淫魔遊戯四十八手 その4ー自然錠ー

淫魔遊戯四十八手 その4ー自然錠ー

【淫魔遊戯四十八手 その4ー自然錠ー】

※とろろ、懇願、射精禁止、強制、カテーテル、尿道玩具※


 新たな男と共に、黒服達が持ってきたそれが何か、憂にはすぐに判ってしまった。
 体格に見合った男の大きな手のひら両方の手で支えても余る透明なボウルの中には、白くねっとりと糸を引く、とろみのある液体が入っている。表面に見える粗い粒が見て取れるそれに、床に座らされていた憂は知らず尻と手で後ずさった。
 すでに、いろいろなものをアナルから入れられたことのある身体が、記憶より先にその恐怖を思い出したのだ。
 嫌だ、と、堪えきれないままに首を振る。
 少し前に、言うことを聞かない罰だと言われて。
 あれと同じような——否、同じモノをアナルから胎内に溢れるほどに注がれて、縁から溢れるそれを封じ込めるようにと、裂けそうなほどに太いアナルプラグで塞がれたことがあった。
 自然薯を摺り下ろしたモノだと、何でも無いように言われた驚愕は、すぐに激しい掻痒感にかき消えた。
 あっという間に膨れ上がった熱と激しい痒みに、「抜いてっ、助けて、痒いっ」と、のたうつ憂を、鋼紀は庭へと引きずり落として。
 見事な日本庭園の一角にある大ぶりの松の木に背をつけさせられ、背後の幹に抱きつくように後ろ手で縛られた。足も、30センチほどの金属棒の両側に足首をそれぞれ繋がれて閉じないようにされ、そのまま一晩放置されたのだ。
 泣いても叫んでも。
 謝罪の言葉も聞き入れられないまま、剥き出しの神経を襲うような灼熱のような痒みに呻き、懇願を続ける。入れる際に溢れたとろろが、敏感な内股を赤く腫らしながらねっとりと伝い落ち、さらなる痒みを引き起こした。
 出したいのにそれを妨げるプラグは肛門の壁にあわせて深い溝があって、空気で膨らまされた内部は外に出ている分より太い。自分では出せないそれを、それでも吐き出したいと息むアナルから、入ったわずかな隙間を広げてブチュブチュとアクの強い液が滲み出る。泡が弾ける僅かな刺激が堪らなく心地良く、だが弱く敏感な皮膚に触れた液体は、新たな炎症を起こしてしまい、増してしまった強い痒みに気が狂いそうだった。
 夜空に響き渡るような悲鳴を上げたとしても、鬼のテリトリーであるこの屋敷は部外者を寄せ付けない。屋敷の中の住人は鋼紀配下の鬼達ばかりで、憂がいくら泣いて許しを乞うても、ただニタニタと嗤い、卑猥な揶揄で愚弄するだけだ。
 結局すぐに理性が痒みに負けてしまって、ひいひいと泣きながら背後の松に尻の狭間を押し付けて、腰を上下させてアナルを掻きむしった。
 松のささくれ立った木肌が、それでなくても腫れた尻たぶも太腿を傷だらけにし、入り口近くしか入っていないアナルプラグがくれる刺激など僅かなモノでも、それに縋って一生懸命に腰を揺らめかす。
 無理に動したせいでアナルの縁が膨れ上がり、ザクロが弾けたように中の粘膜を晒しても、枷を繋がれた両手足首が暴れたせいで擦り切れて血が滲んでも。
 止まらない。
「かゆっ、ああっ、やあ、もっとぉぉっ、ああ——っ、尻ぃ、掻いてっ、もっとぉぉっ!! 中もぉぉ、もっと長いの、おっきいのっ、入れてぇぇっ!」
 ひょこひょこと動く腰の中心で、憂のペニスだけが前にピンッと突き出していた。身体に合わせて上下左右に動くそれは、アナルの刺激で先走りを垂れ流し、動きとともに振りまいている。
 それは、まさに。
「木でオナッてやがる」
 鬼達が、嘲笑とともに揶揄するように、そうとしか見えない光景で。
 あまりに激しい掻痒感は眠りに逃げることすらさせてもらえずに、淫魔の身体がその刺激に慣れるまで、憂はひたすら松の木相手に卑猥な踊りを繰り広げ続けた。
 あれは、二度と経験したくない、地獄のような一夜だったのだ。



「ゆ、ゆるし、て、くださ……。それだけは、ひっ、く」
 だからこそ、憂はシャクリ上げて、何度も何度も見知らぬ男に頭を下げた。
 冷たい床で全裸で跪き、恐怖と怯えにその身体を小刻みに揺れさせても、懇願を止められない。
 けれど。
「自分で入れな」
 低い声音で投げつけられたのは残酷な言葉と長く細いチューブだった。下げた頭に落ちて、床にとぐろを巻いたそれが何なのか、憂が気付いて瞠目する。
 一瞬遅れて呆然と見上げた先で、男は愉しそうに嗤っていた。
「や、……い、あ……ま、さか……」
 憂の頭が、最悪の想像をしてしまう。
 目の前のチューブと男の顔を交互に見やる憂の顔から血の気が音を立てて失せ、先までの恐怖以上の恐慌状態に全身がガクガクと震えていた。
「早くしねぇか。ああ、それ、全部入れろよ」
 だが、男はそんな憂を虫けらでも見るように一瞥し、追加の命令を言い捨てると、背後の黒革のソファーにゆったりと腰を下ろした。
 早くしろと言わんばかりに顎をしゃくる男の冷酷な瞳には、泣きじゃくる憂への憐憫など欠片もない。
 アナルの時でもあんなに辛かったのに。
「や……あ、でき、なぁ……」
 もうこの運命に、逆らう精神などどこかに消えてしまったと思っていたけれど、精神と身体は別物のようで、精神までもが引きずられて硬直している。
 脳裏の奥底で、従え、と残酷な命令を下しているのに、それを覆うほどの大きな感情が今は支配していて。
 命令を聞かなければどんな罰が待っているか判らない。だが、それ判っていても、憂はそのチューブに手を延ばすことができなかった。
 それほどまでに、とろろの罰は酷かったから。
「ひ、ぐっ……ゆ、許して、ください、ど、か……」
 しかもとろろだけでも辛いのに、それを、よりによって……。
 目の前で細く透明なチューブがトグロを巻いている。途中からゴムのボール状の物がついていて、そこから二本のチューブが伸びていて。
 その部品が何をするかは知らなくても、そのチューブ状ののものが何に使うものかは、それを使われたことは何度もあるから知っていた。
 だからこそ、動けない。
「は、できねぇって? テメエっ、奴隷の分際でご主人様に逆らおうって言うんかっ!」
 いきなり怒鳴られ、蒼白な全身がピクリと硬直する。ギュッと握った手など、まるで死人のように色がない。
「テメエがするこたぁ、さっさとその汚ねえチンポに管突っ込んで、うめぇとろろで腹一杯にすることだ。特上の自然薯から丁寧に摺り下ろした一品だ、無駄にしたらどうなるか判ってんだろうなあ」
 それは、まさしく想像したことで、憂は泣き濡らした顔をきつく歪ませた。
 蛇のようにトグロを巻く不吉なチューブは尿道用のカテーテルで、しかも男はそれを自分で入れて、なおかつ、とろろを中に入れろというのだ。
 アナルでは無く、尿道の中へ。
 あのとき、零れた液がペニスについて、そこもひどく痒くなったことを覚えている。なのに、今度はそのものを中に入れろというのだ。
「い、あ……、ゆる、して。 やあぁ……、入れれない、こんな……」
「うるせぇ」
 言うことを聞かなければならないのは頭では判っている。男の後に、いないはずの綱紀が、影のように見えてもいる。
 どんな脚であっても、誠心誠意尽くさなければ、待っているのは鋼紀からの苛烈ともいえる躾けだ。あの晩のとろろだって、その罰の一つだったのだから。
 でも、身体が拒絶する。
 どうしても動けないのだ。
 謝罪を繰り返し、床に額を擦り付けてグジュグジュと泣きながら怯える憂に、男の眉間のシワが深くなり。
「入れられねえ、って言うんなら……」
 男が立ち上がり、周りのスタッフに目で合図をした。
「それだけは、俺が入れてやらあ」
 ニヤリと口角を上げて落とされた発言に、逃げる間もなかった。
「えっ、ひぃっ!!」
 途端、周りのスタッフが憂の身体を仰向けに持ち上げ、カエルをひっくり返したように股間を大きく広げて男に向けたのだ。
 男達の力は強く、突然の浮遊感に驚き硬直した憂の視界に、あのカテーテルを持った男が近づくのが見える。
「や、ぁ……」
「甘ぇなあ、俺も。ご主人様に逆らう低脳な奴隷に情けをかけてやるたあなあ……」
 言葉ほどには気にしていない。否——ずいぶんと愉しそうな笑みを零しながら、男が麻酔ゼリーの代わりにカテーテルに塗ったのは、ボウルの中のとろろで。
「い、ギィィィっ!」
 激痛に暴れる身体は黒服のスタッフにしっかりと拘束されて、固定されたペニスの鈴口からカテーテルが一気に突っ込まれていった。


 
 ポタリ、と最後の一滴がカテーテルから落ちて、グラスに貯まった黄色味がかった液面を揺らす。
「空になったな。じゃ、始めろ」
「あ、く……ぅ」
 膀胱の中をすべて流し出さされ、麻酔も無く乱暴に入れられた痛みで床でうずくまる身体を蹴飛ばさる。力無く倒れたその顔面にあのボウルがゴンッと置かれた。
 それはさっきより大きくなっていて、量も増えている。
「俺の手を煩わせやがった分、増やしたからな。タップリと入れて俺を楽しませろ」
「……う、くっ」
 のろのろと顔を上げる憂のペニスは、もう痒みに襲われ始めていた。
 特に敏感な鈴口は、充血したよう赤く腫れ、中の粘膜まで見えている。
 入れるときに付けられたとろろが鈴口で擦り落とされて溢れ、液だまりが零れて陰茎にも垂れていた。
 その痒みに触れたら、一気に掻き毟ってしまう。
 意識して息を吐いて気を逸らし、刺激を与えないようにして。
「どうした?」
 きっと、何を言っても駄目なのだ。
 痛みが混乱していた意識を覚醒させ、理性が感情を抑え込んで。
 逆らえぬ、逆らってはならぬ男の命令に、憂は身体を起こし、カテーテルの途中にあったゴム球を手に取った。それは手押し用のゴムポンプで、反対側のチューブの先を液につけて、吸い込む力で液体を体内に送り込めるようになっていた。
「空気だけが膀胱が膨らますんじゃねえぞ。しっかりと中に浸けろ」
 すべてとろろで満たせ、と、酷な命令にも、もう従うしか無くて、憂は震える指先でカテーテルの端をボウルの中に押し込み、傍らにあったチューブ固定用のクリップでボウルに固定する。
 それから、右手に握ったゴム球をぎゅうっと握りしめれば、浸けていない方のカテーテルから、ゴムの中の空気がぷしゅうっと抜けていく。
「早くしねぇなら、とろろ風呂に付けてやろうか、ん?」
 けれど、あまりに動きが遅い憂に男の機嫌は下降気味で、そんなことまで言われて、憂の顔に絶望の色が満ちていく。
 逆らっても止めてはもらえない。それどころか事態はますます悪くなる。それは、あの晩の地獄よりさらに酷いものになるのは確実で。
 過去さんざん経験してきたからこそ、消せない恐怖が憂を縛り付ける。同時に、嫌な事は少しでも早く終わりたい、という願望が大きくなってきていた。 
 変わらないのだ、何も。
 憂は鬼に捕らわれた淫魔だから、逃げる術など皆無でしかなくて、逆らうこは何一つ許されなくて。
 だから。
 ほんの一瞬躊躇った指が、それでも力を抜くのは早かった。


 グジュ、くちゅー。
「は、あっ……、くぅっ、ぐっ」
 憂の手がポンプを握り締める度にボウルの液面が極僅かだけ下がり、押し殺した呻き声が漏れた。
 左手はカテーテルが抜けないように陰茎ごと握り締めているが、もう零れたどろろでヌルヌルで、いくら力を込めても押さえきれない。さっきから一回入れる度にずるりと抜けていくカテーテルを入れ直して、を繰り返すせいで、手間もかかっていた。
 もうペニスは中も外も痒くて堪らない。
 動かしても痛みよりは、痒みをわずかでも癒やしてくれるから、もっと動かしたくなる。
 痒みは、じんじん、などとかわいいモノでは無く、怒濤のような波が繰り返し襲ってきているのだ。そのせいでポンプを握る手にも力が入らなくて、なかなか最後まで押し切れない。
 ボウルの中身は半分以上残っている、けれど。
「も、無理ぃ……あうっ、く」
 下腹部が重かった。
 中が熱くて、鈍痛が絶え間なく襲ってて、一杯なのかどうかもよく判らないけど。
 排尿感が強い。
「か、ゆ……ぅ」
 掻きたい、掻きむしりたい。
 こりこりと指が勝手に陰茎を掻いている。
「まだ掻くんじゃねえ」
 けれど男がそう言うから。
 ひくりと止まった指が、掻く代わりに陰茎を握りしめた。
 それでも、入れようとしても、もう腹が重くて痛い。
 一生懸命ポンプを握っても入らないのは、力が入らないだけではないだろう。
「は、あん、もういっぱいか?」
 男の言葉にコクコクと頷く。
 伺うように見上げる憂の口の端から涎が溢れ、透明な液体が喉を流れ落ちた。
 ぷつりと突き刺さった鈴口のカテーテルまで流れたそれは、床に零れたとろろに混じって消えていく。
「うくぅ、あ、ひぃ、かゆう………ぅ」
 座ったまま腰が踊っていた。
 痒くてじっとしていられなくて、手に握ったペニスもろとも、どんどんと腰を上下してしまう。
「まあ、そんなもんか……じゃあ、管、抜きな。ただし、とろろは零すんじゃねぇ」
「は、ああ……ありが、と——ござ、ます……」
 はあっと安堵の吐息を零し、にへら、と顔を緩ませる。
 もう入れなくていいんだ……と、ほっとした憂の手が、嬉しそうにカテーテルを絡めた。
 ガクガクと身体が震える。
 ペニスだけでなく、溢れたとろろが会陰からアナル、尻タブまで汚していて、そっちも痒くてたまらない。だから、痒みを散らそうと腰が踊ってしまうのだ。
 ずるり、とカテーテルが抜けていく。
「あ、ああんっ、きもちっ、い——っ」
 熱く腫れた内壁を滑る刺激に、感極まったように叫ぶ。
 擦れている間だけ、痒みが消えて、ぞくぞくとした快感が全身の肌を総毛立たせた。
 ちゅるん、と、鈴口から端が出て。
 滂沱の中で、排尿感のままに膀胱の中いっぱいの液体を出そうとしたのは、無意識のうちだったが。
「ぎゃっ!!」
 股間から走った激痛に、喉を悲鳴が駆け上がる。
「俺からの贈りモンだ、心して受けとんな」
 いつの間にか傍らまできていた男の手袋に包まれた手が、ペニスを捕らえていて。
 もう片方の手に握る直径3mmより大きそうな真珠が縦に並んだ物が、鈴口に突き刺さっていたのだ。
 それがとろろのぬめりを借りてズブズブと中に入っていく。
「ひ、ぎっ、いっ、ぃ、ぎぃっ、いっ」
 ぷつりぷつりと入る度に、悲鳴が漏れる。
 中から出てこようとしたとろろを再度押し込めていくそれは憂の勃起したペニス並に長くて。
「抜けねえようにしてやらあ」
 先端のリングだけを残して全部入ってしまうと、男は憂の鬼頭の根本にあるピアス穴に鈍色のモノを突き刺した。


 憂の身体には、ピアス穴が幾つもある。
 この世界に身を置かざるを得なくなってすぐに、犯されながら開けられたらものだ。
 並みの人ならば、穴が定着するまでにピアスを入れ続けて数ヶ月はかかるのだが、淫魔の身体のせいか、それとも鬼が使った薬のせいか、穴は1ヶ月足らずで定着した。しかも、使わないときは慎ましく閉じている穴だが、狭くなることはなかった。
 その鈴口の奥から鬼頭の裏に抜ける穴に、南京錠の太い掛け金が刺さり、尿道を塞ぐオモチャのリングもまとめて、カチッと本体にはめられてしまえば、もうオモチャは動かない。
「あ、あっ……」
 穴より太いそれが貫く痛みにまなじりから新たな涙が溢れ落ちていた。
 痛い。
 けれど、もっと痒い。
「ひっ、あっ……いたっ……かゆぅ……うっ」
 溢れた涙にぼやけた視界の中で、男が再びソファーに戻るのが見える。
 度重なる陵辱に痛みに慣れるのが早くなっていた。さらに痛みに熟れしまえば、快感にしてしまう淫魔の身体が、再び襲い始めた痒みにふるふると震える。
 痒くて堪らないのに、同時に堪らなくジンジンと熱く疼く。
 はやく、次の命令を貰わないと。
 ゆったりとリラックスしてしまった男が動かないと、憂はいつまでも悪魔のようなとろろを体内にとどめたまま、洗い流すこともできないのだ。
 掻きたい、イキたい……。
 出したい、噴き出したい、イキたい。
 何もかもが、性欲に結びついていく身体が男を欲して、視線が淫らに男の股間に引きずられる。
「あ、お、おねが……い、します……。痒い、痒くて……掻かせて……、あ、あぁ」
 陰茎も、袋も、アナルまで、痒い。
 痒くて、イキたい。
 ペタリと両手をついて、男に向かって這いつくばる。尻を高く掲げれば、空気に触れた心地よさに、尻が勝手に揺れて。
「ご、主人、さまぁ……どうか、憂にお情け……を……。なんでも、何でもしますからあ……。お許しをぉぉ、ああ、出したぁ、ぁ」
 膀胱が重い。
 下腹部が熱い。
 至る所からこみ上げる痒みは、排尿欲とも射精欲とも一緒になってもうワケが判らない。
「あひぃ……かゆ、ぅ……掻きたぁ……あぁぁっ、ごしゅじんさまあっ……、あぁぁ」
「掻くんじゃねぇっ」
「あ、あぁ」
 掻くなと言われて、それでも、手が伸びる。
 床のとろろに手がずるりと滑ったて前倒しになった姿勢のまま、伸ばした手でペニスを掻き毟る。尿道を塞ぐオモチャを抜きたいのに、しっかりと鍵のかかった南京錠はたいそう丈夫でびくともしない上に、余裕が無いからオモチャがほとんど動かない。
 これが動けば、中がいっぱい掻けるのに。
 痒みと熱といっぱいになった膀胱の解放を求めて、意識が朦朧とし始めている憂の言葉が、戯言のように繰り返される。
「あ、はぁぁっ、ぁぁぁ、痒いっ、掻かせてぇぇっ、ごしゅじんさまっ……」
「はっ、どこが痒いって? 教えてみせろよ」
 蔑んだ物言いでも、男の言葉は、今の憂にとってご褒美にも等しい。
「あ、はっ……チンポおっ……おまんこもぉ……全部ぅ、いっぱい、痒いぃ、ああぁん、なかぁ、グチュグチュしたぁぃ」
 肩をつけて尻を高く掲げた格好のまま、ずりずりと一回転して男に尻を向けて、痒いところを見せる。
 伸びた手が尻タブを掴み、狭間を広げて零れ赤くなった場所を晒した。
「ゆ、うの……まんこ……痒い、ですっ、掻きたい……中が、痒いっぃぃ」
「ほお、痒いのか?」
「痒い……、チンポも、ああ、もう出したい、ですぅ……、痒くて、いっぱいぃ……、ご、ごしゅじんさまぁ、淫魔の憂に、おしっこ、お許し、さい……」
 強請って素直に聞いて貰えたことなんてなかった。
 何とかしようと思ったら、ご主人様に許してもらうしかないのだから……。
 そして、いつだって、どんな主人だって、自分が満足しないと憂は許されない。 
 もう中に入っているのがとろろという記憶が薄れ、ただ、膀胱から出したい一色になっていた。
 アナルを襲う痒みが、過去の記憶を思い起こさせ、現実と過去を混乱させる。
 アナルには入れていないのに、中が掻き毟りたいほど痒いのだ。
「あ、ひっぐぅ……憂を……許してぇ、言うこと、聞きます。お願い——しますっ、逆らわないからあ、何でもするからぁぁっ」
 あの夜叫んで懇願したように、聞いてくれない相手に懇願して。
「ひ……あ、ぁぁ、憂の穴……つかってぇ……、おかして……いっぱい、奥まで……か、いてぇぇ」
 もう今日がいつなのか判らない。
「そうか、何でもするか」
 ますます酷くなる痒みから逃れたいと、泣き喚きながら尻をふりたくる憂に、男はポケットから出した鈍い銅色に輝く塊を数個、放り投げた。
「だったら、それを全部つけろ。つけたら、犯してやらぁ」
 ごと、ぼとん、滴を跳ねて落ちたそれに憂が視線をやれば。
 そこには今も裏筋にぶら下がる無骨な南京錠と同じのものが転がっていて。ボウルの表面には、中に沈んだらしい痕が幾つも残っていた。


「おうおう、よく締まるマンコだ。ほれ、もっと揺れろっ」
「あ、あ、イイっ、アハァアぁ」
 ペチンと尻タブが赤くなるほど叩かれて、痛みよりも痒みが癒されることの方が気持ち良かった。
 アナルを穿つ熱い剛直の激しい抽挿がもたらす快感に、意識が何度も真っ白に弾けて、何も考えられない。
 四つん這いで尻を高く掲げて犯されて。腰に食い込む指の痛みまでもが、ヨクて腰が勝手に揺れて快楽を貪ってしまう。
 乳首のピアス穴それぞれに小さな南京錠をつけられて、それにさらに大きめのがぶら下がっていて。
 貰った南京錠を全部この身につけてようやく、アナルを抉り回して貰えて、憂は、満足げに熱い吐息を零した。
 3個ずつの南京錠がぶら下がった乳首は、その重さに醜く伸びきっていた。さらに、激しい抽挿に大きく身体が揺れ、ブラブラと前後左右に振り回される。その勢いに引きちぎられそうになって、泣き喚くほどの痛みが襲うのに。
 気持ちイイ。
 とろろまみれの南京錠を付けさせられた乳首は、その周りも含めて赤く爛れていたのだ。乳首など、真っ赤に腫れて膨れ、太い鋼を咥えて薄く伸ばされて、何か別の物のようになっていた。
 けれど、痛みなど、癒えない痒みを和らげるものでしかなく、痛みよりも痒みを癒される快感の方が強いのだ。
 常ならば、もう何度も達っているはずだけど、きつい尿道の栓は抜かれることなく、乾いた絶頂ばかりが憂を追い上げる。
 時折男の手が異物を孕んだペニスを音を立てるほどにこねくり回して、その度に新たな痛みとそれ以上の快感に狂いよがった。
 感覚がグチャグチャになって、何をされても快感になって。
 ドロドロに蕩けた思考は、奥深くを激しく抉る苛烈な責めにすら歓喜し、ヒィヒィと泣き喚きつつも嬌声を上げて更なる刺激を追い求めた。
 グチュブチュと泡立つアナルから、飛び散る雫は白く濁っている。
 達けない憂とは裏腹に、男の精は溢れるほどに注がれていた。
 何度イッても萎えずに犯し続けるペニスは、男の体格に見合って太く、長く、さらに硬くて。
 その驚異的な持久力は、鬼に勝るとも劣らずに、憂をさらに狂わせて。
「ヒィアアアぁぁっ!!」
 腹の中が痺れる。頭が、白く弾ける。
 激しい絶頂の合間にすら突き上げられ揺すられて、また、快楽の波に連れ去られた。
 痛いほどに張り詰めている膀胱すら疼いて堪らず、痒みもまた快感を増幅させ。
「あ、やあぁっ、いくうぅっ! ひゃうぅっ! と、止まんな、ぁぁぁっ」
 ひっきりなしに響く嬌声は、時間が来るまで延々続いたのだった。



 ガタガタと片づけと清掃で騒然とした部屋の中で、まだヌメリを帯びた汚れのままの床の上に、憂が転がされていた。
 力無く投げ出された四肢はビクリともせず、けれど、その瞼は薄く開いて、焦点の定まらぬ瞳が覗いていた。微かに開いた口の端には涎が流れ、微かな吐息が零れている。
 そうでなければ死んでいると思えただろう。
 横倒しになった上半身のいたるところが白く汚れているのは、男が帰り際に余ったとろろを撒いていったせいだ。それが流れて、胸が上下する度に、乳首の南京錠から垂れ落ちている。
 だが、特にたくさんかけられたのは股間のところで。
 腰から下は前が上を向いているせいで、下腹部から股間の茂みに液だまりを作り、重い南京錠が付いたままのペニスが勃起したまま横たわっているのだ。
 その鍵は、男が帰り際に床の液だまりの中に無造作に投げ捨てて行ったのだが、スタッフは、みな片付けのみにしか興味が無く、液だまりは次々とモップでかき集められてはバケツに捨てられて、運ばれていって。
 結局。
 鍵は一つも見つかることはなかった。


2012_48-4-2

【四の遊戯 ー 自然錠 ー 了】
 
淫魔遊戯四十八手
〈自然錠〉分類:自慰、玩具、尿道
 とろろと尿道を使ったプレイ。さらにパールを連結した玩具で尿道を塞ぎ、南京錠で枷をしてしまいますと、憂には素晴らしい刺激が絶え間なく襲い、アナルの締め付けもたいそう良くなって、十分お楽しみいただけることでしょう。
 また、言うことを聞かない淫魔を躾るのにも最適でございます。
 丈夫な身体を持ちます淫魔ではございますが、薬や異物の刺激の反応の良さは人以上です。
 もちろん、アナルに注いで頂くのもまた良い反応をお見せできるでしょう。
 
 なお、人間相手とは違い憂は淫魔です故、1日以内の放置でしたら爛れた内臓も一週間程で自然回復しますので、ご安心してお楽しみください。

 お勧めお客様:異物を使った、特に尿道プレイがお好きな方。放置プレイがお好きな方。


【リクエスト】
「とろろを尿道にカテーテルで優自ら入れさせ、パール型の尿道バイブで蓋をし、アナルを開きおねだり、散々晒し者にしたあげく、犯してあげる代償に尿道に南京錠でピアス勃起すらできい状態で、輪姦」

 こちらの遊技内容は、お客様よりメールにてリクエストいただきました。ありがとうございました。
 ただ、少し変更の上、輪姦を入れ忘れていることにできてから気づいてしまい……、申し訳ありませんが、今回は省きました。

【追記】
 この後を撮影した映像は、四十八手 噴射編として付け加えさせていただきました。