【嶺江の教育 3年目 全ての始まり(3)】

【嶺江の教育 3年目 全ての始まり(3)】

 休憩時間は二時間だけ。
 続くお披露目の儀までの僅かな時間に、初めて男を受け入れたレイエはあまりのことに呆然自失のままだった。
 二時間の間、誰かのペニスが必ず入っていたし、乳首はさんざん弄られて腫れ上がり、ペニスは勃起したまま一度も萎えていない。
 だが、時が過ぎてしまえば、お披露目の儀が始まる。
 休憩にもならなかったからといって、レイエを休ませる人間は誰もおらず、ガジェに付き添われて遅れて会場に入ったレイエは、座ることもできないほどに来賓への挨拶に追われていた。
 動くのは辛い。
 けれど、長年にわたって玩具を受け入れ、それらに犯され続けた体だ。疲れ切って動けない程ではない。ただ、どこか足下がおぼつかないまま、自分が何をしているのか判らなくなることがあった。 
 ふらりと体が揺らぎ、慌てて足を踏ん張る。途端に流れ出る感触に、慌てて尻にも力を込め、ぐっと喉の奥から迫り上がる物を飲み込んだ。
 泣きたいほどに辛いけれど、今は泣くわけにはいかなかった。それよりも、ここは微笑み続けなければならない場所だということの方が辛かった。
 目の前に寄ってきた高貴な礼服に身を包んだ隣国の王子と握手を交わして、今日の来訪の礼を言い、今後の良き付き合いをお願いする。
 ただひたすら、それを繰り返す。
 少しでも不審な目で見られるような態度は取らない。気付かせてはならない。それこそ、ほんの僅かでもだ。
 煌びやかな照明とゆったりとした礼装や華美なまでの装飾品のせいか、気が付いた素振りを見せる者はいない。けれど、その衣服の下は、淫らなまでに朱色の斑点と歯形の後に彩られており、しかも体は汚れたままだ。
 その体は、注意深い者がじっくりと観察すれば、不審な点はいくらでもあっただろう。
 誰のともつかぬ体液に汚れた体は、それに濡れたまま礼服を着せられていたのだ。しかも、ペニスには棒が突き刺さったままで、その奥には出すことが許されなかった熱が渦を巻いている。初めて男のペニスを受け入れたアナルは、じんじんと熱を孕み、未だに異物を銜えているようだ。さらに中には掻き出すことも許されなかったガジェの精液が注がれたままなのだ。
 動けば、締まることを忘れたアナルから、精液がたらりと大腿に流れ落ちてくる。
 仄かに、とはいえないほどに匂い立つ淫靡な臭いに、それも気になって緊張するレイエから、ガジェは片時も離れることはない。
 崩れそうなレイエを視線で叱咤し、敏感な耳朶の後ろを、髪を直す振りをして濡れた指先で嬲る。そこからも臭いが沸き立つのは、レイエの礼服内に入れられた精液まみれのハンカチから移されたものだ。
 リオージュが笑いながらレイエの絹のハンカチに射精をし、ラオールがレイエの顔に出した精液をそれで拭いた。たっぷりと濡れたままのそれを、そのまま胸ポケットに捻りこんだものがそこにある。
 時間が経って耳元の精液が乾けば、ガジェが衣服を直す振りをしてそこに指を入れ、湿っぽいそれから臭いの元を削り取り、レイエに擦り付けた。
 香油を加えて梳かれた髪からは淡いバラの匂いも湧いていて、それがかろうじて周りの人々から卑猥な臭いを隠している。けれど、レイエ自身の鼻には、その場所からの臭いがもっとも伝わってきてしまうのだ。
 緊張に震えるレイエの耳元で、ガジェが囁く。
 ──少しでも愚かな真似をすれば、この淫猥な体が白日の下に晒されるだけ。
 それが決して嘘だとは考えもしない。
 レイエが本能的に悟ってしまったのは、今まで三人から受けた数々の躾のせいだ。
 新しい召使い達にまで知られるわけにはいかない。今日の良き日を祝ってくれる賓客にばれるわけにはいかない。
 自分が王であるならばこそ、なおのこと。
 その決意の元に、とりあえず礼を尽くすべき来賓への挨拶が済んで、玉座に腰を下ろした途端、たらりと流れた粘液に身が竦む。触れる衣服が、腫れ上がったペニスと乳首をいたぶり、そこからうずうずとした快感が湧き起こった。先ほどまでの激しいものとは違う弱いはずのそれに、けれど全身が震えて止められない。
 零れる熱い吐息は湿っぽく、孕んだ熱に瞳はどこか揺れて、儚げで。
 来賓の視線は、美しい王に釘付けだ。
 その視線を浴びているせいで決して息を抜くことのできぬ時間は、こんな時に限ってゆっくりにしか進まない。
 新生リジンの王として振る舞うよう言い含められている身としては、それ以上に兄達の悲願であったこの日には恥ずかしい失態はしたくないと必死になって、レイエは笑顔を浮かべて来賓への礼を尽くした。
 それは、王が退出しても非礼にならないほどの時間が経過するまで続いていて。三時間後に退出したレイエは、背後の扉が閉まった途端に、ガジェの腕の中に崩れ落ちるように意識を失っていた。



 輝かしい晴れの日から一年と半年が経ち、リジンは小国ながら王国として立派に成り立っていた。
 ラカンの支配下とは言え、自治は認められている。
 王になる前にこの地で見て学んだ経験を生かし、レイエは民から評議員を選出し、ラカンから配置された大臣達とともに政に参加させた。
 ガジェまたそんなレイエの意に沿うように、評議員と意見を戦わせつつも、うまくリジンを纏めている。
 つい先日王子を産んだ王妃は、産後の肥立ちが悪く体調が芳しくない。産前からずっと民衆の前に姿を現さない王妃の回復を祈る言葉も、毎日のように聞かれる日々。
 それでもあの二人の子だから王子もたいそう美しかろう、と、民達も聖誕祭の日を一日千秋の思いで待っているのも事実。
 ラカンからリジンに戻されると聞いて、不安に思った民は多かったが、今のレイエ王ならば決して自分たちの悪いようにしないと判ってからは、忠誠心もかなり育ってきている。そんな時の王子誕生は、皆に歓迎の意を持って迎えられた。
 レイエも、民衆の前に姿を現せばいつでも歓喜の声で迎えられ、隣国からも賢王として賞賛されるほどになっていた。


 実際、レイエもあの結婚式の日以来、ほとんど王妃に会っていない。
 今日は実に三ヶ月ぶりの顔合わせだ。まだベッドから動けないと、ガジェ達側近とともに、王妃の寝所を訪問する。
「どうです、レイエ様。久しぶりのシュリン様の肉壺は?」
「そこはレイエ様だけのものです故、待ちわびていたように吸い付くでしょう? 何しろ、シュリン様も毎夜のように女陰をひくつかせ、だらだらと涎を垂らして今日という日を待ちわびているのですからな」
 一糸纏わぬ姿で絡みあう二人を囲む人々は、いつでも二人の傍らにいる人々。
「それをいうならレイエ様もですよ。政務中でもシュリン様の女陰を思い出されて、陰茎から尻穴まで濡らして。我慢できずに尻を晒し、我らの陰茎を頬張ろうとされるのですから。ほら、せっかくですからもっと味わってご覧なさいませ」
「ああっ、達くっ、イクっ、もうっ」
 ほぼ毎日、尿道をみっちりと塞ぐ棒に塞がれて、夢精すら許されなかったレイエは、挿入しただけですぐに一回目の射精を迎えた。
 その快感に全身を震わせて、忘我の境地に陥ったように、虚ろな視線で喘いでいる。
 ほんとうに一ヶ月ぶりの射精の快感は、乾いた絶頂だけの快感とはまた違う。滅多に貰えない快感に、意識は早々に吹っ飛んでいた。
 そんなレイエの肉棒を女陰の奥深くまで銜えたまま、シュリン王妃は義父でもありリジンの右大臣でもある男の亀頭をその可憐な唇で挟んで、舌でちゅぱちゅぱとおしゃぶりのように吸い付いていた。
 くんくんと鼻を鳴らして、時折絶え入るように全身を震わせる。
 王子を産んで二ヶ月たった体は、召使い達の努力の末前と関わらぬ体型を取り戻していた。けれど、その乳房だけは多くの乳を孕み、掴まれるだけでびゅっびゅっと乳を噴き出していた。正真正銘の母乳は、大臣の強壮剤として朝昼晩と搾乳されているという。
 その体に、レイエの腰が突き出される。
「あ、ぁぁぁっ!」
 淫らな嬌声を上げながら、レイエが背後の男に手を伸ばした。
 首が無理に捻られ、背後の男の舌がきつく絡む。
「レイエ様、お久しぶりの王妃様との交尾が、たいそううれしいようですね。私のモノをそのようにきつく締め付けては、動くことができませんよ」
「だって……ガジェが、私をっ、ひあぁぁっ」
 言われるままに力を抜けば、いきなり激しく抽挿され、叫び声が上がる。
 その肉の狭間からぐちゃぐちゃと泡立った汚濁が幾重にも流れ落ちていた。今日は、特に会議も謁見の儀も無かったから、ずっと側近達に貫かれていたのだ。
 ガジェを筆頭に、リオージュ、ラオールの多量の精液は、レイエへ褒美として与えられるものだ。下の口だけでなく、上の口にも注がれるそれは、一滴も零すことは許されない。
 それが王としての仕事なのだからと言われれば、レイエは拒絶などできないのだ。
「好き者でございますな、我らが王は」
 嘲笑う言葉を耳にして、レイエは頭を振った。けれど、その目元まで欲情して紅潮した顔は、どこか淫らな悦びに満ちている。ただよく見れば、僅かに上がった口角は多分に自嘲めいたもので、しかも、まなじりからそれだけは透明な涙が汚れた顔に痕をつけながら流れ落ちた。
 あんあんと喘ぎ、尻を振っていても、男として、王としての矜持はいつでもレイエの元にある。
 王子である頃から、今は王であるレイエに、それを教え込んだのはガジェ自身だ。けれど、矜持を保つことを強要しながら、それら全てを打ち砕く行為もまた、ガジェによって与えられた。
 『男を狂わせる淫乱王』と、今のレイエを知る者は、皆そう言う。
 それもあからさまに指摘しながら、嬲る手は止むこと来ない。
「なんとまあ。レイエ様と来たら、あれだけ注いでもまだまだお元気なご様子。未だだらだらと子種を垂れ流して、喜んでおられるご様子」
「良いではありませんか。今宵はまだまだはじまったばかり。どうかたっぷりとお楽しみください。ご用があれば何なりと。どんなことでもお手伝いいたします」
 忠実なる臣下達は、政務に関しては非常に優れた素質の持ち主達ばかりで、新生リジンは、民と一体になって今や安定した国政を行っている。そして彼らはまた、当世きっての淫乱王であるレイエの性生活を満足させるべく日々努力していると公言してはばからない。
 決して民衆には知られることはないけれど、王と王妃、そして側近達の間だけの秘め事は、淫らな夜を幾度も繰り返しても守られていた。
 それもまた、ガジェ達の采配の成果だろう。
「さあ、次はこちらをお楽しみくださいませ」
「ひっ、それっ、やぁあ」
 パチンと嵌められた乳首のバネ。
「きゃっ、いやっ」
 伸びた鎖の反対側はシュリンの乳首に繋がっていて。
「引っ張り合いますと、お互いにたいそう気持ちが良いそうでございますよ」
 食い込む歯の痛みに顔を顰める二人に、男達の手がかかる。
「い、いやっ、痛い──っ、ひいっんむ」
「きゃあっ、ああぁぁ──っんんっ」
 睦言のような艶めかしい嬌声が歌声のように響く。
 王と王妃の逢瀬はこうして深夜に至るまで続くのが通例だ。もっとも、相手が王妃でなくても同じこと。
 隣室に居を構える側近達は、昼だろうが夜だろうが、常にレイエを満足させるために遣えているのだから。
「医師によると、明日からまたしばらくは王妃との性交はお控えした方が良いと言うこと」
 ラオールが、厳かに伝えてくる情報に、ガジェとリオージュが微笑んで頷き返す。
 ガジェの大きな手がレイエの顎を捉え、その耳朶に口づけながら囁いた。
「たとえ王妃様の元にお通いできなくても、我らがあなた様が望むままにこの体をお慰めいたしますので、ご安心を」
「いつでも、どんな時でも、レイエ様が望むときに望むままに」
「愛すべき王に全ての快楽と」
「全ての淫蕩な愉しみを」
 ラオールが愛おしげに、リオージュが嗤いながら口上を述べる。
そして。
「この息がある限り、与え続けることを誓います」
 最後に、ラオールが神聖なるものを相手にするようにその足下に跪き揺れる陰茎に口づけた。


 その誓いは、この年に産まれた王子が長じて即位するまでの間ずっと。否──33歳で退位したレイエが離れた別荘に居を構えても、違えることなく守られ続けたのだった。


【嶺江の教育 ?完?】