【淫魔 憂 GAME】 前編

【淫魔 憂 GAME】 前編

「淫乱メス犬シリーズ DVD 第六巻「憂版四十八手」発売記念企画プレゼント」にご応募いただきまして、ありがとうございます。
 厳正なる抽選の結果、関根様が特賞「宝探しゲーム 参加資格」にご当選されました。
 
 さて、ゲームは下記に記載する時間のみ公開され、参加者は関根様のみになりますので、存分に楽しんでいただければ幸いです。

 詳細
 日時 2009年12月24日 木曜日 18時55分受付開始、19時ゲーム開始 
    終了時間 2009年12月25日 金曜日 8時
 URL http://\\\.???.com/***QQQ***/
 必要スペック ××バージョン以上のスペックであること。
        音声の送受信のために、マイク、ヘッドフォンが必要です。
 ログインID パスワードとも、サイト「憂」の関根様のログインIDとパスワードと同一です。

 ご注意 
 19時までにログインいただけない場合は、ゲームの参加資格を失います。
 また、55分より早い場合、ログイン画面は表示されません。
 ゲームの内容につきまして、開催時間より説明させていただきます。

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 そんなメールが関根の元に届いたのは二週間ほど前のことだった。
 そのとたん、関根の意識はクリスマスイブのみに向けられたのは言うまでも無い。
 何しろ、関根は憂に恋していると言っても過言ではないほどなのだ。会いたくて、会いたくて。その肌に触れて、その熱い肉壺に己を埋めて、思うさまに快楽を貪りたいと願い続けるほどで、初めてDVDで魅入られた時からずっと、否──より激しく熱く恋している。
 自覚したのは、初めて憂とデートした時だろう。
 初めて直接触れた憂の敏感な体は、二時間では全く攻略できないほどに奥が深く、デート時間が一瞬で過ぎ去ったと思ったほどだ。しかも彼の悲鳴も泣き顔もその媚態も、全てが関根の心を妖しく揺り動かし、全てが関根を捕らえるものだった。
 もっと触れたい、もっと遊びたい、もっと苛めたい、もっと啼かせたい。
 もっと、もっと──と憂の映像を見る度に、満足しきれなかった欲望が、関根を追い立てる。
 地下室にあるオーディオルームの地下室の棚に憂のDVDやらグッズが増える事にその想いは増幅されていき、今では他のモノでは関根の欲望を解放するのに役に立たなくなっていた。
 関根自身はたいそう金持ちの上、放っといても金が儲かる立場の人間で、あくせくする必要は無い。裕福などの言葉は笑い飛ばせるほど億単位の金が銀行にもこの家にも唸っている。
 そんな関根でも、憂は思い通りにはならない。
 関根の特殊な性的欲求を満たすために、今までは多量の金を消費してきた。危ない組織とつきあうようになったのも、そんな性癖を満足させるためだ。
 何しろ、関根は普通の女では勃起しない。ゲイの男でも勃起しない。
 先刻までごくごく普通の性癖だった男を調教し、自らの足の下で泣き喚いて許しを請い、貪欲に関根を欲しがるようにするのが好きなのだ。
 数時間前まで凛とした立ち居姿で仕事をしていた整った姿形の青年が、淫欲に狂い啼きながら、のたうち回って自ら尻を嬲っている姿はたいそう興奮する。
 射精も排泄も何もかも自分の思い通りにして、どんなに懇願しても許さずに嬲り続け、人としての尊厳を踏みにじり、全てを奪い去って。
 さんざん遊び尽くして廃人同然になった男を世間に放り出してやる。
 人として生きる事などできなくなった男は、行き着く先は闇の世界だ。二度と這い上がることができない地獄のような闇の中で、関根にも忘れ去られて死んでいくしかない。
 そんな素材を、関根は金に飽かして手に入れていた。人すら売買の対象とする組織に金を払ってだ。
 そんな関根が選ぶ対象に、素の憂は似ていた。
 憂もまた、最初のDVDの無料頒布品に出演するまで、何も知らない大学生だったのだから。
 電車の中で痴漢され、裸に剥かれて、衆目の前で射精までさせられたのが一枚目での出来事。
 二枚目は、電車を降りた後から次の日まで、何人もの男に犯され、アナルだけで射精しまくって、すっかり淫乱になっていく様子が赤裸々に描かれていた。
 三枚目は、淫具を身につけて花火へ出かけ、人混みの中で花火の色とりどりの明かりに照らされながら、屋台で買ってきたいろいろな物をアナルに突っ込まれて射精しまくっていた。さらに、それに気づいた通りすがりの男により、汚い公衆便所で憂を犯されていて、関根はその通行人へ激しい嫉妬を覚え、もしどこかで見つけたら自分の奴隷にして壊してしまおう、と決意した程だった。
 四枚目も、五枚目も。
 憂に施される行為に優しい物はなく、どれもが関根のような激しい嗜虐性を持つ者により行われていた。
 どのDVDも、最初は憂が嫌がる様子が流される。けれど、すぐに淫らに喘ぎだし、快楽を貪り、自ら腰を振って男を銜えていく。
 身を焦がす羞恥に目元まで真っ赤に染め、嫌だと嫌だと泣き喚きながら、与えられる快感にまず体が、そして心までもが堕ちていくその様が、何よりも関根の琴線に触れた。
 憂が欲しい、と思った。
 憂を自らの手で調教したいと思った。
 けれど、憂はいくら金を積んでも手に入れることはできない。なにしろ、憂はその組織の上位幹部の一人が飼っているのが明白だった。そのことがはっきりと明言されている訳ではない。だが、DVDやウエブサイトを見ていると判る。憂の周りには、その幹部である綱紀(こうき)の姿がいつもあったからだ。
 彼は恐ろしい。
 関根自身が何かされた訳ではないけれど、それでも彼の行動を垣間見たことはある。
 もし彼の逆鱗に触れれば、関根の明日はないということは、本能的に悟っていた。
 その程度の危機管理がなければ、あの手の組織とつきあってはいけない。今の地位を維持する力など無いに等しかった。
 だからこそ、それ以外の手段で憂で合法的に遊べる特典の応募や、キャンペーン企画、プレゼント企画を逃すはずもなく、毎回毎回応募していたが、ほとんどが当選は一名限りで、なかなか当たるものでもなかった。
 それこそ、何回目の挑戦だろうか?
 一度だけあった有料のキャンペーンは、一週間も憂を好みの場所で自由にできるという特別キャンペーンで、一口100万円が必要だった。それにも関根は惜しみなく金を使い、応募できる最大口数を応募して数千万を払ったが、結局当たることなく涙を飲んだ。
 今この地下室を飾っている多数の憂の生写真は、その時の応募者プレゼントだ。
 そんな関根が祈りながら応募した、たった一口のクリスマス企画の発売キャンペーンが先の当選メールで、それが届いた時、関根はしばらくぴくりとも動かなかった。
 硬直した指が動いたのは数分経ってから。
 その指が、頬に触れるまでさらに数分。
 頬に走った鋭い痛みに、なんとか意識が戻ったときには、10分近くが経っていた。



 12月24日 18時50分。
 関根は、一番お気に入りの地下のオーディオルームでじっと時計を睨んでいた。
 昼頃から何度も時計を見ていた。けれど、その秒針はいつもよりずっと遅くにしか動かない。
 壊れたのかと、携帯の時刻も、パソコンの時刻も、全て確認したが、どれも同じ進み方しかしなかった。
 待ち望んでいる時こそ、時の進みは遅い。
 それを、この年になって味わうことになるとは思っても見なかった。
 最近では、待たされることなどなかったせいか、余計に待つのが辛く感じる。
 ようやく残り10分を切っても、やはり動きは遅い。こくりと唾を飲み込み、やたらに喉が渇いているのに気がついて、傍らのグラスに口を付けた。
 関根お気に入りのブランデーは、その芳香も深い味わいも、いつもなら関根を心地よく酩酊させてくれるというのに、今日は何の味も匂いも感じられなかった。
 ただ喉を潤しただけのそれにため息を零して、再び時刻を凝視する。
 握った手のひらが熱かった。
 この日のために買い換えたパソコンもディスプレイも、指定されたスペック以上の代物だ。
 最速のグラフィックボードやCPUにメモリも限界まで増設し、光回線でネットに繋いでいるそれは、どんな映像も一部の乱れも無く、表示する。
 その映像は、通常の液晶ディスプレイのみでなく、壁に据え付けられたディスプレイにも表示可能だ。スイッチ一つで切り替え可能な液晶テレビは、詳細なパソコンの画像も難なく表示し、細かな陰影すら鮮明に写しだした。
 その壁面の画面は今は黒い。何も映っていない訳ではなく、大半が黒いせいで黒く感じるのだ。実際、一番上にはブラウザのメニュー画面が出ている。
 何度も何度もブラウザの更新を押しては、変わらない画面に息を吐く。
 待ち焦がれている時間は、ひどく疲れる。関根は浅く腰掛けていたソファの背もたれに深く体を埋めた。
「なぜ、憂なのだ?」
 あんな青年は、大学に行って探せばいくらでもいるだろう。
 けれど。
 独りごちて苦笑を口元に浮かべた関根は、浮かんだ考えを否定するようにゆっくりと首を振った。
「憂、だからだろうな」
 みずみずしい肌は、どんな陵辱でも衰えることなく、憂を輝かせる。
 どのDVDも始まって数分は彼の瞳には生気があった。
 逆らおうとする気概が感じられた。
 それが、男達の手によって薄れ、朽ち果て、欲に澱んだ色に染まっていく。淫乱などという言葉だけでは言い表せないほどによがり狂い、男を狂わせる娼婦へと変わっていく。
 その様が憂は、見事なのだ。それこそ、関根を魅了するほどに。
 ふっと関根は自らの手のひらを広げて見下ろした。
 その手の中には、ワイヤレスの手で持って操作できるトラックボールマウスが握られている。指先だけでソフトが操作できる代物だ。
 それを握っていた手のひらは、しっとりと汗で濡れている。
 その手で、憂のペニスを握ったことがある。
 表面は柔らかくそれでいて固い芯を持つペニスは、関根の手のひらにちょうど良いサイズだった。
 指で輪を作り力を込めると、面白いように腰を踊らせながら、良い声で啼いていた。
 ぎゅっときつく、達けないようにきつくすればするほど、良い声で啼き続けて。
 女のように濡れるアナルは、あれだけ陵辱され続けていたのに、関根のペニスをきつく貪るように離してくれなかった。
 そんな憂にもうすぐ会える。
 しかも、ゲームとは言え、関根だけがプレイヤーなのだ。
 それがどんなゲームかは判らない。
 もしかすると写真だけが現れるのかも知れない。
 それでも。
 一分も経たぬうちに更新ボタンをクリックしていた。
 再び浮かんだ黒一色に、ため息を吐いて弛緩する。落ちてきた前髪を掻き上げて、物憂げにディスプレイを見つめた。
「憂……」
 零れた名は熱く、心が焦がれるようにざわめく。
 最近では憂以外の誰を相手にしても、もの足りなかった。
 自分の責めで悲鳴を上げて許しを請う姿に勃起はするけれど。泣き叫ぶ男の尻を裂きながら突っ込んで、たっぷりと射精しても満足感など遠い。
 壊れた男が「もっと……」と縋り付けば、激しい悪寒に襲われた。
 憂の泣き顔がよかった。よがり狂って理性を飛ばし、腰をかくかくと前後させて自慰している姿に、呆気なく射精してしまうほどに欲情する。
 結局は自慰でしかないそんな行為の方が、よっぽど関根を満足させるのだ。
「憂……欲しい……よ」
 憂が欲しい。
 憂を好きなようにしたくてしたくて堪らなかった。


 ようやく表示されたログイン後の画面は、三分割されてた。
「これは……ライブチャットか?」
 画面の2/3を占めるメイン画面は部屋らしき映像が映っていた。その部屋の中央に、オルゴール人形があってゆっくりと体を動かしているのが見える。美しいメロディもスピーカーから流れてくる。
 少なくとも静止画像でないことに、胸が高鳴っていく。
 少し画像は荒いが画質を落としたビデオ画像よりはよっぽど良く、そう不都合はなさそうだった。
 右側には縦長の空白の窓。そこが何かは判らない。さらに画面下側に横に長い白い窓があって、見ている間にメッセージが表示された。
「ゲームマスター>はじめまして、関根様。
 まずは映像の確認をお願いいたします。
 人形の動きがスムーズでしょうか? 音量は十分でしょうか?
 動きに駒落ちがあったり、音におかしな点がある場合は、すぐにこの場所にその旨入力をお願いいたします」
 どうやらテキストウィンドウらしいそこに、関根は淀みない手つきで「大丈夫」とメッセージを入力して送信する。
「ゲームマスター>それでは、マイクとヘッドフォンをご準備ください」
 返されたメッセージに一人頷き、ヘッドフォンを頭に取り付け、マイクを口元に持ってきた。とたんにスピーカーからの音が、直接耳元で聞こえるようになる。
「ん?」
 オルゴールのメロディに、何かが被さる。
 擦れたような物が動く音と、それは悲鳴だ。関根にとって聞き慣れた声音のそれに、瞳が喜色を帯びる。
 擦れる音は大きくなり、悲鳴もよく響くようになった。
 その心地よいメロディに耳を傾けながら、画面を凝視する関根の瞳に、燕尾服を着た体格の良い男が入ってきた。鼻から上がマスクで覆われていて、誰なのかは判らない。
「ようこそお越しくださいました、関根様」
 男が深々と礼をする。
「私は、このゲームの進行役およびアシスタントを務めます『マスター』でございます」
「マスター?」
 思わず呟いた関根の言葉が、マイクを介して相手に伝わったのだろう。
 マスターが、深々とお辞儀をした。
「はい、関根様。子細はゲームの説明をするに従ってご理解していただけるかと思います」
 どこか聞いたことのある声だ。
 けれど、向こうのマイクを通した声音は、奇妙にくぐもっていて、誰なのか特定できなかった。 悲鳴は、いつもの憂と変わらないから、わざとそうしているのだろうか。
「ゲーム名は【宝を探せ】。アドベンチャーゲームの類になりましょうか……」
「宝、とは?」
 問うた言葉に、マスターが大きく腕を引いた。
「ひ、ああっ!」
 とたんに、先より大きな悲鳴が響き渡る。
 それと同時に、画面外にいたのであろう憂が、よろよろと転がり出て、ばたりと倒れ伏した。
「カメラ操作は、右下の矢印ボタンです」
 口元が嗤ったように見えた。けれど、それを認識するより早く、関根の手は動いていた。
 下向き矢印をクリックすると画面が部屋の床近くを映し出す。
「おお、憂……、素晴らしい格好だね」
 恋い焦がれた相手の登場に、関根はうっとりと囁くように喋っていた。
「あっ、ひ……ゆ、ゆるし……て、見ない、で……」
 反応した憂がきょときょとと辺りを窺っている。声だけはきちんと聞こえているその動きに、関根はニヤリと口角を上げた。
「見ないで、と言われても、とても良く見えてしまうよ。隅から隅まで、とても綺麗でイヤらしい」
 反射的に相手を苛める言葉が出るのは、もう関根の性質故だ。
 見られていることを自覚して、憂が倒れ伏したままもじもじと体を動かす。羞恥に染まった肌は、隅から隅まで欲情を誘う薄桃色に染まっている。
 そんな憂は、胴体部を亀甲縛りのような拘束衣で締め上げられていた。
 憂の性器は全て露出している。
 もっともペニスは陰嚢の根元に小さな枷がつけられていて、ロープが一本繋がっていた。その反対側の先は、マスターの手の中だ。
「んぁっ、ひぃ!」
「お誉め頂いたのに礼の一つも言わないとは何事ですか?」
 口調は淡々としている。けれど、その声音が耳に届いたとたんに、憂がびくりと硬直した。
「素晴らしい格好だと、綺麗でイヤらしいと……確かな誉め言葉に礼を言わない愚か者に躾けたつもりはありませんが?」
「い、あっ……やっ、ご、ごめ、なさっ……。せ、関根、さまっ、ありがとうございますっ」
 うろたえながらの謝罪はマスターに対してか。
 けれど、早口で呼びかけられた礼は、確かに自分を名指ししていたと、感激のあまり涙腺が緩む。
「ああ、憂は良い子だ。きちんと礼が言えたね」
 思わず呟いた言葉は、憂にもしっかり届いたらしい。もう一度、「ありがとうございます」と幾分ほっとしたような言葉が返ってきた。
「このように関根様の言葉は全て憂に届きます。また、我々側の音声も全て届くようになっています。さて、ゲームの説明をさせて頂きます」
「ああ、判った」
 まだゲームは始まっていない。
 肝心の説明を何一つ聞き逃すまいと、姿勢を正して画面を見入る。手が自然にヘッドフォンの耳を押さえた。
「宝はアイテム欄に表示される物で、アイテム欄の枠の数だけ準備しています。そのアイテムを取り出すキーワードは憂の言葉の中にあります。つまり関根様がそのキーワードを憂から聞き出せば宝は関根様のものです」
 判りやすいゲームだが、だが、聞き出すにしても、どうすれば良いのか……。
 眉をひそめて首を傾げている関根に、男はすっと左の手を挙げた。
「関根様から見て右側のウィンドウをご覧ください。こちらに憂からキーワードを聞き出すためのいろいろなアイテムが表示されます。こちらは無料アイテムですので、ご自由にお選びください。選んでいただいたアイテムは、憂が関根様の指示通りに使用します。また、手伝いが必要であれば、私がサポートいたします」
 とたんに、右側の窓にが格子状に区切られて数個のアイテム画像が表示された。
 どれもが標準的な淫具だ。
「これは……」
「マウスポインタを画像に当てますと、内容の説明が出ます。使用する場合は、画像を一度クリックして選択状態にした後、下側の「使用」ボタンを押していただければ、私の手元にそのアイテムが届きます。どうか、試しに一つお選びください」
 言われるがままに、目についたアイテムをクリックした。
 画像は細身のスティック上のバイブで、確かに画面にポインタが移動したとき、それのサイズや機能が表示された。
 送信ボタンを押すと同時に、ゴトリと耳で音が鳴る。
「スティックバイブをお選びいただきました」
 画面内から外れかけたマスターが、すぐに戻ってきた。その手には、画像通りにアイテムがある。
「方向指示キーでカメラを動かし、右側をご覧ください。またついでに、パン・ズームなど、どのような機能があるかご確認ください」
 言われるがままにマスターが移動した方向にカメラを動かすと、アイテム置き場らしき棚が見えた。
「そこに、ここのアイテムがあるんだな?」
「はい。今は5個のアイテムがありますが、憂からキーワードを聞き出すことによって、アイテムは増え、またカテゴリは増えます。ある程度アイテム数が増えますと、今度は課金アイテムを購入して使用できるようになります。課金アイテムは、無料のアイテムより特殊な効果を持つ物が多く、きっとお試し頂けることでしょう」
「課金アイテムか……」
 くすりと嗤うと、その意味を性格に理解したのか、マスターも軽く礼を返してきた。
 そうやって金を使わせて、たとえプレゼント企画でも決して損はしないシステムなのだ、これは。 そて、自分は課金アイテムをたくさん使うだろう。
 ちらり無料アイテムを見やれば、ごくごく平凡なものばかりが並んでいる。
 バイブ二種に、据え置き型の張り型、潤滑剤にローター。
「このアイテムをどのように使うかは、関根様次第。マイクを介して伝わった指示に、憂は全て従います。また、問いかけられた質問の回答は、全て答える義務があります。ただ、キーワードが何かとか、個人情報に関わることは無理ですが……たいていの事は全て正直に答えるでしょう」
「……や……やだ……っ」
 小さく聞こえるのは、憂の呻き声か。
 カメラを近づければ、怯えている憂の表情が見えた。
 こちらにカメラが無いから、憂には関根の姿が見えない。ただ声だけが憂を支配する。
 その恐怖に襲われているのが手に取るように判った。
 憂に直接触れられないのはもの足りないが、だが、関根の指示で憂を苛められるのだ。
 あの憂に。
 怯えが恐怖に、泣き顔が快楽に歪み、助けを請いながら支配された男に鍵となる言葉を漏らすまで。
「ただ、一つだけご注意頂きたいのは、キーワードだけを言わせるために脈略のないクイズのような言わせ方はお避けください。せっかくの愉しみも半減してしまいますので。できましたら、状況に沿った問いかけで、このゲームをクリアして頂ければと考えます。それでは、長々と説明しましたが、時間も過ぎております。それでは、ゲームスタート」
 深い礼が男の顔を隠す。
 ピッと左下に表示された時計が、現在の時刻を表示した。これから、明日8時までの13時間は、長いようで短くて、有効に活用する必要があるだろう。
「じゃあ、憂。そのスティックバイブを舐めなさい。可愛い舌を出して、犬のようにね」
「ひっ、い……」
 小さい悲鳴。
 けれど、憂はおどおどと怯えたように、体を起こした。
 マスターの手が陰嚢の根元から紐を外す。それだけはほっとしたようだが、渡されたスティックバイブに顔を顰める。
「憂、犬は手を使ったっけ?」
 両手で握るようにして口元に持っていこうとした憂を制止する。
「憂?」
 再度畳みかければ、憂はゆっくりと首を振ってバイブを床に置いた。
「さあ、何をするんだっけ?」
 イヤらしい言葉を言わせたくて問いかける。
「あ……犬のように……舐めます、バイブを」
「そうだね、だったらどういう格好をすれば良いかな?」
 猫なで声になっていると自覚している。けれど、知らずそんな口調になってしまう。
「……四つん這い……に」
「うんうん」
 言いながら四つん這いになる憂に頷き返して。
「ああ、でもカメラに向かって横にむきなさい。でないと全部見えないんだ。う?ん、カメラが一方向だから見にくいな……、憂、どうしたら良いと思う?」
「う……」
 問いかけに、憂が四つん這いのまま硬直する。
 何と答えたらよいのか判断が付きかねているようだ。幼子のように頼りなく、マスターへ視線を送っている。
「憂、私は君に聞いているんだけどな」
 なんとなく面白くなくて、声音が低くなった。
 今憂を支配しているのは関根の筈なのだ。マスターではない。
「あ……ごめんなさ……い、あの……えっと……」
 視線がカメラへと戻って、関根を見上げているような視線に、少し気分が上昇する。
 けれど憂はどうして良いか判らないのか、もぞもぞと何度か体を動かしていろいろな方向に向き直ると。真後ろを向かれた時は、可愛いアナルから陰嚢までが全て丸見えになったけれど、それでは顔が見えない。
「顔も見せて」
「え……はい……」
 困惑が憂の顔によぎる。と、マスターがそっとかがみ込み、憂の耳元で何かを囁いた。
 何だろう? 
 と、疑問に思ったのもつかの間。
「か、鏡……」
 憂が一つの単語を伝えてきた。
「後ろに鏡を置けば……」
 その言葉と共に、アイテム欄が一瞬明滅して。
「なるほど……ね」
 アイテム欄に、カテゴリ「インテリア」が増えて、「姿見」が増えていた。
「そう、鏡がよいね」
 口元が笑みを形作る。
 憂がキーワードを言えば、アイテム欄にアイテムが増える。
 「鏡」というキーワードで増えた姿見を選択して「使用」ボタンをクリックすれば、すぐに室内に鏡が運び込まれた。姿見という名だが、大きさは二畳分はあるだろうか。キャスター付きのそれは、憂の背後をしっかりと映し出していた。
 こうやって、アイテムを増やせば良いのか。
 なんとなくゲームの進め方が判ってきた関根は、大きく息を吐いて、画面内の様子をじっくりと眺めた。
 鏡が運ばれた後、憂は四つん這いになって、床に置かれたバイブを舌で舐め始めていた。自然に上がった尻は、背後の鏡でその狭間まで観察できる。
 その奥にあるアナルは、シワまで良く見えて。
 あそこは、こんな細身のスティックタイプではもの足りないはずだ。
 今は無い、もっと太いバイブを手に入れなければならない。
 マスターは言った「どんな問いかけにも正直に答える」というのが、そのためのヒントだ。
 直接的に鍵の事を聞いては答えてはくれない。けれど……。
「憂はバイブをどこに当てるのが好きなんだ?」
 惑う憂の唇が、数秒経ってから動く。
「……乳首……」
 きっと無難な場所を示したのだろう。激しい肛虐に至るアナルや快楽に直結するペニスから逃れるための言葉。
 けれど。
 憂の言葉ともに、カテゴリに「乳首」が増えた。
 アイテムはまだ無いけれど、憂の発するキーワード次第ではここもいろいろな道具が増えるだろう。
 そのためには、こちらからは全て憂への問いを投げかけるのが一番良いのだと確信する。
「そう。憂の乳首は、どんな事をされるのが好きなんだ?」
「あの……」
 恥ずかしい言葉を想像したのだろうか、憂が視線を落とした。
 その目元の朱が鮮やかに変化する様は、美しい。
「では、そのバイブのスイッチを入れて、乳首に押しつけろ」
 あまりに柔らかい言葉遣いでは、憂の動きが遅い。それに気づいて、命令口調に変えてまずは指示を出す。
 ひくりと震えて目線を上げた憂が、バイブを持ち上げる。
 スイッチは取っ手部にあるタイプで、すぐにかちりと小さな音をたててスイッチが入った。とたんに震えだしたそれは、案外強い。
「んっくっ」
 それが押しつけられたとたんに憂が息を飲んだ。ブルブルと激しく振動する先で乳首を押しつぶすまでは、滑らかだった動きが、ぴたりと止まる。
 カメラをズームすれば、小さな赤い粒が先の振動につられてぶるぶると震えていた。
「なんとまあ、可愛い乳首だ」
 これまでさんざん嬲られただろうそこは、けれど、関根の好みからすればまだ小さい。
 確かピアスもされていたはずだったな──と、五枚目のDVDを思い出して観察してみたが、今そこにはピアスが無かった。
「憂、乳首と言えばそこの飾りはどうしたんだい? 確か、気持ちよさげに啼きながら、そこに穴を開けて貰ったはずだが?」
「んぐ……ん……」
 すぐには答えが無かった。
 右の乳首にスティックを押し当てているだけだが、目を瞑った憂の表情には喜悦の色が見て取れた。しかも、ペニスは明らかに勃起しかけている。
「憂?」
 再度問いかければ、慌てたようにまぶたを開けて、関根を見つめる。
 その濡れた瞳が、記憶を思い出すように、宙をさまよって。
「あ、……ピアス……今は、外していて……」
 とたんに、乳首の欄に「ピアス」が増えた。無難なバーベルタイプのピアスは、説明によると直径が2.5mmの定番サイズだ。
「そう、じゃあつけて上げよう」
 クリックすれば、すぐさまピアスがマスターの手によって憂の手元に届けられた。
「ああ、憂はバイブで遊んでて良い。マスターに付けて貰え」
「は、……いっ」
 声音も欲に濡れている。
 敏感な憂は、たとえ乳首であろうと他の性器と遜色ないほどに感じる。
「ひっ、ひぐっ……痛っ」
 マスターの手つきは容赦が無かった。
 カメラの邪魔にならないように横から伸びた手は、遠慮仮借無く憂の乳首を引き延ばし、すりつぶすように指先で捻ってから、ピアスを差し込んでいく。
「ふふ、気持ち良いだろう?」
 憂のペニスが悦んでぴくびくと震えていた。鈴口からぷくりと透明な粘液が溢れ、垂れていく。
 幾筋も幾筋も、上の口から流れ出す涎のように流れて肌を汚した。
 そんな憂の媚態に、関根のペニスもズボンの中ではち切れんばかりだ。
 蒸れてじっとりと湿った股間は、その締め付けも心地よく、服の上から撫でさすれば、背筋が震えるほどの快感が込み上げる。
 マイクをつかの間切って、はあ、はあと荒い呼吸を繰り返して、息を整える。
 欲情に澱んだ瞳に写る憂の恥ずかしげな姿が、どこかぶれて見えた。
 直接触れられないというもの足りなさは確かにあるけれど、なかなかどうしてこれも愉しめる。何より、どうやって憂にアイテムに結びつく言葉を言わせるかという愉しみもある。
 アイテム欄をコンプリートしたい、と関根は、まだまだたくさんありそうな空欄を数えてみた。
 画面の中では、憂が堪えきれないとばかりに熱い吐息を零し、乳首を嬲っていた。その乳首にシルバーのピアスがきらきらと光っている。
 俺だったら、ずっしりと重いシルバーアクセサリーのクロスの飾りを取り付けてやるのに。
 ゲームの中に、そんなアクセサリーを手に入れるシステムは無いのだろうか?
 もしくは、課金アイテムで……。
「……50……個か」
 少なくともそれだけの空欄がある無料アイテムは、いったいどんな物があるのだろう?
 それに課金アイテムは、いったい何が手に入るというのか。
 憂から聞き出すべきキーワードは淫具の名前や、卑猥な言葉がそうなのだろうと考えた関根は、今までさんざん観たDVDの内容を脳裏に思い描いた。
「憂は乳首を弄られるのが好きなんだな。そういえば、二枚目のDVDを覚えているか? 処女を喪失した日に男達にさんざん犯されたときに、乳首に付けられた道具があったのを思い出したよ。憂も覚えているだろう? あれはなんて言う道具だったっけ?」
「え、あっ……」
 思い出した憂が怯えたように首を横に振った。
「し、知らない、です、名前……なんて……」
 ただ、犯されただけの憂は、確かに知らないだろう。だが。
 マスターが近づいて再び耳元で囁いて。
「ニ、ニップル……クリップ……」
 知ってしまったら言わなくてはならないルール。
 憂に課せられたルールは、彼にとってはひどく残酷なものだ。その事実が、関根を高ぶらせる。
 増えたアイテムの説明を読みながら、次はどのアイテムを出させようかと思案した。
 花火の時に挿入させられたパールローターが良いか、もっと徹底的に乳首を苛める物を出すか。
 ニップルクリップをクリックしながら、関根は愉しそうに命令した。
「自分の手でつけるんだ。乳首が歪むくらいにしっかりと締め付けないと罰を与えるよ」
 画面いっぱいの憂の顔がくしゃりと歪んで、その頬に涙が流れる。
 始まってから15分程度しか経っていない。
 それでも早いと感じながら、関根はこのゲームにずっぽりと嵌っていた。


後編 綱紀side