淫魔遊戯四十八手 その1ー漬物仕込ー

淫魔遊戯四十八手 その1ー漬物仕込ー

【淫魔遊戯四十八手 その1ー漬物仕込ー】

※正常位、開脚、抜かずの放出、唾液※


 豪華なクリスタル製のシャンデリアが広い室内を煌々と照らしていた。
 20畳ばかりのその部屋は、緋毛氈のような真っ赤な敷物が敷き詰められており、壁は大理石で、その一面には黒曜石の如く磨かれた暖炉があって、中では本物の炎が燃えたぎっていた。
 今は7月。
 今年始めての真夏日を記録したと言われる都内の某所で暖炉など必要ないはずだが、ここの雰囲気は冬のようだ。
 それでも心地よい冷気が室内を満たしているのは、フル稼働する空調のおかげだ。
 そんな贅沢な部屋に連れてこられた憂は、今、部屋の中央にある大きなベッドに寝かされていた。
 キングサイズのそのベッドには漆黒の敷布がかけられているだけで、全裸で横たわされている憂の身体を隠すものが無い。
 支配者である綱紀にその状態で動くな、と言われてしまえば、憂は逆らえない。
 剥き出しのペニスがだらりと垂れる股間もそのままに真上のシャンデリアを見つめて待つしかしかなかったのだ。
 さらに、ベッドの周りには武骨な業務用カメラと照明が据えられていて、それらを扱う者達が音もなく控えていた。そんな彼らは一様に顔の上半分を覆う仮面と黒のスーツを着込んでいる。
 ちらっと見ただけでも、皆若く見えた。だが、彼らは全裸の憂を見ても何も言わず、表情すら変えない。
 ただ、立ち尽くし、じっと待っているだけなのだ。そんなところもいつものスタッフとは違っていて、奇妙な不安に襲われた。
 そのせいで、最初は羞恥に強張っていただけの憂であったけれど、彼らのあまりの反応のなさに今度は違和感ばかりが募ってきた。慣れるはずもない凌辱映像の撮影だが、さらに何か違うことが起きるのではないかと怖くなる。
 シンと静まり返る室内に、薪が爆ぜる音だけが響き。
 その居心地の悪さに憂が、何度目かになる小さな息を吐いたその時。



「おお、確かに憂だ」
 ドアが開いた音と共に、嬉々としたダミ声が響き、憂の身体がビクリと強張る。
 これから男達の慰み者のなると聞かされていたその相手が、とうとう来たのだ。
 思わず固く目を瞑りかけ。
「い、いあっ……」
 のし掛かられる衝撃に目を見開く。
 耳元に響く荒い獣のような息遣いに怖気が走る。
 そんな憂の総毛立った首筋に埋まる男の耳には、無線式のイヤホンがあった。目立たないそれで男は指示を受けるのだろう。だが、憂は何も知らない。
 今回どんなふうに犯されるのか、一体何本のペニスがこの身を貫くのか、何一つ。ただ判っているのは、たとえどんなに憂が苦しんでもやめてなどくれないことだけだ。
 憂が犯される時は必ず撮影されていて、それぞれにテーマが決められていた。それがもたらす利益は大きく、綱紀はそのために様々な趣向を凝らすのだ。
 今日の救いは、射精制限がないことだけど。
 それもいつまでかは判らない。
 男が憂の上に被さったまま、カシャカシャとベルトを外す急いた音が聞こえてきた。その生生しい音から逃れたかったけれど、一人全裸の憂は、逆らうことを一切禁止させられていた。もしそれを破れば、考えたくもない躾という名の陵辱が待っているのだ。つい数ヶ月前に捕らえられてから、幾度も行われた躾に、憂の反抗心は根こそぎ奪われていた。
 その憂にスラックスの前を緩めただけの男がいきなり足首を掴んで、高く掲げさせて。
 一気に、貫いた。
「ひぃぃぃっ!!!」
 慣らしも、潤滑剤も無い。
 丹念に洗われていたアナルは、いつもより潤いが少ないほどだったせいで引きつる痛みが強い。だが、脳髄を貫いた痛みは一瞬で、次には全身の肌がざわめくような快感に襲われた。
「あ……ああぁ、イイっ! あうっ……」
 息を吐かせぬ勢いで数度突かれ、すぐに快楽の粘液が肉壁を覆い、快感が増していく。
 抱え上げられた足はのしかかる男の肩に掛けられて、身体はほとんど二つ折の状態だ。
 ズポリと埋められたペニスが抽挿の度に湧き出した泡立つ粘液を尻に振り撒き、弾ける快感に震える尻を淫らに彩った。
 苦しく、痛くても、ペニスを与えられれば、それらを凌駕する快感に堪らなく嬌声が漏れる。やはり自分は淫魔なのだと、己の浅ましい身体を自覚して、きつく閉じた眦から涙が流れ落ちたけれど、この快感からは逃れられない。
 このまま快感だけの世界に逃げたいけれど。
「目を開けろっ、誰に犯してもらってるのか、その目に焼き付けろ」
 逆らえぬ命令は、残酷に憂を支配する。
 いつもと違う縛られもしていない正常位の行為は、けれど、嫌悪すべき男の姿をまざまざと認識させられた。
 こんな相手に感じたくないのに、淫魔の性故に、身体はひどく悦んで男を迎えているのだと、精神が嘆くのだ。
「憂、声を出せっ、どこが良いか言えっ!」
 仰向けの憂にのし掛かる男が身なりの良さなど感じさせぬ下品な笑みを浮かべて、命令する。
 「や、あっ! はあっ!! あ、ケ、ケツぅ、……コがぁ……」
 けれど、上半身が揺れるほどに突き上げられて、吐き出す言葉は意味をなさない。何よりのし掛かる男の腹に憂の細い身体は潰され気味で、しかも、足が折れそうなほどに頭の横に押さえつけて堪らなく苦しかった。けれど、大きく割り広げた股間の奥で、太くて熱い肉の棒が暴れているのが堪らなく良いのも事実だ。
「あ、はああっ、ああああ、ひぃ……」
 ほんの数ヶ月前までは自分が男に抱かれることも、アナルで快感を感じることも考えたことのなかった憂だが、今や挿入されるだけで空達きするほどに感じてしまう。
 ペニスの中を、トロミのある粘液が流れて行く。
 流れる刺激に身震いし、込み上げる甘い疼きにペニスを包む肉が痙攣した。
 足首が顔の横に来るほどに折り畳まれ、真上近くを向いたアナルに深く押し込めるようにガツガツと貪られる。自分の熱く熟れた肉が絡みつき、引きずり出され、押し込められる。
「あうっ、ああ、熱っ——あう、イイっ! ああはあっ」
 互いの腹に挟まれたペニスは、こんな望まぬ相手にすら簡単に勃起して、タラタラと物欲しげに粘液を零して。スーツを汚し、またその布地で感じてしていた。
 身体が激しく揺さぶられ、脳が振り回されたように視界がぶれた。
 上の男が顔を近づけてきて。 
 ヨダレにテカる分厚い唇が優のそれを完全に覆う。
「ん、くんっ、ぐっ」
 生ぬるいしたがぬめりと入り込み、喉の奥まで探られて。 
 背と後頭部に回された手のひらに強く押し付けられて自分では逃れることもできない。息苦しさに身を捩っても、逃れようと足をバタつかせても、男は離れてくれなくて。
「んぐ、うぐっ、むぐっ」
 口内をなぶられる快感をとともに多量に流し込まれた唾液に、快感に溺れかけていた頭が冷やされた。吐き出したいのに隙間なく塞がれて、吐き気を堪えながらも嚥下するしかない。そんなものが空の胃に届き憂の身体に吸収されるのだと思うと泣きたくなった。
 と、不意に。
「んんっ」
 嫌悪でしかないそれが欲しい、と、激しい欲求が沸き起こったのだ。
 驚愕に見開く視界を埋める卑猥な悦びに浸る男が、グチュグチュと口の中で掻き混ぜたそれをまた注ぎ込んできた。
「俺の味がつくようにしてやるわ。ザーメンと唾液でな。溢れるほどにたっぷりと」
 ニヤリと嗤う男が、逃れようとする憂の口を塞ぐ。また注がれる粘つく液体に、身体が侵される。 
 たまらなく嫌な、嫌悪感ばかりなのに。そんな唾液が堪らなく良いものだと、感じたのだ。
「う、あぁ、あっ」
 吐き出せない嗚咽が喉を震わせた。
 流れる涙がひっきりなしに敷布を濡らす。
 今、憂の胃には何も入っていない。
 前夜から絶食させられ、水すら飲んでいない身体は、水分と栄養を欲していた。さらに、熱い喘ぎ声に喉が乾いていた。
 淫魔の身体は快感を求め続けるためだけに、その肉体を進化させる。それは嗜好の変化さえももたらして、嫌悪すべきものにまで、身体は悦んでしまうのだ。
 喉に流される唾液だけが喉を潤すのだと知ってしまった身体が、嫌悪とは裏腹にそれを飲み込み、甘露をもらったかのように悦び、高ぶりながら、舌がそれを絡め取り、喉へと運ぶのだ。
「うぅっ、ぐぅ」
 ゴクリと飲み込む身体とは裏腹に、精神はさらなる変化を恐れていた。
「い、いああぁ、やらぁっ!」
 それは、過去幾度となく憂を襲い、精神を酷く傷つけてきた変化だ。それこそ、血の涙が何度も流れるほどの衝撃は、いつだって憂をたいそう苦しめて。
 堪らず逃れようとするけれど、重い身体はびくりともせずにただ筋肉に力が入っただけだ。
 圧迫され、包み込まれて、自由にならない上に折り曲げられて苦しい体勢だ。毎日のようにいろいろな体位で犯され続けている憂の身体は、今や多少の無理が聞くほどに柔軟でしなやかに男を受け入れる。
 涙が流れ、汗をかいて、貴重な水分が勝手に出て行くかわりに唾液が注がれた。
 そして、アナルも。
 憂のだけでない粘液が流れ落ちていた。男が興奮すればするほど、注がれる先走りが入ってくるのを、憂は認識できるのだ。
 その汚らわしくも美味しい体液に、柔肉が暴れ出す。
 固定された身体に真上から突き入れられて、ズドンとアナルめがけて落下してくるような衝撃に、ギュッと身体が硬直した。
 と。
「おぉう、おおっ」
 耳障りな男の唸り声が、ペニスの形をまざまざと感じながら聞こえた。
 男が激しく硬直した途端、肉いっぱいに埋め尽くされたアナルに、熱い液体がジワリと広がる。
「ひぃ、あっ……」
 泣いていた憂が茫然と、目を見はり。けれど、その指先にはキュッと力が入り、腰は自ら強く押し付けるように上がっていた。
 それは、淫魔にとっての大好物の精液で。
 飢えた身体が、手っ取り早く糧を欲しがり、触れた細胞が一気に精を吸収をし出したのだ。
 それは、アナルを穿たれるより強い快感を淫魔に与え、そして、もっと欲しくて堪らなくさせるのだ。
 体内に注がれた生の精液は淫魔のご馳走、精力剤にして媚薬。その効果は、人が受ける淫魔の体液よりはるかに強い。そして、精が濃いほど、力が強いものほどその効果は強い。
「あ、あう……、う」
 ビクンビクンと小刻みに痙攣して、細胞に染みていく感覚を味わう。さっきまでの恐慌を忘れるほどの甘美な瞬間。
 もっと欲しいと、身体が訴えるのに、逆らえない。その絶えなる快感がもらえるなら、唾液なぞいくらでも受け入れいうと思うほどに。先が欲しくて。
「くそ、締め付けられて達っちまったじゃあねえか、まだこれからだっ!」
 男が悔しそうに唸り、さらに強く憂を抱きしめて、腰をズルリと動かした。
「あぁ……」
 抜けてしまう、と、憂の身体が追いかける。
 ブチュっと音を立てたアナルから泡立った白濁が溢れかけたけれど、真上を向いたアナルにまたそのまま押し込められる。
 グチャ、ブシュっ。
 音が鳴るたびに早くなり、頭は自由な憂が感極まったように振り乱し、嬌声をあげて悶えた。
 その惚けた瞳に煌めくシャンデリアが星の煌めきのように写っていた。
 天井のシャンデリアのクリスタルには憂が写っていた。ダークスーツに身を包んだままの男に折り曲げられたまま抱き込まれた身体で。そのせいで、憂は黒い岩のような身体から頭と両のスネから先、そして背に回された手首から先がのぞいているだけだ。
 男の腰が受けば、憂の尻が上がる。男の腰が降りればその位置で出迎える。
 自ら高く掲げたせいで、さらにきつく折り曲げられた身体はますます圧迫されて、小さくなって。
 互いの腹に挟まれたペニスは、挟まれ、擦られ、捩じられて、その度にビュッビュッと白濁混じりの粘液を吹き出した。
 垂れた涙と汗が敷布を濡らし、腹から流れた憂の精液が白く汚す。
 ギュギュッと男の身体が上下するたびに増えるそれは、さながら圧をかけられて搾り取られているようで。
「あひいぃ、イイ——お、奥に、ふ、ふかっ! ああぁ!」
 真上からの抽挿は男の体液を零す事なく憂に注ぎ込み。
 全体重をかけての抽挿は、紛うことなく快楽の海に溺れさせていた。


 その状態で憂は、一時間ずっと、一度も抜かれることなく犯され続けたのだった。
 

【一の遊戯 ー 漬物仕込 ー 了】
 
淫魔遊戯四十八手
〈漬物仕込〉分類:体位
仰向けの淫魔の足首を掴み、股間を割り広げつつ両足首が頭の横になるように床に押し付け、上に向けたアナルを犯しつつ口も合わせて、全体重を淫魔にかける体位。
双方共に、かなり腰に負担がかかるが、淫魔に遠慮は不要なため、犯す側のみ注意する。
男の体液が大好物の淫魔には、零すこと無く施されるこの体位での遊戯は、犯されがいがあるとして好まれている。

お勧めお客様:体格に良い重量級で、体液を注ぐのを好む方。

俗に言うまんぐり返しに近い状態であるが、できるだけ股関節を広げて平たくさせる事。
その状態でアナルと口に体液を注ぎつつ、淫魔の体液を放出させることにより、塩漬けした野菜から余分な水分を放出させる漬物を連想させたことから命名。

2012_48-23-48-1

【了】