【春樹と亮太 後編】

【春樹と亮太 後編】

「可愛い子。ちゃんと迎えに出られたんだね」
 亮太はエレベータホールまで迎えに来ていた。
 最上階まで上がったエレベーターを出て、左に一部屋しかないフロア。
 そのエレベーターの扉がひらいてすぐに亮太の姿を見つけた春樹は、嬉しそうに微笑んだ。
「そんなに待ちきれなかった、俺が?」
 その問いかけに、亮太はその端正な顔を歪めて、唇を戦慄かせながら、それでもかろうじて頷いた。
「は、い……、春樹が……待ち遠し、かった……」
 全裸で大きく股を開いて床に座り込みペニスを扱いている亮太が、涙を滲ませた顔で春樹を見上げる。
「そんなに? 可愛いけど……ひどく厭らしいね。俺じゃなかったらどうするんだい?」
 このフロアに上がってくるのは、春樹達だけだけど。それでも、間違えて上がってくる人もたまにはいるし、警備員が巡回することもある。
 それを亮太は良く知っているはずなのに
「アナルまで丸見え。しかも濡れているよ」
 ──今、下。エレベーターホールで全裸で大股を広げてオナニーして良いよ──
 許可してあげたら、こんなにも欲に従順に行動する。そんな亮太はとても可愛い。
 もっともっと淫らにさせてあげたい。欲望の望むままに。
「たらたらと……いつから女になったのかな?」
 辱めの言葉も亮太は大好き。
「あっ……はっ……」
 つま先で軽く突いただけでひくりと喘ぎながらさらに滲み出た粘液は、その僅かな芳香でアナルを解すのに使う潤滑剤だと気が付いた。
「ふーん、誰と遊んだ。濡れ濡れじゃないか」
「いっ、ちがっ……ひぃっ」
 ぐりぐりとアナルにつま先が食い込むほどに押しつける。
 夕方とはいえ、まだ明るい。
 マンションの廊下の壁は高いから外からは見えない。だが、完全に壁で遮られている訳でないから声は遠く響く。
 亮太が慌てたように口を塞ごうとするのを見て取って、春樹はその腕を掴んだ。
「いいぜ、声を出しても。誰かに聞かれても教えてやるから。亮太がこんなところでオナニーしてた声だって」
 腕を掴んで、にっこりと微笑む。
 その言葉に、亮太がくしゃりと顔を歪ませた。透明の滴がその頬を流れ落ちて、腕が下ろされた。
「好きだろ、声出すの」
「は……い……んっ、あっ」
 震える10本の指がペニスを掴み、ごしごしと擦り立てる。
「でも、これは何? 誰に突っ込んで貰ったんだい?」
 柔らかく解れたアナルは、靴先をどんどん銜え込んでいく。
「ひっ、あっ……違っ、み、店で──ぇ、ひっ」
「店?」
「は、はいぃ、店で、試して……。あぁっ」
 ぐいっと押し込めば、シワが無くなるほどにアナルの壁が伸びる。
「何を試したって?」
 はあはあと仰け反りながら喉を晒して喘ぎ声を零しながら、亮太はペニスを自ら扱き立て、春樹の靴を悦んで受け入れていた。
「あ、新しっ、潤滑剤……を、試せって……ひあっ、あぁっ、──はあっ、言われて。試した、だぁけぇ……ぁっ」
「どこで?」
「あっ、あぅっ──お、お店で……っ」
「店内で? どんな姿で? どんなふうに? 教えてよ、ね、亮太」
「あっ、ひあっ。あ、お、店の中……奥の、ステージでっ、あぁっ」
 ぐりぐりと食い込む靴先にさらに力を込める。
 一番太いところになると今にも肉壁が裂けそうだが、春樹はさらにぐいっと力を込めた。
 この程度、亮太の身体は悦んで銜えるのを知っているからだ。
「どんなふうに試したんだい? 亮太ってば、みんなに見てもらったんだろう?」
「ひっ、ひいぃっ! あっ、見、見られたっ、いっぱいっ。だってっ、試さないと、売らないってぇぇ、ああっ」
 ひいひいとよがり狂い、仰向けに倒れてしまった勢いで、靴先がずぽりと抜ける。
 ぽっかりと空いたアナルから、だらだらと透明な潤滑剤が流れ出てきた。
 ──これが白く濁っていたら、さすがにお仕置きしなきゃいけないって思ったけど。
 くすりと微笑み、ぶるぶると喘ぐ尻を汚れた足先で突く。
 亮太が言っている店は、いわゆる『大人の玩具』の店で、裏で非合法品も扱っているような、かなり危険な店だ。繁華街から外れた薄汚い裏道の奥にある。
 大好きな玩具を、亮太は毎週のようにその店に行って買ってくるのだ。店長お勧め品の潤滑剤や薬、玩具など、惜しむことなく買ってくる。
 そのお勧め品が、今日は潤滑剤だったのだろう。
 潤滑剤がアナルからたらたらとかなりの量が流れ落ちる。
「ふ?ん、みんなに見られながら尻に入れたわけ? こんなにたくさんね」
「だっ、だって……入れないと、ひっ! あうっ、売ってくれないって……」
 あの店長なら言いそうだ。
 と、馴染みの男の下卑た笑みを思い出す。
 あの店長は、亮太が春樹の何なのかを知っている。どこまで店でやって良いかも、把握している。
 先週は、アナルにパールローターを挿入されたまま帰ってきた。
 その前の週は、セーラー服で女装して帰ってきた。
 生身の挿入は禁止しているが、玩具を試すのは亮太も好きだからと店長に許可している。
「見られて、興奮した?」
「は、はふぅっ」
 三本の指がすんなりと入るほどにアナルはとろとろに解れている。
 さっき靴先をつっこんだせいだけではない熱を持った内壁を、指でぐいぐいと突き上げた。
「ひっ、ひぃんっっ!、やあ、はるっ、はるきぃ、そこ、やだあ」
 抽挿の度に、ぐちゃぐちゃと激しい水音が響く。
「良い声。でも階下まで聞こえているね。みんな聞いているかもね」
「あ、あん、ひい──っ、そな、こと……ちがっ」
 亮太は恥ずかしがり屋だからも知られたくないと思っているようだ。けれど、声が漏れない訳がない。
「厭らしい、亮太。そんなに聞かれたい」
「い、いやっ」
 ぶるぶると首を振る亮太の足を抱え上げた。
 手際よく引っ張り出したペニスをアナルに突きつける。
「まっ、待ってっ、はる──あぁっ!」
 一気に奥まで突き上げた拍子に、ひときわ甲高い声が響いた。その声は、絶対に響いている。階下に、そして……。
 M字開脚にして膝裏を抱え上げて、股間を天井に向ける。
 下から突き上げるたびに亮太は仰け反り、堪えきれない嬌声を上げていた。
 くぢゃぐちゃのアナルから、泡立った液が溢れ、溢れ落ちる。背後から手を伸ばして乳首を摘み強く引っ張れば、可愛い声を上げて鳴き続けた。ペニスがきゅうっと締め付けられ、亮太が感じているのがよく判る。
「可愛いね亮太。俺を感じてる? どこが一番気持ち良い?」
「あっ、んあっ。あ、お乳もっ、あん、尻もぉっ」
「ここ?」
「ひぃぃっ!」
 引きちぎらんばかり乳首を引っ張った。
 痛みに流れる涙を舌を伸ばした舐め取って、真っ赤に熟したイチゴのような乳首を見つめる。
 口の中に込み上げる唾液をごくりと飲み込んで、唇の端に垂れかけた液をぺろりと舐めた。
「痛いのも好きだよね、亮太は」
 両方の乳首をぐりぐりと押しつぶすように爪で抉れば、ひときわ甲高い嬌声が迸り、アナルが激しく収縮する。
「あひぃ、ぁぁんっ、んくぅっ!」
 腰を強く突き出せば、自分から押しつけてきて貪欲に快感を貪り続けていた。


「なぁ、亮太」
「あ、んあぁ──。はあぁんっ、は、はるきぃ……達かせてぇ」
 すでに意識が朦朧としているのか焦点の合っていない亮太は、もうここがどこだか判っていないようだ。
 ふらふらと身体を揺らがせて、背後の春樹に身体を擦りつけている。
 粘液まみれの指が、焦れったそうに拘束具を引っ掻いて、ペニスにはひっかき傷ができていた。
「達きたい?」
「あ、ぁぁ、達きた──いっ、達かせてぇ」
「そう」
 さらりと応えはしたけれど、春樹はリズミカルに腰を打ち付けるだけだ。
「けどさ、この方が気持ちいいんだ。良く締まって。亮太も好きだろ」
 ずっぽりと銜え込んだ春樹のペニスを放すまいと、きゅうきゅう熱い肉壁が脈動しながら締め付けてくる。
 こりっとした僅かなしこりが亀頭に当たると、そのたびに、亮太が、ヒンヒンと子犬のように鳴くのもとっても心地よい。
 昨夜さんざん嬲って、精液もたっぷりと注いだというのに、若い春樹の性はまだまだいくらでも放出できそうだ。
「……亮太は本当に貪欲だね。俺のタンクを毎日毎日空にしても、まだ足りないのか?」
「あぅんっ──。はるきぃ……、達かせてぇ、お願いぃぃ」
 亮太の股間でずいぶんと重たそうな袋が、振動の度にたぷたぷと揺れていた。
 顎に伝う涎が、喉を伝ってコンクリの床にぽたぽたと落ちている。大腿を伝った粘液が、膝の下で液溜まりをいくつも作っている。
 明日になれば、清掃業者が首を傾げながら掃除してくれるだろう。
「亮太、大好物のザーメンだ、たっぷり飲みな」
 思いっきり腰を押しつけて、欲望のままに放出する。
「んぁぁ──ぁ」 
 とろんと夢見ているような表情で、亮太は春樹の精液全てを飲み込まんとばかりにアナルを収縮させていた。
 その股間で、拘束具のせいでグロテスクなまでに歪に勃起し、変色しているペニスが所在なげに揺れている。
 お漏らしでもしたようにアナルまでびしょびしょで、廊下の染みはさらに広がっていた。
 そんな姿を見ているのは春樹だけだと、亮太は思っているけれど。
 春樹の視線がちらりと上がる。
 エレベーターの中はもちろんのこと、エントランスも各階のエレベーターホールにも、設置してある全ての監視カメラが大きなレンズをこちらに向けていた。



 朦朧としている亮太を室内に連れ込んで、汚れた身体をバスルームで洗い流した。敏感な肌に手でボディソープを塗りたくり、全身でマッサージをしてやると涙を流して悦んでくれるから、いつもとても愉しい。
 さっぱりと綺麗な肌になった亮太からは、ソープの香りしかないことが少し残念。
「さて、今度は何する?」
「……達、かせて……」
 部屋に戻ってラグマットに二人揃って座り込みながら問いかけると、縋るような視線が返ってきた。
 目の前で煌めく髪の毛にキスを落とす。
「うーん……どうしよう──って、あぁ、そうだ」
 そういえば、そろそろ亮太にも教えて上げようと思っていたことがあった。
 きっと悦ぶだろうからと思って、伝えるタイミングを計っていたのだ。
 嬉々としてパソコンを操作し始めた春樹に、亮太が不思議そうに見つめてくる。
「これ、判る?」
「な、何、これっ」
 見せたとたんに、疲れ切っている筈の亮太が跳ね起きて、ディスプレイを覗き込む。
「そんなに近くなくても見れって。ほら音量もUPするから」
 とたんに、室内中に亮太の喘ぎ声が響いた。
『あぅんっ──。はるきぃ……、達かせてぇ、お願いぃぃ』
 コンクリの床の上で、腰をふりたくり男のペニスを貪る亮太が画面いっぱいに広がっていた。
「こ、これっ、そこの廊下っ」
「そうだ、ついさっきの亮太だよ」
 一カ所しかカメラがないから、なかなか良いアングルで撮るのは難しい──と、担当者が言っていたが、なかなかどうして、短時間でよくもこれだけ、というくらいに見事な編集で亮太の素敵なところは余すことなく写っている。
「ああ、ほら俺が達った時に、こんなにいやらしい顔して悦んでいたんだよ」
 画質も、普通の監視カメラの比ではない。
 最初から最後まで、全て高画質のデジタル映像で残している。
「これね、ここで見れるんだよ」
 ブラウザを起動して、リンク先でIDとパスワードを入れると、亮太も知っているサイトが現れた。
「……こ、れ……この、マンションの?」
「そう」
 このマンションは、全室インターネットが開通してマンション専用のお知らせ版機能を持たせたサイトも開設している。その管理を依頼しているのは、三階に入っている派遣会社だ。
「ほら、ここだ」
 マウスで示した場所は「RYOTA’S ROOM」ととても判りやすい位置と名前でリンクがあった。
「もともとは海外のアダルトサーバーで一般公開していた亮太の写真集サイトだったんだが、そろそろマンションの人たちにも亮太の事を紹介しようと思ってさ。で、動画も加えて公開したんだ」
 淡々と説明する春樹の言葉に、亮太の瞳が大きく見開かれた。
「……一般公開? 写真って……?」
「ん、ああ、写真ね。だって、あんなに可愛い亮太の写真を俺だけで見るのはもったいないしね。ああ、ちゃんと目の辺りは隠しているから、パッと見は判らないと思うけど」
 もともとほとんどペニスしか写っていない写真ばかりだから。
「でもっ、公開なんてっ、何でっ!」
「言ったろ、可愛いから」
「だからって、言っても……、それに、この映像は、顔なんか隠してないじゃないかっ」
 真っ赤になって興奮している亮太が、呆然と画面を見続けている。
「動画はマンションの人だけだ。いくら亮太が見られるのが好きでもね、変な奴らにつけ狙われても堪らないしな」
 このマンションの住民は、ほとんどが春樹が選んだ人間ばかりだから素性がよく判っている。
 玩具の店の店長はもちろんのこと、高藤家の裏の仕事も担当している警備会社の社員達も。3階の派遣会社はホームページ作成の仕事も引き受けているけれど、本業は男相手のデリバリーホスト。滅多に顔を見せない派遣社員が何人いるのか誰も知らないが、そのうちのS担当の数人は、このマンションに住んでいる。
 5階の一見知的で礼儀正しい初老の紳士の趣味は、若い男を嬲り尽くすこと。特にろうそくが大好きで、春樹も手ほどきを受けたことがある。その近くの部屋では、犬のように男を飼っている青年がいて、いろいろと教えてくれる。
 9階には、高藤家の外科の主治医を勤める男の部屋があって、実は亮太の兄や父親は何度も治療して貰っているのだ。
 亮太にはまだしていないけれど、そろそろピアスでもしようかと思っている春樹は、今時期を見計らっている最中。
 このマンションに住んでいるのは、性的欲求の激しい者達──しかも、嗜虐性の強い者達ばかりだった。


 ほら、と次をクリックすれば、そこにあるのは掲示板だ。
「こっちがマンション用。で、こっちのリンク先にあるのは、フリーの方の掲示板。全部亮太宛のメッセージだから、英文もあるけど、亮太、OKだろ。だから全部返事しなよ」
「そ、そんなの……、そんなの……」
 目の前に広がる現実に、亮太の激昂が急速に冷めていく。
 へなへなと床に尻を付いて、たくさんの卑猥なメッセージを呆然と追い続ける。
 あんまりたくさんあるから、大変だろうけれど。
「みんな、亮太の返信愉しみにしてるぜ。亮太の大好きな厭らしい事、たくさん来てるようだし、良かったな。リクエストもいっぱいあるから、今度から写真撮る時のネタにできるぜ」
「ちが……、こんなの……、こんなの……」
 唇が震えていた。色を失った顔は、少し湯冷めしたせいかもしれない。
「亮太、そろそろ続きやろうぜ」
「ひ、ひぃっ、やあっ」
 腰を抱え上げて下ろすと、難なく春樹のペニスを銜え込む。
「大丈夫、亮太の”アナル”は俺だけのものだからね」
 指先で顎を上げさせて、涙に濡れた唇を貪り尽くす。
「動画、次はどんなのが撮りたい? 亮太が好きなところで撮ってやるよ」
「んあっ、……あっ、やぁ……」
「庭で撮ろうか? それとも学校? 下の上崎さんって撮影のプロなんだよ。今度はもっと上手に撮ってくれるかも」
「そんな……んぐっ」
 嬉し泣きの涙を零す亮太の唇を奥まで嬲り犯すと、ひくひくと全身を震わせていた。
「亮太、達くか?」
「ひ、ひぁっ」
 まだ弛めていない拘束具ごとペニスを扱き立ててれば、可愛い声で鳴いてかくかくと頷く。
「ん、でも、もうちょっと遊ばせて」
 押し倒して四つん這いにさせて、一気に奥まで挿入する。
「あ、あっ、ひぁぁぁ──っ」
「ね、撮って貰いたい?」
 ぱんぱんと尻タブが鳴るほどに激しく深く打ち付ける。
 もう感触だけで場所が判る前立腺をメチャクチャに穿ってやれば、亮太の限界は早い。
「やあぁ、──ぁぁ、判ったっ、判ったからぁ! 春樹の言うとおりにするからっ」
「ほんとに?」
「ほんとにっ、やるから、お願い、ちょうだいっ、達かせてぇっ」
 その言葉と共に、思いっきり打ち付けた拍子に、勢いよく拘束具を外した。
「ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁ──っ」
 長く、息が続く限り出て行く嬌声。
 ぶるぶると震える鈴口から、あちらこちらに白濁が飛び散っていく。
 その最中も、亮太の身体を刺激するの止めない。
「じゃあ、今日は良い子の亮太をいっぱい達かせてやるよ。ここが空っぽになるまでな」
 がくがくと未だに痙攣している亮太のアナルを犯しながら、うっとりと宣う春樹だった。
【了】