広いバスルームで、四つん這いになって春樹に口で奉仕する。
さっきまで亮太は春樹の手のひらで泡だらけにされていた。
ようやくキレイになった──と春樹が流してくれるまでずっと、全身を愛撫され続けていたのだ。
薬の効果も残っている体に与えられる愛撫は、泣きたくなるほど気持ち良くて。
けれど、我慢も強いられるのが、堪らなく辛い。
「ん……いいよ、隅々までキレイにしてね」
舌先がくぼんだ部分を舐めとると、もっとと強請られ、舌の動きを速くした。
「尻尾、可愛い。メス犬は嫌いだけど、亮太の尻尾の動きを可愛いね。白いもこもこの犬みたい」
言われて、崩れ落ちそうになる四肢をなんとか踏ん張って腰を振る。そのたびに、深く潜り込んだアナルバイブが、前立腺を押し上げて全身が硬直して崩れかけた。
けれど、射精の許可は出ていない。
陰嚢の動きを完全に遮る拘束具にペニスバンド。細いとはいえ、尿道に棒まで刺さっている。
二重三重の制限をされては、どんなに射精衝動が強くても達けるものではなかった。
「いいこ、亮太」
うっとりと呟く春樹の言葉に、吸い付きを強くして、舌をさらに絡めた。
先走りが口内全てに行き渡って、溢れそうになる前に飲み下す。
春樹のペニスを含んでいると、自分のもしたくて堪らなくなる。
昔、ぺろぺろと犬が自分の股間まで舌を届かせる姿に、やってみたいと見入ってしまったことがあった。
今も、犬のように自分のペニスを舐める姿が脳裏に浮かんでしまう。
そのくらい、亮太のペニスは血管を浮きだたせて、限界を訴えていたのだけど。
「ああ、今度は亮太のアナルでしゃぶって欲しいな」
春樹の懇願という名の命令に、亮太の願いなど消え失せる。
「手を使わないで出せる?」
「は、い……」
力を入れるたびに、太いバイブについている瘤が前立腺を抉る。
がくがくと腰が震えて、今にも崩れ落ちそうになる。
「亮太?」
「あ、待って……あ、や……」
「おやおや、普通に排便するのと同じ要領だろ。──ああ、もしかして亮太は、排便でも感じる子なんだ?」
「……は、い……」
そんなはずはないのに、それでもそうだとしか言えない自分に、返事をしながら、涙が溢れる。
「へえ、そこまで淫乱な体なんだ。良かったね、俺と出会えて。俺なら、亮太を満足させられるもんね」
「は、はい。亮太に会えて……良かった……」
会わなければ……どんな生活をしていただろう。
会わなければ、こんな体になることもなかった、と何度思ったことだろう。
タクシーから見えたクリスマスツリーの飾りの星に、時を戻してくれと、願いそうになったことだけは、絶対に隠し通すつもりだったけれど。
「俺と亮太は出会う運命だったんだよね。たぶん、どんな道を歩んでいたとしても」
その言葉に体は悦び、けれど、心は冷水を浴びせられたかのように、震えてしまう。
ささやかな願望すら許されない。
亮太にできることは、ただ春樹に従うことだけだ。
「は、はるきぃ……くるしっ……」
肉壁にひっかかってなかなか出て行かないバイブに、泣き言を零す。
「ん?、ちょっと太かったかな。ほら、しっかり踏ん張って」
「ん。くぅっ──んあぁっ」
春樹の言葉に息んだ拍子に、思いきり良く引っ張られて。
力の入った内壁を、無数の瘤が抉りまくる。
「あ、あ、っ──ぁぁっ」
全身を仰け反らせ、激しい絶頂とそれに続く余韻を甘受する。
射精衝動のままに動いた陰嚢とペニスから鋭い痛みが走り抜けた。それでも、快感の方が強い。
「あ、達くっ、達くぅ──っ」
実際には達っていないのに、いつまでも達っているような快感に襲われ続けた。終わりの見えない絶頂に翻弄され、獣のように唸りながら腰を振りたくる。
「可愛いよ、淫乱な亮太。そんなに腰を振って、ひくひくさせて。ね、どうしたい?」
甘い声音に、止まらない絶頂を何とかして欲しいと縋り付いた。
「は、はるきがほしいの……ねえ、ほしい……」
目の前にあるペニスにむしゃぶりつきながら、これが欲しいと訴える。
春樹が満足しないと許可されない射精を求めて。
天にも昇る快感も、過ぎれば地獄に落とされたのと同じ事。ただ、助けが欲しくて、必死になる。
「俺の尻を掘って、抉って、掻き回して。淫乱な俺を春樹で染めて」
まだ一度も射精していない春樹を達かせようと全身を使って奉仕する。
春樹のペニスを掴む指から滴り落ちた唾液が、肘を伝ってタイルに落ちた。くちゃくちゃと水音が湯気のこもった室内に響く。
「はるきぃ、イッて……、ねぇ」
「まったく、亮太ったら、そんなに俺のザーメン飲みたいの? 好きだねぇ」
「ん、好きだから……ザーメン好きだから……」
「良いよ、あげる。飲んだら、そろそろ出ようね。のぼせそうだよ」
ニコニコと笑う春樹の精液を、口の中で味わいながら飲み込んだ。
けれど、春樹の言葉は、まだまだ達かせて貰えないことを示していた。
舌にまとわりつく精液の苦さのような苦い思いに晒されて、亮太は泣き笑いながら頷いた。
あれから一晩中。
聖夜だからという理由で、亮太は春樹に嬲られ続けた。
ひくひくとひくつくアナルは真っ赤に充血し、ペニスはすでに出す物など一滴もないとばかりに萎びている。
まだ若いはずの亮太の体は、今は重病人と等しく、身動ぎすることも苦痛になっていた。
「亮太、父さん達からクリスマスプレゼントが届いたよ」
そんな亮太の枕元に、春樹が嬉々として二つの包みを持ってきた。
「これが、俺の。こっちが亮太の」
真っ赤な包装紙と濃緑色のサテンのリボン。
クリスマスカラーのそれは、手のひらにに載せられると結構重い。
「開けて上げるね」
その言葉に、こくりと頷く。
さんざん喘がされた喉は、今は喋るのも辛い。
春樹が嬉々として開けているのを横目で見ていると、真っ白なケースが出てきていて。
「……な、に?」
しゃらしゃらと掠れた音をたてながら、箱から流れ出したのは、プラチナのチェーン。
けれど、首飾りにしては長い。
「亮太の可愛い乳首にこちらをつけて」
不意に布団をずらした春樹の手が、亮太の乳首に伸びたとたん。
「ひっぃ──」
熟したラズベリーのように腫れ上がった乳首に鋭い痛みが走った。ついでもう一つの方にも。
さらに、鎖が無数の鬱血痕を残す肌の上を走り回る。
「い、あっ──は、はるぅ……あぁ」
ペニスのリングが嵌められる。
その根元にもチェーンがつながれていた。
「ほら、ひっくり返って」
動かない体を返されて、背にも回されたチェーンは、首にも巻かれ、さらに手首や足首にまで伸びる。
「あ、よく似合うね。さすが父さんだ」
また仰向けに返された時には、長いチェーンが全身に巻き付いていた。
「首のチェーンも、手足のも、服を着ていてもアクセサリーとして見えるようになっているね」
鏡に写してみれば、首や手首、足首は少し太い喜平のチェーンになっていて、長袖服を着ても見える位置だ。ごく普通のアクセサリーに見えるだろうけれど、実際にはうまく分岐ができていてそこから全身に向かって、肌をチェーンが飾り立てている。
そのどれもが、亮太を苛むものばかりだ。
乳首のクリップはぎりぎりと食い込むし、ペニス部分は射精の制限と同時に、身動ぐたびに裏筋やエラを刺激する。アナルのところは大きな玉が体内を貫くように三個ついていて、固定するかのように食い込んでいた。肌のところどろことにも歪な形の物がついていて、そのどれもが亮太の性感帯を刺激する。
「は、るき……これ……」
「すっごい似合う。やっぱり亮太は可愛いね」
似合う似合うと悦ぶ春樹は、それがたいそう気に入ったようだ。
自分が貰った太い鎖でできた手綱付きの首輪を手のひらで弄びながら、どこで使おうかなどと言っている。
「ああ、そうだ。今度、高藤の屋敷に帰る時に付けていこう。大晦日から日の出まで、毎年夜通しいろいろな事して楽しむのが通例なんだ。その時に亮太はそれを付けていくといいよ。可愛いってみんな褒めてくれるよ。──あっ、それとさ、屋敷まで車で行こうと思ったけど、電車でゆっくりと行くのもいいね」
「え……」
「屋敷の中に入ったら、今度はこっちもつけてみようね」
だから、尻尾も手配しようかな?。
などと浮き浮きと宣う。
「あ……い……」
イヤだ。
そう言いたいと口が言葉を形作る。
「どう、いい案だろ?」
けれど、春樹が亮太を見下ろしたとたん、亮太の口は働くのを止めた。そのかわりに首が、こくりと動いたのだった。
【了】