光りするほどで、きれいに剃り上げられた頭部は、その巨躯のせいかひどく小さく感じた。
 その男が現れてから、5分と経っていない頃だったか。
 ぜいぜいと苦しげに喘ぐ憂とは対照的に余裕綽々の男が大きく腰を動かしたのは。
「──────っっっ!!!」
 仰向けに押しつけられていた憂が、びくっと硬直し、黒目が小さく感じるほどに大きく目を瞠った。悲鳴を上げることなく開ききった口の端から舌がダラリと零れて、その身体が激しく痙攣して。
 呼吸すら忘れて硬直した憂は、身体を引き裂く激しい痛みに襲われていた。
 身体を引き裂く激痛は声を封じ込め、意識をとばすことすら許さない。先ほどまで抗う憂の必死の抵抗に騒々しかった部屋は、今は音を失っていた。
 ただ、薄い緑色のラグの上、まるで黒と白のオブジェのように存在する塊だけが異彩を放つ。それは、男の巨躯とその身体を挟み込む憂の両足だった。
 憂はM字開脚を強要されて、さらに巨躯を挟むために限界まで大きく割り開かれていた。乗っている男の股間と向き合う憂の股間は、持ち上げられ上を向いている。
 その白い尻タブの狭間で、憂が硬直した原因が明かりの下で露わになっていた。
 その巨躯に見合った黒々とした巨根が、憂のアナルにずっぽりと突き刺さっていたのだ。
 ちりちりと縮れた汚らしい陰毛に覆われた陰嚢は大きく、野球のボールがぶら下がっている感じだ。二つの袋がたぷたぷと憂の白い尻タブを叩いている。その間から伸びた棍棒のようなペニスは、ずいぶんと重量感があって、太い。
 使い込まれたそれは女でも尻込みするようなサイズで、しかも、わずかに引いた瞬間に見えたその肉棒は、真珠でも埋め込んでいるのかひどく歪だ。
 それはありとあらゆるペニスを受け入れてきた憂といえど、十分な準備ができていたとしても苦痛を強いられるサイズだった。だが、そうと認識した時には、その巨根は全てが体内におさまっていた。
 慣らしもしないアナルに突き挿された憂の、さらに奥を狙う動きに、憂は動けない。
 男の精が大好物の憂のアナルは、本良ならばどんなペニスでも受け入れることができるはずだった。だが、淫魔のアナルは鬼の技の妙技を凝らされていて、食事が終わればいつだって慎ましやかに閉じてしまい、処女のような妙なる締め付けを確保している。それは、相手の男から精を搾り取るのに必要だからだが、それでも並のペニスなら慣らさなくても苦労することなく受け容れることができる。
 けれど、このペニスは並の代物ではなかった。鬼の逸物もグロテスクな程に大きいモノが多いが、これはそれに匹敵する。
 その、人と言うより巨獣のような体格に見合うペニスは、鬼以上に見えた。そのペニスが、今や憂の肉壷を限界まで押し開き、その腹の奥までを犯しているのだ。
「ひっ、ぎっ、あっ」
 男が僅かに動き、止まっていた呼吸が戻る。けれど、それは解放ではなく、新たな痛みによるものだった。衝撃が薄れた代わりに押し寄せる痛みに、ヒイヒイと泣き叫ぶ。動き出した四肢が逃げようと抗うけれど、その動きはまるで赤子のように拙くて頼りない。
 巨躯からすれば、憂の体など幼い子供のようなサイズで、大腿筋の張った太股で憂の腰を押さえつけ、大きな手のひらで両方の腕を床に縫い付けることなど造作もないことだった。その上、ずっしりとした重量感そのままの体を憂の上に乗せてしまえば、どんな拘束具よりも丈夫だ。
 何一つ身動きできない憂は、その男の極太のペニスを甘んじて受け容れるしかなかった。もっとも、引きつって伸びたアナルは裂けていないし、じわりと滲み出だした淫液は、アナルが性器として準備できた証拠でもあった。
 それが男の精の生産性をより高める媚薬になるのが、淫魔の身体だ。
 その違和感に気が付いたのか、男が不思議そうに己の背後を見やる。視線の先は自分の身体に遮られて見えない結合部だ。
 ふと、試すように男が腰を蠢かす。
「あう!」
 憂がギュッと目をつむり零した悲鳴が、先とは違う。
 グチュ、グチャ。
 動かす度に水音が漏れ、さらに動きが滑らかになって。
「ヒューッ」
 男が感嘆の口笛を吹いた。
 己の巨根をよく知っていて、それで裂けなかったアナルに驚き、馴染まぬ肉壁が与える熱くきつい締め付けと、細かな蠕動運動とともに男の欲望を揉み解し始めた快感に喜んでいる。
 さらに、女のように濡れてきたのだ。
 ニタリと片頬を歪めた男の尻がきゅっと窄まる。
 まるで背後の誰かに見せつけるようにさらに憂の体をきつく折り曲げ、憂の尻が床から浮かせた。
 そこから、ずるっと極太のグロテスクなペニスが抜かれていく。
 ぶつぶつと皮下に埋め込まれた真珠粒のせいで歪に盛り上がった肉棒が、てらてらとした粘液を絡ませながら引きずり出されて。
 肉壁が刺激に真っ赤に充血しているのがめくれて見える。
 ずるっと出てきたペニスがほんの少し細くなり、くっきりとした裏筋が見えてきて。そこまでで10センチ、否──20センチ近くはあるのが見て取れた。
 その直後。
「ひあぁぁぁっっっっ!」
 パッンッ!!!
 平手打ちのような鋭い音と、憂の絶叫が部屋中に響いた。パンパンと続く間抜けな小さな音は、たぷたぷの陰嚢が尻を叩いている音で。けれど、それもすぐに止んで、また肉棒が姿を現した。
 先より早い速度で出てきたそれが、一気に憂の体内に消える。
 激しい挿入の度に、悲鳴と肌を打つ音が木霊した。
 その間隔が一気に短くなっていく。
「ひっ、あっ、ぎぁぁぁっ! やめっ、ひぐっ」
 パンパンとついには連続音になったそれに、ジュプジュプと淫らな水音が重なった。
 体が感じている証拠の粘液の放出は、よりいっそうの快感が欲しいからだ。淫魔の性は、自らの体が傷むことより、食欲の方を最優先する。活力ある雄の精は、淫魔にとって何よりのご馳走なのだ。
 それを逃すはずもなく、憂の体は男がさらに興奮するように、大量の媚薬を作り出した。その体も巨大なペニスからの快感を最大限に受けいれるために変化していく。
 そうなれば、悲痛の中にも甘い嬌声が混じりはじめて。
「ひ、ぁぅぅっ、くぅぁ、あぁ」
 ひどく敏感な身体は、こんな陵辱にすら快感に満たされ、よがり狂う。まして限界まで引き伸ばされた肉壁のすぐ裏で、前立腺をゴリゴリと擦られるのだ。
 熱いマグマが下腹部でたぎり、過ぎる快感に嬌声を上げた。
 無言で憂を犯す巨躯の持ち主は、にやにやと余裕の笑みを浮かべて何度も何度も抽挿を繰り返す。けれど、余裕のなさはそのうちに建前だけになったようで。
 一般人の萎えたペニスくらいはある10本の指が、痣になるほどに憂の滑らかな体に食い込む。鼻息荒く熱い吐息を浴びせかけ、飢えた猛獣のごとく牙を剥いて涎をぼたぼたと零した。
 傷一つなく磨き上げられた肌に、爪が食い込み傷を作る。
「こ、んなっ、きっ、きつぅ、ああ、で……ぅう、イ、ひっ、そこっ、やだぁぁ
っ」
 がくんと大きく揺れ、ついでガクガクと痙攣する憂が、恍惚の表情を見せていた。激しい抽挿による痛みも、前立腺をこねくり回される快感には負けてしまって、呆気なくドライオーガズムを迎えたのだ。
 憂のペニスは緊縛されていないけれど、最近では射精より先にドライオーガズムを味わう方が多くなっていた。
 それもまた男たちの欲情を煽るのだが、この男も違わなかったようだ。
 口元が嬉しげに緩み、その口の端から涎が流れて、憂の顔を濡らした。真っ赤な肉厚の舌が、だらりと唇を舐めケラケラと喉の奥で笑っていた。
 がつがつと休み無く貪る男の瞳はすでに正気を失っていた。ただ、己の快感と嗜虐性を満足させることだけを考えている。
 しかも、男は遅漏だった。
 その一回目の射精は、性急に突っ込んだ時とは裏腹にずいぶんと時間がかかった。
 その間に憂が一人で何度も達ってまうほどに。
 長い長い陵辱の予感に、憂が快感に蕩けながらも泣き叫ぶ。
「あ、ひ……も、止め……っ、止めてぇぇ」
 その腹に、粘液と白濁が液溜まりを作っていた。それが、身体の振動に合わせて脇腹を辿り、ラグを汚す。
 けれど、男の動きは止まらない。
 獣のような雄叫びが繰り返されて、それ以上の嬌声が放たれてもそれでも、その体躯に見合ったスタミナは尽きることなどないようだった。

後編