須崎コレクション4

須崎コレクション4

「……っ」
  エレベーターのドアが閉まって、動き出したときのわずかな重力の刺激に、喉の奥が鳴る。
 少し早い時間のせいか、幸いにも人がいなかったけれど。
「う……く……ふぅ」
 もうここに来るまでの間、乳首から伝わる刺激に、テルの体は完全に欲情していた。
快感に立ち上がっているのは乳首だけではない。股間でもサポーターごとスラックスを持ち上げるほどに、テルのペニスは勃起していて、なおかつ粘っこい粘液を滲ませている。
昨夜、須崎に取り付けられた一対のニップルピアスは、徒歩と電車での通勤時間の最中も、テルの体を責め苛んでいた。
 それでなくても、夜半遅くまで須崎に犯され続けた体は、朝が来てもじわりとした熱を孕んでいる。そのときにたっぷりと達かされていなかったら、ここにくるまでに射精すらしていたかもしれない。
30-1.jpg 原寸大
 喘ぐテルをよそにエレベーターは上昇し、あと少しで目的の階に到達するかと思ったとき。
 ピィーン!
 停止を知らせる音は、目的の階とは違うところで。
 くんっと体に重力がかかり、ピアスが乳首を押し下げる。
「はひっ……」
 どくん──と、全身に走った疼きに、仰け反るように体が強ばった。喉からはあはあと荒い息が零れ、膝ががくがくと震える。
「あ、おはようございます」
 開いたドアから入ってきたのは、よりによって顔見知りの同じ会社の人間だ。しかも、最近妙に懐かれていて、昼も一緒に取ることが多い男だ。
涙が滲んで視野がぼやけている先で、人の良さそうな笑顔が挨拶してくるのに、小さく答えていると、彼がいぶかしげに顔をのぞき込んできた。
「桑崎さん、どうしたんですか? なんか目の下にクマがくっきり……というか、なんか顔が赤いし、なんか……。えっと風邪でも?」
「あ……いや」
 彼が躊躇うように言葉を濁し、うろうろと視線を泳がせる仕草に慌てて頭を横に振る。
「風邪、とは違うけど……少し疲れが溜まっている……かも……」
 動き出したエレベーターに息を飲み、それでも返した言葉に、彼も頷いた。
「ああ、そういえば、昨日も仕事されていましたものね……」
 仕事の疲労も確かにあるけれど。それ以外の疲労も確かにあるけれど。
けれど。
「ひっ」
「え?」
 目的の階に止まった拍子に上がった悲鳴はごまかせないモノで。
しかも、二度目の強い刺激に、ドライオーガズムの衝撃が全身を襲っていた。
 思わずエレベーターの壁に縋り付き、震える体を冷たい壁で押さえつける。
「やっぱ……桑崎さん……」
 背後からの声に感じる欲情は、けれど、そうでない、と否定する。
「な、何でもないっ、ちょっと立ちくらみで」
 だが、彼はごまかそうと口走ったテルの顎に手を伸ばしてきた。くいっと振り替えされたところにある彼の鼻息がたいそう荒く、ひどく近い。
「……俺……前にゲイもの調教ビデオ、見たことがあって……」
 そう言い出した彼の瞳には、明らかな欲情の炎が浮かび上がっていた