リジンの第一王子 海音(かいね)が、公衆の場から姿を消して、7ヶ月以上経っていた。
他の王族達と同様に姓奴としての扱いであることは間違いなかったが、その飼い主が王カルキスであるから、誰も情報を仕入れることができない。
獣のように飼われているのだとか、毎日拷問を受けてもう狂ってしまっているとか、人形のように据え付けられているとか。
月に数度姿を消す王がいったい何をしているのか?
噂が噂を呼び、どんな些細な情報であっても、高値が付けられて取引されるほどだった。
そんなある日、ごく短い──1分にも満たないビデオ映像が、闇市場に流出した。
明るい陽光の中。
白い肌が震えていた。
くっきりと浮かび上がるその姿は、たとえ会ったことがないとしても、過去に彼の噂を一度でも聞いていればその人だと判るだろう。
美しきリジンの第一王子 海音。
噂によれば、神の子にふさわしく、彼の容姿はとても美しいという。
女性的の優しいながらも凛とした立ち居振る舞いは、誰もが思わず見惚れるほどだ、と。
その姿は、今でも代わりはしない。
ぴんと延びきった身体が、弓なりに反り返る。
その澄み切った空色の瞳が一瞬大きく見開かれ、そして固く閉ざされた。
頬を流れる透明な滴が、振り乱す銀の髪とともに煌めいていた。
白い肌が甘く紅潮しており、桜色の唇が大きく広がり、意味不明だが澄んだ声音が辺りに響き渡っていた。
身に纏っていたのであろうマントが、風にたなびいて大きく広がる中。
その中心で、海音は何度も何度も腰を突き上げていた。
がくがくと壊れた玩具のように繰り返し繰り返し、そのたびに天を向いたペニスから白い液がびゅっびゅっと噴き出していく。
彼の手は、後ろに回されていた。
ちょうど尻の辺りにあるであろう手が何をしているのか、はっきりとは判らない。
だが、時折股間から見える指は、激しく蠢いているようだった。
瞬く間に複製品が作成された。
驚くほどの高値が、オリジナルに近いと思われるものほどついた。
誰が作って、誰が売っているのか?
二度目はあるのか?
期待の視線が城へと向かう。
ほんとうに短い映像は、それだからこそ人々の期待を膨らませる。
──いつか生で味わいたいものだ。
期待は淫靡な色で彩られていた。
【了】