【最初の外出】(最初のSold Out続編)

【最初の外出】(最初のSold Out続編)

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【最初のSold Out】続編
比較的甘めですが、調教は過酷。ピアス、異物挿入、衆目調教、モブ口淫等々
視点変更ごとに頁移動になります。

※※※

Side Master

 小刻みに震える背筋にそって、熱が移るほどに触れていた鞭先を下へと下ろしていく。
 途端にびくりと大きく震え、閉じられぬ口角からたらりと唾液が溢れ、顎を伝っていった。
 陽に当たらぬせいか白くなった肌の下は適度な筋肉で覆われ、無駄な脂肪などないせいかその動きを露わにしている。その肌の上には薄い体毛が僅かな灯りに煌めいて、流れた汗に揺らめく様を見せていた。
 その肌に手を沿わせ、少し熱を孕んだしっとりとした感触を味わいながら、前へと回れば、胸板にある一対の乳首に引き付けられた。
 出会った頃は小さく慎ましいサイズだったそれも、毎日可愛がり、深々と貫くダイヤを飾った楔で抉り出し続けたおかげで、メスのように淫らに男を誘う代物になっていた。今は犬歯でしっかりと噛みしめたせいか紅がさらに艶めかしく、所有の証であるタグをつけた首輪からのプラチナのボディチェーンを揺らしている。
 その肌色の皿に添えられた極上の一品のようなそれに欲を煽られて、溢れる唾液に唇を舐めながらその乳首に少し強めに鞭打てば、喉を鳴らしてあえかな悲鳴を上げた。
「声を出すな」という、簡単な命令も聞けぬ最愛の愛奴は、どうやらもっと仕置きをして欲しいらしい。
「シュン……」
 だが、責める心情とは裏腹に、呼びかけたそれは苦笑を浮かべてしまうほどに甘い。柔らかな髪に縁取りされた耳朶に唇を寄せ、ねっとりと嬲りながら囁き呼べば、虚ろな瞳が己を捕らえたことに悦んだ。
 ガシャっと耳障りの音は、頭上から吊した鎖の音で、首輪と両手首を繋ぐ枷とを繋いでいる。
 ゆらりと揺れた体は力無く、けれど崩れれば首が締まる恐怖に、その足は震えながらも必死に重い身体を支えているようだ。
 小刻みに震える両足の間に、ぽたりと流れるのはたっぷりと注いだ愛の証で、「もったいない」と囁いてやれば、その尻にぎゅうっと力が入るのが触れた腰から伝わった。
 内腿を汚す白い粘液を伸ばした指先で掬い上げ、そのまま薄く開いた唇の隙間に差し込めば、嗚咽のような喘ぎ声とともに舌先が纏わり付く。
「良い子でいれば、降ろしてやろうと言ったはずだが」
「あ、あぁ……」
 切れ長の瞳が恐怖に震え、まなじりからとめどめもなく滴を流す。
 もったいないと口づけて舐め取ってやっていれば、「ご……なさい」と掠れた声が小さく届いた。
 最初の出会いの頃に比べれば、ずいぶんと素直になったとは思う。
 けれど、どうもこの子は刺激に弱い。
 快楽にも弱い。
 弱すぎる。
 我慢するという、簡単な命令を守れぬから、ついつい仕置きが過ぎてしまうけれど。
 この身体は与えられる仕置きにすら悦んで、尽きぬ性欲をさらに煽ってくれるから質が悪い。
 今も腰に当たる勃起したペニスは喘ぐように鈴口をひくつかせ、細いベルトで幾重にも縛り括りだした陰嚢は、たっぷりと溜まった精液を吐き出したいと張り詰めさせて震えている。
 先端を飾るピアスからぶら下がるリングは、互いの愛を誓った証だけど、今はそれも欲に駆られて出し続ける淫液にまみれて、ヌラヌラとテカっていた。
 それを視界に入れて、戯れに指先でリングを引っ張れば、「ひいぃぃぃ」と空気が零れるような悲鳴と共に腕の中の全身が痙攣し、ガシャリと鎖が鳴り響く。
 また達ったのだと、気づくと同時に崩れ落ちそうな身体を支えてやれば、熱い身体が力無く倒れ込んできた。
 誘われるように狭まった気道に喘ぐ口を塞ぎ、あまりの淫らな姿に溢れた唾液を注ぎ込んで、未だ熱いアナルに同じリングを嵌めた指を差し込んでみる。
 滑って雄を誘う淫猥な穴は、中からたらりと溜まった液を零しながらも、男の指を悦んで銜えていき、淫売もかくやとばかりに誘ってくる。
 仕置きに使った極太のバイブは、この身体の奥深くまで犯し尽くし、最高の悦楽と苦痛を与えたようで、数えきれぬほどにドライで達き続けたことは判っているけれど、それでもこんな細い指でも悦んで銜えて、もっと奥まで欲しいと招き入れようとしていた。
 ごくりと、男の喉が鳴る。
 さんざん嬲り付くし、陰嚢が空になるほどにこの身体に吐き出した後だと言うのに、男の身体は未だ物足りぬと訴えていた。
 立たせた身体を嬲り、突き上げ続けるのは面白かったけれど、今度は地に伏せて上から押し込むように奥を抉りたい。
 目の前が赤くなる昂揚感はひどく激しく、元より男は逆らわない。
 逆らっても無駄だと知っているから、その手は躊躇わずに枷から鎖を外し、細い身体を引きずり倒した。
「ひっ、あっ……も……して……、許して……さい……」
 喉の奥で嗚咽し、泣き濡れた瞳で縋るように見つめてくるシュンは、けれど、どんな懇願も届かぬ事を知っている。
 知っているからこそ、絶望をその瞳に浮かべ、身体の力を抜いて待ち構えている。
 それは、この手にこの身体を手にしてからずっと、教え込んだ男の業だ。
「溺れろ。俺のザーメンの中で、溺れ死ね」
 溢れる性欲に、すでに男自身は溺れている。たとえ己の精液が枯れ尽くしたとしても、男は性欲に溺れるだろう。それは男の本質にも関わる質で今更変えることなど考えられず、堪える事も受け入れぬままに、解放だけを求めてお気に入りの身体を貪るだけだ。
 そんなお気に入りとなるべく身体を求め続けて手に入れたシュンは、今までの中でも特に気に入っていた。
 己自身が溺れているように、シュンも溺れさせてやろう。
 二人で精液の中で心中したいと思うほどに、男はこの身体が気に入っていた。
 そんな身体に欲を注ぎ続ける、それだけがこの身に滾る欲を鎮める今現在唯一の方法だと、男は理解していた。
 そんな尽きぬ性欲は、男が気が付いたときからその身に抱えていたものだ。
 先祖から受け継いだ不動産と会社をさらに大きくしたのが祖父と父親で、夭折した父親から受け継いだのはそれらだけでない。商売に対する転生の勘ともいうべき才と逞しい身体に人も羨む風貌もだ。そのことには感謝こそすれ恨む要素など無いのだけど、それだけで無かったことが問題だった。それこそ夜毎に恨みごとを繰り出してしまうほどに、恨めしい体質まで受け継いでしまっていたのだ。
 隠居した祖父も、その祖から受け継いだという異常な性欲は、諦めるまではどうにかなるものかと思ったけれど、簡単にどうにかなるものでないことは早々に判明した。
 ただ、潤沢な財と力によって、その欲の解消に不自由したことはない。
 歴代の家長、男親族達のもっとも身近な個人秘書であったり執事であったりは、つまるところ男を捜す役目を担った者達で、中にはその身体でもって遣えていた者もいる。
 人が食欲の飢餓に晒され活動できなくなるように、男の家系は性欲の飢餓がつきまとう。
 それは一般的に言われる精神的影響から発生する性依存症とは違う、もっと遺伝子に染みついた根本的な衝動で、祖父も父も高名な医者にかかったことはあると言うが、けっきょく治まることは無かったし、男にしては医者に診せることすら考えていなかった。
 何しろ男は単なる性欲だけで無く、歴代稀に見るかなりの嗜虐性を持ち得ていたからだ。
 だからこそ、犯し潰しても問題にはならない相手を探すことは秘かな優先事項であったし、何かあっても揉み潰すだけの権力と財力を蓄えることは、生きるための必須事項だったのだ。
 しかも女を相手にすれば、今頃二桁では足りぬほどに己の子ができてしまう故に、相手は男でしかない。すでに子が二人もいて、それで十分だった。
 そんな中で男がたまたま見つけたシュンは、極上品だった。
 穴さえあれば良いと思った時もあったけれど、愛おしいと思うほどに気に入っている方が、満足度が高いのだ。
 今ではシュン以外を使っても、それは欲を吐き出すだけの機械的なものでしかなく、抱き潰すほどに犯しても物足りなさの方が先に立つほどだった。
「シュン、足を開けよ。お仕置きは後回しにしてやるわ。まずは俺を満足させろ」
「あ、やっ、ヒィ……んぐっ」
 組み敷いた身体は熱く、泥濘む穴は柔らかく、けれどきつく人並み以上の肉棒を包み込んだ。
 ぶちゅっと噴き出す泡だった粘液がほどよく絡みつき、抽挿を助ける。
 毎日犯し続けた割には締め付けが弛むことがなく、奥の奥までしっかりと迎え入れて、たまらぬ刺激を与えてくれた極上の穴だ。
 すでに判っている善い所は、前立腺だけでなく入り口にも奥にもある。
 それらをランダムに突き上げてやれば、面白いように身体が跳ねて、ヒイヒイと鳴き喚いた。腹の上で暴れるペニスは、くっきりとベルトが食い込み、その程度では抑えきれないのか、先端のリングを白く染めている。
「零すな」
 嗤いを含み、無体だと知っている命令をその耳に囁けば、切ない喘ぎ声が長く響いた。
 そういえば、許してやったのはいつのことだったか。
 けれど、遠い記憶を探すのは早々に放棄して、熱い身体を抱きしめて、暴発しそうなほどに欲を孕んだ己の肉を打ち付ける。
「や、あぁ──っ、ぁっ、あっ、あっ」
 白目が目立つほどに見開いた瞳が、男を捕らえぬ事に苛立って、無理矢理顎を寄せて、口づける。奥で丸まり、強張った舌先を引きずり出して、噛みしめて。
『ああ、ここも飾ってやりたいな』
 視界に入った耳たぶに、似合うピアスを考える。
 乳首と陰茎にはピアスを与えていたのに、穴だけ開けて適当なのを着けたら忘れていたなと独りごちて。忘れぬようにと脳裏の奥に刻み込んだのは一瞬で、男はすぐにそれすらも思考から捨て去って、最高の身体を堪能することに没頭した。