【従者制度】

【従者制度】

絶対服従、肛虐、大型淫具、無理矢理、衆目
某国、高級クラブの遊戯、その国特殊な従者制度の存在

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 ガラガラと台車で運ばれてきたのは人より大きなトナカイのオブジェだった。
 太い胴体から長い首が上へと伸びていて、その頭上には大きな開いた角が一対飾られていた。
 前脚は岩に乗り上げているが、胸から下は岩肌の影に隠れていて、その岩を駆け上がろうとしてるかのように身体が前方上部へと伸びている。
 そんなオブジェが飾られたのは、この国でも有数の高級クラブの中庭だった。
 12月も終わりかけの週末、客の入りは上々で中庭でも数人の客が、従者を供に楽しい夜を過ごしている。
 そんな中に運ばれてきたオブジェは人目を惹き、今まで中にいた人たちも中庭へと足を運んできた。
「何かね、あれは?」
 客の一人が、従者を連れながらスタッフに訪ねていた。
「あれは、今宵の余興でございます」
 恭しく頭を下げたスタッフが、従者の引き綱を客から受け取りながら、オブジェのほうへと促した。
「どうぞ、お近くへ。よろしければ、ご説明いたします」
 VIP待遇の客は、促されるままにオブジェへと近づいた。
 その後ろを、スタッフに引きずられるように這う従者がよろよろと進んだ。
 その滑らかだったはずの背は、無数の鞭の痕が広がっていて、端正なはずの顔は涙と涎にまみれて見るも無惨な有様だ。
 さらに尻の狭間では慎ましやかなはずの穴の縁は赤くめくれあがり、おちょぼ口のように隙間を空けている。さらにそこから零れた白濁は足首まで流れ、這った跡を穢らしく残していた。
 引き綱は首輪と繋がっており、引っ張られるたびに喉が締まるのか無様な悲鳴を上げている。
「おや、これは……」
 オブジェの背後に回った客が、不意に何かに気が付いたかのように声を上げた。
「お気づきになられましたとおりでございます」
「ひっ!」
 少し遅れてスタッフが連れてきた従者も気が付いたようだ。恐怖の悲鳴を上げて、後ずさる。けれど、引き綱を強く引かれて、それもままならない。
 前方からはトナカイの太い首に隠れて見えなかったが、その背には巨大な張り型が威風堂々と立ち上がっていたのだ。それはかなり大きく、太く、エラが張ったカリ首辺りは大人の男の拳ほどもあった。
「お試しになられますか?」
「もちろん」
 間髪を容れず返した客の視線が従者に向かっているのを確認したスタッフが、素早く仲間に合図を送る。とたんに、数人が駆け寄って、逃れようとしたところで尻もちをついた従者を担ぎ上げた。
「ひっ、や、止めて、許してくださっ、ご主人様っ、後生ですっ、止め、いやっ」
 暴れる身体が難なくトナカイの背へと運ばれて、大きく開脚した状態でトナカイの背にまたがせていく。
「あ、やっ、あ──っ、ひぃひ、ぃぃぃぃっ!!」
 尻が張り型の先端に触れる。
 すでにたっぷりと潤滑剤が塗られていたのだろう、尻穴の僅かなくぼみに嵌まってしまえば、後は自重で飲み込んでいく。スタッフたちに巧みに制御されて降りていく身体の、赤く色づいた入り口がコブラの頭のごとく大きな先端を飲み込んで、大きく広がっていって。
 ただれた穴が、ミシミシと押し広げられるごとに、トナカイの背で従者の身体は仰け反り、瞳の焦点を失っていく。ただ、闇雲に叫ぶ助けは、けれど誰も受け取ってくれなくて。
「さ、裂けるっ、あぁぁ、止めっ、あぎぃぃぃっ!!」
 シワがなくなり、皮膚が薄くなって。
 ぴしっと薄い筋が入るか入らないかというところで、大きなエラをはったカリ首がずぷっと飲み込まれた。
 その瞬間悲鳴が途切れ、硬直した身体が動きを止める。
「おお、咥え込んだな」
「さすが、Mozakiさまの従者でございます。このような大きなものを切れることなく受け入れるとは」
「これは大きいのが大好きでな、いつもばかでかいペニスを銜えておらんと気が済まぬのだよ」
 支えるスタッフの手によって、見せつけるようにじわじわと銜えさせらていく。止まっていた悲鳴を再開させた彼を、客は満足げに見上げた。
「ほれ、あのように善い声を上げて、喜んでおる」
 ヒイヒイと喚き、言葉にならない制止を繰り返す従者を見て喜ぶ客に、スタッフはにこやかな笑みで答えた。
「なるほど、ならば彼にこの余興はたいそうふさわしいでしょう」
 そんな会話をする彼らの周りに、他の客達も近づいてきた。
 皆、この余興に興味津々のようで楽しそうに見ているが、彼らに付き従う従者たちは、一様にその晒した肌を青ざめさせていた。
「おお、入ったな」
 その言葉通り、すでに従者の身体を捕まえているスタッフはいなかった。ただ、落ちないようにと手綱がトナカイの首に巻かれ、両足は折り曲げられ、胴体へと固定されていた。
 その間従者は腹の奥まで異物を銜え、背筋をピンと伸ばしたままに硬直している。
 客の言葉通り、いつも太いものを銜えていたのだろう、その穴は裂けることはなかったようだ。
 串刺しになったかのように顔を歪ませて苦しんではいるが、トナカイの背にぴたりと乗ったペニスは明らかに勃起していた。
「確かに、ずいぶんと喜んでおるようだ、彼は」
 その客の知己である別の客が褒め称えれば、皆もそうだと頷いて。
「あの従者には良い褒美となっているようだね」
 とまで、宣う客までいて、その場の客やスタッフたちの誰もが、彼の痴態を楽しんでいた。
「それではどなたか、従者にこのトナカイを犯させてやってくださいませ」
 さらに、それだけではないのだとスタッフが客達に呼びかける。
「トナカイを犯す?」
「はい、こちらの穴は非常に良い穴でございますよ。従順な従者に、どなたかご褒美を差し上げては」
 その言葉に、数人が顔をつきあわせ、従者達はますます後ろへと下がろうとしたけれど。
「では、うちのを」
 客の言葉を捕らえたスタッフが、すぐにその客の従者を引きずり出した。
「あ、ぁ……ご、ご主人さまぁ、ご褒美、など、もったいのうございますっ、どうかっ」
 褒美など不要だと叫ぶ言葉は、完全に無視された。
 嫌がり暴れる身体は、瞬く間にトナカイの後ろへと連れて行かれ、岩山の中から取り出された枷で足が固定されて。手がトナカイの尻に固定される。
「や……こ、こんな……あ、ぁぁぁ」
 それだけでなく、トナカイの腰から伸びたベルトで腰が引き寄せられて、ぶちゅりと濡れた音を立てて従者のペニスがトナカイの尻の穴へと吸い込まれていった。
 同時に、どこからかくぐもった声が響くが、それを聞き取った客達は、ニヤニヤと笑っているだけだ。
 そのままベルトできつく固定されて、その従者も動けなくなる。
 だが、決してこれだけでは終わらないのだと、上に乗った彼も、後ろで固定された彼もよく判っていて、どちらも蒼白なままだ。
「それでは、ショーの始まりでございます」
 一礼したスタッフが、おもむろに取り出したスイッチを入れる。
「はぎぃぃ──っ」
「うおおぉっ、ぉぉっ」
『ぎゃあ──っ』
 トナカイが発した駆動音と共に三つの悲鳴が迸る。
「おお、元気なトナカイだ」
 跳ねるように上下に動くトナカイの背の上で、最初の客の従者が跳ねていた。固定されている身体が跳ねるほどに激しいそれは、浮かんだ尻の間からあの強大な張り型が垣間見えるほどだ。
 そして、トナカイの背後にいる従者は、上下運動と同時に激しいピストン運動が彼のペニスには課せられていた。しかも、いつの間にか真後ろの岩肌から巨大な張り型が突き出していて、それが従者の尻を犯していたのだ。トナカイの尻に弾かれるように後ろに下がれば、巨大な張り型を深く銜え込み、けれどベルトによってすぐに引き戻されれば、深くトナカイを犯すことになって。
 前にも後ろにも与えられる刺激に、その従者はすぐに白目を剥いて痙攣していた。
 そしてさらに。
「おやおや、この子は……、ああこの前、よその従者に迫って、浮気してたという例の従者だね」
 動き出してすぐにトナカイの首の下のパネルが開いていて、端正な若者の顔が覗いていたのだ。
 まだ若いその顔はすでに涙まみれで、上下前後に動くたびにひっきりなしに悲鳴を上げている。
「寛大なこれのご主人さまは、浮気は身体が満足できていないからだとおっしゃって、特別にこのトナカイの遊具で遊ぶことを許可されたのです。ちなみに、ペニスにはオナホール、アナルには張り型が入っておりまして、トナカイの動きに合わせて振動する仕組みになっております」
「……なんだ、うちの従者が突っ込んでいるのかと思ったが?」
「正確にもうしませば、アナルに入っている張り型はゴム製の穴あきでして、その空間はクラブ謹製の特別なオナホールとなっております。そこに、後ろの従者の方は挿れられているのですよ。中の方がご自身のアナルできつく締め付ければ締め付けるほどに、柔軟なゴムの中は締まりますので、後ろの方もたいそう気持ちよかろうと存じ上げます」
「ほお、……つまり二重なのか」
「さようでございます」
 それはどれほど太い張り型なだろう。
 皆はそれを想像して、ほくそ笑む。
 さらに、スタッフは続けた。
「上の彼が締め付けますと、その刺激をセンサーで拾いまして、中の彼にセッティングされていますオナホールが二倍の力で締め付けるようになっております。また、激しい振動は後ろの彼の張り型の動きも倍増します故に」
 互いが互いを知らず刺激し、それぞれにさらなる刺激をもたらして。
 彼らは機械仕掛けのトナカイが動きを止めるまで、快感を与え続けられるのだ。
「さあ、お客様方はどうぞこちらへ。新しい酒とつまみをご用意しております。また、従者が遊ばれている間は、当クラブ所属の従者にてお相手させていただきますので」
 スタッフに促されて、客達はテーブル席へと移動を始めた。
 その背後で、3人の従者がそれぞれに嬌声を上げ、蕩けた表情で去って行く主人達を縋るように見つめていた。
 この遊戯は、彼らが気絶しても終わらない。
 それがいつものことだからだ。
 けれど、何が苦しいかと言えば、彼らは皆、主人の許可無くて達することができないということで。
 従者となったその日に施された秘術により、彼らは主人の許可が有ったときだけ、オーガズムを感じ、射精ができるようになっていた。
 それは潜在意識深くにまで刷り込まれた暗示によるもので、元々はこの国の主君と支配階級である貴族、そして彼の主人への絶対服従を促すためのものであったが、そんな状態が副作用的に現れたものだった。と言っても、通常はその回避のための処置も施されるのだが、時々それをしない主人もいる。
 このクラブに遊びに来るような主人たちのように。
 ほとんど絶頂寸前まで達していても、最後の一線には決して辿りつけない。ドライですら許可がないと達けない彼らは、決して不感症ではない。それどころか日々戯れに与えられるこのような遊技に、全身くまなく開発されていて、すぐにでも射精したいほどに感じまくっているのだ。
 けれど、決して達くことはないのだ。絶頂寸前まで昂められながら、あと一歩に届かない。
 もはや彼らの口から零れるのは、嬌声と悲鳴の中で主人への懇願と許しを乞う言葉だけ。
 だが、それが容易に叶えられないことも、すでに身に染みて理解していた。それを知っているから、彼らの頬から涙が流れる。
 嬌声を上げる口元から救いを求める声なき叫びが零れても、それが決して聞き入れられないことは、従者となった時から、その心身に刻み込まれるほどに経験してきたことだった。


 某国貴族専用の高級クラブとして設立されたこの施設の流行り具合にオーナーである王弟は満足げに頷いた。
 そこは中庭を睥睨できるオーナー専用の部屋で、王城にある彼自身の部屋に勝るとも劣らぬ豪華な部屋だった。
 だが、唯一違うのはその部屋の床は冷たい大理石が剥き出しになっているところだ。
 かわりに、大きな丸い羽毛が入ったクッションがいくつも転がっており、今その一つに彼の従者も腰を下ろしていた。
 その、最近ようやく手に入れることができた従者を見やり、グラスのワインを傾けながら、ほくそ笑む。
 微かに漏れ聞こえるのは、喉の奥で鳴るくぐもった悲鳴。単調な振動音に被さるそれは、王弟としての責務に疲れた脳を程良く刺激し、楽しませててくれていた。
 まだ従者成り立ての彼は、何もかもが下手だ。
 視線から指示を読みとることも、淫らに服を乱すことも、乳首で感じることも尻穴を広げることも。王弟好みの淫らな言葉を発することも、男を誘うそぶりも何もかも。
 今も、幼子の腕ほどの張り型を受け入れるのに、できないと拒絶して無様に泣きわめき、興が削がれた罰を与えているところだった。
 身体が仰け反るように四肢を縛り、乳首と胎内に埋め込んだバイブレーターに犯されること一時間、未だに王弟を喜ばせる言葉を発しない。
 もっともその口は、穢らしい言葉で王弟を侮辱して以来、口枷が常時填められていて、飲食時にはずされるだけなのだが。
 先月の反乱分子炙り出しの際に疑惑を駆けられた元近衛兵の彼は、その見目から王弟が再三秋波を送っていたのに無視し続けた不調法者ではあったが、従者となった今でもその性格はなかなか治らず、未だに自分の新しい立場に慣れてこない。
 絶対服従を強いる精神調教も、まだ半ばと言ったところか。
 まあそれでも。
「私は気がたいそう長い。何、そなたが従者として相応しいものとなるまで、しっかりとつきあってやろう」
 もの慣れぬ者がこの手で変化するのも楽しいもので、特に難しければそれだけ燃えようというもの。
「いずれ、あの玩具にも乗せて楽しませてやろうぞ、いや、そなたなら中に入るほうが楽しめるか……」
 聖夜と呼ばれる日まで後20日ばかり。
 未だ指2本もない太さの張り型にひいひい喚く従者だが、それだけあれば、あの巨根も受け入れて悦ぶようになればおもしろい。
「そなたの兄も従者としても質がよいと、兄上も喜んでおられたぞ。いずれ相まみえる時には、兄弟共々あれで遊ばせてやろうよ」
 兄が気に入って傍に控えさせている魔獣の従者に任命されたこれの兄を、あの気むずかしい魔獣もたいそう気に入っているらしい。
 暇さえあれば己の褥に引きずり込み、戯れ続けているよ聞いている。
「あれの陰茎はあんなものではないほどに大きいと言うが、そなたの兄はきちんと咥えこんで離さぬと言うぞ。そなたも負けてはおられまい」
 その言葉に、頷いたのかどうなのか。
 ひときわ大きくなった意味不明の声音に聞き入りながら、王弟は眼下の余興へと視線を巡らした。
 トナカイの上でぐたりと崩れた身体はまだその腰を跳ねさせていて、後ろの彼はギャアギャアと泣きわめき、主人の許しを求めていた。
 仲の良い客たちは、互いの話で随分と盛り上がっていて、従者たちの自由にさせているようだ。
 中の従者の主人の姿は見えぬが、きっとここで斡旋された別の従者の味見でもしているのだろう。
 その中の従者がどうなっているか、ここからでは窺えないけれど。
 楽しんでいないはずがないだろう。
 餓えていたからこそ男を漁り、主人以外のものと通じあおうとしていたのだから。存分に性的快感を味わえている今、きっと満足しているはずだ。
「今頃は、あれもそなたのことなど忘れているだろうよ、なにせあれを試した罪人は、もうあれなしではいられなくなって、あの玩具を見るだけで涎を垂らしていると言うからな」
 主人の目を盗み、王弟の部屋まで入り込んで、これをたぶらかそうとしていたぐらいだ。
 そんな淫乱が、あれに喜ばないはずがない。
 そう言い切れば、従者のうめき声が一瞬止んで。
「うーっ、うおおー、お──」
 意味不明の雄叫びが響きわたる。
 見開かれた両方の瞳から滂沱のごとく涙が溢れ、戒めを外そうと暴れ回る。
「おやおや、もっと味わいたいのかい? まあいいよ、だったらもっと強めてあげよう」
 カチカチと王弟の手の中で小さな音が響き、従者の身体が激しく痙攣して。
「────っっっ!!」
 声無き絶叫をあげた従者に、王弟は笑いかけた。
「良い従者になって、私に誠心誠意仕えることだね。そうすれば、あの従者、ああお前に良く懐いていたという弟だったか。まあ、あれにも会わしてやっても良いがね。そなたも実弟に恋い焦がれられたからと言っても、我を裏切るなど受け入れがたいものであろうが」
 未だ忠誠心は薄いが、それでも繰り返されている秘術により、主人から離れるとその身は引きちぎられそうな苦痛を感じるのだから。
 主人に害など与えようとしただけで、与えようとした痛みを味わい、動けなくなる。
 一緒に主人から逃げようと入り込んできた愚かなあの従者は、その苦痛に耐えたようだが。もっとも、今頃は相手を求めてそれを克服するほどの欲求不満であっても、心底満足しているだろう。あれの主人は、そんな不満など解消してやろうと、多数の男たちを昼夜を問わず与えているらしいから。
 城下で評判だった端正な容姿を持つ3人兄弟は、皆それぞれに良い主人を得たものだと、それらの斡旋をした王弟は、満足げにうまいワインを口に含んだのだった。

【了】


 奴隷制度廃止後、新たに作られた従者制度に登録された者達を斡旋、従者と共に遊ぶための遊技場を提供している国公認施設。
 従者は貴族以上の主人に絶対服従を誓い、仕える存在。
 昨今では元奴隷はあまり多くなく、騎士や平民などで没落した者、とくに見目の良いものが雇われることが多いと言われている。

 階級制度:国王>貴族>騎士>平民>従者